賢人会議①
今回の作品は、他の方の作品と、極力被らない様に、オリジナルティーを重視して、書き上げて参ります。
予定では、かなりの長編になる予定ですので、読み応えがあれば良いなぁと、思う次第です。
少しでも、多くの方に、読んで頂ければ、ありがたいです。
誤字脱字等、あると思いますので、ご指摘もお願い致します。
魔法大学が、長期休みに入った初日。
当初の予定通り、まずは、迷宮に潜る事にしたルーシュ。前回、到達した9階層に、〈ゲート〉を使い、転移した。
9階層は、湿地帯が広がる階層だった。
地面が柔らかく、足元がとられて歩きにくい。いざ、魔物との戦闘になれば、動きが制限されて戦いにくいだろうなぁと、ルーシュは、宙に立ちながら考えた。
プリムの為に来ているだけなので、ルーシュが、戦闘する訳では無いが、わざわざ、泥濘んだ地面を歩く必要は無いし、無駄に汚れる。なので、以前、考えた魔法を使い、宙を歩く事にした。
〈スカイ〉を使う事も考えたが、明らかに、宙を飛んでいるので、他の冒険者に見られるのは、まずい。その為、地面より僅かに高い位置を、歩く事にした。遠目からなら、普通に歩いている様に見えるので、誤魔化せると思ったからだ。
9階層の探索を開始したルーシュ達。
最初に遭遇した魔物は、蜥蜴人。
矛先が鉄で出来ている槍を持って現れた。一体、何処で、その槍を手に入れたのか疑問だが、迷宮は、宝箱さえ生み出すので、考えるのを放棄したルーシュ。それよりも、湿地帯と蜥蜴人との組み合わせの方が、厄介だなと思った。
平地であれば、大した事の無い相手だが、湿地帯の様な泥濘んだ地面でも、何の抵抗も感じさせない、素早い動きが出来るのが、蜥蜴人の最大の長所である。
蜥蜴人は、その素早い動きで、プリムに接近し、槍を突き出した。しかし、あっさりと、避けるプリム。幾ら、素早いとは言え、地面限定であり、槍も点の攻撃なので、宙を自由に飛べるプリムに対しては、全く、優位性が活かせていない。それどころか、背後を取られ、爪の攻撃を喰らってしまう。蜥蜴人は、その身を鱗で覆われてるが、竜種の鱗と違い、柔らかい。その為、革製品の代替え品として使われる素材だ。
プリムの攻撃を喰らった蜥蜴人は、血を流しながら倒れ伏した。ピクピクと痙攣しているので、まだ、死んではい無いが、出血が止まら無いので、時間の問題だろう。
(蜥蜴人って、何処となく、竜種に似てるなぁ。竜種の退化した魔物なのかな?環境に合わせて、進化では無く、退化したんだとしたら、哀れだ。)
可哀想な者を見る様な目で、死にかけの蜥蜴人を見つめるルーシュ。
わざわざ、とどめをさす必要は無いと思ったのか、プリムは、先に進んでしまった。ルーシュも、素材が欲しい訳では無いので、プリムの後を追ったのだった。
9階層は、蜥蜴人の棲家だった様で、他の魔物との遭遇は無かった。プリムには、物足りない相手だったのか、先に先にと、進んでしまう。そして、10階層への階段を見つけると、すぐさま、飛び込んでしまった。
10階層は、他の階層と同様に、土壁に覆われてるいる洞窟の様な場所だった。5階層以降、階層主部屋は発見していないで、単純に考えると、この階層にある可能性が高い。
「プリム。この階層は進んでも、階層主部屋の前までだよ。」
「キュイ?」
「何が潜んでいるか分から無いし、そこに着くまでに、時間がかかるからね。」
「キュイ。」
そう、ルーシュは、この迷宮の情報を得ていなかった。ギルドで聞けば、出現する魔物の情報や地図も手に入ったが、別に、攻略が目的では無いので、必要としていない。素材にしても、食用になる物以外は、放置している。
プリムにしても、迷宮は、ただの遊び場に過ぎ無い。まぁ、それで、倒されている魔物側としたら、迷惑この上無いのだが。
結局、その後は、階層主部屋までは辿り着けず、レガリアに帰還する事になった。
ちなみに、10階層で遭遇した魔物は、ハイオーク。その肉は、高級食材だが、また、豚肉料理が続くのかと、ルーシュは項垂れた。
レガリアに帰還すると、ギルド本部に向かったルーシュ。
「ジェシカさん、ハイオークの解体をお願いします。」
「あっ!ルーシュ様。来て下さって、助かりました。今日、お越しになられ無かったら、お屋敷の方に、お伺いするつもりでしたので。」
「え?一体、何の用件で?」
「実は、ギルド総本部より、7賢人の方々に召集がかかっております。」
「召集ですか?」
「はい。賢人会議が行われるそうです。」
「えっと、賢人会議とは、何でしょうか?」
「賢人会議とは、ルーシュ様を含めた、7賢人の方々による会議になります。」
「いや、会議名から、それは分かりますが、何をするんですか?」
「内容については、詳しくは、存じ上げておりませんが、今回の賢人会議では、ルーシュ様のお披露目と二つ名が、与えられるのではないでしょうか。」
「二つ名?」
「はい。賢人の皆様には、二つ名がございます。」
「それって、断れないんでしょうか?」
「二つ名を得る事は、大変、名誉な事ですし、それ以上に、新たな Sランク冒険者となったルーシュ様と、他の6賢人の方々との初顔合わせの場になりますので、ご辞退は厳しいかと。」
「そうですか・・・。ちなみに、ギルド総本部の場所と、会議の日はいつになりますか?」
「ギルド総本部は、ザナフェイト共和国の王都、ザナスにございます。会議開催日は、14日後ですので、お急ぎ下さい。」
(ザナフェイト共和国かぁ。オリンピア大陸のほぼ中央に位置する国だったっけ?確かに、レガリス王国からだと、馬車なら、ぎりぎり間に合うかどうかだよね。まぁ、〈スカイ〉を使えば、時間短縮出来るけど・・・。しかし、二つ名なんて要らないし、他の賢人にも、興味無いのに・・・。)
断りたいが断ると、後々、面倒事になりそうなので、屋敷に戻ると、今後の予定を練り直すのだった。
翌日、ルーシュは、早速、ザナフェイト共和国を目指す事にした。
前もって到着しておけば、当日に、〈ゲート〉で、向かえば良いからだ。
時間短縮の為、まずは、ホルルドに向かい、其処から、北西方向に進んで行く事にした。
空の旅は、遮るものが無い為、順調に進み、その日のうちに、レガリス王国の北側の国境付近まで、辿り着いた。転移地点を定めると、一旦、屋敷に戻り、翌日、その場所から北に向かう様にする。これを、繰り返して行い、ザナフェイト共和国に転移地点を定めるのだ。
レガリス王国とザナフェイト共和国の間には、ランパード国と言う国がある。レガリス王国に比べると、国土は狭いが、自然が豊かなせいか、魔物の生息率が高く、その為、冒険者の数も多い。
そのランパード国の上空を進んでいたルーシュは、国の半ば辺りで、その日の転移地点を定めるつもりだった。
しかし、〈サーチ〉が、多数の魔力の反応をとらえた為、状況の確認が必要だなと、様子を見る事にした。
(あれは、人?いや、冒険者の人達かな?状況から見て、魔物の集団に襲われて、逃げているみたいだね。・・・助ける義理は無いけど、ちょうど側に、転移地点に適した大岩があるなぁ。出来るだけ、街に寄りたくないし、追っ払うなりして、場所を確保しよう。)
そう判断を下すと、魔物の集団に向けて、魔法を放った。
激しい土煙が舞い上がり、視界が不十分になったのを利用して、地上に降り立った。
「僕が、魔物を惹きつけいる間に、逃げて下さいっ!!」
冒険者達に避難する様、呼びかけた。
「す、すまんっ!すぐに、応援を呼んで来るっ!!」
そう言い残して、その場を去る冒険者達。
(いや、戻って来ないで欲しいんだけど。)
折角、転移地点を、確保出来そうなのだ。戻って来られたら、意味が無い。
ルーシュは、早々に、魔物の駆使を行おうとした。
舞い上がった土煙が収まると、魔物の姿が見えてきた。オークであった。
(また、豚肉か・・・。)
一気に、やる気が失せ、さっさと片付け様と、冒険者達も居なくなったので、〈無詠唱〉で、魔法を放った。
「・・・〈ライトニングランス〉。」(×22)
「「「「「ブヒッ!?」」」」」
ルーシュが力無く呟き、魔法を放つと、まさに、豚らしい声をあげながら、オーク達は全滅した。雷撃を喰らった為、香ばしい匂いが、辺り一面に広がった。
(・・・さて、要らないんだけど、回収しておこう。あっ!!レッサードラゴン達に、食べてもらおうかな。)
オークどころかハイオークの肉さえも、持て余しているのだ。これ以上、豚肉は要らない。レッサードラゴン達なら、喜んで食べてくれるだろうと、彼等の胃袋に期待した。
〈インベントリ〉にオークの亡骸を回収していると、冒険者達が逃げた方向から、一つの魔力の反応をとらえた。
(ん?もう、戻って来たのかな?しかし、凄い勢いで、近づいて来てるなぁ。人っぽいけど、保有している魔力の量が多い。)
気になって其方を見ると、土煙を舞い上げながら、突進して来る者がいた。
「うおおおおおおっ!!!」
雄叫びをあげながら、近づいて来たのは、ルーシュの身の丈の倍はある、スキンヘッドの大男だった。
あまりの迫力に、唖然としているルーシュの前で、急停止をする大男。
「ふう。・・・どうやら、もう、片付いてしまった様だね。足の速さには、自信があったのだがね。
これは、君が、倒したのかな?」
「え、ええ・・・。」
「素晴らしいっ!!この短時間で、これ程のオークを倒すとはっ!!ん?君は、もしや、〈例〉のSランク冒険者では?」
「い、いえ。」
「嘘は感心しないな。このランパードにも、君の事は伝わっている。特徴が一致しているし、ザナフェイトに向かっている途中なんだろう?」
「あっ、はい。」
「やはり、そうか。それにしても、馬車が見当たらないが、徒歩で向かっているのかね。」
「あっ、はい。」
「素晴らしいっ!!魔法使いと聞いていたが、自力で向かっているとは。君も、中々のタフガイの様だね。冒険者は、身体が基本だからね。」
「あっ、はい。」
「おっと、済まない。まだ、名乗って無かったね。私は、君と同じ、Sランク冒険者のアーノルド・ストロングだよ。宜しく頼むよ。」
「あっ、は、いや、ルーシュです。宜しくお願いします。」
「うむ、ルーシュくんか。では、そのオーク共を回収したら、街に向かおう。〈アイテムボックス〉に回収していたのだろう?」
「あっ、はい。」
「街までは、走ればすぐだよ。トレーニングとしては物足りないが、ザナフェイトまでなら、十分、鍛えられるよ。」
「あっ、はい。」
「おっと、そうだね。そのオークを担いで行けば、少しは、トレーニングになるね。一体、借りるよ。」
「あっ、はい。」
アーノルドの押しの強さに、ついつい、返事を返してしまうルーシュ。
此処から先は、〈スカイ〉と〈ゲート〉での移動は、断念するしか無かった。
突然のギルドの召集と濃い新キャラも登場。他の賢人も、個性的なのか?
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