表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/45

26.クランは、生徒会長に連行される


 次の日。


 昼休みに、学園長に、クラスメイトに口止めができなかったことははもう伝えた。


 そして……


「クラン・ヒマリア様はいるか?」


 今日もあの生徒会長がやってみたい。

 生徒会長も暇なのね、などと思わず考える。


「クラン様ならもう帰ったわ」

「……そうか。また来る」


 やりましたわ。風で音を拾い、内心ガッツポーズをする。さっさと帰る作戦、有効ね。



 週明けて月曜日。

 今日も、さっさと帰りましょうか。そう思い、寮に向かっているときにそれは見えた。


 寮の入り口に、我が学園の誇る生徒会長がいるではないですか!?


 皆様から遠巻きに見られているわ。お可哀想に。

 わたくしはそれを見なかったことにして、来た道を戻ろ……うとしたのだけれど、そこには何とエステルお兄様が。


「お兄様? どうしたのですか?」

「友人であるサンウェンを助けに来たのだ」


 ひぃぃ、腕をしっかりと掴まれてしまったわ……どうしましょう?


「王族を敬称なしですか? 不敬ですわよ」

「彼がいいと言っているんだ。お前は関係ない」

「そのとおりですね。お兄様は関係ありません。帰ってくれませんか?」

「いいや、無理だ」


 まぁ、なんと酷いのでしょう。


「お兄様は自分勝手ですね」

「違うぞ」


 別の人の声が聞こえた。まさか……おそるおそる振り返ると、予想通りというか、生徒会長がいた。


「僕の勝手に付き合ってもらっているだけだ」

「はぁ……そうなのね。それは失礼しました」

「そう、失礼した。だからしばらく付き合え」

「嫌ですわ。やっぱり失礼したとは思っていませんので解放してくださる?」

「もう言質は取っている。今更覆すのは無理だ」

「第一王子もお兄様と同じで酷い方ですのね」


 乙女の幻想を壊さないでほしいわ。


「そう思うのだったら、そう思えばいい。早くついてこい」


 あぁ……連行されてしまうわ……


「こんなの見られたくないのでせめて手を離されては如何でしょう?」

「そうしたらお前は逃げるに決まっているだろう」


 あら、バレてしまいました。


「では、お兄様にお願いしてもらえますか?」

「エステルか……、まあいい。その代わりちゃんとついてこい」

「分かりました……」


 まあ先ほどよりかは、断然よろしいでしょう。

 基準を第一王子によって壊されてしまった気もしますが、とりあえず大人しさを装いましょう。


「入れ」

「嫌ですわ」

「目立つぞ」

「入ります」


 目立つのは嫌いですもの。しかしなぜそれを第一王子が知っているのでしょうか? 不思議でなりませんわ。


「座れ」

「はぁ」

「お前の望みは面倒くさい、普通に過ごしたい、だったな?」

「えぇ。生徒会役員で普通に生活できるはずがありませんわ」

「普通に過ごしたいは無視することにする」

「なぜでしょうか?」


 おかしくないかしら? わたくしは普通に過ごしたいと願っているのです。生徒会ならばそれくらい保証せてくださいませ。


「生徒会役員として過ごすのが普通になれば良い」

「嫌です。先ほどの条件に加えますわ。わたくしは生徒会自体も好きではないのです。そんなところで働くわけがありません」

「落ち着け。お前は目立ちたくないのだよな? 生徒会に入ったときの利点を教える。まず、行事は参加しなくていい」

「それがどういう利点になるのでしょか?」

「学園内で生徒会主催で試合とかも行われたりするだろう? その時に参加しなくていいのだから、結果的には目立たなくなる」


 なるほど。魅力的な提案ですわね。


「他にはなにが利点なのでしょうか?」

「発言権が増す」

「それは目立つということと同義ではないですか。嫌ですわ」

「お前……確か課外授業でラーネカウティスクを倒したんだよな? そしてその噂を広げないように頼んだそうだな?」

「まあ! なぜそれを知っているのですか?」

「弟が教えてくれた」

 弟……第二王子でしょうか? なぜ第二王子に伝わったのかしら?


「弟の中でも第四王子だ。お前のクラスメイトなはずだが?」

「あぁ……第四王子でしたか! ……しかし、クラスメイト……どなたでしょう?」

「嘘だろう……」

「クランはこういう子だ」

「ちょっと! お兄様! 聞き捨てならないわ!」


 まあまあ、と落ち着かされる。わたくし、いいように扱われている気がしてなりませんのですけど……


「まあ、いずれわかるでしょう、続きをお願い致します」

「話をそらしたのはお前だが……まあいい。発言権が増すと、こういう広めないでほしいという願いもクラスだけでなく全員に伝えることができる」


 ふむ、けれど……


「第一王子まで話が回っているのでしたら、それは不要ですわ」


 だいたい、これを広めないでほしい、ってことは、それをやったことを認めたようなものよ。


「……! そうか……」


 あら? 驚くのね。意外と第一王子様も普通かもしれないわ。


「クラン、私からも提案がある」


 エステルお兄様から? 一体何の提案でしょう? ……って、まあ、生徒会関連なのでしょうけどね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ