61.クランはゼノイドと、熱戦を演じる
さて、今日は剣術の日。計10試合しか行われないから、午後から行われる。そして明日に閉会式……表彰式と祭りがあり、その次の日にわたくしたちは帰るのだ。
午前中は……何故かサンウェン様の稽古に付き合うことになった。別に格段に疲れるというわけでもなかったし、ちょうどいい運動になると思って引き受けた。そしたらユーリお兄様までわたくしを稽古に使い始めて……よくわからないことになってしまった。
その後は、街に出かけた。今日はユーリお兄様はいない。わたくし一人でも何の問題もないのだから、昨日が例外だった。昨日とは違う場所に行ってみることにした。
あら? こっちの方面ってもしかして大聖堂があるのかしら? まあバレるわけではないし別にいいでしょう。ついでに大制度いを見るというのもいいわね。面白い経験になるはずよ。
そういうことで、大聖堂も見に行ってみることにしたの。
そう、そこはまさに総本山という感じがした。これが大聖堂なのね。納得できる造りだった。
少しだけ、中にも入らせてもらったのだけれど。ステンドグラスから入ってくる光がとてもきれいだったわ。
「凄いわねぇ」
思わずそう呟いてしまった。
そして、戻って、昼食をいろんなものを少しずつ食べた。どの店の食べ物も美味しくて……。大満足だった。
「それでは、ただいまより、交流戦剣術の部、試合を始めます!」
「まずは、フィメイア学園シリル・カーソンと、ジャネル学園カミア・グレア」
「きゃああ! カミア様ー!!」
「頑張って下さーーーーい!!!」
「準備は出来ましたか? それでは、用意、始め!」
そして、試合が始まった。
シリル・カーソン……。あのときはわたくしが言っていることを理解していなかったから弱いと思ったのでしたっけ? ですが、ある程度の実力はあるようね。ではなぜわたくしが言っていたことを理解できなかったのかしら?
よく分からない。
そして……
「勝者、フィメイア学園!」
「「「あぁぁ……」」」
皆さん落胆を声に出すようになってしまったわ。フィメイア学園に失礼ね。
「勝者、ジャネル学園!」
「「「おおおおお!」」」
「勝者、ジャネル学園!」
「「「「「おおおおおおおおおおおおお!」」」」」
「勝者、フィメイア学園!」
「「「あぁぁぁ……」」」
「勝者、ジャネル学園!」
「「「おおおおお!」」」
「勝者、フィメイア学園!」
「「「あぁぁぁ……」」」
「勝者、フィメイア学園!」
「「「あぁぁぁぁぁぁぁぁ……」」」
「勝者、ジャネル学園!」
「「「おおおおおおおお?!」」
「なんと! ここまで四勝四敗同点だーー!! 残るは2試合! 一体どうなるのか!?」
面白くなってきたわね。あとはここでわたくしとサンウェン様が勝てばいいのよね。
「それでは、フィメイア学園サンウェン・リルトーニアと、ジャネル学園ヘミン・クロードの戦いだぁ!」
「ヘミン様ー!!」
「応援しています!!!!」
「それでは、用意、始め!」
熱戦を想像していたのだけれど……意外とサンウェン様が勝っているわね。これなら問題ないでしょう。
「勝者、フィメイア学園!」
「「「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」」」
「さあ最後はフィメイア学園クラン・ヒマリアと、ジャネル学園我らが誇る生徒会長ゼノイド・ガステリアの戦いだぁ!」
「ゼノイド様ーー!」
「ジャネル学園頑張れー! !」
「それでは、用意、始め!」
カンカンカンカンカンカンカンカンカンカン
「え?」
「え? え? え? え? え?」
「「「「「ゼノイド様ーー!!」」」」」
あらら、やはりゼノイド様はわたくしの同類でしたのね。
「本気で来ても構いませんわよ」
一応宣戦布告はしておいた。
「そうか……」
カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン。
より激しくなった。
まだついていけるわね。今日は……10分で終わらせようかしら? いえ、サンウェン様よりも時間がかからないというのはおかしいわよね? もう少しかけるべきかしら?
そして、しばらくゼノイド様の相手を続けた。
「これだけですの?」
「そんなわけないだろう? 魔術は知らんが、剣術で少女になんぞ負けるわけがあるか!」
「そんな少女にサンウェン様は負けたみたいらしいわよ?」
「知らん、あいつは十分な実力を持っていない」
「そうなのね。だけど面白いわね、わたくし。今、あなたに同じことを思っているわ」
「はぁ!?」
カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン。
さらにテンポが早くなったわね。
まあわたくしは今までどおり守備に回っておきましょう。
「あら、ちゃんとやれば出来るじゃない」
「当たり前だろう」
……ふむ、だいたいこれくらいね、このスピードにも結構慣れてきたわ。もう、これくらいでは恐れることはないでしょう。
ふふっ。わたくしが攻めに転じたらちゃんと守り切れるのかしらね。
カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン。
「だいぶキツそうね?」
「ぬかせ!」
「あら、まだ言い張るの?」
「当たり前だろう!」
「そう、……可愛そうね」
「はあ!?」
「20分」
わたくしは、少し前に入れた誘導に引っかかったゼノイド様の少しの隙を、狙い違わず狙った。
「っく……降参する……」
「なんと、20分もの争いを制した勝者はフィメイア学園クラン・ヒマリアだぁぁぁぁ!」
「「「「「「「「「「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」」」」」」」」」
面白いわね。二通りの反応があるわ。きっと落ち込んでいない方は、この戦いが見れたことに歓喜している……のよね?
剣術部門も我がフィメイア学園の勝ちで占めた。
今日も屋台はたくさんある。まだまだ食べていないものを食べていましょう!
今はどこもかしこも喧騒にあふれていた……
「あらら……弱いという本性が出てしまったのね。さすがクランちゃん。わたしにはできないことをしてくれるなぁ」
その声は、喧騒の中に溶け込んでいった。




