竜の主
お久しぶりです。約2年ぶり、いや、3年ぶり(?)の3作品目になります。(2作品目は、行き詰まりました、ごめんなさい。)
今回の作品は、他の方の作品と、極力被らない様に、オリジナルティーを重視して、書き上げて参ります。
異世界ものではありますが、主人公は、1作品目、2作品目とは、立ち位置が違います。
今作は、行き当たりばったりで、作ったものではなく、大筋の展開を作り上げてから、書いております。
予定では、かなりの長編になる予定ですので、読み応えがあれば良いなぁと、思う次第です。
少しでも、多くの方に、読んで頂ければ、ありがたいです。
誤字脱字等、あると思いますので、ご指摘もお願い致します。
勢い余って、炎竜を討伐してしまったルーシュ。
それでも、目指していた山頂に、到達した意味は大きい。あとは、山頂から森とは反対側が、どうなっているか?人里、街はあるのか?それを確認し、行動するだけだ。
(しかし、よりよって、炎竜が、居着いていたとは。
周辺の街や、そこを治めている領主、国は知っていたのかな?・・・。
・・・う〜ん、取り敢えず、炎竜が居た形跡は、消しておいた方が良いかな。寝床の彼方此方に、生え変わった際に落ちた鱗が、散らばっているし、これも回収して置こう。)
と、寝床の掃除(?)を始めるルーシュ。
一通り、片付けが終わると、気になる物が、そこにはあった。
(竜は、光り物を好むと知っていたけど、これ全部、炎竜が集めたの?
・・・いや、違うな。おそらく、配下のレッサードラゴン達が、集めたんだろうな。それにしても、沢山あるなぁ〜。)
竜が集めたお宝を拝見してみると、とんでもない物が、多数ある事が分かった。
(うん、これ、神代宝具だね。しかも、こんなに沢山。)
神代宝具。
それは、神が造りし、希少な宝具。
宝具と言うだけあって、身につける事で効果を発揮する物、魔力を流して使う物、そして、武具として使う物など、種類は豊富である。
一つだけでも、国宝となる価値のある物が、大量に集められていた。
勿論、普通の宝飾品もあったが、神代宝具と比べれば、見劣りしてしまう。
(どれ、どんな効果の神代宝具があるのかな?
・・・・・。
・・・・・。
・・・これはヤバい。こんな物達が、世に出回ったら、とんでもない事になるぞ。
・・・せ、戦利品として、僕が預かって置こう。まぁ、武具系は、永久封印って事で。
それよりも、寝床を片していた時から、気になっていたんだけど、なんかレッサードラゴンが、山頂の外縁部に、集まって来ていない?
もしかして、親玉である炎竜の仇討ち?それにしては、大人しいな?)
そう、山頂の外縁部に、次々とレッサードラゴンが、舞い降り、こちらの様子を伺っている。
偶に目が合うと、ビクッと、身震いを起こすレッサードラゴン。どうやら、報復ではなく、自分達の主を倒したルーシュに、畏怖している様だ。
神代宝具と、宝飾品の回収を終えたルーシュだったが、気付けば、すっかり、レッサードラゴン達に囲まれてしまっていた。
ルーシュが、どうしたもんかなぁと思っていると、一匹のレッサードラゴンが、ドスンドスンと、足音を立てながら、ルーシュに近づいて来た。
そのレッサードラゴンからは、殺意が感じられ無かったので、暫し、様子を見ていると、ルーシュの前にまで進んで来ると、いきなり、頭を下げた。ようは、降参・服従の姿勢だ。
レッサードラゴンの態度の急変に、驚いていたルーシュだったが、声をかけないと、現状のままだと思って、呼びかけてみた。
「もしかして、服従のポーズ?」
「グァっ!」
と、返事を返すレッサードラゴン。
レッサードラゴンは、下級の竜なので、〈念話〉は使えない。しかし、こちらの言葉は、理解出来ている様だ。
「もしかして、使い魔契約?」
「グァっ!」
炎竜を倒したルーシュを、主と認めた様だ。流石、弱肉強食の権化である竜種である。
「取り敢えず、契約しようか?」
「グァグァっ!」
喜んでいる(?)レッサードラゴンと契約結ぶが、ここからが大変だった。
一匹のレッサードラゴンとの契約が終わると、更に、次のレッサードラゴンがやって来て、再び、契約。また更に、レッサードラゴンがやって来て、契約と、立て続けに契約を結ぶ事となり、最終的には、54匹のレッサードラゴンと、使い魔契約を行う羽目になった。
流石に、名付けは行なってはいない。だって、区別がつかないから。
(この山の竜種と契約は、これで55回目だな。そうだっ!あの子もここに呼ぼう。)
散々、山ではレッサードラゴン達を駆逐していたが、遡る事、湖を探す前に、ルーシュは、一匹の竜を保護していた。
その竜とも、使い魔契約を結んでいたので、無属性の召喚魔法で、この場に呼び出そうと思ったのだ。
召喚魔法は、あくまで使い魔などの契約や、隷属、眷属しか、召喚出来無い。しかも、召喚は出来ても、送還は出来無いので、一方通行の魔法だ。
そして、ルーシュは、初めて契約を結んだ竜を召喚し、その世話を、レッサードラゴン達に任せようと考えた。
「召喚っ!プリムっ!!」
ルーシュが叫ぶと、目の前の地面に、魔法陣が描かれ、一匹の竜の子供が、姿を現す。
「キュイっ!」
と、可愛らしく鳴きながら、ルーシュの胸に飛び込んで来たのは、ホワイトプリムドラゴンの赤ちゃん。安直だが、プリムと名付けた。
このホワイトプリムドラゴン、実は凄い竜で、神が世界に始めに産み落とした生命体、始祖竜である。
始祖竜は、竜であるが、魔物では無い。神の使い、神獣として区別される。
プリムは、柔らかい白い羽根で、全身を包み込んだ、美しく愛らしい容姿だが、成体になると、その白い羽根は、凄まじい魔法耐性を持つ様になる。
ルーシュがどう言う経緯で、プリムと契約に至ったかと言うと、水場を探そうと行動を開始した直後、〈サーチ〉で、最初に探知したのが、プリムだった。
ただ、プリムは、ルーシュ同様、怪我をしていて、今にも息を引き取りそうな状態だった。
そんなプリムを治療したら、ルーシュに懐いてしまった。
一応、親である始祖竜も探してみたが、見つからず、保護と言う名目で、使い魔契約を結んだ。
ただ、ルーシュ自身に余裕が無かった為、あとで迎えに来るからと伝えて、プリムの周辺に大きな結界を張った後、暫し、別れる事にしたのだ。
街に着いて落ち着いたら、呼び出そうと思っていたが、今は、レッサードラゴンが下僕と化している。なので、結界の中の狭い世界より、こちらの方が良いかなと思い、召喚した。
レッサードラゴン達に、プリムの保護・養育を頼むルーシュ。
「「「「「グァっグァっ!!!!!」」」」」
と、快く(?)引き受けてくれた。
そして、今回の件で、ステータスの称号が、新たに3つ増えた。
〈始祖竜の主〉、〈竜殺し〉、〈下級竜の主〉。
当然ながら、これらも技能で隠した。
当初予定とは、だいぶ違う風に進んでしまったが、目的は、一つずつ消化している。あとは、街を見つけ、現在地の確認をし、素材を売って、服を買う。
まだまだ、やるべき事は多いが、それらを完遂すれば、人並みの生活が出来る。
まぁ、記憶が無いと言うハンデはあるが、街を訪れれば、なにかしらの刺激になるかも知れない。
新たな友と言うか、使い魔・下僕も加わったので、寂しさも無い。
取り敢えず、この山で、竜達に襲われる事も無くなったので、早速、〈スカイ〉の魔法を使い、山頂より高い位置まで上昇すると、山向こうの景色を確認した。
山からは川が流れており、その川沿いに街道があった。その街道を目で追っていくと、まだまだ距離があるが、街らしき所が、目に写った。
もう、飛行を妨げる障害は無いと、街道を頼りに、街に向かって飛び出して行った。
街道は、途中で枝分かれしており、おそらく、そちらにも街があると思われるが、視界の範囲内には、捉えきれないので、そちらは、まだまだ距離があるのだろう。
街に近付くに連れて、街道にちらほらと、人影や荷馬車なども見かける様になった。
(そろそろ、地上に降りた方が良いかな?〈スカイ〉は、古代魔法で、悪目立ちしそうだし。)
人気の無い場合を選んで、地上に降り立ったルーシュ。あとは、街道を進んで、街に入ることが出来れば、問題無いが、恰好が恰好だ。すんなり入れるかは、五分五分だろう。何しろ、先程すれ違った荷馬車の行者は、ルーシュの恰好を見て、ギョッとしていた。更に、ルーシュの顔を見て、二度見していた。
(やっぱり、事案?事件に巻き込まれた様に、見えるのかな?
今更だけど、この服の生地。それなりに良い物っぽいな。そうなると、ハミットさん家は、貧乏では無かった?でも、所持金ゼロだし。子供には、お金を持たせない主義だったのかな?でも、10歳だし、お小遣いくらいあっても良いのでは?)
思い出せない家族に、不満気になるが、もしかしたら、帰りを待っているかもと、申し訳ない気持ちにもなる。
そんなことを考えながら、街道を進んで行くと、目指していた街の全貌が、見えてきた。
街の外周を、岩石を削って作られた小ぶりな石板を、高く積み重ね、強固な壁にして囲み、街道に連なる部分には、大きな鉄製の扉があり、現在は開かれている。そして、その門の両側には、衛兵と思われる門番が控えていた。
街に入る人達は、その門番と何やら話をしてから、街の中に消えて行った。よく観察して見ると、身分証のような物を提示している様だ。
(参ったなぁ〜。大きな街は、そうやって治安維持を行なっていると知っていたけど、どうしよう。そんな物無いし、ステータスを見せる訳にもいかない。確か、入場料を払って、入れる場合もあった筈だけど、今は手持ちが無いんだよなぁ〜。・・・う〜ん、何とかならないかな?ダメ元で、お願いしてみよう。無理なら、他の小さな街を探さないと・・・。)
折角、見つけた街だが、早速、問題が発生した。レッサードラゴン達の時のように、力ずくで、入場する訳にもいかない。まぁ、ある魔法を使えば、入場自体は出来るが、それは、道徳的にどうだろうか?後々、問題に成りかねないので、余り使用は避けたい所だ。そうこう考えながら、進んでいると、遂に、街の目の前まで、たどり着いた。
すると、ルーシュに気が付いた門番の1人が、足早に近づいて来た。
「君っ!どうしたんだ、その恰好はっ!?もしかして、魔物か野盗に襲われたのかいっ!?」
どうやら心配して、近づいて来た様だ。なので、その案を使わせて貰う事にした。
「は、はいっ!街に向かう途中で、魔物に襲われて・・・。幸い、怪我は軽傷で、魔法で治療したので、平気ですが・・・。」
魔物に襲われて、怪我を負ったかどうかは、別として、それ以外は本当の事である。
「そうかっ!それは不幸中の幸いだったね。もし、相手が野盗だったら、君のような可愛いらしい子は、きっと捕まって、奴隷として売り飛ばされていただろう。無事で良かったよ。」
「ご心配して頂き、ありがとうございます。あの〜、それで、街に入って、着替えたいのですが・・・、あと、魔物の情報も、冒険者ギルドに報告した方が、良いかも・・・。」
「ふむ、そうだな。ちなみに、その魔物は、どんな魔物だったかな?小鬼程度なら、報告する必要は無いし、特徴とか分かるかな?」
「はい、レッサードラゴンです。」
「・・・・・。うん?聞き間違いかな?もう一度、教えてくれるかな?」
「はい、レッサードラゴンです。」
「・・・・・!?そ、それは、大事件じゃないかっ!?ギルドだけじゃないっ!!領主様にも、ご報告しないとっ!!」
「いえ、どうやら、あの世に還った様なので、多分、平気だと思いますが・・・。」
「そ、そうかい?それでも、報告はしておいた方が良いだろう。」
「はい、冒険者ギルドに報告すれば、ご領主様の元にも、連絡がいくのでは?」
「そうだね。いや〜、焦ったよ。ドラゴンが、竜の巣山から、こちら側に来る事は、早々ないからね〜。まぁ、街は、強固な壁に囲まれているし、対竜用の大弓なんかも用意はしてるけど、実際、どこまで効果があるか、分からないからね。」
「ちなみに、今まで、竜が襲ってきた事ってあるんですか?」
「ないない。そんな事があったら、大惨事だよ。」
「そうなんですね、安心しました。あ、あと一つ。冒険者ギルドって、何処にありますか?初めて訪れるので・・・。」
「あぁ、冒険者ギルドかい?それなら、門を潜って、すぐ右側に、大きな建物があるよ。それが、冒険者ギルドだよ。」
「分かりました。ありがとうございました。」
「あぁ、冒険者ギルドも大事だけど、早く、家に帰った方が良いね。ご家族が、心配しているだろうし。」
何とか誤魔化して、街中に入る事が出来たルーシュ。足早に、冒険者ギルドに向かって行った。
一方、ルーシュを見送った門番はと言うと。
「あれ?そう言えば、あんなに可愛い子、街中で見かけた事あったけ?」
今更、その事に気付いたが、もう手遅れ。まんまと、ルーシュの口車に乗せられてしまった。まぁ、嘘は言っていない。ただ、初めて訪れるのは、冒険者ギルドだけでなく、この街自体でもあったのだが。
たくさんの竜の主になったルーシュ。危険物も手に入れて、やっと、街にたどり着きました。しかし、此処は、ルーシュの故郷なのか?
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