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48.クランは、メリーナに対策を講じる


 メリーナ様が編入してきた。そういう噂は月曜日の朝の時点から爆発的に広まっていたわ。


 それはそうよね。寮にはいたらしいもの。そして流石メリーナ様ね。聖女というのは人の興味を集めやすそうね。

 そう言えば……わたくしはメリーナ様に聖女を疑われているのでした。このまま生活していても問題なさそうですけど、このままだったら他の聖女を呼んでくるでしょうね。

 では、隠しておきませんと。サンウェン様にお願いしない……昼食の時でいいわよね。


 あ、でも時々は聖女が必要になることもあるのかしら? でしたら残しておいたほうがいいでしょうか。そうね……お母様になら使いたいわ。


 でしたら「約束」は非常時には使えるものにしておかないといけないわね。どういうふうにしましょう?


 そう考えながら、教室に入ると、


「「おはようございます!」」


 また挨拶がきた。


「おはようございます……」


 いい加減わたくしに挨拶をするのをやめてもらえないかしら?

 流石に人数は減ってきているようには見えるけど。


「おはよう、クラン様!」


 教室に踏み出そうとしたら、後ろから誰かに声をかけられた。

 この声は……


「メリーナ様……」

「ちゃんと眠れた?」

「眠れましたが……話し方、変えたのね」

「だって今はわたしを監視する人はいないもの。聖女を取り繕う必要はないわ」

「しかし評判というものは伝わるものでは?」

「いいのよ気にしないで。わたしはアナと過ごしたいし、あなたが……である証拠を掴みたいだけだもの」


 どうやらメリーナ様なりに気を遣って、聖女の部分は隠してくれたらしい。わざわざ気を回してくれる理由が分からないわ。わたくしが聖女かもしれないと広まったほうがやりやすそうですのに。

 ……いえ、きっとだれも信じないはずよ。きっと。ですからそんな馬鹿げたことを言うのをやめたのでしょう。けっして恩を売るとかは考えていないはずよね。


「そう、わたくしは違うのだから、はやく離れてくださる?」

「嫌だ。まだあなたからは感じるもの。ついでに感じなくさせるメカニズムも探し出さないと」

「はあ……。頑張りなさい」


 どうせ無理でしょうけど。わたくしも知りませんもの。強いて言うなら、神々でしょうね。


「もちろん頑張るよ」

「ではまたね。教室の中へは入らないでね」

「もちろん!」


 その後、教室の前で立ち呆ける聖女メリーナの姿が見られたそう。


 噂を聞いて、もしかして! と思ってしまったのよね。この学園の噂の通りがよくて助かったわ。


 急いで駆け付けて、


「(この教室は)入っていいのでしょう?」

「うん」


 そして、メリーナ様は無事に教室に入れたみたいだわ。よかったよかった。

 まあ、メリーナ様は戸惑っていたけどね。それくらいは仕方ないでしょう。


 それにしても……あれも「約束」のうちになるのね。もっと気を付けないと。最近少し気が緩んでいるわ。


「クラン様!」


 昼食時。

 さて、生徒会室に行きましょうか、と重い腰を上げたところ、メリーナ様がやってきた。


「何かしら? わたくしは忙しいのよ」

「知ってます。ぜひお供させていただけないかな、って」

「無理よ」

「分かってますよ。わたしはクラン様にまだ感じるのを確認したあと、変化がなかったかを見るために来たんだから。これって酷いよね。聖女の居場所は丸わかりじゃない。わたしたちも自由にしたいね」

「わたくしは違うはずよね? なぜ仲間に入れられているのかしら?」

「またまた~。分かっているくせに」

「用事はそれだけ? だったらもう行くわ」

「うん。またね」


 そして生徒会室に着いた。


「いらっしゃ~い」


 アナはいつも通りだ。


「こんにちは」

「クランか。はやく座れ」

「はい……」

「今日は、メリーナ聖女について話したいと思う」

「え?」


 驚いたわ。何か話し合う必要があるほどやらかしたりしたのかしら?


「メリーナ聖女が来たのは皆も知っているだろう?」


 皆、それぞれ頷く。


「しかし、彼女は底が知れない。一体何の理由で通い始めたのか……建前はアナと一緒に通いたいということになっているが、それだけではないだろう」


 あら? そんなことだったの?


「でしたら聖女を探すという任務を達成するためですわ」

「なぜお前が知っている?」

「まあいろいろありまして」

「クランってメリーナと仲良くなったのね!」


 黙っていたアナもようやく口を開いた。


「あぁ……そういうことか」


 サンウェン様は察してくれたみたい。流石だわ。


「詳細についてはあとでお伝えしますわ」

「分かった。あとでクランは残れ」

「はい」


 そして昼食もなんだかんだ終わり、皆帰った。残っているのはわたくしとサンウェン様だけだ。


「メリーナ様のことについてですが、わたくしが聖女である証拠を掴むために残っているのです」

「なるほど。疑われているんだな?」

「えぇ。今も聖女の気配が出ているようで。ですからまた『約束』していただけません?」

「分かった。どういう内容だ?」

「明日から、わたくし、クラン・ヒマリアが必要だと思ったとき以外、聖女ではない普通の存在として存在する。こういうのでどうでしょうか?」

「ふむ。まあいい、『約束』しよう。しかしなぜ明日から?」

「先ほどメリーナ様がまたいらっしゃって、わたくしに聖女の存在を感知して帰っていったのです。だから、すぐにしていれば生徒会に原因があると見られてしまうもの。それで原因が分かられたら聖女にならなくてはいけないわ。それは絶対に嫌だもの」

「理解した。頑張って隠せ。……国のためには隠さないでほしいがな。力のある聖女が生まれたというのは国の威信を上げることにもなるし」

「そんなことはどうでもいいわ」

「だろうな。ではまた」


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