賢人会議②
今回の作品は、他の方の作品と、極力被らない様に、オリジナルティーを重視して、書き上げて参ります。
予定では、かなりの長編になる予定ですので、読み応えがあれば良いなぁと、思う次第です。
少しでも、多くの方に、読んで頂ければ、ありがたいです。
誤字脱字等、あると思いますので、ご指摘もお願い致します。
7賢人の一人、アーノルドと、予期せぬ出会いを果たしたルーシュは、望まぬ形で、ランパードの街で一夜を過ごした。
「さぁ、ルーシュくん。行こうじゃないかっ!」
「あっ、はい。」
どうやら、本気で、ザナフェイト共和国まで、走って行くつもりらしい。
ルーシュの返事を聞くと、走り出すアーノルド。慌てて、その後を追いかけるルーシュ。
しかし、アーノルドとルーシュでは、歩幅が違う。徐々に、差が開き始めてしまう。
「ルーシュくん、遅れているぞ。そんな調子では、会議に間に合わないよ。」
「あっ、はい。」
無茶を言うなと、言いたい所だが、アーノルドの手前、〈スカイ〉は使えない。
仕方が無いので、技能を使う事にした。
タン、タン、タンと、リズムカルに、大地を蹴る。
「おっと、それは、〈瞬動〉かな。中々、やるじゃないか。」
「あっ、はい。」
しかし、ルーシュが使っているのは、〈瞬動〉では無い。〈瞬動〉の上位技能、〈縮地〉だ。あえて、能力を抑えて、〈瞬動〉っぽく見せているだけである。
「しかし、〈瞬動〉を使えるとは、魔法使いにしておくには、勿体無いね。いっその事、私と同じ、拳闘士に転職したら、どうかね。」
「あっ、はい。」
うっかり、返事を返してしまうルーシュ。
何処かのおかわり娘の様に、同じ言葉を繰り返している。ただ、おかわり娘は、自らの意思で求めているのに対し、ルーシュは、アーノルドの押しに流されているだけだが。
アーノルドのペース(色んな意味で)に、ついて行くルーシュ。
拳闘士云々は、ひとまず置いておいて、いつもの様に、〈サーチ〉を使い続けていると、前方に、魔物の魔力をとらえた。
「む、かなり前方だが、魔物の臭いがするね。ルーシュくん、分かるかね?」
「あっ、はい。」
「流石だね。それでこそ、一流の拳闘士だよ。」
(えっ!?拳闘士って、そんな特殊な性癖、持ってたっけ!?僕の知識に無いんですけど・・・。)
「この臭いは、大鬼だね。少し、物足りないが、トレーニングして行こうじゃないかっ!」
「あっ、はい。」
(えっ!?そこまで、分かるの!?ちょっと、怖いんですけど・・・。)
しかし、アーノルドの言う通り、前方の魔物は、大鬼だった。
「3体いるね。私が、2体貰おう。残りの1体は、ルーシュくんに譲るよ。」
「あっ、はい。」
(えっ!?別に要らないんですけど・・・。)
「では、お先に失礼するよ。うおおおおおおおっ!!」
そう言うと、突如、大鬼に向かって、爆速するアーノルド。
「双腕首折おおおっっ!!」
丸太の様に太い腕を、左右に広げて、勢い良く、大鬼の首に叩きつけた。
バキっと、まるで小枝を折るかの様に、大鬼の首をへし折るアーノルド。
もはや、どちらが魔物か、分からない迫力だ。
ルーシュも、任された大鬼を仕留めようと、魔法の謁見に入るが・・・。
「風と光よ 集え 魔を纏いて・・・・。」
「ダメだ、ルーシュくんっ!魔法を使ってはいけない!それでは、トレーニングにならないっ!!」
「えっ!?」
「えっ、では無いよ!私の様に、首をへし折るんだっ!!」
「あっ、はい。」
魔法使いなのに、魔法の使用を禁止されてしまった。
(えっ!?本気っ!?体格差、考えて欲しいんですけど・・・。)
仕方無く、体術で戦うしか無くなった。
向かって来る大鬼は、アーノルドと同じくらい、デカい。
大鬼が、踏み込んで来た瞬間に、その脛に向けて、脚を叩きつけた。
「ガァっ!?」
脛を強打された大鬼は、体勢を崩し、その場にしゃがみ込んだ。その身体を駆け登り、頭を両手で上下から掴み、そのまま自身の身体を回転させて、捻り込み、首をへし折った。
〈斧刃脚〉と〈搬欄〉と言う技の、連続攻撃だ。
「やるじゃないか。やはり、私の目に狂いは無かった。君は、立派な拳闘士だよ。」
「あっ、はい。」
(いえ、拳闘士じゃ無いんですけど・・・。)
「さぁ、次の獲物を、狩りに行こうじゃないかっ!」
「あっ、はい。」
(えっ!?目的が違うんですけど・・・。)
その後も、魔物を発見すると、突撃して行くアーノルド。追従するルーシュも、戦闘に巻き込まれるが、当然、魔法の使用は禁止された。
アーノルドのせいで、必要以上に、魔物との戦闘を繰り返し行なって来た為、ザナフェイト共和国の王都、ザナスに辿り着いたのは、賢人会議の当日だった。
ザナスのギルド総本部は、他の冒険者ギルドとは造りが違い、床は綺麗に磨き上げられ、依頼書のボードも存在しない。
3階建の建物で、1階は、受付窓口と、談話用の机と椅子が幾つか設置されており、食事処の代わりにお茶や果実水が用意されている。
2階には、職員の業務室と食堂。
3階は、ギルドマスター室と会議室が存在する。
その他に、広い鍛錬場の建物が、併設されている。
ギルド総本部は、各国のギルド本部の統括を行なう場所でしか無く、ザナスには、別の冒険者ギルドが建っていて、依頼等は、其方で受ける形になっている。
そのギルド総本部に到着したルーシュ達。
アーノルド先導の元、受付窓口に向かうルーシュは、やっと着いたと、ホッとした。帰りは、絶対、別行動しようと思いながら。
「Sランク冒険者のアーノルド・ストロングだよ。
賢人会議の召集を受けて、只今、到着したよ。」
「アーノルド様、お待ちしておりました。
他の賢人の皆様も、先程、ご到着なさっております。
それで、其方の方は?」
「あぁ、新たなSランク冒険者のルーシュくんだよ。
此処に来る途中で、偶然、出会ってね。一緒に来たんだよ。」
「そうでしたか。ルーシュ様、お待ちしておりました。」
「あっ、はい。」
「それでは、会議室まで、ご案内致します。」
ルーシュは、他の賢人が、アーノルドみたいな脳筋で無い事を願いながら、会議室に向かったのだった。
会議室は、円卓の様になっていて、他の賢人達は、既に、席に座っていた。
すると、そのうちの一人が、アーノルドに声を掛けた。
「アーノルド、遅かったでは無いか。また、貴殿の悪い癖が出たのか?」
「クーロン、待たせてしまった様で済まないね。道中に、魔物がウヨウヨいたので、つい、熱くなってしまったよ。」
「やはり、そうであったか。貴殿らしいな。
ところで、連れの童は、件の新顔か?」
「ああ、ルーシュくんだよ。中々のタフガイでね、此処まで、一緒にトレーニングしながら来たんだよ。
ルーシュくん、彼はクーロン。私と同じ、拳闘士だよ。」
「あっ、はい。ルーシュです、宜しくお願いします。」
「クーロンだ、宜しく頼む。」
(クーロンさんか。アーノルドさんとは、違った雰囲気の拳闘士だな。しかも、竜人族とは。)
「ところで、貴殿は、始祖竜様の御子殿をお連れしていると聞いていたが、誠か?」
「はい。今は、家で留守番をしていますけど。」
「ふむ。お会い出来ると思っていたが、残念だ。」
「まだ、幼体ですから、遠出は厳しかったので。」
「それならば、致し方あるまい。機会があれば、此方から、伺わせて貰おう。」
「分かりました。」
(やっぱり、竜人族にとっても、始祖竜は、特別なんだな。
アーノルドさんに捕まら無ければ、連れて来れたんだけど・・・。)
「ルーシュくん。私達も、空いている席に座ろう。」
「あっ、はい。」
ルーシュとアーノルドが席に着くと、一人立っていた壮年の男性が、話し出した。
「皆様、お忙しい中、お集まり頂きありがとうございます。
私、前任のギルドマスターより、引き継ぎ、冒険者ギルド総本部のギルドマスターを務めさせて頂いております、ランベルと申します。どうぞ、お見知り置き下さい。
僭越ながら、賢人会議の進行役を務めさせて頂きますので、宜しくお願い致します。
改めまして、これより、賢人会議を開催致します。
この度、新たなSランク冒険者様が誕生致しましたので、皆様のご紹介も兼ねて、お集まり頂きました。
では、私の方から、皆様のご紹介をさせて頂きます。
魔導国家マギペディヤより、〈魔導老師〉ハウル・ローゼン様。」
名を呼ばれた、一人の老人が席を立った。
「皆、久しいのう。息災じゃったかの?」
〈魔導老師〉ハウル・ローゼン。
現賢人の中で、最古参の魔法使い。
6元素魔法と無属性魔法、更に、炎と氷属性魔法の使い手で、最強の魔法使いとして、名を知られている。
彼に憧れる多くの弟子を持ち、また、魔法協会の理事長も務めている。
「続きまして、カイゼル帝国より、〈一騎等軍〉プライド・ゾルディック様。」
名を呼ばれた、軍服の様な恰好をした男が、無言で席を立った。
「・・・・・。」
〈一騎等軍〉プライド・ゾルディック。
冒険者でありながら、カイゼル帝国の将軍も兼務している、超一流の槍使い。
現在は、冒険者としての活動は、行なっておらず、軍務に忠実な、職業軍人。
魔槍、ゲイボルクを手に戦う姿は、二つ名の通り、一人で一軍に等しい力を持っている。
立ち上がったプライドは、ルーシュに視線を向けていた。
(ん?何か、見定めてる様な視線だなぁ。う〜ん、ちょっと、嫌な感じ。あんまり、関わりたく無い人かも。)
ルーシュには、ステータスを秘匿する技能がある為、例え、看破する技能を使われても、防ぐ事が出来る。
しかし、プライドからは、その技能を使われている様子は無い。
ただ、視線を向けられているだけだが、普段、感じる視線とは違う為、嫌悪感を抱いた。
そんなプライドの視線に晒されている間に、ランベルから、次の賢人の紹介が進んでいく。
「獣王国ズーラシアより、〈我竜爪牙〉クーロン様。」
「うむ。」
なんともあっさりした挨拶で、立ち上がるクーロン。
〈我竜爪牙〉クーロン。
竜人族の拳闘士。
竜人族は、蜥蜴人とは違った、竜種が進化した種族。
その為、竜種と同様に、硬い鱗と牙、爪、尻尾を持っている。
ただ、地上で暮らす為に、翼は必要無くなった。
しかし、竜種の特性である〈竜魔法〉を使える為、息吹も使える。
つまり、竜種とルーシュと同じ技能〈無詠唱〉を所持している。
高い身体能力と魔法耐性、〈竜魔法〉を兼ね備えているのが、竜人族と言う、種族である。
クーロンは、その力を鍛え、Sランク冒険者にまで、のぼり詰めた。
「続きまして、ランパード国より、〈豪腕無双〉アーノルド・ストロング様。」
「おっと、私の番だね。皆んな、久しぶりだね。」
〈豪腕無双〉アーノルド・ストロング。
鍛え上げらた筋肉と、高い熟練度の〈格闘術〉などの拳闘士に適した技能を習得している。
属性魔法の適性はほとんど無いが、力だけで無く、速さも備えているので、魔法に頼らずとも、途轍もなく強い。
「続いては、ワルディナ王国より、〈傀儡狂技〉ジャッカル・サザーク様。
「・・・お、おう。」
〈傀儡狂技〉ジャッカル・サザーク。
特出した魔法の才や、〈剣術〉などの技能は無いが、その代わり、多くの魔物と契約を結んでいる調教師。
戦闘も、契約を結んだ魔物に任せているので、本人の実力は、それ程、高く無い。
しかし、職種柄、魔物の生態に詳しく、非合法な生体実験なども行なっている狂人。
立ち上がったジャッカルは、ちらちらと、ルーシュの様子を伺っていた。
(ん?また、見られてるなぁ。でも、さっきとは、少し様子が違う様な・・・。もしかして、何処かで会った事があるのかな?
・・・記憶に無いなぁ、記憶を失う前なのかな?)
ジャッカルは、ルーシュと目が合うと、サッとそらしてしまうが、それでも、何度も、ルーシュの様子を伺っていた。
「続きまして、アイゼンバルト皇国より、〈千剣舞姫〉ティターニア・サウザンド様。
「はい。」
〈千剣舞姫〉ティターニア・サウザンド。
賢人の中では、ルーシュに次いで、若いSランク冒険者。
優れた〈剣術〉の使い手であり、その戦う姿は、まるで舞う様に美しく、舞姫と呼ばれている。
その繰り出される斬撃は、目にも止まらない速さの為、千剣と表現されている。
(惜しいなぁ〜。〈剣姫〉じゃ無くて、〈舞姫〉かぁ。僕の称号、差し上げます。あの人にこそ、相応しいと思うんだけど。何故、僕についたのか・・・。)
自分の称号に〈剣姫〉がある事に、今更ながら、不満を持つルーシュ。
まぁ、下手をすれば、〈舞姫〉の称号がついていた場合もあった事に、気付いていない。
「それでは、この度、新たな賢人となりました、レガリス王国より、ルーシュ様。」
「はい、宜しくお願いします。」
やっと、ルーシュの番になり、賢人の紹介は終わった。
しかし、ここまでは、あくまで前座。これから、本格的に会議が始まるのだ。
この後、ルーシュの二つ名を巡り、波乱の展開になってしまうのだった。
遂に始まった賢人会議。全ての賢人(新キャラ)登場です。さて、ルーシュの二つ名は、どうなるのか?
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