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25.クランは叫びを見られ、現実逃避する

 

 朝、寮を出て校舎に行くまでに、何度も見られた。


 これは……もう歯止めがきかなくなっているかもしれないわ。手遅れかもしれない。


 まあただ、視線に敏感になっているだけかもしれないけど……

 もし、ここで口止めしたら……


 ◇


「わたくしが、ラーネカウティスクを倒したことは言わないで下さい」


 全員が頷いたら、「約束」完了。


「ねね、クラン様ってすごいよね」


 クラスメイトがそんなふうに声をかけられる……かしら?


「え、そうなの?」


 クラスメイトは「約束」によりとぼけることになる。


「え? ラーネカウティスクを倒したんじゃないの?」

「知らないよ」

「……私に嘘ついた?」


 こんな事になって、喧嘩でも起こるのでしょうか?


 ◇


 あぁ、いやなことを想像してしまったわ。けれど、ありそうなことよね? 怒らないでほしいけど、万が一があるのなら……みんなには「約束」しないほうがよさそうね。その代わり……わたくしが広められることを好んでいないことをお伝えしておきましょう。


「「「おはようございます!」」」


 挨拶をする人は減ってきた。けれど、それでもまだ挨拶をしてくる人はいる。


「おはようございます……」


 まだ堂々と挨拶をするのは(はばか)られますわ。慣れませんもの。

 わたくしはわたくしがそのような器ではないことを自覚しております。


 そのまま教卓に向かう。


「今日は、皆様にお願いがあります。昨日、わたくしが魔物を倒したことは、できるだけ広めないで欲しいのです。わたくしにも事情がありまして……よろしくお願いいたしますわ」


 よし、大丈夫そうね。これで安心して暮らせるわ。


 ただ……学園長には一応言っておくべきかしら? どうなのでしょうね。



「クラン様ー!」


 今日もノアがやってきた。


「何かしら? 何も無いなら戻ってくださる?」

「話しならあります!」


 なぜ、彼女はこんなにもわたくしに声をかけてくるのでしょう? 昨日のグループ作りの際は、入ってくれて確かに助かりましたけど、基本的には邪険に扱っているはずよ。


「……何ですか?」

「かっこよかったです!」


 格好いい? 誰に対していっているのでしょうか? ……わたくししかいないので、多分わたくしに向けていっているんでしょうね。決して自意識過剰なわけではないわ。


「それは不適切ね」

「じゃないですよ」


 あら? どうしてかしら?

 そう思ったのに気づかれてしまったのか元々話す予定だったのか、ともかくノアは再び口を開いた。


「みんなが怪我をしないように、一人でラーネカウティスク? に立ち向かうんですよ!? まさに英雄の所業、かっこいいと言わないで何というのですか!?

 しかも、クラン様は孤児にもそのようなことをしていた過去もあり、また昨日だって私の消火にも気付いて下さって、そして、何より表には出たくない、その姿勢も素晴らしいと思います!」


 ノアが急に饒舌になったわ。


「違うわよ。一人でラーネカウティスクに立ち向かったのは、一人でも余裕で勝てるから。しかも時間もかからず被害も出ないもの。楽じゃない?」

「そういうのをあの瞬間に考えているのが素晴らしいのです!」


 はぁ……何を言っても駄目な気がするわ。


「ノア、落ち着きなさい」

「落ち着いてます」

「いいえ、あなたは落ち着いていないわ。ちゃんと客観的に見なさい」

「クラン様が困っているよ」


 まあ! クリーナがやってきたわ。

 ノアを止めてくれるなんて……ありがたいわ!


 授業は、特に何もなかった。

 魔法薬の授業で脅されたのが継続しているのだけれどね……まあそこで手を抜かされなかった……いえ、()()に、作った……本気では作らなかった……それだけ。


 他の授業も、問題はなかった。



 今回問題が起こったのは放課後だ。


「クラン・ヒマリア様はいますか?」


 久しぶりに名前に敬称をつけられたわ、と思わず現実逃避してしまった。

 今声をかけてきた彼はサンウェン・リルトーニア。エステル兄様の同級生で、我がフィメイア王国の第一王子。悪い噂は聞かない眉目秀麗の()()()()だ。


「生徒会長が何の御用でしょうか?」

「そう怒るな。生徒会室で話さないか?」

「遠慮いたしますわ」

「とりあえず来い。立場はこっちが上だ」

「はぁ……分かりました」


「失礼します」

「入れ」

「で、何のようでしょうか?」

「単刀直入に言おう。生徒会に入らないか?」

「嫌です」

「先生からの信頼も厚いぞ。やりがいもあるし」

「やりがいなど求めていわせんわ。わたくしは普通に過ごしたいのです。何より面倒くさいですわ。余計な仕事が増えているだけじゃないの」

「ふむ、ならばそれを改善したうえでまた勧誘しよう」

「は?」


 なぜ、そうなるのでしょう? そもそも、なぜわたくしを入れたいのでしょう? 分からないことばかりですわ。


 けど、逃げるなら今がチャンスよね。


「失礼しました」

「あ、ちょっ」


 何か焦る第一王子の声が聞こえたような気がしますが気のせいでしょう。


 あぁ、もう! 鬱憤がたまっているわ……

 屋上に行きましょう。


「わたくしに関わらないでほしいわ! なぜ、ほっといてくれないのでしょう!?」


 あぁ……スッキリしたわ。明日からも……頑張れなさそうな気がするけど、あの生徒会長のせいね……頑張りましょう。


 戻ろうと後ろを見たら、知らない人がいたわ。

 あぁ……最悪よ……。


 気がつけば、寮に帰っていて、ベットで寝るところだった。


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