27.クランは生徒会長に丸め込まれる
「この前お前は父上のせいで大変な目にあっただろう」
「あいましたね」
「生徒会に入ることで、みんなと交流していると父上は錯覚してくれるぞ」
つまり、今まで同様人とかかわらなくても、お父様が変なことをしてくることはない、と。
「魅力的ですわ。ですが、お父様はきっと二度としないでしょうし……関係ありませんわね」
「そうか……それでも、父上は安心すると思うがな」
「関係ありませんわ」
あんな「約束」を破ろうとするお父様、別にどうでもいいでしょう。
「はぁ……まったく……」
「それはこちらが思っていることよ」
「そうか……すまん、サンウェン、全然役に立てんかった」
「まあ仕方ないな……というよりこれが孤高の公爵令嬢?」
「そうだ」
「どこが孤高なんだ? 普通に面白いやつじゃないか」
「お二人共……その本人の前で話すというのはどうかと思いますわよ?」
「いや、本人の前でいう方が誠実だろう?」
「……そういう考えもあるかもしれないわね。じゃあ、今のものは気にしないことにしてあげるわ」
「何故きみのほうが上からなんだ?」
「今の問題における立場はわたくしの方が上だったからよ?」
「そうか……」
おお! 生徒会長に口で買ってしまったわ! 流石わたくし!
「いい加減話を戻そうと思うのですけど……なぜわたくしを入れる必要があるのでしょう? 別に誰だって構わないのではないかしら?」
「お前は……生徒会のことを何も知らないのか?」
「生徒会長が第一王子であることは知っています」
「それだけなのだな……生徒会は、各学年一人ずつ在籍することになっているのだ。期間は在籍中全部。期限は半年まで。だから、私は至急1年生から誰かを招き入れなければならないのだ」
「あら。存外大変な仕事ですのね」
「もうすぐ期限である半年がやってくる。だから、お前を誘ったんだ」
「なぜわたくしなのでしょう? 生徒会ならば入りたいと望むものは多いはずですよね?」
「あぁ、確かに多い。しかし、実績を鑑みると、お前が適切だということになった」
「実績? わたくしは何もしていませんわ」
「しているだろう。ラーネカウティスクの単独討伐」
「まさかそれだけで決められましたの?」
嘘じゃないの?
わたくしの今まで目立たないようにとしてきた努力……。それはどこへ行ってしまったのでしょう?
「ラーネカウティスクの単独討伐だぞ? 騎士でも出来るのはトップクラスだけだ」
「そうなのですか!? 迂闊でしたわ。いや……あれを先生に任せたら全滅してたわよね? 仕方なしというのが妥当でしょうか?」
「面白い娘もおるのだな」
「うん。自慢の妹だよ」
エステルお兄様がサンウェン様となにか喋っているようですけど……聞こえませんね。残念ですわ。
「まあそれを考慮してお前が優秀だと考えた。だから、生徒会に入ってほしい」
魅力的なものがたくさんありましたわ。けれど、
「辞退しますわ。このまま最高学年になったらわたくしが生徒会長になるということではなくて?」
「そうだ」
「でしたら、いずれは仕事をしなくてはならないではないですか。そんなものに入ろうとは思いませんわ」
「そうか……しかし、生徒会長というのは普段なら大して目立つものではないのだよ」
少し気落ちした様子を見せながらサンウェン様は言った。
「どういうことでしょうか?」
「今年は私が生徒会長になったから目立っているだけで、実際は生徒会自体はもともと行事以外あまり使われないし、目立つものではなかったんだ」
「つまり生徒会が目立つようになったのは、第一王子のせいということですね。流石ですわ」
褒めたつもりなのに苦い顔をされてしまった。どうしてでしょう?
「だから、もし生徒会長になったとしても何もなければそんなに目立つことはない。逆に行事での目立ちを避けることになるのだ。だから安心して入れ」
うー……確かにメリットの方が大きい気がしてくるわ……
流石王族の方、説得がお上手だこと。
「1日……考えますわ」
「分かった」
そうしてやっとあの部屋から出ることが出来たの。
次の日。
「クラン・ヒマリアはいるか?」
サンウェン様が教室にまでまたやってきた。
まったく……昨日と同じように寮の前で待ってくださればいいものを。こちらのほうが余計に目立ちますわ。
「何でしょう?」
「返事を聞きに来た」
「はあ……入ることにしますわ。ただ……わたくしを呼ぶときはもう少し目立たない方法でできないでしょうか?」
「うむ、考えておく。ようこそ! 生徒会へ」
「では帰りますわ。邪魔しないで下さいね」
「おい……待て!」
もちろん。無視して帰ったわ。ええ、当然でしょ?
次の日。
「兄上が今日は生徒会室に来いと言っていたよ」
見るからにやる気のなさそうな子が連絡してきた。あぁ……この子、わたくしに一度も話しかけなかった子の男の方だわ。第一王子を兄と呼ぶということは……
「あぁ……第四王子でしたか。分かりました」
そう言ったら何も言わずに戻っていった。本当にこんなので第四王子は大丈夫なのでしょうか?
「失礼します」
「ちゃんと来たな」
まぁ……いつもにまして生徒会室が明るい気がいたします。そして狭く感じますわ。今日は……6人……全員を揃えたということでしょうか?
「今日は全員いるのですね」
「基本的に水曜日は全員に来てもらうことになっている」
「話が違うではないですか!? ほとんど仕事はないのでしたよね?」
「ないぞ。それでもいつ何時問題が起こるかは分からないものだ。だから毎週1日は集まることにしている」
「それなら抜けますわ」と言おうとして、声が出ないのに気づいた。
まさか……ね。
一体何が起こっているんでしょうねぇ




