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55.クラン達は、皇国へ出発する

 

 パーパパパパーパーパーパーパーパー!


 そんな音楽とともにわたくしたちはフィメイア学園を旅立った。学園総出でのお見送りである。



 馬車の中で……


「ジャネル皇国……」


 今、メリーナ様がいるのよね。どうしましょう、会ってしまったら。いえ、ジャネル皇国は広いのよ。そんな簡単に会えるはずがないわ。


「どうかしたか?」


 ユーリお兄様に声をかけられた。


「なんでもないわ。あ、そう! 聞きたいことがあったのよ! 皇国にはなにかフィメイア王国にはない慣習とかがあったりするのかしら?」

「いや、ないな」

「そう、それは良かったわ。ほかには……」

「まだあるのか?」

「うーん……なさそうね」

「それは良かった。また何か疑問があったら遠慮なく聞いてね、クラン」


 ユーリお兄様ってこんな感じで見てみると礼儀正しいわよね。

 サンウェン様もヨハン様もわたくしのことはお前、と呼ぶことが多いのよ。実力はわたくしの方が上だというのに。……クレマラ様には感謝ね。


 馬車は順調に進んでいく。

 今回、生徒会プラスでユーリお兄様の7人と、その他の2つの馬車に分けて乗せてもらっている。貴族が多いため、使用人もいるが、それも別の馬車だ。サンウェン様とかは大変そうね。

 わたくしのでああなのだから、きっと王族であるサンウェン様はもっと大変だったでしょう。そう考えた。


「そういえば……」

「何だ?」


 ユーリお兄様がまた返事してくれた。


「今の大聖女様の出身ってどこなのかしら?」

「ジャネル皇国だよ」

「自国から生まれたのですか……。教会にとっては喜ぶべきことですわね」

「きっとそうだろうね」


 なるほど。



「ガベストラージが来ました!」


 3日目のことだ。国境近くにある森を通っているとき、ガベストラージがやってきた。


「ガベストラージ?」

「あら?」


 わたくしは聖女の魔力は一般人になったから関係ないことよね?

 でしたら……まぁ、こんなに獲物になりそうなほど豪勢なのだから、襲われてもおかしくないでしょう。


「では、みなさん頑張って下さい。わたくしは馬車におりますわ」

「なぜだ?」


 サンウェン様の驚かれてしまったわ。


「わたくしは必要ないことで働かないもの。そしてわたくしが動いたら皆さんのためにならないわよね?もちろん、本当に危険なときは手助けするわ」

「そうか。だったらいい。できるだけ、自分たちで頑張る」

「それは良かったわ」


 ガベストラージは、推定討伐人数500人。しかし、これは一般人が、の話だ。ここにいるメンバーだったら大丈夫だろう。


「2体目が現れました! 夫婦のようです!」


 あらら……大変ね。って結構ヤバいのではないかしら? 戦力に関しては知らないけど、士気も落ちていたりしそう。


「どんな様子かしら?」

「まずいぞ。手伝ってくれ」

「分かったわ。後から来た方だけね」

「助かる」


 ガベストラージは風の魔物だ。火は絶対に使えない。

 それにしてもドラゴンも風属性でしたし……風属性というのは多く存在しているのかしら? 不思議ね。


「風よ、切り裂け!」

 あら、足りないわね。

「風よ、切り裂け!」


 あら? おかしいわ、もっと実力があるはずなのだけれど……


 あ! もしかして、聖女の魔力を隠しているからかしら。確か聖女はほぼみんな普通魔術を使えるから、きっと、治癒魔術を使えるためには普通の魔術が必要で、普通の魔術を使う場合も、治癒魔術で増幅されたりすることもあるかもしれないわ。

 けれど……まだ、聖女に戻りたくはないわ。今は、今の実力で頑張りましょう。目標はもう一匹よりも早く倒すことよ。

 さて、久しぶりの全力ね。あら? 久しぶり? いえ、初めてかもしれないわ。


「風よ、切り裂け!」


 さあて、全力よ!


「楽しいわね〜」


 周りで皆がぎょっとしていた。自分たちはこんなにも大変で、全力を尽くしているというのに、たった一人で楽しんでいる奴がいる。それがまわりのやる気をあげた。


「解除。風刃よ、切り裂け!」


 今度は風というか……空気を薄ーくして、切ってみることでもしようかしら?


「あら? 切れるわ」


 これなら簡単にいけるんじゃないかしら?もっと勢いをつけて、鋭く、魔物に致命傷を。


「風刃よ、切り裂け!」

「べぎゃあああ!」


 魔物ってこんな声をあげるのね。面白いわ。


「よし、倒れたわ!」


「え?」

「早!こっちも急ぐぞー!」

「「おー!」」


 そこからさらに士気があがった他の人たちは、なんとか倒すことが出来たようだ。

 怪我人は少し出たが、重症ではないし問題ない範囲だわね。


 まあ交流戦に出る生徒なのですけど……


「シリル・カーソン、最後の一撃、すごかったぞ!」


 あら? サンウェン様が、人を褒めている?


「もったいお言葉です」


 それよりも、シリル・カーソン? 何処かで聞いたことが……

 って、もしかして昔ドラゴンの話を振ってきた方かしら? 弱いのではなかったの? なぜここに選ばれるくらい強いのかしら? 予想が外れてしまった? それともあのあと強くなった? いえ、それはないわね。もともとの実力でしょう。


 まあ……1年生選ばれているのだから将来は有望でしょうね。


 そして、一行はジャネル皇国首都アスナウィアンに着いた。


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