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21.クランはとうとう、実力を出す


 あら? そういえば、土の神と話しているところも見られてしまったかしら? それは危険ね。気軽に動きすぎたわ。これからはもう少し周りにも気を配っていかないと。


 そう気づいたのは、もう夜遅くだった。



 懐かしい場所を歩いていた。花がいっぱい咲いている。

 楽園だわ。5人の人がいる。

 間にあるのは……池かしら?

 みんなでそこを覗いて、みんなで笑っている。



 ーーきっと、人間を観察しているんでしょうね。



 そう思って納得した。


 場面は変わり、わたくしは心と喋っていた。

 何の話かは分からない。

 わたくしも、心も、笑っていた。



 目が覚めた。

 また、懐かしい夢を見た気がする。この感覚にももう慣れてきた。今まで一体何回同じ夢を見ているんでしょう?


「さぁ、今日は課外授業よ。何もしなくても終わる日よ! 頑張りましょう!」


 メイドが来る前に着替えて、だけれど文句を言われてしまうから髪の毛は任せる。それが、わたくしとメイドのお決まりのやり取りとなっていた。


「動きやすいものでお願いね」

「かしこまりました」


 何も出てこない何も出てこない。そう祈って……


「さぁ、着いたぞ。グループで行動すること。これと、先生から見えることろ、これが条件だ。けっして先生が見えるところ、ではない」


 何の違いがあるのでしょう?


「グループとは、いつ決められたのでしょうか?」

「今からだ。最低5人、最高10人。好きなやつと組め」


 あぁ……せっかく今日から法令が廃止されたというのに……また人とかかわらなければならないのですか……悟りを開きたい気分だわ。最悪よ。


「クラン様、ぜひ私と!」1

「わたくしもご一緒させて下さい!」2

「私も連れて行ってくれませんか?」3


 はじめに声をかけてきたのがたしかシリル・カーソン。それ以外の名前は……まだ聞いたことがないわね。


「わたくし、攻撃をする予定は作っていないのですが、それでもいいのですか?」

「ぜひ!」2

「だったら私も入れて下さい!」


 ノアがやってきた。となると……


「申し訳ないのですが、私もいれてもらいたいですね」


 クリーナもやってきた。


「まあ、仕方ないといえば仕方ありません。入ることを許しましょう」


 順調だった。順調だったと思う。昼食も食べた。



 その時だ……


 ラーネカウティスクがやってきた。

 ラーネカウティスクはリルトーニア森の固有種。弱いドラゴンには匹敵する強さの持ち主。

 しかし……こんなに森の入り口の方では目撃されたことはなかったはずだ。だいたいここは慣れの森、よ? 少しだけ慣れてきた初心者が来るところなんだからね?


 ラーネカウティスク。たしか……別名、深奥の黒い嵐。水に強く、火に弱い。しかし、火は火力が必要とされる。想定討伐人数、250人。



 あの土の神め、何かやったのでしょうか?

 しかし、呪いの効果はきっと神々にも……あぁ……。ないかもしれない。

 そう思い、絶望感に浸った。

 わたくしは心と約束した。その時に心は言っていた。僕は別枠だと。

 なんて愚かだったんでしょう。神にも呪いは効くと勘違いして慢心して、安心していた。そんなわたくしは、さぞ神々の暇つぶしになったことでしょう。


 悔しいわ。



 ラーネカウティスクは木を貫通する勢いを持った水を飛ばしている。


「火よ、焼け」


 取り敢えずラーネカウティスクの口元に火を浮かべ、水を蒸発……はせず勢いを殺すだけになった。


「さがりなさい」

「クラン様。まさか一人で……?」

「当たり前じゃない。あなた達は弱いわ。あれを相手にできるわけがないじゃない。わたくしなら……さすがにこのレベルは一瞬とは言えないけれど、すぐ戦いを終えることができる。ならばわたくしが行くべきでしょう」


 あなた達は邪魔よ、そう伝わるように言った。


「火よ、焼き尽くせ」


 魔術は非常に便利なものよ。神殿で、その最前線の情報を仕入れている神官長に教わったんだもの。きっと攻撃は通じるでしょう。

 すこし、安直に考えていたかもしれない。回復力が、強かった。


「維持。さらに……風よ、火を助けろ」


 純粋な火だけでは火力が足りなかったのだろう。風を入れたらそれまでの劣勢が一瞬にしてなくなった。まだ、焼けるまでには時間がかかりそうね。


「まあこんなものでしょう」


 やはり推定人数は的を突いているわね。この前の100人よりかは今回の200人のほうが手間がかかった。しかも時間がかかる。水に強い魔物とは本当に厄介なものね。


「大丈夫か!?」


 先生がやってきた。


「えぇ」

「ラーネカウティスクが出たんじゃないのか!?」

「えぇ、出ましたよ。燃えているあれですね」

「ラーネカウティスクが、燃えている!?」

「はい」

「誰だ! ……ってクラン・ヒマリア以外にこんなことができる人がいるわけないな」


 あら、正解されてしまったわ。授業では本気を見せていないのに、なぜバレてしまったのでしょう?


「まあ無事だったのなら問題ない。後片付けをしたら戻ってくるように」

「分かりました」

 先生が行ったのを見届ける。


「解除、そして水よ、火を消せ」


 一瞬で火が消える。

 どうやらノアのお陰で火は燃え広がらずに済んだみたいね。


「ノア、ありがとう」


 さあ、もう帰りましょう。


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