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28.クランは自分の行動を後悔する

 

『入りますわ。』


 サンウェン様に生徒会に入るかと聞かれて答えたあの言葉……あれも「約束」に入ってしまったのでしょうか?


「あぁ……だから人と会話したくはなかったのです……」

「なにか言ったか?」

「はい。けれど、あなたには関係ないことですので気にしないでいいですわ」

「そうか……」


「それで、毎週水曜日に集められるということでいいのですね?」

「……お前!」

「えぇっと……どなたでしょうか?」

「5年の生徒会副会長のヨハン・アスタだ! 私の名前も知らないとは!」

「サンウェン様……生徒会役員は別に目立つ役職というわけではないのですよね?」

「そうだ。まあ……そこに入っている人自体は学年でも……いや学校でも目立っている者たちだが……」

「何かおっしゃいました?」


 ちょっと、最後のほうが上手く聞こえなかったわ。


「いや、何でもない」

「そう。それは良かったわ。で、……誰でしたっけ?」

「ヨハン・アスタだ!」

「ああ、ヨハンという名前なんですね。わたくしがあなたの名前を知らないことが、なぜ、おかしいのでしょう?」

「どう考えてもおかしい! 私は5年の中で一番なのだぞ!」

「そうなのですね。では以後、覚えておきますわ」


 まぁ、面倒くさい方に当たってしまったわ。これを見てから決めても良かったかもしれませんね。早まってしまいましたわ。


「そういう話ではない! ……いや、それはいい。それよりも、生徒会に入るのを嫌がるとはどういうことだ!」

「わたくしの主義にあいませんもの。利点が多く、ひとまず入ることにいたしましたが、こんな話聞いていませんでしたもの。嫌がるに決まっているでしょう」

「この……!」

「落ち着け。ヨハン。こいつは例外だと思って接すると良い」


 例外? また酷いいいがりをつけられてしまったわね。


「でも、会長……この人は、神聖なる生徒会を侮辱したのですよ!」

「気にしたら終わりだ。私も正直なぜこいつが1年生の中で一番優秀だというのに疑念はある」


 今がチャンスね!


「まあ、わたくしは優秀ではありませんわよ。今までの授業の様子から見てもそうだと思いません?」

「私は授業の様子を知らないからな。ただ、戦闘能力は本物だろう。ヨハン、お前も噂を聞いたことはないか?」

「えーっと、何の噂かしら?」

「お前には言っていない! それで、噂なら……聞いたことはありますけど、まさか、あれが本当だと言うんですか!?」

「そうだ」

「は?」


 あら、口が汚いわよ。言い方にはもっと気をつけるといいでしょう。


 それにしても、皆様喋らないのね。生徒会……さっきまでは明るい雰囲気かと思っていましたのに……

 このままではあまりやる気がわかないわ。どうかしてもらわないと。


「どうしましたか?」

「こいつが、ですか?」

「そうだ」


 それにしても……


「ねえ、一体なんの噂なのかしら?」

「お前は黙ってろ!」

「いえ、わたくしに関する噂だと思うのですが……」

「知らん! ……サンウェン様、ほんとにこいつがやったんですか?」

「ああ」

「まあ生徒会長が言うならそうなのでしょう。どうぞ、お話を続けてください」

「あぁ、助かる。クラン、取り敢えず毎週水曜日は集まりだ。忘れるな。それと、昼休みも特殊な用事がない限りここで食べろ」

「水曜日はここに2度も顔を出さなければならないのですか?」

「そうだ」

「……分かりましたわ……まったく、迷惑ね」


 きっと今は抵抗しても意味がないわ、と思って受け入れることにしたわ。わたくしだって、醜い争いは好まないわ。


「迷惑だと!?」

「あら? ヨハン様、どうかしましたか?」

「お前、今、迷惑だ、と言っただろ!?」


 そんなヨハン様の頭に拳が落ちた。サンウェン様ね。


「あら? そんな拳も避けないのかしら?」


 この方も自分で言っているほどでは無いのかもしれないわね。


「クランもヨハンも、一旦黙っておけ!」

「分かりました」

「分かったわよ」


 うん、この場合、頷くに越したことはないでしょうね、きっと。


「それでは紹介をしよう。まず私はサンウェン・リルトーニア。6年で生徒会長だ」

「私はヨハン・アスタ。5年で生徒会副会長だ。生徒会は素晴らしいものだ! それがわからぬ者に用はない……」

「やめろ」

「わたしはアナ・セントニアよ。4年の生徒会会計。よろしくね。クランちゃん」

「わたくしはソラレーラ・ミアンナ。3年で生徒会書記。よろしくするわ」

「クロバート・アングアだ。2年で生徒会書記。よろしく」

「まあそんな感じだ。お前もやれ」

「はぁ……。わたくしはクラン・ヒマリアよ。今日から生徒会書記らしいわ。よろしくお願いいたします」


 確かにそんな感じなのだろう。このあと、サンウェン様が話題を少しだけ提供して、それについて話し合っただけで終わった。


「クランちゃん、一緒に寮まで帰らない?」


 アナ・セントニアに誘われた。


「ごえんりょ……」

「帰りましょうか?」


 ソラレーラ・ミアンナまで……


「はい……」


「アナ……様?でしょうか?」

「さんでいいわよ」

「ソラレーラ様は?」

「公では様がいいですが、個人的なところではソラレーラでいいわよ」

「あ、じゃあわたしもアナでいいわ」

「分かりました。アナとソラレーラですわね。ですけどミアンナ家って……」

「そうよ、公爵家。けれど、あなたと同じ家位なので気にすることはないわ。まあ事情はあるけど……」

「そうですか……」


 この事情には触れないほうが良さそうね。


 その後。

 なんかいろいろ話してくれたわ。生徒会のこと、生徒会役員のこと、そして他の学年のこと、行事のこと。


 どちらの方も親切で……わたくしが「約束」したくないがために距離を取ろうと考えていることが申し訳なくなってしまったわ。

 やめるつもりはないのだけれど。


「またね~」

「お気をつけて」

「はい」


 あぁ……どうしましょう。やはり入らなかったほうが良かったわ。

 今頃になって後悔が襲ってきた。いやさっきも後悔したばっかりですが。



「どうされましたか?」


 サリアにも気を遣われてしまった。


「この前、少し目立ってしまい……そのせいで生徒会に入ることになってしまったのです……」

「まあ! 名誉なことですね! 応援していますよ!」

「いえ……別に応援してほしいわけではないのよ」

「そうなのですか?」

「えぇ。面倒事を背負ってしまったわ……」

「クラン様らしいですよ!」


 えーっと……それは褒められているのでしょうか?


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