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ホルルドの街⑤

今回の作品は、他の方の作品と、極力被らない様に、オリジナルティーを重視して、書き上げて参ります。

異世界ものではありますが、主人公は、1作品目、2作品目とは、立ち位置が違います。

予定では、かなりの長編になる予定ですので、読み応えがあれば良いなぁと、思う次第です。

少しでも、多くの方に、読んで頂ければ、ありがたいです。

誤字脱字等、あると思いますので、ご指摘もお願い致します。

ルーシュの魔法講義と、サーシャの母親の治療の話で、すっかり、時間が経ってしまった。

今日は、サーシャが先に風呂に入り、後から、ルーシュとプリムが入る。

プリムをしっかりと洗いたかったので、後にしてもらったのだ。

初めての風呂で、プリムは、大騒ぎだ。バシャバシャと、お湯をはねている。

風呂上がりに、温風を吹かせて、念入りに、プリムの羽根を乾かすルーシュ。

プリムを乾かし終わると、自分の髪を、同様に乾かす。

問題は、その後だ。


(う〜ん、()()を着るのか・・・。本当に?・・・でも、買っちゃったし。)


と、悩んでいるのは、例の寝衣のせいである。


(まっ、いっか。恥ずかしいのは、最初だけ・・・。)


腹を括って、例の寝衣を着る事にした。

そして、脱衣所を出ると、


「あっ、ルーシュくん。随分と時間がかかったのね。プリムちゃんの・・・って、何?その恰好?」


「やっぱり、変ですよね・・・。」


「い、いや、変じゃないけど。可愛いし。」


「・・・・・可愛いか。」


ガクッと、項垂れると、それに合わせて、ウサミミもペタンと、力無く垂れた。


「もしかして、オリビアのチョイス?」


「・・・ええ。」


「そうなのね。あの娘らしいと言うか・・・。ま、まあ、その恰好で、外を出歩く訳じゃ無いし、問題無いんじゃない?」


「そうですね。」


「ようは慣れよ、慣れ。着慣れちゃえば、気にしなくなるわよ。それに、そういう寝衣があるって事は、他の子供も、着てる筈だし。」


「はっ!?そうですねっ!僕だけじゃないっ!!」


今度はウサミミが、ピンっと、立った。


「そうよ。それより、もう、かなり遅い時間よ?明日に備えて、もう、寝ましょう。」


「はいっ!お休みなさい。」


「キュイっ!」


「ええ、お休み。」


就寝につく、2人と1匹。

本当に夜遅くになってしまっていたので、すぐに、眠りにつくのだった。



明けて、翌朝。

前日の朝と同様、食欲のそそる匂いで、目を覚ましたルーシュ。

プリムはと言うと、既に、焼いた薄切り肉を、前足で掴んで、ハグハグと、食べていた。

サーシャにも慣れ、今は、餌付けされていた。


「プリム、早起きだね。」


「キュム?」


「あぁ、良い。そのまま、食べてて。サーシャさん、おはようございます。プリムのご飯まで、ありがとうございます。」


「おはよう、ルーシュくん。気にしないで、頂戴。プリムちゃん、小さいし、負担にはならないから。

それより、顔を洗ってきたら?そうしたら、私達も、朝食にしましょう。」


その後、朝食を摂る2人。対して、既に、肉を食べ終えたプリムは、器用に、前足で皿を持って、注がれていたミルクを飲んでいた。


食後は、片付けをサーシャに任せ、ルーシュは、着替えを始めた。例の冒険者()の服に。

既に、サーシャは、ギルドの制服に着替えており、ルーシュの準備が整い次第、出発出来る。

あまり、のんびりしていては、サーシャが遅刻してしまう為、素早く、着替える。

着替えを終え、プリムを抱っこすると、サーシャから、声がかかった。


「・・・派手ね。」


「やっぱり、そう思いますよね。オリビアさんには、()()()()()服をって、お願いしたんですけど・・・。」


「全く、あの娘は・・・。それに、プリムちゃんまで連れて行くとなると、間違いなく、目立つわね。」


「ええ、なので・・・。プリム、このフードの中に入ってくれる?」


そう、今、ルーシュは、フードを被っていなかった。自身が目立つ事は、諦めて、せめて、プリムだけでも、目立た無い様に、フードの中に身を潜ませてもらうつもりだった。

しかし、プリムは、ルーシュの身体をよじ登ると、頭の上に移動し、そのまま、しがみついた。


「え〜、プリムさん?頭の上(そこ)じゃなく、フードの中に入ってくれる?」


「キュイ、キュイ」


返事はしたもの、移動はせず、更に、ぐでーっと、引っ付いてしまった。


「どうするのこれ。さっきより、目立つわよ?」


「・・・どうしましょう?・・・あっ!そうだっ!!」


空席になってしまったフードを、プリムごと被ったルーシュ。多少、窮屈だが、元々、顔を隠す為に、大きめの物を購入したのが、幸いした。


「これなら、何となると思いますが・・・。」


「そうね、さっきよりは、ましかも。」


やっと、準備が整い、2人と1匹は、家を後にした。



冒険者ギルドに着くと、やはり、目立つのか、あちこちから、視線や、ヒソヒソと声が聞こえる。


「あれ、()()子供じゃないか?」


「一昨日、〈夜の狼〉との騒動の?」


「違う違う、それもあるが、昨日の話だ。」


「あぁ、そっちかっ!確かに、そうかも。」


「なになに、何の話?」


「実は昨日・・・・・。」


様々な声が聞こえるが、自分から、話に加わるなど、論外なので、さっさと、用事を済ませる為、サーシャの受付けの窓口に向かう。


「それじゃあ、ギルドカードの提出と、こちらの用紙に記入をお願い致します。」


流石は、プロである。既に、サーシャは、仕事モードに切り替えていた。

ルーシュは、ギルドカードを提出すると、差し出された用紙に、必要事項を記入し、それも提出した。

プリムは、朝食でお腹一杯になったのか、ルーシュの頭の上で、スヤスヤと、寝てしまっている。

ギルドカードの更新は、すぐに終わり、使い魔(ペット)ホワイトプリムドラゴンと、追加されていた。


「ギルドカードの更新は以上となります。他に、ご用件はございませんか?」


「はい。使い魔(ペット)の登録だけで、結構です。」


「そうですか。では、前回、延期した、冒険者ギルドをご利用にあたってのご説明は、如何でしょうか?」


「ああ、そう言えば、聞いていませんでしたね。では、お願いしても?」


「畏まりました。それでは、ご説明させて頂きます。

冒険者ギルドは、冒険者の方とご依頼主様との間を、仲介させて頂く機関になります。

ご依頼の内容は、個人的なものから、村や街、更には、貴族の方、国からのものなど、多くあります。

素材の採取や魔物の討伐、護衛依頼、更に、指名依頼などがございます。

それぞれのご依頼には、冒険者ギルドの審査により、ランク付けが行われ、ご依頼主様には、規定の依頼金と報酬をお支払い頂きます。

ご依頼内容は、あちらのボードに、記載された用紙を貼り付け、それを、冒険者の方が、選択し、こちらの窓口で受注手続きを行なって頂きます。

ただし、ご依頼にランクがある様に、冒険者の方にも、ランクがありますので、冒険者の方が、受けられるご依頼には、制限がございます。

ご自身のランクより、1つ上のランクまでと、させて頂いております。これは、冒険者の方の安全を守る為の措置ですので、ご了承下さい。

冒険者ランクは、下から、F、E、D、C、B、A、 Sとなり、実績に応じて、ランクアップとなります。

次に、ご依頼には期限もございます。期限内に、ご依頼を達成出来ない場合、報酬の減額、最悪、報酬支払い無しとなりますので、ご注意下さい。また、未達成を繰り返されますと、冒険者ランクダウン等のペナルティーが、科せられますので、そちらも、ご注意下さい。

ご依頼を達成されましたら、窓口にて、ご確認をさせて頂きます。

素材採取であれば現物を、討伐依頼であれば、指定部位の提出をお願い致します。

尚、護衛依頼の場合などは、ご依頼主様のサインを、依頼書にご記入して頂き、そちらを提出をして頂く形となります。サインの未記入ですと、ご依頼を達成しましても、報酬のお支払いは出来ませんので、忘れずに、ご記入して頂て下さい。

万が一、ご依頼達成にも関わらず、ご依頼主様がサインを拒否した場合は、冒険者ギルドにご報告下さい。調査の上、ご依頼主様には、法的処罰が下され、報酬もお支払い可能となります。

また、冒険者ギルドでは、魔物の素材の買取りや迷宮(ラビリンス)等で、発見した物の買取りも行なっております。

魔物の素材ですと、代表的な物は、魔石になります。その他、ご費用はかかりますが、解体作業をギルドでも承っておりますので、お声掛け下さい。

以上で、ご説明は、終了となりますが、何か、ご質問はございますか?」


「いえ、大丈夫です。」


「そうですか。今度、何か、ご質問などがございましたら、お気軽にお声掛け下さい。」


説明も終わり、さて、帰るかと、ルーシュがその場を離れようとした時、ギルドマスターがやって来た。


「やあ、ルーシュくん。おはようございます。」


「ギルドマスターさん、おはようございます。」


「今日は、もうお帰りですか?」


「はい。使い魔(ペット)登録をしに来ただけなので。」


「そうでしたか。サーシャくん、用紙を見せてもらえますか?え〜と、ホワイトプリムドラゴン。

・・・はあぁ!?ほ、ホワイトプリムドラゴンっ!?ち、ちょっと、ルーシュくんっ!?これは、本当ですかっ!?」


いつも、冷静なギルドマスターが、ここまで、動揺するのは珍しいと、サーシャのみならず、近くにいたギルド職員達も、驚いていた。


「ええ、まだ、幼体ですが。僕の頭の上で、寝てしまっているのが、ホワイトプリムドラゴンのプリムです。」


「こ、これが、あのホワイトプリムドラゴン、始まりの竜・・・。初めて見ました。」


「ギルドマスター、始まりの竜って、なんでしょうか?」


「サーシャくん、ご存じじゃないんですか?おとぎ話で、聞いた事がありませんか?この世界に、始めて産み落とされた生命体、竜の事を。」


「存じてます。・・・えっ?えぇーっ!?それじゃあ、プリムちゃんって・・・。」


「素に戻ってますよ、サーシャくん。まぁ、無理もないですが・・・。その始まりの竜、始祖竜が、ホワイトプリムドラゴンなんです。

はぁ、それにしても、ルーシュくん。よく、使い魔(ペット)契約結べましたね?幼体とは言え、魔物のランク、推定 S S Sランクですよ。あっ、そう言えば、始祖竜は、魔物じゃありませんでしたね。」


「えっ、そうなんですか?」


「そうですよ、サーシャくん。始祖竜は、魔物ではなく、神獣です。そうですよね、ルーシュくん。」


「はい。その通りです。」


「しかし、まさか、始祖竜とは・・・。ルーシュくんは、本当に規格外ですね。」


「ははは・・・。」


「そんな、ルーシュくんに、一つご相談があるのですが、少し、お時間を頂けませんか?」


「えっと、そうですねぇ・・・。少しだけなら。」


「ええ、時間は取らせません。では、私の部屋、ギルドマスター室で、お話しましょう。ついて来て下さい。」


使い魔(ペット)登録だけの為、訪れたのに、ギルドマスター室に行く事になってしまったルーシュ。ギルドマスター室に着くと、ソファに座る様、勧められ、今は、ギルドマスターが、お茶の用意をしてくれている。


「どうぞ。」


「いただきます。・・・美味しい。」


「おや、ルーシュくんは、紅茶は、初めてでしたか?」


「え、ええ。」


「そうでしたか。遠慮せずに、飲んで下さい。おかわりもありますので。」


「ありがとうございます。」


「さて、ご相談の前に、質問をさせて下さい。

そのホワイトプリムドラゴンは、どこで、見つけたのですか?答えられないなら、それでも結構です。」


「えっと、この街の東側の山脈は、分かりますよね?」


「ええ、勿論。竜山がある場所ですね。まさか、そこですか?」


「いえ、その更に東側の森の中で、出会いました。」


「そうでしたか。んっ?それでは、ルーシュくんは、竜山を越えて、こちらに来たんですか?無茶をしましたね。あそこには、レッサードラゴンを超える古代竜(エンシェントドラゴン)もいると、噂されているのに。

はっ!もしかして、そこに始祖竜がいるのですか!?」


「いえ、始祖竜は、居ませんでしたよ。」


「そうですか。それにしても、竜山を越えて来たとは、驚きです。レッサードラゴンの持ち込みから、竜山に入ったのは、想像していましたが。」


「ははは・・・。」


「実は、ご相談と言うのは、そのレッサードラゴンについてです。」


「ん?何か問題がありましたか?」


「いえ、買い取らさせて頂いたレッサードラゴンは、一級品で、問題ありません。問題は、その依頼自体にあります。

ルーシュくんは、このホルルドの街、そして、ホルルドを含め、グラン領を治めているご領主、グラン侯爵様をご存じですか?」


「そうですね。ここがグラン領で、この街をご領主様が治めている事までは、知っていました。」


「そうですか。で、今回、レッサードラゴンの討伐依頼と素材の買取りを希望していたのが、その寄子のマモスキー子爵様になります。

マモスキー子爵様は、魔物の剥製の収集家で、それで、竜種の剥製が欲しいとの事で、今回の依頼になりました。

ルーシュくんの持ち込んだ、レッサードラゴンは、一級品である事をお伝えしたら、大変お喜びになったそうです。

しかし、ここで、問題が発生しました。

寄親であるグラン侯爵様が、寄子が、自分よりも、力の象徴である竜の剥製を、手に入れる事に、異議を唱えたのです。

別に、グラン侯爵様は、魔物の剥製に、ご興味をお持ちの方ではないのですが、これは、貴族の面子と言いますか、下の者に自身よりも()()のある物を手に入れられるのは、世間的が宜しくないと言う事です。」


貴族には、爵位制の階級制度がある。

下から、騎士爵、準男爵、男爵、子爵、伯爵、侯爵、公爵となり、そこには、当然、権力差がある。

公爵から伯爵までを、上級貴族。その下を下級貴族とも呼ぶ。

更に、その貴族達の頂点に、国を治める国主がいるが、国よって、呼び名が変わる。

全ての貴族は、国主の臣下であるが、ただ、貴族には、派閥と言うものが存在している。

その派閥のトップが、寄親であり、当然、爵位も高い。そして、その下に、寄子である爵位の低い貴族が集まり、派閥が出来上がる。


「では、僕にまた、レッサードラゴンを討伐、素材を納品しろって事ですか?」


「まあ、可能であればと言う話です。流石に、古代竜(エンシェントドラゴン)をとは、言えませんが、納品されたレッサードラゴンと同等、もしくは、それを超える大きさであれば、助かります。受けてもらえるなら、指名依頼料も、お支払い致します。」


「そうですか・・・。」


「やはり、厳しいですかね?」


「いいえ、平気ですよ。」


「そうですよね、無理ですよね。・・・えっ!?今、何と!?」


「だから、大丈夫ですよ。」


「本当ですかっ!ありがとうございます。」


「ただ、その依頼、まだなんですよね?」


「ええ、これから、グラン侯爵様に報告をしてからになりますね。それが?」


「いや、もう既に、あるですけど。レッサードラゴンの死骸。」


「はい?」


「もう既に、討伐しちゃってるんです。」


「・・・。本当に?」


「はい。でも、さっき、サーシャさんから、冒険者ギルドの説明を受けたのですが、依頼は、ギルドが受注してからと、聞いたので。」


「確かにそうです。ですが、今回は構いません。少しでも早く、納品して頂ければ助かりますし、いくら、〈アイテムボックス〉が使えるとは言え、時間経過で、素材が痛んでしまうので。

早速ですが、解体場に納品してもらえませんか?」


「構いませんが、スペースありますか?前回のレッサードラゴンがあったら、置き場が無いと思うのですが?」


「それについても、問題ありません。あの後、すぐに解体作業を終え、搬出済みですので。」


と、再び、レッサードラゴンを納品する事になった。

プロフィッシュナルなサーシャさん、格好良いですね。ルーシュは、貴族の揉め事に巻き込まれそうです。

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