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51.クランは、交流戦というものを初めて知る


 水曜日の放課後。

 メリーナ様がいない学校生活を満喫していたところに、サンウェン様が爆弾発言を言ってきた。


「もうすぐ、交流戦がある。この学園の……ひいてはこの国の威信を高める重要な交流戦だ。皆にも予選は出てもらう」

「「「「はい」」」」

「聞いてませんわよ」


 一体何ですの?


「クランか、一体何だ?」

「生徒会に入れば行事は出なくてすむのではなくて? 入るときにそうおっしゃいましたわよね? でしたら出る意味はありませんわ」

「それは、生徒会主催の行事の場合だ。そして、それに関しても今年は私がたいてい行えるから問題はない。つまり、嘘は言っていないということだ」

「そんなの詐欺ですわ」

「確かに生徒会主催の、というのをつけなかったことは謝ろう。しかし、それとこれは別だ。クランに出てもらうからな。皆も賛成だろう?」

「「「「はい」」」」


 って、ヨハン様まで。今まで突っかかれていたというのにどうして急に手のひらを返すのでしょうか? こういうときにこそサンウェン様に反対して欲しいわ。


「去年は惜しくも負けてしまったが、今年は私の名誉もかけて、戦わなければならない。王宮の思惑も絡んでいて申し訳ないが、皆には是非頑張ってもらいたい」

「「「「はい」」」」

「嫌ですわ」

「「お前は黙っておけ」」


 まあ……! ヨハン様にもサンウェン様にも怒られてしまったわ。

 お二人はやはり仲がよろしいのでしょうね。


「どうしてでしょう?」

「クラン。お前は勝て。全力は見せなくていいから。そしたら褒美をやる」

「いりませんわよ。わたくしはまだ先生から貰えると言われていた報奨もまだ頂いていないのよ。さらなる報奨はいらないわ」

「では何がいい?」

「そうね……」


 生徒会を抜ける……と言おうとして、また言えなくて詰まってしまった。


「なんだ?」

「何もないわ」

「「は?」」


 サンウェン様とヨハン様がまたかぶった。本当に仲がよろしそうね。


「こいつ、貴族だよな?」

「あぁ、しかも公爵令嬢だ」

「おかしいだろ」

「うん、おかしいと思う」

「いや待てよ。もしかして公爵だから欲しいものはすべて与えられてきたのか?」

「なるほど……それはあり得るな」


「あ!」

「「何か思いついたか?」」

「えぇ、授業を休める権利というのは……」

「お前……それで予選も参加しないようにしようなどと目論んでいるだろう?」

「あら、ばれました? まあ実際はできないのですけどね」

「うーむ、ではこうすればいいのではないか?」


 サンウェン様が何かを思いついたよう。


「何かしら?」

「他学年の授業に参加できる」

「なるほど。サボらせはしない、と」


 意地ぎたないわね。


「そういうことだ」


 そうね……


「面白そうだわ。それならばここにいるみなさんとも戦えたりするのでしょう? より上のことを学べるのなら……退屈にはなりそうにないわね」

「クラン! だったらぜひ私のところに来てね!」


 そうアナが答える。


「えぇ、メリーナ様がいないときに行きますわ」

「え、じゃあわたくしも!」

「もちろんですわ!」


「で、これで本当にいいのですか?」

「いいが……交流戦でお前が全試合で勝ち、全体としても勝った場合だがな」

「それでいいですわ。最近またつまらなくなってきたもの。まあちょうどよいでしょう」


 そう言うクランを恐ろしげに見る目が10個、あった。


 その後、会議は終了し、寮に向かう。


 その途中に、

 ユシエルお兄様がいた。


「どうされました?」

「交流戦の予選をお前がサボらないかを確認しに来た」

「わたくしがもしやると言っても本番では逃げるかもしれませんわよ?」

「いいや、それはない。兄上からお前が義理堅いことは聞いている」

「まあ心配しなくてもいいわよ。わたくしは出場しますから」

「え? 本当か?」


 なぜそれを聞いてきたのにそんなに驚ろいているのかしら?


「そうですわよ」

「なんだ、じゃあ無駄足だったか。で、一体なぜ参加する気になった?」

「サンウェン様が……」

「第一王子が?」

「わたくしは本気を出さなくていいからとりあえず勝て、と。そして交流戦でも勝てた暁には、他学年での授業を受けられるように取り計らうと言ってくれましたので」

「それで受けた、と」

「えぇ、そうですわ」

「第一王子か……なかなかやるではないか」

「お兄様も出ますわよね?」

「もちろんだ」

「それはよかったわ。一人では悲しいもの。ところで、どこと戦うのかしら? そしてそこは強いの?」


 今まで疑問に思っていたことを聞いてみた。


「知らないのか!?」

「えぇ、だって聞いていませんもの」

「そうか、では説明しよう」


 戦うのはジャネル皇国の貴族だけしか通えないジャネル学園。

 そして、去年まで5年間、わが校は負け続けているのだという。それもサンウェン様と同学年の伯爵に。

 だが、今年が最後だから負けるわけにはいかない。そこでわたくしの名がサンウェン様からあがったのだという。

 サンウェン様がエステルお兄様に頼み、エステルお兄様がユシエルお兄様に頼み……わたくしにサンウェン様とユシエルお兄様からやってきたというわけらしいわ。


「まあ安心した。では頑張って倒してくれ。もちろん勝ってくれよな?」


 はぁ……


 一体どうしてこんなことに……


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