ホルルドの街⑥
今回の作品は、他の方の作品と、極力被らない様に、オリジナルティーを重視して、書き上げて参ります。
異世界ものではありますが、主人公は、1作品目、2作品目とは、立ち位置が違います。
予定では、かなりの長編になる予定ですので、読み応えがあれば良いなぁと、思う次第です。
少しでも、多くの方に、読んで頂ければ、ありがたいです。
誤字脱字等、あると思いますので、ご指摘もお願い致します。
早速、ギルドマスターと共に、解体場に、レッサードラゴンの死骸の納品に向かったルーシュ。
2人が、解体場に向かうのを、サーシャは、不思議そうに見送った。
「ゴウン、いいですか?」
「おう、ギルマスか。それに、例の坊主も。」
「では、ルーシュくん、お願いします。」
「前回と同じ所で、いいですか?」
「はい。」
「おい、ちょっと待てっ!何が何だか・・・。」
「ゴウン、見てれば分かります。」
「それじゃあ、出しますね。」
ゴウンの困惑を無視して、再び、レッサードラゴンの死骸を、〈インベントリ〉から、取り出すルーシュ。
ギルドマスターの希望通り、前回の物より、ひと回り大きいレッサードラゴンを出した。その為、かなり、解体場を圧迫している。
「なっ!?また、レッサードラゴンっ!?しかも、前回より、デカくないかっ!?」
「これで良いですか?ギルドマスターさん?」
「はい、ありがとうございます。しかし、本当に状態が良いですねぇ。」
「確かにな。前回もそうだが、全く痛みが無い。まるで、ついさっき、狩って来たみたいだ。」
「本当ですね。これは、どう言う事なんでしょう?」
「僕のは、ちょっと特別性で、時間の流れが遅いんです。」
「ふむ、そうなんですか。」
「まぁ、良いじゃねーか。良い状態の物を持って来てくれるんだ、ギルドとしては、ありがたいじゃねーか。」
「確かにそうですね。では、ゴウン。査定をお願いしても?それが終わったら、早めに解体を。」
「分かってるぜ。こっちを優先してやるよ。確か、グラン侯爵の依頼なんだろ?」
「ええ、正解には、まだ受注していないので、私はこれから、領主邸に向かいます。」
「順番があべこべだな。まぁ、良い。俺は、俺の仕事をする。」
「ええ、宜しくお願いしますね。それでは、ルーシュくん。明日には、討伐報酬と買取り料金の用意が出来る筈なので、それまで、お待ち下さい。」
「分かりました。」
「ところで、坊主。」
「なんでしょう?」
「坊主の頭にへばりついているのは、もしかして、ドラゴンか?」
「ええ、使い魔のプリムです。」
「初めて見る竜種だな?」
「ホワイトプリムドラゴンです。」
「ふ〜ん、やっぱり知らない竜種だな。」
「ゴウン。後で説明しますから、今は、レッサードラゴンを。」
「おっと、そうだったな。じゃあな、坊主。」
取り敢えず、レッサードラゴンの納品を終えたルーシュ。
もう、ギルドには用事は無いと、サーシャに挨拶してから、帰宅したのだった。
一方、その頃、ギルドマスターは、領主邸を訪れていた。正式に、レッサードラゴンの討伐依頼の受注と、指名依頼の件の為である。
領主邸の応接室に通されると、すぐに、領主がやって来た。
「待たせたな。」
「いえ。此方こそ、突然、お伺いして申し訳ありません。」
「構わんよ。例のレッサードラゴンの件だろう?」
「はい。正式に、指名依頼を受けてもらえる事になりました。」
「そうか、助かる。」
「はい。それで、レッサードラゴンですが、既に、ギルドに納品済みです。」
「何っ!?まだ、正式に依頼を出していないぞっ!?しかも、昨日の今日ではないかっ!?」
「事実です。本人に話をしたところ、既に、討伐済みとの事で、納品して頂きました。
グラン侯爵様のご希望通り、前回の物よりも、ひと回り大きく、状態も良く、一級品です。」
「流石に驚いたな。そもそも、レッサードラゴンは高位の魔物では無かったのか?しかも、それを、単独で2体も討伐しているとは。」
「そうですね。レッサードラゴンは、魔物の強さでは、A +。限りなく、 Sランクに近い。それを、ソロで討伐となると、本人の実力は、間違い無く、 Sランクです。」
「なるほど。では、近い将来、我が国に、Sランク冒険者が、誕生するわけだ。」
「それについては、一つ懸念が。」
「何だ?」
「どうやら、当人は、他国から来たようです。なんでも、竜山を越えて、此方に来たと。」
「何とっ!?竜山を越えたのか!?命知らずだなっ!」
「ええ。ですか、そのおかげで、レッサードラゴンの素体を、手に入れる事が出来ましたので。」
「確かにな。ゲイン、それで、その冒険者は、どんな人物だ?」
「そうですね。実力は間違い無く、それでいて、礼儀正しく、教養もあり、気遣いも出来る。何より、お金に執着していない。
そもそも、正式な依頼の前に、何の担保も無く、現物を納品する冒険者など、私の記憶には、おりません。」
「非の打ち所が無いな。よほど、高潔な者なのだな。名を何と言う。」
「ルーシュと申します。年齢は、10歳です。」
「ん?わしの聞き間違いか?今、10歳と言ったか?」
「いえ、間違いでは無いです。10歳の少年です。」
「何と・・・。その様な、幼な子が、 Sランクの実力を秘めているなど、過去にあったか?」
「まず、無いかと。間違い無く、最年少記録になります。」
「益々、興味深いな。当人、ルーシュと言ったか、一度、会ってみたいが、可能か?」
「そうですね。本人に話をしてみます。」
「宜しく頼む。それで報酬だが、確か、マモスキーは、金貨750枚だったな?」
「はい。ですので、今回は、大きさも含め、指名依頼となりますので・・・。」
「分かっておる。ならば、金貨1000枚で、どうだ?」
「妥当な報酬かと。」
「良し。では、それで頼む。
しかし、他国の生まれか。何とか、我が国に居着いてくれれば良いのだが。」
「ええ。あと、これは余談ですが、かの者は、使い魔を従えております。」
「まぁ、それだけの力があるのだ。不思議では無いな。それが、どうした?」
「その使い魔が、始祖竜の幼体であってもですか?」
「何だと!?それは、誠かっ!?」
「はい。確認済みです。」
「そうか。あまりにも、規格外過ぎて、その者を表現する言葉が、思い浮かばんな。
ん、そう言えば、竜山を越えたと言っていたな?まさか、始祖竜が住み着いているのか?」
「いえ、当人曰く、始祖竜の成体は、居なかったと。」
「しかし、あの山は、古代竜が住み着いていると、されていたはずだが?それは、どうだ?」
「いえ、それについては、話を聞いておりません。」
「気になるな。もし仮に、古代竜が居た場合、何事も無く、此方に来れるものなのか?」
「普通に考えるなら、不可能ですね。」
「では、居た場合、討伐した可能性もある訳だ。」
「そうなりますね。」
「そうなると、もう、我が領だけの問題では無くなるな。陛下にご報告せねばならんな。」
「しかし、まだ仮定の話ですが。」
「いや、どの道、報告はしないとならん。現時点で、既に、 Sランクに届く実績があるのだからな。早いに越した事は無い。」
「そうですね。世界で7人目の Sランクになるかも知れませんから、しかも、最年少で。」
ルーシュの知らないところで、話がどんどん進んでしまった。
冒険者の最高ランクである Sランク。
現在、世界で、6名しか存在していない、超越者達である。彼らは尊敬の対象として、6賢人と呼ばれている。
その頂きに、既に、手が届きそうな場所にいるのが、ルーシュだ。
所変わって、冒険者ギルドでは、ゴウンが、レッサードラゴンの査定を終わり、サーシャのところに、報告に来ていた。
「サーシャの嬢ちゃん、今、良いか?」
「ゴウンさん、どうかしましたか?」
「あの坊主、ルーシュに指名依頼が入る事になった。」
「ルーシュくんに、どなたからの依頼ですか?」
「グラン侯爵だ。」
「領主様ですか。どんな依頼ですか?」
「レッサードラゴンの討伐と納品だ。」
「えっ!?また、レッサードラゴンっ!?」
「ああ、前のレッサードラゴンの討伐依頼をした、何たらって貴族いたろ?」
「マモスキー子爵様ですね。」
「そうそう、そのマモスキーだかホモスキーだかのせいで、領主様から、指名依頼だ。」
「どう言う事です?」
「なんでも、領主様の派閥に、ホモスキーがいるらしくてな。ようは、貴族の見栄ってやつで、ホモスキーのよりも、大きいレッサードラゴンが、欲しいらしい。」
「なるほど。あと、ゴウンさん。ホモスキーでは無く、マモスキー子爵様です。」
「ああ、そうか。まぁ、それはどうでも良い。そう言う訳で、坊主に指名依頼が入る訳だが、坊主の奴、既に、レッサードラゴンの討伐終えていてな、現物を置いていった。」
「まぁ、ルーシュくんなら、あり得そうですね。」
「まぁな。前回、納めた時も、レッサードラゴンの事をたかが下級竜って、言ってたからな。一応、魔物の最強種だぞ?」
「ははは・・・。」
「それで、さっきまで、査定してたって訳だ。で、これが、査定結果だ。」
「・・・また、随分と多いですね。」
「前回より大きいって、言ったろ?だから、その金額だ。状態も前回同様、死にたてホヤホヤの一級品だ。坊主の魔法は、どうなってるんだ?正直、意味不明だ。」
「う〜ん、昨夜、ルーシュくんから、魔法の話を聞いたのですが、知識が凄かったです。まるで、偉い学者さんみたいでした。」
「そうか。あの歳で、これだけの実力を持ってるからな。知識も豊富なんだろう。
そう言う事だから、これ、宜しくな。
今、ギルマスが、領主様の所で、正式な依頼を受けている筈だ。」
「分かりました。」
「にしても、嬢ちゃんもツイてるな。坊主の担当になったおかげで、次の給金、3倍以上になるんじゃないか?」
「・・・そうですね。」
そこで、隣で、聞き耳を立てていたビッチュが、こりもせず、絡んできた。
「ちょっ!3倍って、本当ですかっ!?」
「なんだ、ビッチュ、聞いてのか?そんな暇あったら、仕事しろ。」
「そんな事より、サーシャ先輩ばかりズルいじゃないですかー!私なんて、減給なのにっ!!」
「そりゃ、お前の自業自得だろ?それとも何か?お前の担当している冒険者が、レッサードラゴン討伐して、死体、丸ごと持って来れんのか?」
「うっ、それは・・・。」
「文句ばっか言ってないで、仕事しろ、仕事。ちゃんと仕事してりゃ、いつか、お前も、稼げる様になるさ。」
「仕事してますよー!」
「してねーだろ、今だって。」
「うっ・・・。」
「ったく、学習しねぇな、お前は。」
完膚なきまで、叩きのめされるビッチュ。果たして、彼女に挽回のチャンスは訪れるのか?
そんな話の中心人物であるルーシュだが、サーシャの家に帰って来たはいいが、またしても、暇を持て余していた。
(参ったな、本当にする事が無い・・・。
・・・。
・・・。
・・・おっ!そうだっ!!アレを作っておこうっ!!)
何か閃いた様で、〈インベントリ〉から、次々と、道具と材料を取り出す。
ルーシュが作ろうと思ったのは、魔法薬である。
昨日、爆買いしていた時に、訪れた魔法薬店で、品定めをしていたが、ルーシュの求めていた物が無かったのだ。いや、物自体はあったのだが、品質が良く無かった。なので、無いなら、自分で作れば良いと、道具と材料だけ、購入してきたのである。
ルーシュには、技能〈状態異常無効〉があるので、別段、必要の無い物だが、あっても困らない物なので、作成しようと言う訳だ。
(まずは、基本のポーションだな。)
鍋に水を入れ、火にかける。その間に、すり鉢で、材料となる薬草をゴリゴリと、粉末になるまで、砕いていく。薬草の効能を高める為、魔力を流し込んでいくのも忘れない。これをお湯に溶かして、冷ませば、ポーションの完成だ。
まだ、冷めていないが、魔力を十分含んだ、高品質の物が出来た。
(良しっ!取り敢えず、ちょっと、味見してっと。
苦っ!!うん、品質が良くなると、苦味が増すんだよね。う〜ん、飲みたくないなぁ・・・。あれを加えてみるか。)
今度は、果実をすりおろし始める。そして、それを、ポーションに加えて、よく混ぜる。
(どれどれ・・・、おっ、ほんのり甘い感じになったな。品質は・・・。うん、落ちてい無い。)
このルーシュのポーション作成。はっきり言って、邪道である。
本来、ポーションに、果実のすりおろしを入れたりはしない。
ポーションは、薬草と水と魔力と言うのが、一般的だ。そう、それでしか出来無いと思われているだけで、ルーシュの様に、試した者がいないだけだ。
当然、全ての魔法薬に、同じ事が出来る訳では無いが、これも皆、固定概念に囚われているから、やらないだけで、今、ルーシュは、その壁を壊した。
魔法薬を作る者、研究する者は、その効能の方ばかり気にして、味にはこだわらない。
だが、ルーシュは、研究者では無いので、その枠に入らない。考え方の違いである。
まぁ、実は技能の恩恵で、結果が分かっていたからでもあるのだが。
そうやって、次は、魔力ポーションや、毒消し薬など、次々と作っていくルーシュ。
本来、魔法薬は、時間とともに劣化していくが、〈インベントリ〉があるので、その心配も無い。
その作業は、サーシャが帰って来るまで、続けられ、帰宅したサーシャは、部屋の床一面に広がる魔法薬の瓶を見て、仰天したのだった。
ビッチュが再び、登場です。相変わらずの残念ぶりですが。ルーシュは、魔法薬も作れるようです。多才ですね。さて、領主とは会う事になるのか?
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