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58.クランは初挑戦を試み、思うがままに楽しむ

 

 昨日のダンスパーティーはまあまあ疲れた。


 だけど、今日はいよいよ魔術の部が行われる日よ。

 魔術の部は剣術の部とは違って直接対決とは言えないけれど、それでも戦う相手は同じ順位の人どうし。

 だから、わたくしはゼノイド・ガステリアと戦うことにはなる。だけど、まあ自分との勝負。そんなの気にしていない。


 まずは10位のところから対戦される。


「では、くじで先攻後攻を決めます。……先攻は、フィメイア学園!」

「はい!」


 まずは的打ち。

 後ろの方を……なんとか当てたみたいね。


「後攻、ジャネル学園!」

「はい!」


 そして放つ。先攻よりも後ろへ。そして当たった。


 なるほど……これは駆け引きが必要なのね。後攻の人ははじめの方は余裕があれば相手の後ろに追随し、最後の一発で力を見せる。

 でしたら……先攻ははじめから力を出して相手の様子を見たほうがよろしいでしょう。はじめは……わたくしのやつがどこまで飛んでいくか確認しようかしら? 


 そんなことを考えているうちに、出番がやってきた。


「第10戦! 1位同士の戦いだぁ! 先攻は……フィメイア学園!」

「はい」


 どうしましょう? 先攻に待ってしまったわ。はじめにやって的を壊してはならないでしょうし、一発目は……駆け引きも面白そうですしやってみましょうか。


「水槍よ、貫け」


 真ん中よりも後ろだけど、後ろだとはいえない場所。そこら辺にある的に向かって打った。


 バリーン! 


 あらら……やはり壊れてしまったわ。まあこれであちらは一発目から一番うしろの的を狙ってくれるんじゃないでしょうか。わたくしに壊されてねらえないとなっては大変ですものね。


「後攻、ジャネル学園!」

「はい!」


 そして、ゼノイド・ガステリアは打った。

 そして……


 バリーン! 


 わたくしの時と同じように後ろの方だけどけして後ろとは完全にはいえないところにある的に向かってうち……そして壊していた。


 あらら……仲間がいましたわ。安心した。

 そして、この宣戦布告は受け取った。なら、次はわたくしの魔術の力を見せてあげましょう。

 うーん、これはうまくいくかしら? 分からないけど、実験は重要よね。今回は試して、次回、そのデータをもとに、最後を狙いましょう。


「水槍よ、行け」


 そして、水は遥か高くに飛んでいった。

 うーん、どれくらいまで飛んだのかしら? 一応少しは前の方に行くようにしたつもりなのだけれど……


「水槍よ、飛べ!」


 ゼノイド様も同じように飛ばしたわ。そして、同じように消えていった……



「この二人は一体何をやっているのか!? 何故か水を上空へ飛ばしました! しかし……落ちて、こない! これは試合を進めるべきか!? しかし、クラン・ヒマリア、3発目の準備を始めた! ……ん?


 パリーン!


「誰も魔法は放っていない、放っていないのに、1番手前の的が、2つの水によって割れたぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 片方から……わたくしの魔力が感じられるのよね……


「「あ……」」


 わたくしは一つの事実に思い当たった。そして、ゼノイド様もその事実に思い至ったよう。


「ゼノイド様、もう一つ……左側の水はあなたのものでしょうか?」

「クラン・ヒマリア。やはり右側に来たやつはお前のものか……」


「今、恐ろしい事実が聞こえてまいりました! なんと、あの2つの水は、クラン・ヒマリアとゼノイド・ガステリアがさっき放ったものらしいのです! 恐ろしい!」


 あぁ……なんということでしょう! 

 けれど、喜ばしい事実ではあるわね。わたくしのほうが先に魔術を放った、そして、ついたのは一緒だった。つまり、わたくしのほうが高く飛ばせた、と言うことよ。

 ふふふ、これは勝てそうね。


「ゼノイド様、この勝負は貰ったわ。ではお先に。水槍よ、行け!」


 さっき水を放った角度は覚えているから、同じ威力ではなったとしたら……だいたいこんなものでしょう。


「クラン・ヒマリア……やるな」

「あら? お分かりになりました? ですのでもう少しお待ち下さい」

「分かった……と言いたいところだが、私も同じことをさせてもらうから構わない」


 あらら……

 そしてゼノイド様も唱えた。そして、水はまた高くに飛んでいった。



「またふたりとも魔術を空に放ったー!! 今度は一体どこの的を狙っているのか!? これは前代未聞の大勝負だ! あとは水が落ちてくるのを待つのみだぁ!」


 しばらくが経った。


 パリーン!


「おおっと! 奥から2番目の的が割れたぁ! これは、クラン・ヒマリアの放ったものか!?」


「違う、私のだな」

「ええ、随分落ちてくるのが早かったようね?」

「ああ、まだまだ実力が足りないようだ」


 パリーン!


「審判によると、先程のはゼノイド・ガステリアのものだそうです! そして、残る一人、クラン・ヒマリアによって一番奥の的が割れたぁ! この試合の勝者、フィメイア学園、クラン・ヒマリアだぁぁぁ!!!」


 ふう、良かったわ。


「見事だ」

「でしょう? 制御には自身があるのよ」

「制御、な。そこに関しては私はまだまだらしい」

「それにしても……2回目のときに的に当てなかったのはどうして?」

「そりゃああんなふうに宣戦布告されたら乗っかるほうが面白いだろう」

「ジャネル学園ってお硬い貴族の学園かと思っていたけれど、結構緩いのね」

「ああ、そこのところがジャネル学園の誇りでもある。大丈夫だ、ちゃんとやる時はやってくれている」

「そうなのね」


 そして、初日が終わった。

 フィメイア学園対ジャネル学園。現在6勝4敗で、フィメイア学園が優勢である――


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