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46.メリーナは、聖女に対し、策を練る

 


 入口から人がやってきた気配がした。


「ただ今連れてきました」


 しっかりとした男の人の声がして……その後ろに……


「アナ!」

「メリーナ!」


 双子の妹、アナがいた。

 何年ぶりの再開だろう! わたしはこっちには戻れなくて、いつもアナが来てくれていたけど……多分、3年ぶりくらい。

 懐かしいなぁ。髪の毛が伸びていてちょっと分からなかった。



 無事に、会談は終わった。だけど、個人的にクラン様には興味がある。一回しか会えないのはもったいない。懐かしさの秘密も知りたいし。


「クラン様、今度お時間いただけませんか?」

「今度、ですか?」

「はい。ぜひ、クラン様の話を聞いてみたいと思いましたの!」

「そうなのですか?」

「ええ、明日、などはどうでしょうか?」

「明日……分かりました、放課後、また参ります」


 結果、明日の放課後、また来てもらえることになった。

 ちょっと残念なのは、喜んで、みたいな雰囲気じゃなかったことくらい。まあ理由を具体的に言わなかったせい、というのもあるかもしれないけど……


 なんでだろうと考えて、陛下の発言が思い浮かんだ。


「お主が聖女であったら、すべての辻褄があったというのに」


 もし、クラン様が聖女であったのなら。

 その場合、クラン様は、聖女であることを隠していることになる。

 つまり、わたしとはあまり会いたくはないということ。


 それだったら、私と会うのにしぶしぶ、といったふうなのも理解できる。

 ……確かに、辻褄が合いすぎる。


 まさか、ね。


 だけど、それを否定するものは、治癒魔法が使えなかったことくらいだけだ。それよりは、他の根拠が、確固たる物すぎるよね。


 夜は、あまり寝付けなかった。




 そして、次の日になった。


「あ、クラン様! お待ちしていましたわ!」


 王宮に少しはいるところで、わたしはクラン様を待っていた。

 もちろん、はやく謎を解きたくて、待ち伏せしていたのだった。


「メリーナ様……。お迎えに来ていただきありがとうございます」

「いいえー。では行きましょうか」


 さあ、はやく話し合いをしましょう!


 そして、1つの部屋に到着した。


「クラン様、どうぞお入りください」

「では……失礼致します」


「今日は来ていただき誠にありがとうございます」

「こちらこそ、お呼びいただきありがとうございます」


 お互い礼を交わす。


「本日はどういった御用で?」

「クラン様、堅苦しくなくていいですわよ。わたくしももとは平民ですし。あと、人払いは済ませていますから」

「そうですか。できるだけ気をつけますわ」

「そんな感じで大丈夫よ。今日はね、アナのことをいろいろ聞きたいの」


 まずは本題からずらさないとね。


「アナの話ね……。実はわたくしはアナと関わり始めたのはここ2,3週間のことなのよね。だからそんなに話せるわけではないわ」

「そうなの? ええと……二人は生徒会で関わっているのですよね? クラン様はどういう経緯で入ったの?」

「あれは……何でしょうか。脅された、といっても間違いではないような気がしますわ」

「一体何があったのよ……」

「わたくしが逃げられないように追い詰めてきたのよ。教室からはやく帰って逃げた日の次の日は寮の前で待ち伏せされたり」

「まあ……だれがそんなことを?」

「サンウェン様よ」

「それは……」


 今の話ってサンウェン様の話だよね? あんなしっかりとした人が脅す? 何かの間違いじゃないの?

 ……信じられない。


 まあ聞かないほうが良い話題だろうな。話を変えよう。


「クラン様の子供の頃とか聞いてみたいですわ」

「アナの話はいいのですか?」

「えぇ、それよりもあなたに興味を持ったわ」


 もともとの興味、だけれど。

 聖女である確信を得られるといいけど……


「そうですわね……。神殿にいたとき、孤児院が襲撃を受けたことがあったのよ」

「それは少し物騒な話ね」


 少し、怯えてしまった。

 そう、これはまるで、今代の大聖女のよう。

 ……偶然だよね?

 だけれど、なぁ……

 やっぱりクラン様って聖女だったりしないのかな?


 そう考えたとき、とあることに思い至った。

 この懐かしい感じは一度クラン様の魔力を感じていたことで生まれたのではないかな。どうやって消したのかは分からないし、どうして昨日治癒が使えなかったのかもわからないけれど。

 けれど、何かがこれは正しいと告げている。


「でしょう? 結局3人ほど死んでしまったのよ」

「3人なら少ない方では?」

「いえ、全員守れなかったのよ。わたくしが弱かったがゆえに」


 また、怯えを感じた。しかし、心地よくもあった。


「クラン様が戦ったのですね。素晴らしいですわ!」

「……。もう帰ってもいいかしら?」


 もしかして。わたしとの会話、つまらなかった?

 じゃあ一旦話を変えないと!


「お待ち下さい。今度はわたくしの話も致します」

「過去ではなく現在(いま)の話で申し訳ないんですが、まあわたくしは今大聖女を目指しています」

「大聖女?」

「大聖女とは……」

「いえ、大聖女は知っています。しかし、大聖女になるのは非常に難しいと聞いたことがありますわ」

「えぇ、そのとおりです。しかし、わたくしは平民のため、頑張ることに決めたのです」


 クラン様が何も言ってくれないし、同情を誘って聖女であることを言ってもらう方向に変えてみた。できなさそうな気はするけど。試してみたら意外とと簡単じゃん、ってなったりするかも。


「そうですか……」


 残念だ。やっぱり失敗してしまった。

 仕方ない、これ以上話しても教えてくれないだろうし、一旦引こう。

 任務に関しては……いちおうの目星は着いたのだし、もう一度任せてもらえるよう図ろう。大聖女の夢は、絶対に諦めないんだから!


「では、帰ってもよろしいでしょうか?」

「えぇ、いいですよ。楽しかったです」

「こちらこそ。またお会いしましょう」


 これは、紛れもない本心だった。


 この後のことを考えた結果。

 メリーナは、決心した。


「皆さん、一度大聖堂に戻りましょう。少し情報を集めてからのほうがいいと思います」

「……分かりました」


 皆、渋々とした感じではあるものの、メリーナの指示だからと頷く。


 そうして、わたしたちは、軽い報告をした後、王都を発つことにした。


明日も、メリーナ視点です。

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