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54.クランは実力の差を、見せつける

 

「クラン様ー!」

「は?」


 思わず驚きが口から出てしまった。そして昨日までの自分を呪いたくなった。

 応援されなくて悲しい……だなんて、応援されてみたらただ迷惑なだけではありませんか!


 これから……なにか変化があるんでしょうね……

 そう思い、憂鬱になった。


 魔術は順位が昨日で決まった。しかし剣術は順位はまだ決まっていない。

 そこで、予選での勝ち負けは考慮済みの試合が行われるのであった。もちろん審査員の主観も入っている。審査員が、これが一番強くて、多分この人が……と思ったのならば、その通りの結果が出るように順番を作るのだ。


 もちろん予定外の結果もあるだろうが、そっちはそっちで予定外を作ればいいだけだ。


「クラン・ヒマリア対サンウェン・リルトーニア」

「クラン様ー!」

「サンウェン様ー! 頑張ってくださーい!!」


 昨日までとは状況が明らかに違うわ。一体何があったのかしら?


「サンウェン様、何分の試合をお望みで?」

「15分だ」

「かしこまりました」


 あら? わたくしが強い前提で話が進んでしまったような……気のせいよね。

 カンカンカンカンカンカン。

 ときどき、カンッ。

 小気味いい音が続いている。

 静かになったわ。どうしたのでしょう?


 どうしたも何も、このようないい戦いは静かに見て、多くを学ぶべきである。


 15分後。

 カンッ!

 その一撃で終わった。


 もちろん、この一撃の前くらいから罠は準備しておいたのだけれどね。


 審査員は驚いた。記録を控えようと、時計を見たら、ジャスト15分であったからである。そして、恐れた。クラン・ヒマリアを。


「流石ですわ! クラン様!」

「流石です!」


 歓声が今日はある。悪い気はしないわ。そう思うのであった。

 はじめはあんなにいらないと思っていたのに……


 その他にもサンウェン様とヨハン様の戦い。


「サンウェン様ー!」

「ヨハン様ー!」


 どっちかっていうと、サンウェン様への応援が多そうね。

 ソラレーラとユシエルお兄様の戦いもあった。


「ソラレーラ様ー!」


 ユシエルお兄様よりはソラレーラの方が声援をもらっていたわ。まあソラレーラは男子にも女子にも応援される一方、ユシエルお兄様は女子にしか応援されないもの。

 応援が少ない……流石家族ですわね。同じですわ。


 他にもその他の人の試合もあり、


 わたくしが1位。サンウェン様が2位。ヨハン様が3位。ユーリお兄様が4位、ソラレーラが5位、そしてその他だった。


「サンウェン様、これで問題ないかしら?」

「あぁ、十分だ。後はアイツに勝ってくれ……」

「名前はなんといいますの?」

「ゼノイド・ガステリア」

「そうなのね。ところで、サンウェン様は今回2位になったことで評判が落ちたりしないのかしら?」

「しない」

「そうなのですか? わたくしに一個も勝てないというのは評判を落とすに値すると思うのですが……」

「公爵令嬢よりも伯爵令息に負けるほうが痛い」

「わたくしは令嬢、彼は令息なのでしょう? そこは関係ないの?」

「ない」


 そして、お前はもう例外と扱われている。

 サンウェン様が何か言ったようだったが、聞こえなかった。


 思ったよりも早く試合が終わり、昼からは暇になった。

 ちなみに授業はない。明日から再開されるわ。そして、月曜日からジャネル皇国に旅立つ。


 わたくしは公爵家に帰っていた。


「お父様」

「父上」


 ユーリお兄様もいるし、


「父上」


 エステルお兄様もいる。

 エステルお兄様はなぜいるのでしょうか?


「父上、今度ジャネル皇国に行くことになりました」

「わたくしも同じく」

「聞いておる。そしてクラン、お前は魔術でも剣でも一位だったのだろう? 凄いぞ!」

「あのー……ユーリお兄様は?」

「あ……ユーリももちろん凄い。我が家から20人……いや、18人の中から2人も出てくれるとは!本当にうれしい!」

「で、父上、なぜ私は呼ばれたのですか?」


 エステルお兄様が聞いた。


「もちろんお祝いは全員で行うものだ!」


 エステルお兄様……お気の毒に……


「というわけで今日は祝いだ! クラン、ユーリは明日から旅の準備をしてくれればよい」

「「分かりました」」


 そして、どんちゃん騒ぎ……には勿論ならないささやかなお祝いが行われたのであった。

 お母様は……忙しく、今はいない。


 わたくしとユーリお兄様は、土曜日に、寮にないものから準備をした後、日曜日の朝、学園に向かった。もちろん、荷造りを進めるためである。


「これとこれがあれば、まあいいんじゃないかしら?」

「駄目です! 公爵令嬢ともあろうお方がそれだけしか荷物を持たないなんて! これもこれもこれもこれもこれもこれもこれもこれも! 持って行っていただきます!」

「そんなにいらないわ」

「お嬢様ではなく私が持つんですから問題ないのです!」

「いえ……あなたはメイドなのだからあなたが運ぶ必要は無いわよ?」

「いいえ! 私が持ちます! お嬢様には任せられません!」

「ええぇ?」


 そんな感じで順調に準備は進むのであった。

 うーん……順調、なのかしら、これ?


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