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11.クランは何故か、先生にさえ、絡まれる 下


 次は魔法学の時間。

 魔法学って何だか座学みたいに聞こえるけど、実際は普通に魔法の練習よ。魔物学は座学だけだけど、魔法学は大抵魔物学のあとにあって、魔物と戦わされる。

 分かるのよ、魔物と戦うのが一番魔法の行使になれられるのは。けれど、面倒くさいのよね。だって魔法なら、余裕で使えるもの。


「明後日は課外授業だ。しっかり励むように」


 今日は、魔物との実戦ね。雑魚中の雑魚とわざわざ戦わされるなんて苦痛でしかないわ。


 ふぅ。今日も剣だけで乗り切れたわ。

 剣に魔法をかけているから、魔法学の授業内容にも適しているでしょう。


「クラン・ヒマリア」

「何でしょうか?」


 ……また、呼ばれてしまったわ。何もなく終わるかと思ったのに。

 これで3時間連続よ!? おかしなことが起こるのは。朝も入れたら今日はずっと変ことが起こっていると言えるわ!

 次は昼休みだし……お兄様達に会いに行ってみようかしら?


「特別に魔物を用意した。戦ってみよ」


 はぁ!? ここにいるのってコンクルートよね? これの何が特別なのでしょう?


「どうした? 戦えるだろ?」

「戦えますけど……なぜ用意したのがコンクルートなのですか? こんなの一瞬ではないですか」

「そうなのか!? それでは、今度からはもっと強いものを用意できるように頑張ってみよう」

「ありがとうございます。できればドラゴンよりも強いものでお願いします。火よ、焼き尽くせ」


 はい、瞬殺。

 あぁ、これが媚びでなかったら最高のご褒美なのに。もったいないわ。


「みんな、すまんな。参考にならないよな……」


 どこがでしょう? わたくしはとっても参考になる魔法を見せてあげたと思うわよ? まず、この学園で魔法らしい魔法を使うっていうのが稀だしね。

 あら? なぜ皆さんは頷いているのでしょう? これくらい強い人には当たり前にできることではないですか。


「まあクラン・ヒマリアが使った通り、コンクルートは火に弱い。こんな一瞬でたおれるほどには。それはわかっておいてほしい」

「「「はい」」」

「じゃあ授業を終わる。課外授業は学校の近くのリルトーニア林で行う。大人数だし、きっと安全だ。安心して来るがいい。……ただし、不注意に来るものは落第だ」



 さぁ、お兄様達の様子を見に行きましょう。

 まずは、やっぱりエステルお兄様よね。

 あ、いたわ。


「お兄様!」


「まあ、あれがエステル様ご自慢の妹さん? かわいいわね」

「孤高の公爵令嬢が何のようだ?」


 何故か黄色い声をあげる人もいた。他には警戒するような人もいた。

 どっちかと言えば、絶対後者のほうがいそうですよね? なぜ、前者のほうが多くいるように見えるのでしょう?


 ―—パチパチ。


 目を瞬いてみても変わらないわね。わたくしの目が壊れたのかと一瞬思ってしまったわ。


「どうしたのか? クラン。珍しいな」

「それが……実はよくわからないことが起こりまして……。わたくし、今日はやけに話しかけられるのです。授業でも何回もあてられてしまい……お兄様はどうしてか知っていますか?」

「クランはどう思った?」

「お父様が媚びを売る人と売らない人を見分けるためになにか仕組んだのかと考えたのですが……お兄様の周りは特に変わっているようには見えませんね。なぜ、わたくしの周りだけおかしいのでしょう?」

「うーん……私には答えられないなぁ」

「どうしてですか? 何かを知っているのですよね?」

「父上を裏切れないからだよ。……そうだ、王族に聞いてみればいいんじゃないか? 王族ならば公爵の権力も気にならないだろう」

「……つまり、お父様が、公爵家の権力を使って何かをしたということですね。それもわたくしだけに。そこまで確証を取ることができました。ありがとうございます、お兄様」


 そう言って教室から出た。

 予想通りエステルお兄様はいろいろ教えてくれたわ。これには感謝してもしきれないわ。



 その後ろで、


「かっこいいな、エステルの妹は」

「聡い妹さんなのね」

「エステル様も大変なんですね」


 クランに憧憬の眼差しが、エステルに同情の眼差しが来ていたことには、クランはもちろん気づいていない。



 さて、どこかでお父様を問い詰めなくてはならないわ。

 せっかく今日は来たばかりですけど、今夜は実家に帰りましょうか。

 執事のカナンに準備をお願いしておく。


 ……今のうちに寮に届け出を出してきましょう。


 次の時間は体術学。

 ただ、運動するだけの時間だ。

 食後にこれがあるため、太ることを心配しなくていい、と週に3回ある昼食後の体術学の授業は女子生徒に人気だ。


「クラン・ヒマリア」


 まただわ……


「何でしょうか?」

「私と練習試合をしなさい」

「はぁ……分かりました」


 取り敢えずいつも通りやってみた。

 今まで不真面目に受けていたもの。先生の実力なんて知らないわよ。


 勝ってしまったわ……どうしましょう? 目立たないで過ごそうと思っていたのに。これは……絶対に目立っているわよね? おそるおそる周りを見ると、みんなの視線がわたくしを向いていた。

 ひぃぃ……。目立ってる……。最悪だわ。


「先生、手を抜くのは辞めてもらえませんか?」


「ああ、先生がこれくらいなわけがないよな」

「だよねー」

「クラン様だったらあり得るのになぁ……」


 よし、これで大丈夫でしょう。


「え、いや、別に……」

「先生?」

「いや、何でもない」


 今回は何とかなったようね。一安心だわ。


 あとは……さっさと帰りましょう。

 精神的に今日はかなり疲れた1日だったわ。けれど、この後もまだお父様に会うのよね。わたくしの精神力……持つかしら?


クラン……実力はあるのに……

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