ホルルドの街②
お久しぶりです。約2年ぶり、いや、3年ぶり(?)の3作品目になります。(2作品目は、行き詰まりました、ごめんなさい。)
今回の作品は、他の方の作品と、極力被らない様に、オリジナルティーを重視して、書き上げて参ります。
異世界ものではありますが、主人公は、1作品目、2作品目とは、立ち位置が違います。
今作は、行き当たりばったりで、作ったものではなく、大筋の展開を作り上げてから、書いております。
予定では、かなりの長編になる予定ですので、読み応えがあれば良いなぁと、思う次第です。
少しでも、多くの方に、読んで頂ければ、ありがたいです。
誤字脱字等、あると思いますので、ご指摘もお願い致します。
レッサードラゴンの討伐依頼の報酬の受け取りと、ランクアップの為、再び、受付カウンターに戻ったルーシュとサーシャ。
すると、まだ、話し込んでいたのか、ビッチェとケイソッツが、またまた、絡んできた。
「あれ〜、随分、時間がかかりましたね〜?ダメですよ〜、お仕事サボっちゃ♪」
「おうおう、一丁前に討伐依頼の報酬かぁ?じゃあ、魔物だったんだな。でも、どうやら、素材としては売れなかったみたいだな(笑)雑魚の魔物なら、次は、角兎辺りにするんだな。それなら、少しくらいは金になるぞ。くくく、少しくらいな(笑)」
と、勘違いをしている2人。
仕事をサボっているのは、明らかに、ビッチェで、素材の買取りは、絶賛査定中。
そんな2人に構ってられないと、サーシャは手続きを始めた。
「ルーシュくん、ギルドカードを提出して下さい。」
「はい、どうぞ。」
「それでは、レッサードラゴンの討伐報酬ですが、金貨750枚になります。」
「「えっ!?」」
「それから、カードの更新ですが、こちらが新たなカードになります。」
差し出されたカードは、FがAへと、変わっていた。
「それでは、こちらが報酬の金貨750枚です。ご確認下さい。」
「いえ、サーシャさんを信用しているので、このままで。」
報酬をサッと、〈インベントリ〉に収納するルーシュ。
隣のビッチェとケイソッツを含む、〈夜の狼〉のメンバーは、固まっていた。
「あと、レッサードラゴンの素材の買取りですが、現在、査定中なので・・・」
「ちょ、ちょっと、待って下さいっ!」
「何かしら?ビッチェさん?」
「レッサードラゴンって、あのレッサードラゴンですよね?A +ランクの。」
「そうですよ。私だけじゃ無く、ギルドマスターも確認しています。それに、ゴウンさんも、現在、査定中ですが?」
「だって、おかしいじゃないですかっ!?こんな子供がっ!しかも、今日、登録したばかりなのにっ!!」
「ですから、ギルドマスターから、Aランクに昇格する様に言われました。ですので、ルーシュくんは、Aランク冒険者です。」
「そ、そんな・・・。それじゃあ、素材の買取りも・・・。」
「当然、レッサードラゴンですよ。現在、査定中ですが、ゴウンさんとギルドマスター曰く、とても状態の良い物らしいので、高額で買い取らせて頂く事になるでしょうね。」
「なっ!?討伐報酬だけじゃ無く、買取り価格もっ!?
ズルいですっ先輩っ!!担当、私と代わって下さいっ!!」
「何を言ってるんですか、貴女は。そもそも、ルーシュくんの話を聞かずに、私に、貴女が任せたのでしょう?」
「そ、それはそうですけど・・・。ル、ルーシュくんだっけ、私を担当にしない?って言うか、しようよ〜♪」
「いえ、結構です。それにもう、あとは買取りだけですし。」
「そんなぁ〜〜。」
ビッチェが、悔しがるのも無理はない。サポート手当は、依頼報酬が高ければ高い程、多く貰える。素材の買取りも、同様に手当が付く。
それぞれの価格の1%が、担当の手当になる。たかが、1%と思うが、1人の受付嬢の担当冒険者は、多数いる。それが積み重ねれば、かなりの手当になる。
しかも、今回、ルーシュの討伐報酬は、金貨750枚。それに、買取り価格を含めれば、金貨2000枚は、確実だろう。つまり、サーシャのサポート手当は、金貨20枚以上。基本給に届く金額だ。ルーシュの依頼達成一つで、給金が2倍になるのだ。〈夜の狼〉のサポート手当とは、桁が違う。
項垂れるビッチェだったが、ケイソッツも黙ってはいない。
「は、ふざけんなっ!こんなガキが、レッサードラゴンを討伐出来る筈ないっ!!ましてや、Aランクだとっ!!」
「ですから、事実です。ギルドマスターが、お認めになったと、先程、申しましたが?」
「くっ!おい、ガキっ!!冒険者の先輩として、アドバイスしてやるから、その報酬、俺らに寄越せっ!!」
「ケイソッツさんっ!何を言ってるんですかっ!!それは、恐喝で犯罪行為ですよっ!!」
「うるせーっ!受付嬢は黙ってろっ!!これは、冒険者同士の話だっ!!おい、ガキっ!どうなんだっ!!」
「いえ、お断りします。」
「な、舐めやがってっ!!教育が必要だなぁ!!!」
無茶苦茶な事を言った挙句、遂には、腰に下げていた片手剣を抜き出した。
「ち、ちょっと、ケイソッツさんっ!!街中で、自衛目的以外の武器の使用は、犯罪行為ですよっ!!
厳罰として、ランクダウン!最悪、冒険者資格剥奪ですよっ!!」
「うるせぇーっ!!生意気なガキを教育してやるだけだっ!!どうだっ!びびって、動けねぇか?」
「・・・いえ、別に。」
「ゆ、許さねぇっ!!泣いて詫びろっ!!!」
遂に、ケイソッツが、ルーシュに斬りかかった。ハァと、ため息をつきながら、魔法を発動するルーシュ。
すると、ケイソッツに突然、強い力が上から下に向かって加わり、その場から、動けなくなった。
「なっ!?身体が急に重くっ!?」
そう、ルーシュの使った魔法は、重力魔法の〈グラビティ〉。
対象の重さを、何倍にも増やす事が出来る古代魔法。
軽い加圧では、動きを封じる程度だが、加圧を高めれば、骨や筋肉、内臓すらも粉砕する事が出来る、強力な魔法である。
「いい加減、言いがかりは、よして下さい。」
「こ、これは、お前がっ!?」
「そうですよ。恐喝に強迫、挙句に暴行未遂ですから。」
「くっ、こんな物っ!!」
「はい、重力3倍。」
「ぐわっ!!さ、更に重くっ!?」
「どうします?大人しくするなら、解除しますけど?」
「く、くそっ!!お、お前ら、見て、ないで、そ、その、ガキをっ!!」
ケイソッツは、〈夜の狼〉のメンバーに指示を出した。その指示に従い、今度は、〈夜の狼〉のメンバーが、ルーシュに襲い掛かろうとした。
しかし、ここでも、ルーシュが、〈グラビティ〉を〈多重発動〉、動きを封じる。
「な、何、やって、るっ!?」
「う、うご、けない・・・。」
「か、から、だが・・・。」
「う〜ん、まだまだ、元気そうですね?じゃあ、5
倍で。」
「なっ!ま、まっ・・・・・。」
流石に、身体を鍛えている冒険者でも、5倍の重力には、あがらえなかった様で、床に沈み、気を失った。
そんな騒動があれば、当然、いろんな人が気付く筈で、その中には、ギルドマスターも含まれていた。
「一体、何事ですか?」
ギルドマスターが訪ねると、サーシャが説明に入ったが、横から、ビッチェも加わり、話がややこしくなった。
「ふむ。サーシャくんとビッチェくんの話では、お互いに違いがありますね。」
「ギルドマスタ〜、私、嘘なんてついませ〜ん。その子が、〈夜の狼〉の皆さんを〜攻撃したんで〜す。」
〈夜の狼〉、特にケイソッツの所業を隠して、報告していた。
「確かに、〈夜の狼〉の皆さんは、気絶している様ですが、では、何故、武器を抜いているんですか?」
「そ、それは・・・。そ、そう、その子が攻撃をしたからっ!」
「ふむ。では、冒険者の皆さんにお尋ねします。状況を見ていた方が、いらっしゃったら、お願いします。」
すると、一人、また一人と、声をあげた。
「俺は、見てたぜ。ケイソッツの野郎が、その子に金を寄越せっ!って、恐喝しているところをっ!!」
「俺も!俺もっ!!」
「私も見たわ。ケイソッツ達が、その子に、武器を抜いて、襲い掛かろうとしてたわっ!」
「確かにそうだっ!もう完全に、犯罪だろっ!!」
〈夜の狼〉やビッチェの味方はいなかった。
「ビッチェくん、どうやら、話が違うようですが?」
「え、え〜と、でもでも、その子が、〈夜の狼〉の皆さんを攻撃しましたっ!」
「どうやってですか?ルーシュくんは、無手ですが?」
「ま、魔法ですっ!」
「ほう、魔法ですか。それは、どんな魔法でしたか?」
「えっ!?え、えっとですね・・・分かりません。」
「ほう、分からないのに、魔法だと?」
「でもでも、確かに〈夜の狼〉の皆さんは、気絶してますしっ!」
「そうですね。でも、それでは証拠になりませんよ。ルーシュくんが、魔法を使ったとして、詠唱をしていたのですか?」
「そ、それは・・・。」
「どちらにせよ、〈夜の狼〉の皆さんは、恐喝と暴行未遂は、間違い無い様ですので、ペナルティーが必要ですね。」
「ぺ、ペナルティーですか・・・。」
「これだけの事をしたんです、当然です。そうですね、冒険者ランクを、2ランクダウンとします。」
「2ランクダウン・・・、そ、そんな、私の金づるが・・・、手当が・・・。」
「それと、彼らの担当であるビッチェくんも、暫く減給です。」
「なっ!?わ、私は関係無いじゃないですかっ!!」
「いいえ、関係あります。本来なら、彼らの担当である貴女が、彼らの蛮行を止めるべきなのに、止めに入ったのは、サーシャくんではないですか。
それに、貴女の報告は、信用出来るものでは無かった。ですから、貴女にも、罰を受けてもらいます。」
「そ、そんな〜〜。」
「それでは、サーシャくん。あとは、お願いしますね。」
「畏まりました。」
結局と言うか、当然の結果で、〈夜の狼〉とビッチェに、処罰がくだされた。
ギルドマスターが退出するのと、入れ替わる様に、今度は、ゴウンが、受付カウンターにやって来た。査定が終わったのである。
「サーシャ、査定終わったぞ。坊主も待たせたな。」
「あら、こんなにですか?」
「ああ、外傷がほとんどない上、欠損もない。それに、討伐依頼を出していた、何たらってお貴族様は、レッサードラゴンの剥製を作りたいって話だっただろ?あんな上質なレッサードラゴンだぞ、まず、手に入らないからな。」
「分かりました。では、ルーシュくん。こちらが、レッサードラゴンの買取り価格になります。詳細をご確認下さい。」
提示された紙には、眼が幾ら、牙が幾らなど、細かく記載されていた。
しかし、ルーシュには時間がない。そんなのは、どうでも良かった。
「えっと、レッサードラゴンの価値が分からないので、詳細は別に結構です。」
「そ、そう・・・、お、おっほん。では、合計で金貨1500枚になります。」
「はい、問題ありません。」
「即答ですね・・・。少々、お待ち下さい。」
と言って、金貨の用意をするサーシャ。流石に、金額が金額なので、すぐに、用意するのは無理だった。それでも、優秀な受付嬢である。然程、時間をかける事無く、金貨が積み上がった。
「お待たせしました、金貨1500枚になります。ご確認は・・・。」
「必要ありません、ありがとうございます。」
先程と同様に、手をかざして、〈インベントリ〉に収納する。
これで、服が買えると考えるルーシュの思考は、かなりネジが飛んでいた。
一体、どこに、金貨2000枚の服が売っているのか。
「サーシャさんっ!質問がありますっ!!」
「はい、何でしょう?」
「この街で、子供用の服が、買える場所を教えて下さいっ!」
「う〜ん、知ってますが、おそらく、もう閉まってますよ?」
「そ、そんな・・・、折角、お金が手に入ったのに。」
「ルーシュくんは、この街は、初めてなの?」
「はい・・・。だから、服を買った後、宿も探そうと思ってました。」
「う〜ん、そうなのね。じゃあ、今日は家に泊まらない?その恰好じゃあ、落ち着かないでしょう?家に来れば、弟の服を貸してあげられるし。」
「良いんですか?ご迷惑では?」
「平気、平気。家って言っても、正確には、私が借りている部屋だし。家族は、実家暮らしよ。
弟は、偶に泊まり来るから、それで服があるのよ。」
「そうなんですね。では、お世話になります。」
「えぇ。あっ、私はまだ、お仕事が残ってから、少し待っててもらえる?」
「はい。あっちで、飲み物でも買って待ってます。
・・・あぁっ!!そうだっ!!」
突然、大きな声をあげるルーシュ。何故かと言うと、服を買う事ばかりに、気を取られていて、もう一つの目的を忘れていたからだ。
それは、現在地の確認。
今いる所は、ホルルドの街と言う事は、聞いていたが、記憶が無い為、正確な位置が分からない。
大陸の地形や大まかな国の場所は、知識として残っている。まぁ、現在地が分かったところで、帰る家の場所が、思い出せないので、意味が無いのだが。
しかし、最初にいた森にしろ、竜達の棲家と化していた山、このホルルドの街の知識は無い。
つまり、少なくとも、この周辺は、ルーシュが住んでいた場所では無い事は、確実だ。
今後、何処に向かうにせよ、地図が必要になる。
「ど、どうしたのっ!?突然、大きな声をあげて?」
「す、すいませんっ!!ちょっと、確認しなきゃいけない事を思い出したので。
えっと、冒険者ギルドで、地図って、手に入りますか?」
「地図?地図なら、此処で買えるわ。周辺の地図?それとも、レガリス王国の地図?」
「では、周辺の地図と、レガリス王国の地図、あと、オリンピア大陸の地図もあれば、お願いします。」
「大陸の地図も?ルーシュくん、他の国に行きたいの?」
「いえ、どれも現在地の確認の為です。」
「そう?よく分からないけど、3つ必要なのね。ちょっと、待っててね。」
と、席をたつサーシャ。
(そうか、レガリス王国内だったのか。レガリス王国って、オリンピア大陸の南東の大国だったけ?ん?そう言えば、レガリス王国の北東の国境付近に、山脈があったような?って事は、国境越えて来ちゃった?あぁ、進行方向、間違えたかも・・・。
と、取り敢えず、地図で再確認して、最悪、レッサードラゴン達の山に戻ろう・・・。)
どうやら、ルーシュは、進行方向を間違えていたらしい。つまり、炎竜を含め、竜達との戦闘は、無駄骨である。いや、寧ろ、犠牲になった竜達の方こそ、とんだ災難である。
「お待たせ。周辺の地図とレガリス王国の地図、オリンピア大陸の地図よ。」
「ありがとうございます。」
代金を払って、地図を手に入れたルーシュ。
そして、結局、サーシャもこれが、今日の最後の仕事となり、2人はサーシャの家に向かうのだった。
ビッチュとケイソッツ達に天罰がくだり、ざまぁです。それに対して、竜達は、災難でした。そして、大金を手に入れたルーシュの今後は?
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