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39.クランは魔物を一掃する


 学校に到着し、校舎の中に入ろうとしたのだけれど……


「クラン! 良いところに来た!」


 確か……セルアン……先生よね? どうしたのかしら? 


「どうされました?」

「魔物が大量発生している、現場の応援に行ってくれ、報酬はあとで準備する」


 報酬……ね……


「分かりました。場所はどこでしょうか?」

「この前課外授業で行った、慣れの森だ」

「授業は……」

「休んでも良い」

「了解いたしました。では素晴らしい報酬、お待ちしておりますね」


「公爵令嬢が楽しみにする報酬? 一体何をすればいいのだ? 恐ろしい……。まあ頑張るしかねえが……」



 さて、この前聖女の魔術を使ったところね。何か関係があるのでしょうか? 


「学園から手伝いに来ました、クラン・ヒマリアですわ」

「お前も来たのか」


 サンウェン様もいた。よくみると、生徒会全員いらっしゃいますね。


「嬢ちゃんも助っ人か? 助かるよ」


 わたくしは何もしなくて良さそうな気がするのですが……まあ兵士の方には受け入れられたので問題ないでしょう。


「それでどういう状況なのですか?」

「魔物を討伐しなければならないという状況だ」

「簡単ですわね」

「そうだろう。それで、お前の実力をせっかく見れる機会だし、私たちは手を出さないでおこうと思うのだが……」

「それが生徒会のすることでしょうか?」

「違うな。ただ、今は偶然生徒会全員が揃っているだけで、生徒会としての活動ではない。だから問題ないのだ」


 なんですかそれは。屁理屈ですか? 


「お断りします」

「いいだろ、簡単なことなのだから」

「ですから簡単なことなのにわざわざわたくしが入る必要が無いのですよ」

「ほう」

「さっきから何でしょうか?」

「いいや。何でもない。……ではどうしようか。やってくれれば何か報奨を出そう」

「報奨? 報酬ならセルアン先生からいただくので問題ないですわ」

「報奨だ。生徒会をやめないのだったらできる限り願いを叶えよう」

「物ではなくても良いのですよね?」

「あぁ」

「でしたら仕方ありません。行って差し上げましょう」


 完全に上から目線で答える。

 あら、もしかしてこれ、サンウェン様の気分が害されたら訴えられるかもしれないのよね? 大丈夫かしら……まあ、わたくしは()()()()やっているのですから大丈夫でしょう。事実だもの。


「兵士の皆さん、下がっていただいても構いませんわ。ここはわたくし一人で行います」

「え? そんなの……」

「問題ありませんわ。万が一のために戦闘態勢であってほしいとは思うわ」

「それなら……。かしこまりました」

「ありがとう」


 さぁて、では行いましょうか。

 ここらへん一帯にいる。一般人が1人では厳しい魔物は倒しちゃっていいわよね。


「火よ、焼き尽くせ」

「水よ、貫け」

「氷よ、動きを止めろ」

「火よ、焼き尽くせ」


 楽しいわね。それでも一撃で倒れてしまっているのが唯一残念なことね。

 少しずつ進んでいき、木曜日に魔術を放ってしまった所も通り過ぎた。


 ……確かにこれは大量発生と言えるわね。


 倒しても倒してもまた出てくるわ。

 そして、わたくしの血を狙ってでしょうか? 魔物はこちらに近づいてくるので省エネにもなって最高だわ! 


「火よ、焼き尽くせ」


 あら? これってラーネカウティスクではないかしら? またここまで来たのかしら? ……まさかそんなバカなことをするわけないわよね。それならきっと気の所為だわ!

 そして、恐る恐る後ろを見ると……わたくしが倒したあとである後ろの方にはその倒した魔物を処分するため、多くの兵士たちがいる。

 あら? もしかして実力を出しすぎたかしら? 

 それで注目されちゃっているのなら……バカなのはわたくしもだったようだわ。



 そして、更に進むと、ここらへんから植物の元気がなさそうな気がしてきた。


「ここまででいいでしょうか?」

「あぁ、いいぞ。助かった」

「嬢ちゃん凄えな。ラーネカウティスクを一撃だぞ」

「え? いつ?」

「少し前で。気付かなかったのか?」

「気づきませんでした! さすが隊長です!」


 隊長と呼ばれた人とその隊員が話しているようだけど……気の所為ではないみたいね。


「それで、サンウェン様、なにか言うことはございませんか?」

「すまなかった。こんなふうに葬られるくらいであったのなら、兵士の皆の訓練に使うべきだった」


 頭は回るようね。


「なにか面白いお願いはないでしょうか……。特に今は何も無いので、今度何処かで叶えてもらうことに致します」

「そうか。それなら今はいい」


「お前……本当にすごかったんだな」


 ヨハン様が声をかけてきた。……珍しいこともあるのね。


「あれくらい生徒会の一員であるヨハン様にも余裕でしょう?」

「え……どうだろうなぁ」

「あら? いつも自信満々というふうでいらっしゃいますのに……。どうされました?」

「いや……何でもない。ただ、お前が異常なことを知れて、サンウェン様がなんで連れてきたのかがわかっただけ……それだけだよ……俺、負けるかもな」


 一体何をぶつぶつ言っていらっしゃるのでしょうね。まあいいわ。


「クラン! すごかったわよ!」

「凄いね!」


 ソラレーラにもアナにも声をかけられた。

 この二人なら、褒められても悪い気がしないわ。どうしてでしょうね? 



 そして神殿に帰った神官長は、間に合わず、もう使者は再び旅立った後であった。神官長以下のものも、これをそこまで重要だと捉えなかったため、神官長に報告はしなかった。

 そのため、神官長はこの出来事を知らない。そういうことはつまり、クランの実力を知らないということであって、これでクランを諦めてくれるのであった。


 そして、神官長は、足跡を探しに出かけた。


 もちろん、大量の兵士がいたため、まともな足跡が見つかるはずもなく、神官長のこの捜査は空振りになるのであった。

 そして、神官長は、こういうところはクランに都合よく鈍く、大量の足跡について、誰かに聞くということもしなかったのだそう。


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