表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/29

5.クランは新たな本に気づき、小人の存在を考える


 一面に花が咲いた場所。そこで、わたくしは誰かと話していた。

 楽しい会話……深刻な会話……いろんなことを話した男の子。この時は……何を話していたのでしょう? 



 目が覚めた。何か、懐かしい夢を見ていた気がするわ。

 どこかきれいな場所。……神殿かしら? 

 古い胸の傷が(うず)いたような気がした。


 いったい何なのでしょう?


 着替えながら、今日は何をしようか考えた。狩りはもう満足できたも

 せっかく上級素材があるのだし……薬でも作ろうかしら? 

 うん、素材に鮮度は必要だものね! 最高よ!

 ふっふ〜ん。


「お嬢様、今日は何をするのですか?」

「今日は家で魔法薬を作っておくわ」

「かしこまりました。では髪はくくっていたほうがよろしいですね」


 あら、気が利くこと。


「助かるわ」


 それから1分もしないうちに髪の毛は完成。朝食を食べて……今日は誰もいなかったわ……さあ! 楽しみましょう!


 昼食後、わたくしは読書にいそしんでいた。

 飽きたわけではないわ。思ったより調合に失敗してしまって、材料がなくなってしまったのよ。公爵令嬢としてももっと腕に磨きをかけておかないと。あぁ……落ち込んでしまうわ。貴重な素材を無駄にしてしまったんだもの。

 そんなふうにずっと引きずってしまっている。


 ……これは、なにか楽しいことがないとずっと考えたままになるわ。


 そう思い、気分転換に読書をしているのよ。


 ふと手に取ったのは『呪い』の本。

 いい加減、これにも向きわないといけないのよね……


 わたくしの呪いは「約束」

 ただ、そう考えてしまったせいで……気分転換どころか、より落ち込みは増したような気がするわ。


 気分転換、気分転換をするのよ。

 そう思っても、何故か呪い……魔術……薬……そんなものばかり手に取っている。

 諦めて、『呪い』の本を潔く読みましょう。


 ふと、とある記述が目に入った。


『呪いとは、祝福と紙一重である。』


 そうかもしれないわね。()に落ちるものがあった。

 わたくしの呪いも、きっと祝福に思える人もいるのでしょう。


 ……この本、興味深いわね。先ほどまでより、真剣に読んでみる。


『呪術師と呼ばれるものは、未だ神様以外見つかっていない。また、呪いのようでも、本人がそれを認めない事例も多く見つかっており、どのようにしてその事象が起こっているのかは、未解明のままである』


 分厚くはない本。だけど、気が付いたら夕方だった。

 一言一言に思い当たるものがあったからか、今までの読書より学べている気がする。

 不思議なこともあるのね。今まで図書室には何度も出入りしているのに、この本の存在に気が付かなかった。こんなに分かりやすいところにおいてあるのに。小人さんでもいるのかもしれないわ。


 やっと、明るい気持ちになれたのだった。


「あら? 誰もいないのね……」


 そうだった。今日はわたくし以外全員用事があるのだった。

 そういえば、ユーリお兄様の用事は一体何だったのでしょう? 


「クラン!」


 エステルお兄様がいた。


「どうされました? 今日は用事があるのでは……」

「用事はあるが! その前にお前に言いたいことがある!」

「何でしょう?」

「なぜ父上に誘われたとき、パーティーを断ったのだ!?」

「どうしてと言われましても……わたくし、以前、お父様とああいう場にはついていかないと約束したのですよ。だから、それを守るためにも、行かないのです」

「そんなものを守る意味がどこにある!? お前は公爵令嬢だぞ!?」

「それがどうしました? わたくしは公爵家の名に恥じぬよう、魔術を磨いたり、自分の価値を高めたりしていますわ。公爵令嬢ならば、約束も守るべきでしょう。一体何に対して文句を言われなければならないのでしょうか?」

「いつ、そんな約束をしていたのだ?」


 お兄様の勢いが少し弱くなったわね。これなら嘘をつかずに説得することもできるのではないかしら? 


「わたくしが神殿から帰ってきてすぐの事ですね」


 強引に約束させてもらったわ。たしか。


「父上は、そのことを覚えているのだろうか?」

「多分忘れているでしょう。今までは……まぁ避けることはできてましたが、今回お父様がその提案を持ってきたことからして、多分忘れているでしょう。それか、考えないことにしたのか……」

「お前は……それを思い出してもらわなくていいのか?」

「別に構わないわ。わたくしが断り続ければ、約束を守ることにはなりますから」

「そうか……急にすまなかった」

「いいえ」


 一体何の用で来たのでしょう? こんな簡単に説得できるようではこれが本題だとは思えませんわ。


「一つだけ伝言を伝えるぞ。魔物には先に気づくのに、その存在を忘れるのはやめてほしい、だそうだ」


 そう言って、行ってしまった。そんなに急いで、一体今から何の用事があるのでしょう? 

 ユーリお兄様もエステルお兄様も結局教えてくれなかったわね。わたくしは仲間はずれにされているのかしら。


 そしてこの伝言……間違いなくケルートからね。もうお父様に報告したのかしら? 早いわね。しかし、なぜそれがエステルお兄様に伝わるのでしょう? 理解できませんわ。


 それにしてもまあまあ核心に近づいたことを喋ってしまったわ。やっぱり嘘をついたほうが良かったかもしれないわね。きっとまだまだ経験が足りないのでしょう。

 もっと経験をつまないと! そう、人とあまり関わらないで済むように!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ