俺くんは国際交流委員8「高校生活2日目」
目覚ましのベルが鳴る。
高校生活2日目。
中学の時よりも1時間の早起きはなかなかきつい。
身体が、まだ新生活に適応していない。
俺は、寝床の中でしばらくモゾモゾしていた。
決してヘンなことはしていない。
4月の朝はまだ寒く、布団から出るには勇気が必要だ。
起きねばならぬという気持ちと、もう少しだけこのぬくもりの中にたゆたっていたいという気持ち。そのはざまでグズグスしていると、母の鋭い声が下から聞こえてきた。
「いつまで寝てんのー。早く起きろー! 遅刻するよー!」
新入生は、常に何かに急 かされる存在だ。
ボーっとしながらリビングに降りていくと、テーブルには朝食が用意されていた。
壁のフックにはまだ着慣れない高校の制服が下がっている。
シャツにはアイロンがかけられている。
母よ、いつもありがとう。
言わないけど。
とにかく急いで支度して、学校に行かなきゃ。
いよいよ今日から、授業が始まる。
高校の勉強が、ちゃんと理解できるだろうかという不安。
授業の進み方も、中学より早いだろう。
朝食をかきこみ、カバンの中身を確認し、玄関のすぐわきに置いてある自転車を道路に引っ張り出した。
そのまま助走をつけて飛び乗る。
背負っているリュックには、教科書やノートなどがぎっしり詰まっている。
その重みで、自転車のバランスがとりにくい。
朝の空気は冷たい。
ペダルを踏み込みスピードをつければつけるほど、冷えた風が頬に刺さる。
自分が風になった気分だ。
駅までは、10分の道のり。
地元の人しか知らないわき道を縫って駅へと向かった。
途中、小さいころたまり場になっていた駄菓子屋がある。
朝日を受けたシャッターの上に書かれている店の名前と電話番号がかすれている。
おばちゃん、元気かな?
高校入試の勉強を始めたころから一度も行っていない。
久しぶりに今度の休みにでも遊びに行こうか。
さまざまな思いを置き去りにして、俺はペダルに力を込めた。
駅までの道は上り下りが続き、駅に着くころにはリュックを背負った背中に汗をかいていた。
高校という新しい場所に向かう心の高揚もある。
学校までは、駅から電車に乗り、さらにバスに乗り換えなければならない。
バスの乗客はうちの生徒ばかりなのだが、バス停の並び方とか、車内での新入生の立ち位置だとかの細かいことがわからなくて、結構気を遣う。
学校生活には、暗黙のルールがある。
暗黙だから新参者にはわからない。
体験してみて初めて理解できるのだ。
バス特有の匂いに多少のめまいを感じながら降り、やっと動かない地面を踏みしめることができた。
高校は町外れの高台にある。
徒歩や自転車で通学する生徒もいて、登校するのがきつい学校だ。
(帰りは下り坂になるから、楽だけど)
おまけに1年生の教室は、 校舎の3階にある。
つまり、通学に慣れない新入生にとっては、家を出て教室にたどり着くまでがなかなか大変な学校だった。
通学にも慣れず、学校にも慣れず、当分はこんな感じの毎日になるのだろう。




