迷宮(ラビリンス)④
今回の作品は、他の方の作品と、極力被らない様に、オリジナルティーを重視して、書き上げて参ります。
予定では、かなりの長編になる予定ですので、読み応えがあれば良いなぁと、思う次第です。
少しでも、多くの方に、読んで頂ければ、ありがたいです。
誤字脱字等、あると思いますので、ご指摘もお願い致します。
波乱の賢人会議も終わり、不名誉(?)な二つ名と称号を得たルーシュは、他の4賢人の勧めもあり、ザナスで、一夜を過ごした。
翌日、レガリス王国に帰ろうとした時、アーノルドから、共に帰ろうと誘われたが、断固として拒否した。
ここまで来るのに、かなりの日数が経っている上、長期間、プリムに留守番をさせてしまった事に、不安を感じたからだ。
別に、プリムの身を案じてでは無く、屋敷と使用人が無事かなと、思ったからだ。
アーノルド達に別れを告げると、人気の無い路地裏に入り、〈ゲート〉で屋敷の裏庭に転移した。
屋敷の部屋に、そのまま転移すると、メイドに見られる可能性があったからだ。
何事も無かったかの様に屋敷に入り、自分の部屋に向かうと、帰りを待っていたのか、プリムが飛び付いて来た。
「キュイっーー!!」
「ごめんね、プリム。留守にしてて。」
「キュイっ!!!」
「本当に、ごめんなさい。お詫びに、迷宮に行こうっ!」
「キュイ〜♪」
何とか、プリムの機嫌を直して貰おうと、帰宅早々、迷宮に向かう事になった。
ちなみに、屋敷と使用人は無事だった。
「長期間、留守になされるなら、前もって、おっしゃって下さい。」
と、ジャンには怒られたが。
前回の続きと言う事で、迷宮の10階層に転移した。
階層主部屋まで、何度か、ハイオークと遭遇したが、プリムの息吹で瞬殺だった。
階層主部屋に入ると、其処にいたのは、階層主のミノタウロスだった。
やっと、豚肉から解放されると、ホッとするルーシュ。
「キュワっ!」
「モウっ!?」
遭遇早々、息吹で瞬殺するプリム。余程、力を持て余していた様だ。
難なく、階層主を倒したが、部屋には宝箱があった。迷宮に潜ってから、初めての宝箱である。
期待を込めて、宝箱を開けると、中に入っていたのは・・・。
「えっ!?何で、果物ナイフ?」
「キュイ?」
何処からどう見ても、果物ナイフだった。
実は、冒険者が落とした果物ナイフを、迷宮が回収し、宝箱に入れたのだ。
「でも、果物ナイフは、中々、品質が良いね。買い忘れてたし、ありがたく貰っておこう。プリム、お手柄だよ。」
「キュイ、キュイ〜。」
品質が良いのは、当たり前。
その果物ナイフは、鍛治職人が鍛え上げた逸品だった。
果物ナイフごときで、喜ぶ一人と一匹に、近づいて来た冒険者達がいた。
「あれ?君は、この前の・・・。」
「えっ?どちら様ですか?」
「キュイ?」
ルーシュ達の前に現れたのは、〈金色の翼〉のメンバーだった。ただし、今回は、運び屋も一緒だが。
ルーシュは既に、〈酒乱肉好〉の件を、さっぱり忘れていた。その為、声をかけて来たラークの事も、覚えていない。
それに対して、〈金色の翼〉のメンバーは、ルーシュの所業のインパクトが鮮明に残っていたので、覚えていたのだ。
「君は、この間、グリードを吹っ飛ばした子だよね?」
「グリードさん?誰です、その人?」
「いやいや、グリードに殴られそうになって、吹っ飛ばしただろっ!」
「うむ。グリードは、気絶していたな。」
「貴女が、やったんじゃ無いの?」
「私は、覚えてませんが?」
「「「「酒、飲んでたからねっ!!」」」」
「お知り合いですかい?」
〈金色の翼〉の4人は覚えていたが、マリアと運び屋は、ルーシュの事を知らない様だ。
ルーシュはマリアを見て、やっと思い出した。
「あ〜、あの時、お酒を飲んでいた人ですね。」
「いや、違わないけど、重要な事じゃ無いよね?」
「いえ。あれは、正当防衛です。」
「まぁ、確かにそうだけど。そもそも、君は、冒険者なのかい?」
「ええ、一応。」
Sランク冒険者が、一応なのか。ルーシュの自覚の無さは、相変わらずだった。
「一人で、此処まで来たのかい?」
「いえ、使い魔同伴です。」
「キュイ。」
「ん?もしかして、ドラゴンか?」
「そうですよ、ドラゴンの赤ちゃんです。」
ラークとソルの質問に、律儀に答えるルーシュ先生。課外授業が始まるのか。〈金色の翼〉は、生徒では無いが。
「赤子とは言え、ドラゴンは初めて見るな。」
「そうね。ドラゴンも、赤ちゃんだと可愛いわね。」
「お名前は、なんて言うんですか?」
「ど、ドラゴンっ!?」
ハルク、カレン、マリアは動じていないが、運び屋は、動揺していた。
赤ちゃんとは言え、ドラゴンである。当然と言えば、当然だ。
しかし、律儀に答えるのが、ルーシュ先生。
「プリムと言う名ですよ。」
「可愛い名ね。」
「本当ですね〜。」
女性陣には、好評の様だ。
男性陣はと言うと、プリムの倒したミノタウロスの方が、気になっていた。
「これは、魔法で倒したのかな?」
「そうじゃないか?風穴空いてるし。」
「ふむ。中々、強力な魔法の様だな。」
勘違いをしている男性陣。
ルーシュ先生は、その間違いを正した。
「いえ、プリムが倒したんですよ。」
「「「「「「えぇーーー!?」」」」」」
まるで、大学の講義中の生徒達の様な反応をする、〈金色の翼〉と運び屋。
「本当に、その子が倒したのかい?」
「そうですよ。息吹で、瞬殺でした。」
「スゲーな。やっぱり、ドラゴンはドラゴンなんだな。」
「うむ。これ程の威力だと、俺の盾にも、穴が空きそうだ。」
「ランス系の魔法より、威力が高いんじゃない?」
「可愛いのに、お強いんですね。」
「や、やっぱり、ドラゴン怖いでやんすっ!!」
「キュイっ!キュイっ!」
「あ〜、プリム、ごめん。待たせちゃったね。すぐに、回収するから。」
プリムが急かす様な態度だったので、ミノタウロスの亡骸を、〈インベントリ〉に回収する。
そんな事をすれば、〈金色の翼〉+αが、驚くのは当然で・・・。
「「「「「「アイテムボックスっ!?」」」」」」
「あっ、はい。」
さらっと、嘘をつく。先生失格である。
「アイテムボックスが使えるなんて、君は一体、何者なんだい?」
「ただの魔法使いですが?」
「そんな魔法使いは、ごろごろ、いないわよっ!?」
「そうですか?便利ですよ。」
「あっしの運び屋としての、役割って・・・。」
どうやら、+αさんの自尊心を、傷付けた様だ。
そんな中、めざとく、ソルが宝箱を発見した。
「宝箱があったなんて、運が良かったな。」
「そうですね。まぁ、中身は、果物ナイフでしたけど。」
「果物ナイフかぁ〜、ハズレだったな。」
「いえ、中々の代物ですよ。」
「どれどれ・・・、本当だっ!なんだこの果物ナイフっ!?俺のナイフより、業物だっ!!」
「キュイっ!キュイっ!」
「あ〜、すいません。プリムが急かすので、先に進みますね。」
プリムのご機嫌取りの為に、迷宮に来ていたのだ。これ以上、プリムを待たせる訳はいかない。
ルーシュは、〈金色の翼〉に別れを告げて、11階層に向かった。
残された〈金色の翼〉はと言うと、気になる事を思い出した。
「さっきの子って、もしかして、例の噂の子じゃないかな?」
「あ〜、〈果物ナイフで舞う剣姫〉か。」
「そう言えば、女の子だったな。」
「ドラゴンの赤ちゃんも可愛かったけど、あの子、何?可愛いってレベルじゃ無かったわよ。」
「お人形さんみたいでしたね。」
「あっしは、人形以下・・・。」
それぞれの反応があったが、共通しているのは、ルーシュを女の子だと、勘違いしている事だ。
〈剣姫〉といい〈竜姫〉といい、紛らわしい称号を手に入れてしまったが、今回は、ルーシュが悪い。自分の事を、僕とも私とも、言わなかったからだ。
魔法大学や他の賢人は、一応(?)男の子扱いしてくれているので、それに慣れてしまったのだ。
その後、ルーシュ達を追った〈金色の翼〉+αは、その姿を、再び、見る事は出来無かった。
勘違いしている彼らが、再び、ルーシュに出会うのは、いつになるのか・・・。
11階層に向かったルーシュ達は、再び、プリム無双の時間に突入していた。
11階層の魔物は、コカトリスだった。
この迷宮、食材の宝庫かと、勘違いしてしまうルーシュ。
実は、さっぱりとした鶏肉を食べたかったのだ。
空を飛べない鳥など大きいだけで、プリムにとっては、ただの的だった。的確に、喉笛を切り裂き、倒していく。
今日の夕飯は、牛肉か鶏肉か、どっちかなぁなどと、呑気に考えていたルーシュだったが、ある事に気付いた。それは、賢人会議からの帰還が、早すぎる事だ。
今日、ギルド本部に行くと不自然過ぎる。最低でも、長期休み中は行けないと、気付いてしまった。
しかし、プリムの戦果を解体しないと、プリムが不機嫌になるかも知れない。
(不味いぞ。何か手は無いかなぁ?折角、プリムの機嫌が良くなってきたのに、どうしよう・・・。
あっ!ホルルドなら、平気かな?でも、ビッチュさんには、会いたく無いなぁ〜。また、面倒事になりそうだし・・・。う〜ん、でも、この手しか無いんだよね。アマジン国やヤプー国だと、余計に目立つからなぁ。
仕方が無いか、ホルルドに行って来よう。)
ビッチュには会いたく無いが、プリムの為だと、自分を納得させる。
その後も、快調に鶏肉を狩り続けるプリム。
12階層への階段を見つけると、その日の狩りは、終了となった。
プリムの入浴(?)を済ませると、〈ゲート〉で、ホルルドの近くまで転移した。
後は、ホルルド支部の冒険者ギルトに向かうのみだ。
ホルルドに入る際は、銀貨を払い、ギルドカードの提示を回避した。すぐに帰るのに、グランに知られるのは、避けたいからだ。
出来るだけ、見知った人と会うのは避けたい。
まぁ、解体で、ゴウンに会うのは仕方が無いが。
そして、冒険者ギルドに到着したルーシュ達は、そのまま、解体場を目指した。
受付カウンターを横切る時、ビッチュが目を輝かせていたが、スルーして、解体場に向かった。
「ゴウンさん、いらっしゃいますか〜?」
「うん?その声は、坊主かっ!」
「はい。ご無沙汰しています。」
「王都に拠点を移したんじゃ無かったのか?」
「そうですね。まぁ、今回は、ちょっとした里帰りみたいなものです。」
「なるほどな。それで、此処に来たって事は、解体か?また、レッサードラゴンじゃないよな?」
「ええ、ミノタウロスとコカトリスの解体をお願いします。肉は、持ち帰るので。」
「坊主にしちゃあ、随分と、低ランクの魔物だな。魔石はどうする?」
「あっ、魔石も持ち帰ります。」
「分かった。少し時間がかかるが、良いな?」
「はい、宜しくお願いします。」
何とか、面倒事にならないで済んだと安心していたが、解体場に、ビッチュがやって来てしまった。
「ルーシュく〜ん。サーシャ先輩が、退職しちゃったから、担当者がいないじゃな〜い?私で良ければ、担当になるけど〜。」
「いえ。もう、王都のギルド本部で、手続き済みです。」
「そ、そんな・・・。」
「ビッチュっ!坊主が、ホルルドから出て、どれくらい経ったと思ってるんだ。担当者を変更してて、当たり前だ。
それより、仕事しろっ!ギルマスに報告するぞっ!!」
「ひぃー!!減給は止めてっーー!!」
余程、前回のペナルティーが効いたのか、すぐに、解体場を後にしたビッチュ。
やはり、ホルルドに来たのは、間違いだったかなと、反省するのだった。
〈金色の翼〉とビッチュが、再登場。レギュラー陣なんでしょうか?
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