レガリス魔法大学①
今回の作品は、他の方の作品と、極力被らない様に、オリジナルティーを重視して、書き上げて参ります。
予定では、かなりの長編になる予定ですので、読み応えがあれば良いなぁと、思う次第です。
少しでも、多くの方に、読んで頂ければ、ありがたいです。
誤字脱字等、あると思いますので、ご指摘もお願い致します。
屋敷を購入し、引っ越しも無事終了した翌日。
遂に、魔法大学に通う日を迎えた。
「旦那様、馬車の準備が整いました。」
「ジャンさん、旦那様はやめて下さい。ルーシュでお願いします。」
「では、ルーシュ様で。それと、私の事も、ジャンと呼び捨てで、お呼び下さい。」
「それは、ちょっと、抵抗があるので、勘弁して下さい。」
と、不毛なやり取りをする、家主と家令。
これ以上、話を続けても、無駄と判断したルーシュは、タイラーが行者を務める馬車に乗り込んだ。
元々、魔法大学の近くの屋敷を購入したので、わざわざ、馬車で移動する必要性を感じ無かったが、それでは、タイラーの仕事が無くなってしまう。庭師も兼任しているが、庭の手入れだけでは、時間が余る。そうなると、給金に影響するので、行者もしてもらうしか無かった。
魔法大学には、すぐに、到着した。
大学の門番に、事情を説明し、学長室までの案内を頼んだ。
魔法大学は、魔法学園を卒業し、更に、成績が良かった者のみが、通える。
就学期間は、2年。17〜19歳の生徒が、在籍している。
その為、10歳のルーシュが、校内を歩けば、目立つ目立つ。
「何で、子供が、校内に?」
「やだ、あの子、可愛い。」
「見学か?でも、普通、魔法学園じゃないか?」
ルーシュを見かけた生徒達が、ヒソヒソと話し合っている。生徒達の注目を浴びながら、学長室に入って行く。
それを見届けた生徒達は、更に、騒がしくなった。
「えっ!?学長室に入ったぞっ!?」
「学長の親類なのかしら?」
「それは無いだろう。全く、似てないし。」
などと、憶測が飛び交う。
そんな中、1人の生徒が、ルーシュの素性を明かした。
「皆さん、ご存じ無いのかしら?あの方は、7賢人のお一人である、ルーシュ様ですよ。」
「えっ!?7賢人って、もしかして、最近、新しく Sランク冒険者になったっ!?」
「あんなに幼いのにっ!?」
騒がしさが、余計に増した。
「でも、よくご存じでしたね。流石は、公爵令嬢のアンジェリカ様。」
そう、ルーシュの素性を明かしたのは、パウエル公爵家のアンジェリカだった。
謁見式に、パウエル公爵が参加していたので、ルーシュの事を聞いていたのだ。
長いブランドの髪をなびかせて、自慢げに語るアンジェリカ。優越感に浸っていた。
しかし、他の女生徒から、返答に困る質問をされる。
「でも、それでは、どの様なご用件で、魔法大学に来られたんでしょうか?」
「えっ!?そ、それは、秘密ですっ!」
「そんな、教えてください、アンジェリカ様。」
「あ、後で、分かりますっ!それよりも、講堂に移動しましょうっ!講義に遅れてしまいますわ。」
答えをはぐらかして、うやむやにするアンジェリカ。
そんなやり取りが、学長室の外で、行われていたとは知らず、ルーシュは、学長と話し合いを行なっていた。
「ルーシュ殿、お待ちしておりました。」
「マグドリア学長、お世話になります。」
「それでは、こちらの帽子とローブを身につけて頂けますか?教員の制服になりますので。」
「分かりました。・・・・・サイズも問題ありませんね。もしかして、特注では?」
「ええ、普通のサイズでは、合わないと思いまして、ご用意致しました。」
「そうですか、ありがとうございます。あと、あまり、謙った言葉使いをしなくても、結構ですよ?僕は、教員。マグドリアさんは、学長なんですから。他の教員の方と、同様に接して下さい。」
「そうですね。これは、失礼。では、ルーシュ先生と、お呼びしますね。」
「はい、宜しくお願いします。それで、講義は、これからですか?」
「えぇ、ルーシュ先生と同じ、魔法理論学の教員の
ルーカス先生が、迎えに来る事になっています。」
「ルーカス先生の講義の邪魔になりませんか?」
「大丈夫ですよ。魔法理論学の講義は、一つではありませんので。ルーカス先生には、ルーシュ先生とは別に、講義を行なってもらいますので。」
「そうですか、安心しました。」
「ただ、今日は、ルーカス先生も、ルーシュ先生の講義に参加します。ルーシュ先生は、初の講義になりますので、その助手として。」
「それは、心強いですね。」
「あと、私も見学させて頂きますが、宜しいですかな?」
「勿論、構いません。拙い講義になるかも知れませんし、適性があるか、判断してもらえると助かります。」
「ルーシュ先生なら、問題無いと思いますがね。っと、ルーカス先生が来た様ですね。」
学長室にルーカスがやって来て、ルーシュと挨拶を交わす。ルーシュとルーカス。名が近いせいか、すぐに、打ち解けた。
その後、ルーカスの案内で、魔法理論学の講堂に向かうルーシュと学長。
先に、ルーカスが講堂に入り、学長も講堂の後ろに座る。ルーシュは講堂の外で、待機である。
「えー、今日は、新しく赴任して来た先生に、講義を行なってもらいます。それでは、ルーシュ先生。入室して下さい。」
ルーカスの紹介を受け、講堂に入るルーシュ。
すると、生徒達が、騒がしくなった。
「えぇ!?先生っ!?」
「本当にっ!?」
「うそっ!?」
信じられないと言った声が、所々から、あがる。無理も無い。
そんな声を聞きながら、教壇に向かうルーシュ。
横目で、講堂の生徒達の様子を伺いながら。
(ふむ。不人気と言うのは、本当かも。講堂の広さ的には、80人ぐらい入りそうなのに、今は、30人弱しか、生徒がいない。別の講義もあるって話だったけど、同じ様な感じだろうな。まぁ、気楽にいこう。)
教壇に着いたルーシュは、生徒の動揺を無視して、挨拶を始める。
「初めまして、ルーシュ・ハミットと申します。今日より、魔法理論学の臨時講師として、講義を行ないますので、宜しくお願いします。
では、早速ですが、講義を開始します。
皆さんの学習進度を確認したいので、まずは、質問から、行います。
魔法は、詠唱を行う事で発動しますが、詠唱の役割とは、どういったものですか?
答えられる方は、挙手をお願いします。」
「はいっ!」
「では、お答え頂く前に、お名前を教えて下さい。」
「アンジェリカと申しますわ。」
「では、アンジェリカさん、答えをお願いします。」
「はい。詠唱とは、事情に干渉し、それを改変して、魔法を発動する事ですわ。」
「はい、その通りです。ありがとうございました。
では、皆さんご存じの生活魔法、着火の詠唱についてですが・・・。」
黒板に、着火の詠唱文を書いていく。
生徒の中から、今更、着火の魔法?と言う声が、あがる。
「着火の魔法の詠唱文は、大気よ 魔に触れ種火を 起こせ となりますが、では、初級魔法の〈ファイアボール〉の詠唱は、どう言うか、お答え頂ける方は、挙手を。」
「はい。」
「では、お名前をお願いします。」
「ライオスです。」
「では、ライオスくん。お願いします。」
「はい。大気よ 魔に触れ火球と成り 放て です。」
「はい、その通りです。ありがとうございました。」
再び、黒板に詠唱文を書くルーシュ。
「では、この二つの魔法の詠唱文、共通点がある事に気付くと思います。
そう、大気よ 魔に触れ までが、同じ詠唱です。では、大気よ は、事情に干渉する事ですが、魔に触れ とは、何を示していますか?お答え出来る方、挙手をお願いします。」
「「「「・・・・・。」」」」
さっきまで、着火の魔法なんてと言っていた生徒達だったが、答えられる者が現れなかった。
「う〜ん、そんなに難しく考える必要は無いんですが・・・。では、時間が勿体無いので。
魔に触れ とは、自身の魔力の事です。正確には、使用する魔力の量を調整しています。
ただ、人によっては、魔力の操作次第で、使用する量を任意に調整出来ます。操作次第と言ったのは、操作が未熟だと、無駄に魔力を使い、大きな火を起こす事や、発動のたびに、その大きさが、不安定になります。
話が少しそれましたが、魔に触れ とは、魔力の量だと言いました。つまり、着火の魔法と〈ファイアボール〉で使用する魔力の量は同じと言う事になります。」
「知らなかった・・・。」
「へぇ〜。」
などと、少しずつ、関心を持ち始める生徒達。
ここから、更に、生徒達は、ルーシュの講義にのめり込む。
「では、残りの詠唱文についてですが、着火では、種火を 起こせ 〈ファイアボール〉では、火球と成り 放て となりますが、種火を と、火球と成り を入れ替えた場合、どうなるでしょうか?」
「「「「えっ!?」」」」
困惑する生徒達。それもそうである。そんな事をした事も、考えた事も無いからだ。それは、魔法の詠唱文とは、魔法を発動させる為に必要な定説文だから。それ故に、詠唱文に手を加えるなど、あり得無いと思っている。
「どうでしょうか?どなたか、お答えしてもらえませんか?」
「えっ、発動しないんじゃない・・・。」
「だよな。定説に背くし・・・。」
コソコソと話しているが、答える者はいない。
「お答えが出ない様なので、ルーカス先生、お願いしても、宜しいですか?」
「発動しないのでは、無いでしょうか?」
「残念。発動します。」
「「「「「えっ!?」」」」」
「皆さん、お疑いの様なので、実演してみましょう。
大気よ 魔に触れ火球と成り 起こせ 〈ファイア〉。」
ルーシュが詠唱を行うと、ファイアボールと同じ火球が、手の上に留まっている。
「うそっ!?」
「あれって、〈ファイアボール〉じゃ無いのかっ!?」
「いや、〈ファイアボール〉なら、手の上で、保持出来無いだろっ!?」
騒めく生徒達。ルーカスも同様だ。
しかし、ルーシュの講義は、まだまだ、続く。
「この様に、入れ替えを行っても、発動します。火種が、火球に変わりますが。つまり、〈ファイアボール〉の方は、入れ替えると、火種が、〈ファイアボール〉の様に、目標に向かって飛んで行く事になります。これは、講堂で行うのは、危険ですので、今は行いませんが。
では、今度は、入れ替える部分を変えて、起こせ と、放て を入れ替えたら、どうなるでしょう?」
「はいっ!」
「アンジェリカさんでしたね、どうぞ。」
「〈ファイア〉では、火種が飛び、〈ファイアボール〉では、火球が留まるのでは、無いでしょうか?」
「正解です。飲み込みが早いですね。アンジェリカさんの言う通りの結果になります。
使用する魔力量と属性が同じであれば、詠唱文を入れ替えても、魔法は発動すると言う事です。
これは、水属性の〈ウォーター〉と〈ウォーターボール〉でも、同じ事が出来ます。
ただ、注意してもらいたいのは、〈ウォーター〉の最後の節 流せ を〈ファイア〉に使った場合は、発動しません。
それは、魔法とは、自然現象に由来するものだからです。その為、種火を 流せ と、詠唱しても、自然の摂理に反するので、発動しません。
改変し、発動させるには、このルールを破らなければ、同じ魔法でも、違う現象を生み出す事が出来ると言う事を、覚えておいて下さい。」
詠唱の役割について、説明するルーシュ。
生徒達は、その講義に、のめり込んでいた。
「では、そろそろ、時間ですので、最後に、宿題を出して終わりとします。
詠唱文の入れ替えでも、魔法は発動すると説明しましたが、違う結果を生み出す事も出来るとも説明しました。
これから、お見せする魔法は、〈ファイア〉ですが、詠唱文を入れ替えるのではなく、改変しています。
早口で、詠唱しますので、聞き取れないと思います。ですので、どう改変したか、それを次回までに、考えて下さい。
では、発動します。大気よ・・・・・・〈ファイア〉。」
すると、〈ファイア〉の火が、大きな火になって、発動した。
「えっ!?あれが、〈ファイア〉?」
「大きくない?」
「くそっ!聞き取れなかった。」
不人気の講義とは、思えないくらいに、皆が、真剣に向き合っている。
「では、今日の講義は、終了とします。」
初めての講義としては、上々の結果である。
しかし、これは、まだ、初歩の初歩。
魔法の真理に至る為の、スタートラインに立った程度だ。僅か1年程度では、どこまで教えられるか、分からないが、ルーシュの講義を受ければ、間違い無く、魔法の技術は、向上するだろう。
初の講義を終えたルーシュは、早々に講堂を出ようとしたが、生徒達に呼び止められる。
声をかけてきたのは、アンジェリカだった。
「ルーシュ先生、この後のご予定は?」
「そうですねぇ、昼食の時間ですので、学食を食べるつもりですよ。」
「ご一緒しても、宜しいでしょうか?」
「勿論、構いません。」
「じゃあ、私もっ!!」
「僕もっ!!」
次々と、同席を願う声があがる。
たった一度の講義で、生徒達の関心を深めたのだ。
結果、十数名の生徒達と共に、食堂に向かう事になった。
学食を食べながら、生徒達からの質問にも答えてあげる。
「先生は、先程、早口で詠唱を行いましたが、本当に早くて、聞き取れ無かったです。あれは、技能でしょうか?」
「そうです、技能を使いました。〈高速詠唱〉と言う技能ですね。」
「それは、僕でも、出来るのでしょうか?」
「技能には、属性魔法の様に、先天的に備わっているものと、剣術などの、修練で会得する後天的なものがある事は、知っていると思いますが、〈高速詠唱〉は、後天的に習得出来るものですので、ライオスくんだけでなく、皆さんも修練次第で、習得可能です。」
「どの様な修練が、必要ですか?」
「そうですねぇ、まずは、詠唱の一部を早口で行う事から始めて、徐々に、増やしていくと、習得し易いです。速度としては、普通の詠唱の3倍くらいでしょうか。技能ですので、当然、熟練度もあります。最大熟練度5で、最上級魔法の高速詠唱が可能です。」
「先生は、今、最上級魔法に触れましたが、先生は、使えるのでしょうか?」
「使えますよ。」
「す、凄い・・・。」
「ルーシュ先生。先生が魔法に詳しい事は、先程の講義でも理解出来たのですが、現代魔法はどれくらいあるのでしょう?」
「現代魔法は、11種の属性がありますが、現在判明している魔法の数は、151個ですね。」
「そんなにあるのですね。」
「先生、僕は、火、風、水、無属性の魔法の適性しか無いのですが、それだと、覚えられる数も少ないのでは・・・。」
「えっと、貴方は、オリバーくんでしたね。そんな事は無いですよ。先程、魔法は先天的に備わっているものと言いましたが、それは、6元素魔法と無属性魔法の事です。それらの上位にあたる4大魔法は、後天的に習得可能な魔法です。ただ、それらは、2属性の合成魔法なので、適性が無いと習得出来ません。
オリバーくんは、火、風、水属性の適性があるので、炎、氷属性は、修練次第で、習得出来ますよ。
あと、先程、151個の魔法があると言いましたが、無属性魔法にこそ、1番多くの魔法があるので、心配はいりません。」
などと、質問に、躊躇なく答えるルーシュ。
十分すぎる程に、教員の仕事をこなしていた。
魔法大学の初講義を終えたルーシュ。新たな魔法の可能性を披露しました。これから先、どんな講義をしていくのか?
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