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【小説】俺くんは国際交流委員17「ジャージ女子への憧れ」

今日は午前中普通授業、午後は身体測定と各種検査の日。

入学してからほぼ毎日のように何らかの行事があるので、クラスの雰囲気はまだ落ち着かない。


女子たちは早めに昼食を食べ終え、ジャージを持って更衣室に向かった。

アロハはママが作ったサンドイッチ、委員長は自分で作ったお弁当。

たまにひとを感心させる人だ。

いつもは憎たらしいけど。


検査は男女別に行われる。

「アロハは私に任せなさい!」と、力こぶを作る委員長の姿は、少しかっこかわいかった。

言わないけど。


教室で着替えた男子軍団は、クラスごとに決められたスケジュールに従って、校内を回遊する。

身長・体重の測定のため、まずは体育館に移動した。


体育館には、1年のむさ苦しい男どもが全員集合していた。

早めに着いた男子が、あちらではバスケ、こちらでは鬼ごっこ。

この様子からもわかるとおり、男子はバカである。

部活動見学の時の野球部とサッカー部といい、どうして男子ってこうなんだろう?

隙あらば遊ぶのが男子であり、その精神年齢の低さが嘆かわしい。


羽目を外していたヤツらは結局、やって来た測定係の先生たちに一喝され、あっという間にクラスの列に並んだ。

このあたりは男子の可愛いところだ。


次の保健室での視力検査が、俺は憂鬱だった。

「授業中、黒板見えてるの?」と言いたげな検査係の表情。

はい、確かによくは見えません。

見えませんが、最近は、もうこれでいいかなーと思い始めてます。

世の中をぼんやり眺めるのも、おつなものです。

ハッキリ見えることが、良いことだとは限りません。

モノゴトを大雑把にとらえた方が、心に負担がない気もします。

よって俺は、これからも、この視力で強く生きていきます!


同窓会館での内科検診も終え、男子はそろって教室に戻った。

こういうことは早いのが男子だが、そうして暇を持て余す。


暖かな日差しが感じられる日だった。

ベランダの手すりにあごを乗せ、外を眺める男子たち。

水平線には、白い船が浮かんでいる。

はるばるどこから来たのかな?

そしてどこに行くのやら。

ポカポカ陽気であったかいな―。

久しぶりにノンビリしてるなー。


遠くから、女子のしゃべり声が聞こえてきた。

そちらに目をやると、校舎から体育館に通ずる渡り廊下を、女子たちが歩いている。

男子とは逆の順路で、最後に身長と体重の測定なのだろう。

「共学で良かった」と思いながら、男子全員、渡り廊下を見ていた。

手すりに並んだバカ面は、女子からはさらし首に見えるだろう。

決して見られてはいけない姿だ。

だから男子は気配を消し、ただ一心に女子を眺めていた。


「うちのクラスの女子のジャージ姿も見られるかも!」と、心躍らせる男子。

どうしてすぐ心が反応するんだろう?

生物学的な理由?

そういうふうに男はできてる?

そう、これは、理屈ではない。

まさに本能だ。

それにより、種は進化してきたのだ。(ホント?)


期待は裏切られるものである。


教室のドアをガラッと開けて入ってきた我がクラスの麗しき女子たちは、すでにキチンと制服に着替えていた。

手にはジャージを持っている。


その時の男子の落胆ぶりを、みなさんは想像できるだろうか?

「あぁ、着替えたんだ……」

そう誰かがつぶやいた。

思わず、心の声が漏れたのだった。

その言葉に、ベランダの男子は全員共感していた。

悲しみ。やるせなさ。

男子の体と心からは、生きる力がほぼ失われた。


どーして女子って、こーなの?

いつもはそーじゃないよね。

けっこうだらしなくしゃべってるときがあるよね。

昼休みとか放課後とか、お菓子をつまみながら、ギャーギャー騒いでる。

スカートの上に、お菓子のカスがたくさんこぼれてますけどー。


それなのに、こういう時だけしっかりしてる。

チャッカリ着替えちゃってる。

なんで?

なんでなの?


ところで、ここまでの男子の行動と心理の解説をご覧になって、皆さんはどう思われただろうか。

否定的意見多数だと思われる。

が、しかし、特に女子の皆さん。

こういう所が、男子のバカなところであり、またかわいいところであり、団結が強まるところでもあるのだ。


ベランダに並び、みんなで遠くの海を眺める。

めあての女子のジャージ姿が見られず、共に落胆する。

そんなささい(バカ)なことが、男子にとっては大切なのだ。

これこそが、男子にとっての青春といっても過言ではない。

ご理解いただければ、幸いです。


少し遅れて、アロハと委員長も教室に戻って来た。

その制服姿に、男子軍団は、今日という日がここで終わった気がした。


委員長が俺に向かって一直線に迫って来た。

様子がおかしい。

頬が紅潮し、多少興奮しているように見える。

なになに?

何かあったの?


委員長「私、女だよね」

俺「そーだよ。(なんでそんなこと聞く?)」

委員長「女なんだけど、アロハのTシャツ姿を直視してはいけないと思った。」

俺「どうかしたの?」(うすうす言いたいことはわかるけど)

委員長「だって、すごいんだもの。アロハって。」

俺「何がすごいの?」(既にハッキリわかってるけど、あえて言わせたい俺だった)

委員長「言わなくてもわかるでしょ、イジワル。」(にらまれた俺)

俺「Tシャツが、どうかした?」(とぼける俺)

委員長「同じ女なのに、なんであんなに違うかねー」

俺「(何とも言いようがないので、静かな微笑)」

委員長「あれは、女でも惚れる。そして嫉妬する。どーして自分には備わっていないのと」

俺「ハー」(リアクションに困る)

委員長「つまり、ハッキリゆーけど、アロハのバストよ、バスト!」

俺「アロハのバストがどーかした?」(いつものイジワルに対する仕返し)

委員長「あんた、なに言わせようとしてんの? バカじゃないの! スケベ! キモ!」


突然ケンカを売られた俺であった。


これほどまでに人の心をたかぶらせるアロハのアロハ。

その得難い存在を、一度でいいから見てみたい。

Tシャツ姿で十分です。

それがダメならジャージでも。


委員長の隣に立っていたアロハは、俺たちのやり取りをポカンと見ている。

会話の内容が、見当もつかない様子だった。


あなたの話題だ。

あなたの話題だが、あなたに知られるわけにはいかないのだ。

あなたが委員長を興奮させたという話題だ。


そうして、俺はしばし妄想に入った。

その詳細は語らないが、勿論テーマはアロハについてだ。


俺は、アロハを見ずして妄想していた。

これを匠と言わずして、何と言おうか。

これこそが、真の妄想だ。


しかし、そう長くこの世界にひたることも許されぬ。

目の前には、女子がふたり立っている。

すべての男子から恋慕される学校の宝。

そんなふたりを待たせるわけにはいかぬ。

従って俺は、すぐに現世に帰還した。

妄想よ、さようなら。


委員長が俺をにらんでいる。

いかん。

俺の妄想に気づかれたか?


俺は一瞬、委員長に取り入ろうかと思った。

「委員長みたいに控えめなのも、悪くないよ」というセリフが浮かんだのだ。


愚策だ。

決して言ってはならない言葉。

とっさに気づき、言葉を飲み込んだ俺、グッジョブ!

言ったら最後、あの世が黒い口を開けて待っている。

俺はまだ、〇にたくない。


その時、帰りのショートホームルームのチャイムが鳴った。

グッタイミング!


放課後。

掃除から帰ると、委員長はまた俺の席に座っていた。

隣のアロハと何やら話している。

そこ、俺の席なんだけど。

俺の居場所を奪わないでくれ。

そういう目で委員長を見たが、ヤツは全く動じない。

平気な顔でアロハとしゃべり続ける。

しょうがない。

俺は委員長の席で待つことにした。


早口の英語なので、内容がよくわからない。

最近、わざと早口で話している気がする。

俺に知られたくない内容なのだろう。

なんか、イヤな感じ。


ふたりはお互いの顔のパーツをじっと見たり、髪を触ったりしている。

いよいよ禁断の世界に入ろうとしているのか?

たしかにさっきの委員長の興奮は異常だった。


話がなかなか終わらないので、わざと音を立ててふたりに近づいた。

委員長はこちらを向き、やっと会話を止めてくれた。

俺「もういい? なに話してたの?」

委員長「学校生活とか、通学の話。」

俺「なんか、楽しそーだったよ」

委員長「そりゃあ女子の会話だもん。弾まないわけないよ。でも、もう終わったから、アロハの放課後の勉強会、よろしくね。私は今日、部活があるから。」


※以下は俺のたどたどしい英語での会話

俺「日曜日の入学式から今日まで、ホント一週間長かったね。」

アロハ「そうだね。やっと休みでホッとした。」


帰り際に、俺が、「お疲れまでした」と言うと、アロハも「オツカレサマデシタ」とかわいく言って、ペコリと頭を下げた。

何か言いたそうなそぶりだったが、言いよどんだ次の瞬間には表情を明るくし、元気に廊下に出て行った。

アロハと委員長の会話が気になる俺だった。

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