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31.クランはまさかの実験に成功してしまう


 やはり話は授業の最後まで続いた。

 神殿にいたときよりも多くを今回教わっているのはなぜでしょうか? こういうものは神殿でこそ教えるべきでなくて?

 疑問も多いけど、まあいい時間だった。


 さて、寮に戻りましょうか。考えることがいっぱいよ。


 まず、土がわたくしの目の前に現れた理由。

 これはわたくしかノアかが聖女だというのが濃厚だけれど、神々は魔力を持った者に聖女の力を与えないはずよ。

 つまり、土にはまだ明かされていない秘密があるのでしょう。


 聖女ねぇ。

 血に魔力が多く含まれているんでしたっけ? 魔術は使えないのに。

 そして、それを求めて魔物がやってくるのでしたっけ……


 あら?

 たしかラーネカウティスクが来たのは、わたくしの魔力のせいよね?

 似ている気がするけど……違うわよね。


 例えば、ノアが魔術を使えながらも、聖女だとしましょう。

 そしたら、あの時、土が降臨できたのは、ノアがいたから。

 そして、ラーネカウティスクがやってきたのは、ノアの血液に含まれる魔力を狙って……

 矛盾しているわ。


 では、もうひとつは考えたくはないので、土が聖女から離れていても、降臨できるとしましょう。

 そしたら、土が降臨できたのには理由がない。

 そして、ラーネカウティスクがやってきたのは、わたくしの魔力の多さを狙って。

 おかしいとは言えないけれど、それだと普段は聖女様の近くにしか降臨しない神々が、なぜわたくしの前に降りてくることにしたのかが分からないわ。


 では……仕方がないわね。わたくしが聖女だった場合を考えましょう。

 そしたら、土が降臨できたのは、わたくしの近くだから。

 そして、ラーネカウティスクがやってきたのは、わたくしの血液中の魔力を狙って。

 まぁ……おかしくはないけど……神々を呼ぶのには儀式が必要よね。ありえない……はずだわ。


 はぁ……この2点だけで考えてみましたけれど、全然わからないわね。

 他にも選択肢でもあるのかしら?


 確か、聖女であるか聖女でないかは治癒を使えるかどうかでしたっけ?

 ならば、使ってみましょう。

 場所はどこがいいかしら? そうね……この前土を呼び出した森にでも行きましょうか。


「少し出かけるわ。多分、すぐに戻るはずよ」

「かしこまりました」


 サリアが礼儀正しいメイドで助かるわ。


 さて、やってきたわよ。

 では、治癒を使いましょう……って、どうやって使えばいいのかしら?

 使い方を知りませんのにどうしましょう?

 えーと……聖女様は見かけたことはありませんけれど、傷ついた動物とかを助けられそうなイメージがあるわ。絵本でもそんな感じの扱いだったはず。


 それなら、魔物をとりあえず捕まえましょうか?


 あ、いたわ。カナミエーリという小型の魔物ね。ちょうどいいんじゃないかしら?

 確か弱点は、水。体は熱い。それにより敵に食べられるのを防ぐ魔物。まあまあ考えられているわね。


「水よ、包め」


 あらら、もう捕まえられたわ。簡単でつまらないわ。いや、今はそれはいいわ。傷をつけて、治癒をしてみるのよね。

 そう考えるとカナミエーリはちょうどよかったわ。目立つほど治癒が得意な魔物ではないもの。ラッキーね。


 とりあえず、治癒はどうしましょう? いつも通り、術を想像して、それっぽく唱えるだけでいいのかしら? まあわたくしに治癒能力はきっとないので全力でやってみましょう。そうしたら、少しは治癒もあるかもしれないわ。もともとの素質として。


「光よ、治癒せ」


 そう言ったとたんあたりが白くなった。光った。暖かい光だった。

 それが明けてみると、カナミエーリの傷はすっかり消え、何故か、あたりの木々や草花も生き生きしているように見えるのだった。


 まずいわね。

 えぇ、何が起こったのかあまり自分自身でもわかっていないのだけれど、これはまずいわ。

 とりあえず、治癒は使えたという事でいいかしら? よくないことだけど。今まで魔術を使えて治癒も使えるものもいなかったのだからいいわけがないわ。

 ひとまず帰りましょう。後片づけに、わたくしは巻き込まれたくはないわ。


 急いで森を出ようとする。

 しかし、さっきの光は森の外までいっていたようで、外には多くの人が、野次馬として見にいらっしゃっていた。


 ……別のところから出ましょう。


 あぁもう、なぜ最近はこんなことが起こるのですか。これ以上面倒ごとはごめんですわ。


 かなり遠回りする。そう、森の中を。そして、また魔物に何度も狙われるのだった。

 やっと寮に戻った時は、もうまあまあ遅い時間帯。


 ……あ。


 外出時間思い切り過ぎているわ。どうしましょうか?

 ……あ。サリアに確かすぐ帰ると言ってしまったわ。多分とつけていたおかげで「約束」に至らなかったのでしょうが……。怒られるわね。これはきっと。



「お嬢様!」


 中から声をかけられた。サリアだった。


「外に出てどうしたの?」

「お嬢様をお探ししていたに決まっているではないですか!」

「あら……そう。遅れたことは申し訳なかったとは思っているわ」

「謝らないでください。しかし、あとで説教ですよ」


 メイドの立場でやるなんて……などと思わなくもないが、今回悪いのは完全にわたくしだもの。言い訳もしっかりと考えっておきましょう。


「大事にはしていないわよね?」

「はい。そこはお嬢様なので心配しなくても大丈夫だろうと皆の意見が一致しましたので」

「そう、助かるわ。あと今日はもう帰れないから宿を取ることにするわ」

「お金は大丈夫ですか?」

「もちろん問題ないわ」

「ではお気をつけて」

「えぇ、またね」


 宿をとる……ね……。面倒くさいので取らなくてもいいのではないかしら?

 風呂くらいは魔術で変わりができるのだし、野宿も全く問題ないわ。まあ、ばれたらお父様にもお母様にも怒られるでしょうけど。


 うん、なんとかなるわね。さすが、わたくし!


 気分が良くなるのだった。


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