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47.メリーナは、とうとう聖女を見つけ出す

ここのところは、クラン視点でする予定はありません。そのところ、よろしくお願いします。

あと、少し長いです


 わたしたち使節団は、順調……いや、猛スピードですすみ、その日は徹夜で進んだ。

 王都から十分に離れたとき、ようやくというか……再び聖女の気配を感じた。


「皆さん、1日2日、ここで待っておいてください。ええと……サズザン、一緒についてきて。王都に戻るわ」

「それが必要なことなのですか?」

「えぇ」

「ではそのとおりに致します。あと……護衛のものには観光させてもよろしいでしょうか?」

「いいわよ。ただし、節度は守ってね」

「はい。しかと言いつけておきます」

「ではそういうことで。サズザン、今からでも大丈夫?」

「もちろんでございます」

「では行きましょうか」


 わたしは再び王都に向かった。


「ここがフィメイア学園なのね」


 守衛の人に無理を言って開けてもらい、中に入った。はじめは渋っていた守衛も、聖女に配られている印鑑を見せたところ一発で通れた。

 そして、寮も同じように中に入り……起こしたせいで怒られた……聖女の気配を感じるところまで歩いた。

 サズザンは入り口に置いてきた。

 女子寮にサズザンを入れるわけにはいかないからね。仕方がない。


 そして、その気配が感じる部屋の扉の前で、膝を抱えて寝てしまった。……扉を防いでいたのは幸いだった。


「どうしたの? というか誰?」


 誰かに起こされた。


「あ……すみません。邪魔でしたよね」

「大丈夫なの?」

「えぇ、心配してくださりありがとうございます」

「そう、それは良かったわ」


 しばらくたった。


「あら? メリーナ様? いえ、わたくしの目がおかしくなってしまったのかしら?」


 ああ、やっぱりこの部屋の持ち主はクラン様だったんだね。


「いいえ、おかしくなっていませんよ。わたくしはメリーナです」

「……どうしてここにいるのかしら?」

「あなたが聖女であることを確かめるためですよ。今、わたくしはあなたから強大な聖女の存在を感じ取っています。あなたが聖女なのでしょう?」

「ええと、それならなんで王宮のときにそれを言わなかったのですか?」

「それは……感じなかったからよ」

「そういうことですよ。わたくしは聖女ではありません」

「でもわたくしは今あなたから聖女の存在を感知している」

「気の所為ですわ」

「それが気の所為ならばわたくしが感じれなかったことも気の所為ですよ。そしたらあなたが聖女であることに何の疑問も抱かないですみます」

「談話室に行きましょう」

「えぇ」


 そういうことになった。


「では改めて。クラン様、あなたは聖女よね?」

「違いますわ。王宮でも治癒魔術は使えなかったもの」

「お願いします。わたくしにはその証言が必要なのです」

「嫌よ。わたくしにあなたの事情は関係ないわ」


 関係あるはずだよね。


「わたしの事情は関係ない……ね。聖女であることは否定しないのね」

「あら? もちろんわたくしは聖女ではありませんわ。はじめに申した通りなのでてっきり理解してくれているのだと思っていたわ。違うのね」

「えぇ」

「ではわたくしが聖女でないことはどうやって証明すればいいのでしょう?」


 そう来たか……うーん、治癒魔法を使ってもらうのはもう参考にならないしなぁ。

 そうだ!


「そうね……フィメイア学園でわたくしが感知した聖女を見つけてもらう、と言うのはどうでしょうか?」

「無理ですわね。大体、勘違いではないのですか? そして、それが勘違いじゃないとしても、メリーナ様が見つけられないはずがありませんわよね?」

「ですからわたくしはあなたを見つけたのです」


 なんで分からないの? 分かりたくないのかもしれないだろうけど、ヒマリア家って優秀な人が多い、って聞いていたんだけど……


「それ以外にないのですか?」

「治癒魔術を唱えて欲しいところですが…王宮の時と同じように反応されないのであれば意味がありませんものね……。では、他の聖女に見せるというのはどうでしょうか?」

「どういうことかしら?」

「クラン様はあくまでもわたしの勘違いだと言っているのですよね? でしたら他の聖女の方に見せて皆が感じたのであれば、それは勘違いとはなりませんわ。そのためには大神殿に来て貰う必要がありますが……」


 こうなったら最終手段だよね。


「脅し……ですか」

「さあ、聖女で無いのなら何も問題に感じないはずよ」

「えぇ、そうですわね」

「で、どういたしますか? わたくしはあくまでもそうやって身の潔白を証明する手立てがあるとお伝えしただけですわ」

「そうですわね。行ってもいいかもしれませんわ。しかし、あまりこの国を離れたくないのです」


 その気持ちは……理解できちゃうなぁ。


「そうですか……では聖女をこちらに連れてきましょうか?」

「いえ、聖女様のお手を煩わすことではありませんわ。ですから、わたくしに聖女を感じているのは気の所為だと思ってはやく帰っていただけないかしら?」

「そうですね……ですがわたくしはやはり聖女を見つけるまで帰りませんわ」

「メリーナ様でも見つけられないのでしょう? そしたらいつまでたっても大神殿に戻れませんわ」

「わたしは構いませんわ。アナと一緒に生活できるんですもの」

「しかし……それでは大聖女が遠のきますわよ」

「ここでの任務失敗のほうが遠のきますわ。ここにいても仕事は出来るもの。問題ないわ」


 あれ? クラン様をそう思わせるために言っただけだけど……、言っているうちに本当にそうなってもいいかもしれないな……


「そう、それなら別にいいんじゃないかしら?」


 あ、対象から許可がもらえた。


「でしたら、王宮に連絡してきますね。わたしもできることなら学園に通ってみたいのですし……」

「そう、転入はきっと大丈夫よ」




「サズザン、王宮に連絡を頼んでもいい?」

「畏まりました」


 そして、王宮に向かった。


「メリーナです」

「えっ? 聖女様? あ、いえ、聞いています」


 衛兵はついさっき聞いたばかりで、もう少し遅れてくるのかと思っていた。


「これはメリーナ聖女。本日はどんなご要件で? 使節はもう帰ったかと存じますが……」


 宰相様と話をすることになった。


「フィメイア学園に通いたいと思いまして…」

「メリーナ聖女が、ですか?」


 うん、虚を突くことができたみたい。なんとなく嬉しいな。


「えぇ、妹もいることですし、ここに来た目的である任務もぜひ遂行したいので」

「しかし、大神殿のほうが聖女様にとっては学べることが多いのでは?」

「学べる内容は別にいいです。わたしは、妹と学園生活を送り、任務を遂行したいだけですから」

「そうですか。では編入手続きをしておいたほうがいいですね」


 こんなに簡単に話が進むの?


「ええ。寮で生活するつもりよ。そちらも大丈夫?」

「問題ありません」

「普通の部屋でお願いするわ」

「普通の……ですか? 出来なくはありませんが……」

「わたしはもともと平民よ。問題ないわ。それどころか逆に気が楽でいいわ」

「そうですか。それならそう手配いたしましょう。そうですね。月曜からでも構いませんか?」

「構わないわ。急だったのにありがとうございます」


 メリーナが去った後で。


 宰相は少し戸惑っていた。

 聖女様が、我が国の学園に通う……。警備に問題は無いはずだが、万が一があったらどうしようか? そして聖女様と生活する生徒の方は大丈夫なのだろうか?

 思いやりのある宰相であった。


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