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33.クランは意図せず、墓穴を掘る


 朝になった。急がないと。

 昨日は結局野宿した。そして今が朝なのだけど……

 まだ騒がしい気がするわ。勘だけど。

 しかし、そこまで外れているような気はしないのよね。


 学園に向かう。校門は開いていた。

 いつもより少し遅いかしら? まあ一度支度をしに寮に戻りましょう。


「今戻りましたわ」

「おかえりなさいませ、お嬢様。今日は家に帰るということでよろしいですか?」


 家か……

 そうね、問題も起こしてしまったことですし、逃れるためにも一旦は家に帰るべきでしょう。


 しかし、今帰ったら……サリアもついてくるのよね。告げ口しそうで怖いわ。

 どちらを選びましょう? 馬車でこってり怒られればなんとかなるかしら?

 けれど家に帰って何をしましょう?

 今読みたいのは神々や聖女に関する本よね。公爵家にあまり置いてあるとは思えないわ。


「そうね。今日はいいわ。明日帰ることにしますわ」

「かしこまりました」


 了承も取れたことだし、さっそく教室に行きましょうか。


「では、行ってくるわね」

「行ってらっしゃいませ」



「「おはようございます!」」


 まだこの習慣続いているのかしら? いい加減やめてほしいわ。返事をしなくてもいいんじゃないでしょうか? いえ、怒られるわね。公爵家の品位を落とすだとか何とかいわれて。


「おはようございます……」


 そう、結局は返すほかなかった。


「クラン様!」


 ノアか……じゃあ無視してもいいでしょうか? 怒るわけがないわよね。

 そう思い、無言でいると、


「聖女様の噂、聞きました?」


 そんなことを聞いてきた。

 聖女様の噂? 知っているわけがないわよ。

「はぁ、知らないわよ」

「昨日、リルト―ニア森の慣れの森のところに、聖女様が出たんですって!」

「……」

「街の人がね、まばゆい光を見たんだって」

「あなた……寮暮らしよね? なぜそんな噂話をもう知っているの?」


 心当たりがありすぎた。しかし、ノアがそれを知るまでの心当たりはなかった。


「もちろん、一回外に出たにきまってますよ!」


 それは決まっていることなのかしら? わたくしは知らなかったのだけど?


「そう、じゃあまたね」

「ひえぇ! 何で!」


 無視を貫き通した。



 昼食。

 生徒会室に重い足を引きずりながら行くと、もう皆さんそろっていた。


「クランか。早く座れ」

「はい……」

「今日は面白い議題があるぞ」

「本当か!?」


 何やら楽しげにしている男たち。

 そんなことよりわたくしは戦々恐々していた。サンウェン様が何やら恐ろしいことを言い出したわ……

 昨日から今日で変わっていることは……あの噂しか心当たりがないんですが……。まさかそんなわけありませんよね?


「皆も噂を聞いたりしたのではないか? 昨日リルト―ニア森ででた聖女様の話である」

「聞いたことがありますが……あれって本当に聖女様の仕業なのでしょうか?」


 思わず口を挟んでしまった。


「どうした? お前が噂話を知っているなんて。そして口を挟んでくるなんて」


 どうしてかと言われましても……生徒会が否定すればあれはなかったことになるのではないかと考えたからなのですが……。まあ教えませんけどね。


「わたくしもわたくしなりに伝手はあるのですよ」

「そういえばお前。昨日は寮に帰らなかったらしいな。もしかして学園外にいたから何かを知っているとかあるのか?」


 なかなか鋭いご意見だわ。的を射ているもの。


「どうでしょうね?」

「そうか、しらを切るんだな。では後で話し合いをしようか?」

「いいえ、結構です。これからは口を挟まないので話は進めていただいて結構ですわよ」

「あやしいな。まあいい。そこで神殿から要請が来た。この学校に、魔術、剣術が優れているもののうち、昨日帰っていないものを伝えよ、と」


 なぜかサンウェン様ににらまれているわ。どうしたのでしょう?

 って、サンウェン様は今なんとおっしゃりました?

 この学校に魔術が優れているもののうち、昨日帰っていないもの? わたくしもまさか条件に当てはまったりしませんよね?


「それが聖女様と関係があるのですか?」

「そうらしい。いわく、聖女様と一緒にいた人物である可能性が高いそうだ」

「魔術に優れているもの、ですか……具体的にはどれくらいでしょうか?」

「具体的には? コンクルートを一撃で倒せるくらいだ。そこで、お前たちの学年にそれくらい強い奴はおらんか? ちなみに私の学年では私くらいだが、私は昨日寮にいたから違う」


 コンクルート、ね。そういえば昨日倒した魔物の中にいたかもしれないわ。


「私の学年にも私以外いないな。私は寮にいたから違う」

「わたしはわたしの他にはユーリ様くらいしかいないわよ。多分、寮にいたはずだから0ね」

「わたくしも同じですわ」

「私も同じだな」


 上から、ヨハン、アナ、ソラレーラ、クロバート……よね、きっと。ようやく名前を覚えられてきたわ。


「わたくしの学年はいませんわ」

「誰もか?」

「えぇ」


 なぜサンウェン様はしつこく聞いてくるのでしょう?


「「「「「おあなたは含まれるだろ(わよね)!」」」」」


 皆に文句を言われてしまったわ。


「そりゃあやろうとしたらできまますわよ。けれど普段からする必要はありませんわ」

「はぁ……もういい。とりあえずはクランだけ伝えておく」


 あ、サンウェン様がわたくしが朝に帰ってきたのを知っていた理由がわかりましたわ。このためでしたのね。


「どうせ関係ないでしょうしご勝手にどうぞ」


 嘘をついてしまったわ。心、ごめんなさいね。



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