婚約破棄?どうぞご勝手に私は隣国の王子様と幸せに暮らしますので
「公爵令嬢エリスア=ジャズソウル!貴様は未来の王妃として相応しくない!よって今ここで貴様との婚約を破棄する!」
王立魔法学館大付属学院、その記念すべき卒業式の日に何をやらかしてんだかこの馬鹿は···
「理由をお聞かせ願えますでしょうか?殿下?」
「ふん!白々しい!貴様が取り巻きを使ってこのアラネアを虐めていた事は周知の事実!未来の国母ともあろう者が民を虐げるだと?ふざけるな!たとえ天が認めたとしてもこの私が許さん!」
アラネアは平民の特待生、本来貴族しか使えない魔法を使えると言う事で特別に入学を許可されたのである。
はぁ···頭が痛い···
「お言葉ですが殿下?この婚約は王命により王家と我が公爵家の繋がりを強くするためのもの」
「何だと?」
「私の一存でどうこうできる物ではございませんわ」
そうこれは私たちが生まれる前から決められていた婚約、馬鹿の発情で勝手に変えられる訳が無いのだ。
それに平民の小娘風情と?ふざけるな私は物心ついた頃から今日まで厳しい王妃教育を受けてきたのだ。親バカの両親に甘やかされてきた遊び回ってたコイツとは違って。
「話をそらすな、アラネアを虐げていた件について聞いている」
「私は何もしておりませんわ、ただ婚約者のいる殿方に近づいてはなりませんと苦言を呈しただけです」
「ふん!それを見たお前に取り入りたい令嬢達は率先していじめに参加したわけだ!何がワタクシハなにもシテオリマセンだ!」
人をイラつかせる才能だけは世界一らしいボンクラ王子。
「事実を申したまでですわ。王家の影の方に確認してみてはいかがですか?」
「影?陰キャだと言いたいのか?不敬だぞ貴様!」
あーもう口を開くなと思いかけたその時
「エリスア様、謝ってください」
「アラネア?」
平民が口を開いた
「黙りなさい平民、発言を許可しておりません」
「魔力があるからって無理矢理この学校に連れてこられて、そうですよ平民ですが?お貴族様のルールなんて分かるはず無いじゃ無いですか!」
「それなのに相談しても腫れ物扱いで避けられて···どうすれば良かったって言うんですか!?」
「平民風情が発言を許していないと言って···
「うん、辛かったよなぁアラネア···もう大丈夫だ私が側にいるぞ!」
「殿下ァ···グスン」
何だこの茶番劇はそもそも平民ごときが貴族に話しかけて言い訳が無い発言すら生死すらお前達はこちらの掌の上なのだ。
「婚約破棄承りました」
話すだけ無駄だ。会場は折角の門出の晴れ舞台を愚物と平民に汚されて最悪の雰囲気である。
「おい、アラネアへの謝罪はどうした?配下を制御できずに何が次期王妃だ」
隣に侍らせていた平民が醜悪な笑みで勝ち誇ったようにこちらを見てきた。
もう駄目だ殺そ
特S許魔法で消し炭にしてやろうと思ったその時
「いらねーならオデが貰うど!」
空気を読まない野太い声の先にいたのは不精ひげを生やした巨漢のオークのような男だった
「貴殿は帝国の第一皇太子デデンバ殿!」
「おめーこの女いらねーんだろ?オデが貰ってやるど」
「だが貴殿には婚約者が··」
「帝国は一夫多妻制だど!何も問題もねーど」
「なんてお優しい!良かったですねエリスア様!」ニヤァ
「うむ!これで一件落着であるな!」
「イヤアアアアア!」
後日公爵邸
「お父様!あれに嫁ぐのだけは嫌です!何とかしてください!」
「どうにもならんよ、殿下に歩み寄る努力もせず取り巻きの令嬢達を制御出来なかったお前の身から出た錆だ」
「今回の一件で我が家の立場もかなり悪くなった、もうこの国にお前の居場所は無い」
「そんなぁ···」
その後エリスアは案の定皇帝になったデデンバに飽きられるもイケメンの愛人となんやかんや幸せに暮らしたそうな。
アラネアは王子と結婚。
なんやかんや王位継承し王妃として国を治めたという。
めでたしめでたし
デビュー作です