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ホルルドの街③

今回の作品は、他の方の作品と、極力被らない様に、オリジナルティーを重視して、書き上げて参ります。

異世界ものではありますが、主人公は、1作品目、2作品目とは、立ち位置が違います。

今作は、行き当たりばったりで、作ったものではなく、大筋の展開を作り上げてから、書いております。

予定では、かなりの長編になる予定ですので、読み応えがあれば良いなぁと、思う次第です。

少しでも、多くの方に、読んで頂ければ、ありがたいです。

誤字脱字等、あると思いますので、ご指摘もお願い致します。

たった1日で、色々やらかしたルーシュだったが、それも、やっと終わりを迎える。

現在は、サーシャのご厚意に甘えて、サーシャの家に、到着したところだった。


「狭い部屋で、申し訳ないけど、遠慮せずに上がって。」


「お邪魔します。」


サーシャは狭いと言ったが、一人暮らしの部屋と考えたら、十分な大きさの部屋だった。


「それじゃあ、ルーシュくん。()()をお願い。」


「はい。」


サーシャは、夕食をお願いと言ったが、ルーシュに作れ、と言う意味では無い。

サーシャも、普段から料理はするが、冒険者ギルドの仕事は、夜遅くまで続く事もある為、ギルドの食事処で済ませる場合もある。

しかし、今回は、ルーシュがいる。

つまり、ギルドで料理を買って、ルーシュの魔法で、運んで来たのだ。ルーシュが手をかざすと、テーブルの上に、料理が次々と並ぶ。

これも、サーシャが大食い、と言う訳では無い。

ルーシュが今日、食べた食事が、森の果実のみだった為、多めに購入しただけである。


「わぁ、湯気が立ってる。本当に、作り立てみたい。」


「えぇ、便利な魔法です。」


「それじゃあ、冷めない内に、頂きましょう。」


食事を始める2人。特段、特別な料理では無いが、記憶の無いルーシュにとっては、初めて食べる料理と変わらない。調理された食事の味に、感動していると、話も弾んだ。


「そう言えば、服を買いに行きたいんだっけ?」


「ええ。おすすめのお店があれば、教えて下さい。」


「そうねぇ〜、弟の服を貸すって話だったけど、その服を買ったお店でも良い?」


「はい。」


「オリビアってお店なんだけど。あっ、オリビアって言うのは、お店の店長さんの名前からついた店名なの。」


「そのオリビアさんは、サーシャさんのお知り合いの方なんですか?」


「ええ。私が、このホルルドの街に来た時からの付き合いよ。元々は、他のお店の店員さんだったんだけど、独立して、自分のお店を開いたの。」


「へぇ〜、凄いですね。」


「ええ。彼女は、凄い努力家なの。見習うべきところが、多いわ。」


「なるほど。では、明日、そのオリビアさんのお店に行きたいと思います。」


「私の紹介って、話せば、サービスしてくれる筈よ。」


「分かりました。それと、話が変わりますが、魔物を使い魔(ペット)契約した場合、街に連れて来る事は、出来ますか?」


「そうねぇ〜、あまりに大きな魔物は無理だけど、大抵の場合は、平気よ。

ただ、冒険者の場合は、ギルドに登録してもらうけど。

そんな質問をしたって事は、もう、使い魔(ペット)契約をしたの?」


「はい。でも、小さい魔物ですよ?」


「それなら、問題無いわね。ルーシュくんの事だから、てっきり、レッサードラゴンと契約しているかもって、思っちゃったわ。」


「そ、そんな事ないですよっ!?」


「ルーシュくん?」


「・・・しました。レッサードラゴンとも。」


「・・・そう。流石に、レッサードラゴンは、街中に連れて来れないわよ。」


「大丈夫ですっ!()()は、呼びませんからっ!!」


「えっ、彼ら?」


「あっ!?」


「ルーシュくん、詳しい事は聞かないけど、絶対ダメよ。」


「・・・はい。」


墓穴に墓穴を掘ってしまったルーシュ。

幸い、深く追求されなかったので良かったが、50匹を超えるレッサードラゴンを従えている事が、知られたら、戦争でもする気っ!?と、正気を疑われていただろう。


楽しい(?)夕食を終え、サーシャのご厚意で、先に、お風呂を使わせてもらった。

森と山を越え、竜達と戦闘もして、それなりに、汚れていたので助かった。

サーシャの話では、宿によっては、風呂が無い所もあるらしいので、サーシャの家は、設備も充実している事になる。

風呂上がりには、サーシャの弟の服を借りて、やっと、まともな姿になったルーシュ。

サーシャが風呂に入ると、暇になったので、ギルドで買った地図を確認する。


(やっぱり、国境を越えて来ちゃったんだな。

・・・うん。ホルルドの街で、旅支度を済ませたら、山に戻った方が良いかも?問題はその後だなぁ〜。北か、東か、それとも南か。う〜ん、南側が1番、国の数が少ないから、そっちかな?)


それから、その夜は、ソファを借りて、就寝したルーシュ。ソファでも、記憶が無いので、心地良い眠りにつく事が出来た。



翌朝、食欲をそそる匂いで、目が覚めたルーシュ。

サーシャが、朝食を作っていたのだ。


「あら、ルーシュくん、おはよう。」


「おはようございます、サーシャさん。」


「よく寝れた?」


「もう、ぐっすりと。」


「それなら、良かったわ。顔を洗ってきたら?そうしたら、朝食にしましょう。」


まるで、新婚さんのような会話をする2人。いや、むしろ、親子の方が、しっくりくるか。

サーシャの作った朝食に、舌鼓を打ちながら、オリビアの店の場所を教えてもらい、サーシャはギルドへ、ルーシュは、オリビアの店に向かって行った。



サーシャに教えてもらったお店、オリビアは、個人経営の為、それ程、大きくは無い。しかし、店先は、綺麗に清掃されており、外観も良く、不潔さは感じられない。

店の扉を開くと、耳心地の良い鈴の音が響いた。


「いらっしゃいませ〜〜。」


元気な声で、赤毛の女性が、ルーシュを出迎える。サーシャに教えてもらっていた、オリビアだ。


「冒険者ギルドのサーシャさんの紹介で来ました。」


「あら、サーシャの紹介?じゃあ、冒険者さん?」


「成り立てですが、そうです。ルーシュといいます。」


「ご挨拶、どうも。聞いていると思うけど、店主のオリビアです。」


「宜しくお願いします。」


「若いのに、しっかりしているのね。こちらこそ、宜しく。

うちに来たって事は、服を買い来たのよね?」


「はい、冒険者が着ても、不自然じゃない服と、普段着、下着なんかが、欲しいです。」


「数着必要なのね?でも、少し、お金がかかるけど、大丈夫?」


「昨日、ギルドで、討伐報酬や素材の買取りをしてもらったので、平気だと思います。」


いや、金貨2000枚以上の資金があるのに、平気だと思うと言う、ルーシュの金銭感覚は、おかしい。


「じゃあ、案内するわね。」


と、オリビアが向かった先は、案の定、女の子向けの服があるコーナーだった。


「オリビアさん。」


「何かしら?ルーシュちゃん、可愛いから、どんな服でも似合いそうで、迷っちゃうわね。何か、気になる服があった?」


「いえ、そうではなくて、僕、男性です。」


「えっ?」


()です。」


「う、うそっ!?男の子っ!?あぁ、もしかして、男の娘(おとのこ)?」


「いえ、女装癖はありません。それに、それは、性別でもないです。」


「う、うん。ごめんなさい。少し、動揺してたわ。」


オリビアの告白に、自分自身も経験したなぁ〜と、共感するルーシュ。

2人は、男の子の服のコーナーへと、移動した。


「えっと、先ずは、冒険者風の服だったわね?」


風ではなくて、一応、冒険者なんだけど、と言う言葉を飲み込んで、


「はい、そんな感じの服で。」


と、応えるルーシュ。


「そうねぇ〜、他にリクエストは無い?」


「そうですねぇ〜、出来るだけ、動き易い服が良いです。走り回ったりするので。」


「他には?」


「あぁ、フード付きの服とかあれば、助かります。よく女の子に間違われるので、顔を隠せる様に出来たら、良いですね。」


「う〜ん、折角、綺麗な顔なんだから、隠すのは、勿体ないと思うけど?」


「あまり目立ちたく無いので。」


「そう?なら、しょうがないわね。」


オリビアを説得して、目立た無い服をお願いするルーシュ。

しかし、服よりも、行動を自重しないと、全く意味が無い。

結局、オリビアが選んだ服は、ルーシュのアイスブルーの瞳に合わせた青いシャツと、黒いパンツ。青いラインが入った、フード付きの白いコート。

全然、地味では無かった。


普段着も、フード付きの物をメインに、数着、選んでもらい、下着の替えも揃えた。

そして、寝衣も買ってみてはと、オリビアの勧めもあり、お願いしてみると、ウサギを模した着ぐるみみたいな寝衣を勧められた。

フードが付いているはいいが、別に、寝る時は必要無い。しかも、フードには、ウサミミが付いていた。

確かに、ルーシュに似合ってるが、果たしてこれは、男物?と、疑問の浮かぶチョイスだった。


「ありがとうございました〜〜。」


オリビアに見送られたルーシュは、既に、購入した普段着に、着替えており、フードで顔を隠し、街中に紛れていった。



街中を出歩くのは、観光が目的では無い。

旅支度をする為だ。

旅には、食料品と水、薬、野営用品など、多くの物が必要となる。

普通の冒険者なら、必要最低限の物だけと、荷物を選ばないといけないが、ルーシュは、それに該当しない。

更に言えば、ルーシュは、冒険者としての自覚も無ければ、経験も無い。そして、資金も潤沢だ。


一つの店に入ると、勧められるままに、買い物をし、店員に、欲しい物を取り扱っている店を教えてもらい、次の店を訪れる。

これを繰り返し、行なっている。

それ故に、無駄に、大量の物資を購入する事になるのだが、ルーシュの〈インベントリ〉の容量は底無しなので、問題は無い。

問題があるとすれば、資金の無駄遣いをしている事を、本人が自覚していない事と、大量に物資を買い込みすぎて、何を、どれだけ、購入したか、把握していない事だろう。

そして、ルーシュが訪れた店は、過去1番の売り上げをあげ、あの子は、どこの家の子だ?と、騒がしくなるのも、当然で。

〈爆買いする、フードを被った9〜10歳くらいの美少女〉の噂は、あっという間に、街中に広がっていくのである。

しかし、何故、容姿が分かってしまったのか?

それは、いくら、フードを被っていても、店員と接すれば、顔が知れてしまう。更に、爆買いである。記憶に残らない筈がない。まぁ、()()()と言う点は、間違っているが。


街中のあちこちに、買い物を行なったルーシュ。

観光目的では無かったが、そのおかげで、ホルルドの街の全体像が分かった。

ホルルドの街は、大きく分けて、4つの区画がある。

一つは、冒険者ギルドがある観光地区。ここは、冒険者や、ホルルドの街を訪れた人達向けの区画で、宿屋や食事処、酒場などが、多く建ち並んでいる。

次に、住宅地区。その名の通り、住宅が建ち並でいて、サーシャの家も、この区画にある。

そして、商業地区。ここは、オリビアのような店が、建ち並らんでおり、武器等を扱う店や、魔法薬を扱う店、食料品を扱う店、更に、複数の出店が並ぶ大きな市場がある。

最後に、高級住宅地区。ここは、大きな店の店主や、商会の主などの富裕層が暮らす区画。

そして、その中でも特段に、大きな敷地と大きな屋敷を構えているのが、このホルルドの街だけで無く、周辺の街も治めている、領主である。

まぁ、もうすぐ、レッサードラゴン達が住み着いている山に、戻ろうと考えているルーシュには、必要の無い知識だったが。



街での用事を済ませたルーシュは、再び、サーシャの家に戻っていた。

それは、借りていた服を、返す為でもあるが、それ以外にも、理由があった。


時間は少し前、昨日の就寝前。

サーシャは、ルーシュにある提案を行なった。


「ルーシュくんは、これから、どうするの?」


「どうするとは?」


「明日は、オリビアの店で、服を買うのは、聞いたわ。私が、聞きたいのは、その後よ。」


「う〜ん、明日は、オリビアさんのお店で、服を買って、その後、街を探索でしょうか?まぁ、あまり目立ちたくないので、ひっそりとですが。」


「泊まる所は?」


「勿論、探しますよ。今日は、サーシャさんのご厚意で、泊めて頂きましたが、服さえ手に入れれば、悪目立ちはしないと思うので。」


「う〜ん、それはどうかな?ルーシュくんの容姿だと、服を変えたぐらいじゃ、誤魔化せ無いと思うよ?」


「えっ!?」


「既に、冒険者ギルドで目立っちゃったし、宿屋の辺りは、冒険者達が多いから、今更、手遅れかも。」


「そ、そんな・・・。」


「それに、丁寧な言葉づかいで、礼儀正しいけど、どこか、抜けていると言うか、危なっかしいのよね。使い魔(ペット)の件でも、ポロッと、喋っちゃうし。」


「うっ!」


「だから、暫く、家に泊まらない?」


「え、でも、ご迷惑じゃ・・・。」


「全然、平気よ。それに、私は、ルーシュくんの担当受付嬢だし。

あっ!べ、別に、担当だからって、誰でも泊めている訳じゃ無いからねっ!?」


「は、はい。」


「ま、まぁ、そんな訳で、ルーシュくんさえ、良かったらだけど・・・。」


「・・・良いんですか?」


「勿論よ。誘ったのは、私自身なんだから。」


「え〜と、それじゃあ、暫く、お世話になります。」


「ええ、宜しく。あっ、明日、家の合鍵を渡しておくわ。お互い帰りが、不定期だし。」


「ありがとうございます。それで、僕からも提案があるのですが。

夕食は、今日みたいに、僕の方で用意させて下さい。お世話になりっぱなしと言うのは、気が引けるので・・・。」


「そうねぇ・・・。それじゃあ、お願いしようかしら?」


「はいっ!」


と言うやり取りがあった為、サーシャの家で、暫く、過ごす事になった。


サーシャの家に帰って来たのは、いいものの、まだ、夕暮れ時で、サーシャの帰宅は、もう少し、後になるだろう。

なので、ルーシュは、暇だった。


(むむむ、暇だ。早く帰って来すぎたかな?ただ、もう、正直言って、この街でする事無いんだよね。折角、サーシャさんのご厚意で、泊めてもらう事になったけど、やっぱり、レッサードラゴン達がいる山に、戻った方が良いかな?・・・

あっ、そうだっ!借りていた服を、洗っておこうっ!)


しかし、もう、夕暮れ時である。普通、洗濯は、朝行うもの。今から洗っては乾かない上、乾いても、生乾きになり、臭う。

だが、そこは、ルーシュクォリティ。

魔法で、全て、解決する。


(えっと、先ずは、水属性魔法で、大きな水球を作ってっと・・・、そこに、借りていた服を入れて、買ってきた洗剤も投入。あとは、水球内を回転させてっと・・・。良しっ!上手い具合に、洗濯出来てるな。あとは、暫く、放置。

あっ、その間に、部屋も掃除しちゃおう。

えっと、今度は、空間魔法で、小さな亜空間の球体を作ってっと、そこに風属性を加えて、吸い込む様にすれば・・・。おぉ、これは、中々、使えるな。ぐんぐん、ホコリを吸い込んでる。

そろそろ、洗濯はいいかな?それじゃあ、もう一つ、水球を作って、そっちに服を入れてっと・・・、もう一度、回転。これで、洗剤を落とせるはず・・・。良し、もう、良いかな?あとは、風属性で、球状の渦を作って、そこに、服を投入すれば・・・、服に付いた水分が、抜けていく。まぁ、これは、森の中でも試したから、分かってたんだけど。後は、そこに、火属性の熱だけを加えて、暫く、放置。)


ルーシュは、ごく自然に、これらの魔法を行使しているが、どれもが、既存の魔法に無いものばかり。

生活魔法と言えば、そうだが、魔法協会に発表すれば、新魔法発案者として、名を馳せる事になるだろう。


この後、帰って来たサーシャは、埃ひとつ無い、自分の部屋に、驚くのだった。

やっと服を買えたルーシュ。しかし、へんな噂が・・・。魔法も戦い以外に、使い方次第で、役に立つ様です。ホルルドの街には、いつまでいるのか?

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