ホルルドの街①
お久しぶりです。約2年ぶり、いや、3年ぶり(?)の3作品目になります。(2作品目は、行き詰まりました、ごめんなさい。)
今回の作品は、他の方の作品と、極力被らない様に、オリジナルティーを重視して、書き上げて参ります。
異世界ものではありますが、主人公は、1作品目、2作品目とは、立ち位置が違います。
今作は、行き当たりばったりで、作ったものではなく、大筋の展開を作り上げてから、書いております。
予定では、かなりの長編になる予定ですので、読み応えがあれば良いなぁと、思う次第です。
少しでも、多くの方に、読んで頂ければ、ありがたいです。
誤字脱字等、あると思いますので、ご指摘もお願い致します。
冒険者ギルドは、すぐに見つかった。門番が言っていた様に、他の建物に比べて、とても大きな建物だったからだ。
冒険者ギルドの扉を開くと、まず、目に飛び込んできたのは、多数の冒険者らしき人達。時間も時間なので、依頼を終えた冒険者が、ギルドに帰還していたのだろう。受付カウンターらしき所にいる者もいれば、ギルド併設の食事処で、食事と酒を楽しんでいる者もいる。
そんな所に、仕立ては良いが、ボロボロの服を着た美少女が現れたら、どうなるか?
当然、注目の的になってしまった。彼方此方から、視線が注がれ、話し声もする。
「何だ?なんで、子供が?」
「何あの子?可愛いんだけどっ!」
「可愛いなんてレベルじゃないっ!天使だっ!!天使がやって来たっ!!」
「野盗にでも襲われたのか?随分と、ボロボロだな。」
若干、興奮している者もいるが、やはり、本来、ルーシュのような幼い子供が、訪れる場所では無い為、目立つ目立つ。
このまま、突っ立っていると、誰かしらに絡まれそうなので、受付カウンターを目指すルーシュ。何処の受付窓口も、冒険者達が報告を行なっているのか、空きは無かったが、タイミング良く、一つの窓口が空いた。すかさず、受付嬢と思われる人に、声を掛けるルーシュ。
「あの〜、すいません。魔物の素材の買取りをお願いしたいんですが・・・。」
「はぁ〜、君ね〜、魔物の買取り〜?手ぶらの様だけど、もし、小鬼とかだったら、買取れませ〜ん。」
ピンク色の髪をくるくると弄りながら、気怠そうに対応する受付嬢。
「いえ、小鬼ではなくて・・・」
「例え、コボルトでも無理で〜す。勿論、野ウサギなんかの動物も無理〜。ここは、子供の遊び場じゃありません〜。忙しいから、帰ってもらえる〜?」
と、まともに相手をしてもらえない。
(困ったな。冒険者ギルドって、こんな所だったのか。それとも、受付窓口の選択ミス?)
すると、困惑しているルーシュの後ろから、声があがる。
「ビッチェっ!こんなガキに、無駄な時間かけるなよ。さっさと、俺達の依頼の達成手続きをしてくれ。」
「ごめんなさ〜い、ケイソッツさん〜。ほら、君〜、邪魔だから、どいてどいて。」
「ガキは、とっとと、家に帰りなっ!」
ビッチェとケイソッツとその仲間達に、無理矢理、退かされてしまう。すると、邪魔者は、いなくなったと、ビッチェとケイソッツは、話しに華を咲かせた。
「ケイソッツさん〜、皆さん、お疲れ様で〜す。で、依頼の方は?」
「勿論、達成したぜっ!!ほれ、討伐証明の大鬼の角だ。」
「流石、Cランク冒険者のケイソッツさんっ♪パーティ〈夜の狼〉のおかげで、冒険者ギルドも助かってます〜。」
「冒険者ギルドもか。違いねぇ(笑)俺らの担当になれたおかげで、お前には、サポート手当がつくもんな。それでどうよ?今夜、一杯、付き合わないか?」
「え〜、どうしようかなぁ〜。まだ、お仕事中ですし〜。」
どうやら、ケイソッツと言う男、この受付嬢ビッチェを狙っているらしい。
無理矢理、退かされたルーシュはと言うと、別段、怒る事無く、ただ、気になる事を耳にして、情報の整理を行なっていた。
(ふむ。冒険者には、それぞれ担当の受付嬢が付くのか。それと、サポート手当?ようは、担当している冒険者が、依頼を達成すると、給金が上がるのかな?)
などと考えに浸っている間にも、ケイソッツとビッチェの話は、弾んでいた。
ビッチェのどこが忙しいのか、疑問だが。
そんな時、隣の窓口の受付嬢が、ビッチェに声をかけた。
「ビッチェさん、今は仕事中よ。私用の話は、後にしなさい。それに、順番を変えるなんて、ダメじゃ無い。」
「えぇ〜、お仕事はしてますよ〜。それに、子供の相手は、仕事じゃありませ〜ん。なんなら、先輩が対応したらどうですか〜?」
注意を受けても、全く反省の色がみえないビッチェ。それどころか、もう、話は済んだと、再び、ケイソッツと話し込んでしまった。
「仕方ないわね。え〜っと、君。こっちの窓口に来て頂戴。私が、お話を聞くわ。」
どうやら、こちらの受付嬢は、まともそうである。冒険者ギルド自体に問題があった訳ではない様だ。
ルーシュは、声をかけてくれた受付嬢の窓口に、向かった。
「ようこそ、ホルルドの冒険者ギルドへ。私、担当をさせて頂く、サーシャと申します。
ご用件は、何でしょうか?」
サーシャと名乗った受付嬢は、緩いカールのかかったブラウンの髪の女性で、人当たり良さそう笑顔で、ルーシュを迎えた。
「えぇっと、ルーシュと言います。あの〜、魔物の素材の買取りをお願いします。」
「素材の買取りですね。失礼ですが、ご登録はお済みですか?」
「いえ、登録はしてません。登録しないと、買い取って貰えないのでしょうか?」
「いいえ、ご登録されて無くても、買取りは出来ますよ。ただ、冒険者登録をすれば、討伐した魔物の依頼があれば、その報酬もお支払い出来ますし、今後も、冒険者ギルドをご利用するなら、ご登録をお勧め致します。
それに、ギルドカードは、身分証としても使えますので、ご登録された方が、宜しいかと。手続き自体は、簡単ですので。」
(確かに、今後のことを考えると、身分証はあった方が良いかな?)
「分かりました、登録します。」
「では、こちらの用紙に、名前、年齢と職種をご記入ください。」
(ふむ、それだけで良いのか。それなら、平気かな。
名前は、ルーシュ。年齢、10歳。職種は、・・・魔法使いで良いか。)
と、スラスラと、記入するルーシュ。だが、果たして、彼を魔法使いと呼んで良いのかは、疑問だが。
「出来ました。」
「はい。では、ギルドカードを発行致しますの、少々お待ちください。」
何やら、魔道具らしき物で、記載内容をギルドカードに移す作業を行い始めるサーシャ。
その作業を待っていると、隣の窓口から、声が聞こえた。
「マジかよ、あのガキ。登録してるよ(笑)雑魚の魔物相手に、あんなにボロボロになってんのに(笑)あぁ、魔物とは限らないか。もしかしたら、動物だったり、あははは。」
「ほんとに〜♪サーシャ先輩こそ、無駄な時間、使っちゃって。そっちこそ、お仕事してくださ〜い。」
と、野次が聞こえるが、サーシャは黙々と作業を進め、ルーシュも気にしてはいない。とっとと終わらせて、服を買いに行きたいのだ。もう、夕暮れだ。のんびりしていたら、お店が閉まってしまう。
「はい、こちらが、ルーシュさんのギルドカードで、Fランクとなります。初回の登録ですので、手数料はかかりませんが、紛失したりして、再発行する場合には、銀貨3枚がかかりますので、ご注意下さい。」
渡されたギルドカードには、先程、記載した内容と、Fと言うランク、それに、担当サーシャと、記されていた。
「冒険者並びに、冒険者ギルドのご説明は、いかが致しますか?」
「えぇ〜と、今日は、少し急いでいるので、後日でも良いですか?」
「えぇ、構いませんよ。ですが、依頼を受ける前に、必ず、ご確認ください。冒険者のお仕事は、危険が伴いますので。」
「分かりました。では、買取りをお願いします。」
「素材の買取りでしたね。・・・えぇっと、物は、どちらにございますか?」
ここで、初めて、サーシャに戸惑いが起きた。それは無理もない事で、ルーシュ自身は、ボロボロの上、荷物らしい物を持っていない。所謂、手ぶらだからだ。
「えぇっとですね、ちょっと、物が大きいので、此処で出すのは、厳しいんですが・・・。」
「ん?外にお運びになられているのですか?」
「いえ、そう言う意味ではなくて、窓口に出すには、広さが足りないので、どこか広い場所が良いんですが・・・」
「そうですか?それなら、ギルドの裏手に、解体場がありますので、そちらで拝見させて頂けますか?先程、魔物の素材とおっしゃってましたが、解体がお済みで無ければ、それも、出来ますので。ただ、解体費用は、ご負担願います。」
「解体費用ですか。それは、素材の買取り価格から、差し引く形で、対応して貰えますか?残念ながら、手持ちが無いので。」
「えぇ、問題ありません。それでは、解体場にご案内致しますね。」
サーシャが席を立つと、まだ、話し込んでいたビッチェとケイソッツから、再び、野次が飛ぶ。
「サーシャ先輩〜、窓口空けるなんて、お仕事してくださ〜い。」
「全くだな。それに、あのガキ、解体も出来無いのかよ。解体費用で、赤字になるじゃないか(笑)」
「ウケる〜。サーシャ先輩〜、あとで何の魔物か、教えて下さいね〜。あっ、動物かなぁ?あははは。」
何も知らない2人は、散々、ルーシュ達を馬鹿にした。
流石に、自分だけなら構わないが、良くしてくれているサーシャに迷惑をかけてしまって、ルーシュは、申し訳ない気持ちになった。
「すいません、サーシャさん。ご迷惑をお掛けして。」
「平気ですよ。ルーシュさんこそ、平気ですか?」
「自分が子供なのも、解体が出来ないのも、事実なので・・・。」
「気にしないでくださいね。今は無理でも、いずれ出来る様になりますから。」
逆に、励まされしまったルーシュだったが、正直、解体はプロに任せた方が良いし、そもそも、冒険者登録はついでである。心底、どうでも良かった。
そんな会話をしながら、サーシャの案内で、ギルドの裏手の解体場に着いた。ルーシュが想像していた大きさよりは、少し小さいが、まぁ、レッサードラゴン一匹なら、何とか入るだろう。
「ゴウンさん。ちょっと、良いですか?」
サーシャが声をかけると、解体作業中の一人が、作業を止め、ルーシュ達の元にやって来た。
「なんだ、サーシャの嬢ちゃんか。どうした?解体の依頼か?」
「えぇ、それもありますが、素材の買取りなので、査定を行わないといけません。」
「相変わらず、真面目だな。そんなのこっちに任せておけって(笑)」
「いえ、これも、受付嬢の仕事のうちですから。
あっ、ルーシュさん。こちらが、この解体場を仕切っているゴウンさんです。」
「宜しくお願いします。」
「何だ、随分と可愛いらしいお客じゃないか。で、嬢ちゃんが、解体の依頼人か?」
「はい、解体というより、素材の買取りをして頂く事が、本来の目的ですが・・・・・。
あと、すいません。僕、嬢ちゃんじゃなくて、男です。」
「「えっ!?」」
「男です。」
「えぇ〜っ!!ルーシュさんじゃなくて、ルーシュくんだったのっ!?」
あれほど冷静だったサーシャも、流石に驚き、口調も素に戻ってしまった。しかし、ルーシュの追撃は、更に続く。
「あの〜、ゴウンさん。この辺に、魔物の素材と言うか、死体を出して構いませんか?」
「うん?こっちじゃダメなのか?此処でも、十分な広さがあると思うが?」
「かなり大きいので、こっちで。まぁ、見てもらえば、理由が分かると思うので、出しちゃいますね。」
「さっきから、出すって、どう言う意味・・」
ゴウンの疑問も無視して、〈インベントリ〉から、一匹のレッサードラゴンの死骸を出すルーシュ。
「「なっ!?」」
(やっぱり、一匹で限界だな。)
ルーシュは、呑気に考えていたが、サーシャとゴウンは、それどころではない。
「な、な、な、な、な・・・・!?」
サーシャは、なと言う言葉で、時を刻み、
「れ、レッサードラゴン・・・。」
ゴウンもゴウンで、固まっていた。
しかし、流石は、これまで、数多くの解体を行なってきただけはある。間違いなく、レッサードラゴンと判断すると、冷静さを取り戻した。
「嬢ちゃんじゃ無かった、坊主。これ、どこから出した?」
「えっ?魔法ですけど?」
「〈アイテムボックス〉かっ!?それにしても、これだけの大きさの魔物が入るとは、相当な魔力量だな・・・。」
(う〜ん、〈アイテムボックス〉じゃ無いんだけど、訂正するの面倒臭いし、いいか。)
「買取り出来ます?」
「あぁ、状態も一級品だ、問題無い。しかし、坊主、何者だ?見かけん顔だが?」
「あぁ、さっき、冒険者登録、済ませたばかりなんで。」
「さっきっ!?って事は、Fランクかっ!?」
「えぇ、そうですね。」
「おいおい、実力とランクが、かけ離れ過ぎてるぞ!?おい、サーシャっ!!いつまで、呆けているっ!ギルマス連れて来いっ!!今すぐにっ!!」
「ハッ!?わ、分かりましたっ!」
タタタッと、駆け足で、その場をあとにするサーシャ。しっかり者のお姉さんのイメージが、崩れていく。
「しっかし、とんでない物、持ち込んだな、坊主。」
「そうですか?たかが下級の竜ですよ?」
「レッサードラゴンをたかがとは・・・。まぁ、良い。ギルマスが来るまで、少し、見とくか。」
「あの〜、解体しないと、買取り出来ないんでしょうか?実は、今、手持ちのお金無くて、出来れば、すぐに現金化して欲しいんですけど・・・。」
「それについては、問題無い。すこぶる状態が良いからな。解体せんでも、査定は出せる。それでも、少し時間がかかるがな。」
2人で話し込んでいると、サーシャが、ギルドマスターを連れてやって来た。
「ほう、これは立派な。かなりの上物だね、ゴウン。」
「あぁ、レッサードラゴンなんて、久しぶりに見たぜ。しかも、外傷らしい外傷が見渡らない。こんなの初めてだ。」
「うむ。君が、このレッサードラゴンを討伐したルーシュくんだね。どうやって倒したか、教えてくれないかね?おっと、申し訳ない。名乗りが遅れたね。私は、当ギルドのギルドマスターのゲインだよ。」
「はじめまして、ルーシュです。宜しくお願いします。
えっと、先程の質問ですが、レッサードラゴンの開いた大口に、魔法をぶち込みました。」
「なるほどっ!それで、外傷が見渡らないのか。」
「素晴らしいっ!!卓越した魔法の操作が、出来てこそですね。それで、なんでも、先程登録したばかりだと、サーシャくんから聞いてますが、本当ですか?」
「はい、その通りです。」
「サーシャくん。確か、レッサードラゴンの討伐依頼。誰も受けていませんでしたね?確か、何処ぞかの貴族の依頼だった筈ですが・・・。」
「はい、誰も受けていません。と言うより、うちのギルドで引き受けてくれるパーティが、いませんでした。」
「宜しい。では、ルーシュくんの討伐依頼達成と言う事にしてください。」
「それって、まさか?」
「えぇ、ルーシュくんのランクも上げて下さい。・・・そうですね。A +の魔物を倒せるですから、Aランクまで、上げて下さい。」
「畏まりました。」
と、話がどんどんと、進んでしまう。ルーシュとしては、買い取って貰えれば、ランクなんてどうでも良かった。
「あの〜、ランクアップは、辞退したいんですけど・・・。」
「ダメですよ、ルーシュくん。冒険者ギルド、並びに冒険者は、実力主義。実力のある者は、それに見合うランクでないと。実力・実績を正しく評価しないと、皆さんが納得しません。」
と、諭されてしまう。
確かに正論なので、流石にルーシュも、反論出来無い。
こうして、ただ、素材の買取りをして貰うつもりで、訪れた筈なのに、思わぬ方向に進むのだった。
自分で書いていて、ビッチュとケイソッツ、ムカつきますね。しかし、やっぱり、ドラゴン納品は、やり過ぎなルーシュくんでした。
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