王都レガリア③
今回の作品は、他の方の作品と、極力被らない様に、オリジナルティーを重視して、書き上げて参ります。
異世界ものではありますが、主人公は、1作品目、2作品目とは、立ち位置が違います。
予定では、かなりの長編になる予定ですので、読み応えがあれば良いなぁと、思う次第です。
少しでも、多くの方に、読んで頂ければ、ありがたいです。
誤字脱字等、あると思いますので、ご指摘もお願い致します。
誘拐犯達を撃退し、シャルロットを救出したルーシュは、国王の執務室に呼ばれていた。
「ルーシュよ、良くやってくれた。礼を言う。」
「いえ、賊を捕縛したのも、シャルロット王女様を保護したのも、騎士団の皆さんなので。」
「しかし、其方が、賊を撃退したと、報告を受けている。どうやったかは、不明との事だったが。」
「それはそれとして、賊には、内通者がいたのでは、ありませんか?」
「うむ。話を逸らされた様だが、どうやら、その様だ。今、捕らえた者達を尋問しておる。すぐに、判明するだろう。何せ、身体中のあちこちの骨が砕けて、痛みと恐怖に、心も砕けている様だからな。」
「なるほど。少し、やり過ぎましたか?」
「いや、構わん。王女誘拐など、重罪だ。背後関係を吐かせたら、当然、死罪だからな。」
「そうですね。彼らの独断とは、思えませんし。」
王女誘拐などの前代未聞である。他国が関係している可能性が高い。どこまで情報を掴めるか、それによっては、戦争に発展するケースも考えられる。だが、恐らく彼らは、捨て駒だろう。主犯にまでは、辿り着けないと、国王も、薄々、気付いていた。
王女誘拐事件から、明けて翌日。
再び、国王に呼び出されたルーシュ。国王から、内通者の捕縛、どの様に誘拐を行ったかなどを、知らされた。残念ながら、主犯は、分からなかった様だ。
「・・・と言うのが、賊から、判明した情報だ。賊に依頼した者の正体は、不明。誘拐に成功した際に、引き渡しを行う予定だった場所を、騎士団が捜索中だ。」
「何故、それを自分に?」
「いや、其方なら、もしかして、犯人を突き止める事が出来るのではないかと、思ってな。シャルロットを見つけた様に。」
「う〜ん、厳しいですね。この際、隠しても無駄なので言いますが、技能を使いました。しかし、この技能には、欠点があって、知らない相手は、探せません。」
「そうか、万能では無いのか。」
「万能で無いから、弱点になりうる。だから、ステータス同様、秘匿しているんですけど。」
「うむ。そんな事も、言っておったな。」
「ご用件は以上でしょうか?これ以上なければ、退出しますが?」
「いや、実は、もう一つ、其方に頼みたい事があってな。」
「何でしょうか?」
「シャルロットだ。」
「シャルロット王女様ですか?」
「うむ。昨日の事が、余程、ショックだった様でな、部屋に引き篭もってしまった。」
「まぁ、シャルロット王女様は、まだ、10歳の女性ですからね。無理も無いのでは?」
「其方も、10歳であろう。」
「そうでした。」
「修羅場をくぐり抜けて来た其方と、シャルロットを同い年と言う括りで、比べても意味が無い。とにかく、シャルロットには、元の明るさを取り戻してもらいたい。」
「ご心配なのは分かりますが、時間をかけて、ご様子を見守るのが、良いと思いますが。」
「其方の言い分も分かるが、確証は無かろう。そこでだ、其方にシャルロットを元気づけてもらいたい。」
「元気づけろと、言われましても、何をすれば良いのか、分かりません。」
「取り敢えず、シャルロットに会ってやってくれ。会うのを拒否されたら、仕方が無いがな。」
「分かりました。でも、ご期待はしないで下さい。シャルロット王女様との面識は、ごく僅かですので。」
国王から、頼み事をされたルーシュ。
家族の問題だろっと、言ってやりたい気持ちになったが、相手は国王だ。不敬になるし、もう暫くすれば、査定も終わり、帰れるのだ。余計な問題を起こす訳には、いかない。
幸い、無理なら仕方無いと、言われたので、無理でしたと報告すれば良いと、気楽に考えるルーシュだった。
国王の依頼で、シャルロットの部屋の前まで来たルーシュ。メイドに事情を話して、扉を叩いて、声をかけた。
「シャルロット王女様、ルーシュです。お加減は如何でしょうか?」
「・・・・・。」
返事は返ってこなかった。やっぱり、ダメじゃんと、諦めて、この場を去る事にした。
「失礼致しました。ご体調が優れない様ですね、それでは。」
「ま、待って下さいっ!」
「えっ?」
中から、静止の声がかかる。ルーシュとしては、予想外である。
ぎぃっと、ゆっくりと扉が開き、隙間から、シャルロットが、外の様子を伺っている。
「ルーシュ様だけ、入って下さい。」
「・・・分かりました。」
部屋に招かれたが、この後、どうすれば良いか、分からない。記憶喪失のせいもあるが、同世代との接点が見当たらない。そもそも、関わった人の数よりも、竜達の数の方が多いのだ。意味不明である。
「・・・ルーシュ様、ご心配をおかけしました。」
「いえ、お気遣い無く。」
「お助け頂いたのに、お礼もしておりませんでした。昨日は、ありがとうございました。」
「いえ、お気遣い無く。」
「ルーシュ様が駆けつけてくだされなければ、どうなっていたか・・・。」
「いえ、お気遣い無く。」
「あ〜の、ルーシュ様?」
「いえ、お気遣い無く。」
「ルーシュ様、会話が成り立っておりません。」
「はっ!すいませんっ!!人と関わるより、竜の方が多かったので・・・。」
「どんな人生ですかっ!?」
「た、確かにっ!?」
励ましに来た筈なのに、逆に、ショックを受けるルーシュ。プリムは、例外だが、竜に関わったせいで、ろくな目にあっていない。
「大変だったんですね。」
「プリムは別ですが、竜には関わらない方が良いですよ。」
「いえ、普通は、出会いません。」
「そうでしょうか?私は、70匹ぐらい出会いましたけど。」
「普通って、一体・・・。」
「ちなみに、古代竜は、会話が出来ます。」
「話せるのですか?」
「いえ、会話が出来るだけで、成立はしませんでした。襲われましたし。」
「会話って、一体・・・。」
「話が通じないのは、人でもいますし。」
「確かに、私も誘拐されました。」
「ええ、私は誘拐された経験はありませんが、恐喝と暴行未遂なら、経験済みです。」
「そうなんですね。」
「ええ、しかも、竜との遭遇と同じ日に。」
「濃い一日ですね・・・。」
「ですので、シャルロット王女様も大変だったと思いますが・・・。」
「いえ、今のお話を聞いて、大変って何?って思いました。」
「何なんでしょうね?」
「さぁ・・・?」
当初の予定とは違ったが、気を持ち直したシャルロット。ルーシュは、国王に感謝されるが、複雑な心境だった。
王女誘拐事件から、2日後。
やっと、炎竜の査定が終わったとの、報告が入った。
これで、監禁状態から解放されると、ホッとするルーシュ。あとは、買取り金を受け取り、サーシャへの土産を買い、帰るだけ。
もう、何度も訪れた、国王の執務室で、ルーシュは買取り金の受け取り手続きを行う事になった。
名も知らない財務大臣から、査定額を提示された。
「・・・となり、合計で、白金貨2500枚で、買い取らせて頂きます。宜しいですかな?」
「構いません。」
と、答えたルーシュだが、もう、桁がおかしくて、考えるのをやめた。白金貨2500枚なら、サーシャのサポート手当は、白金貨25枚。普通に豪邸が買える。ショックで倒れないか、心配だ。もう、受付嬢の仕事をしなくても、十分生きていける金額である。だが、そうなると、ルーシュの担当は、誰になるのか?流石にビッチュは、遠慮したい。
「これで、炎竜の買取りは、終了だ。待たせてしまったな。」
「いえ、物が物なので、仕方が無いかと。まぁ、外に出られなかったのは、多少、不便でしたが・・・。」
「それも、もう、終わりだ。ホルルドに戻るのであろう?なんでも、グランとは、別行動との事らしいな。グランの奴は、既に、王都を出立しておる。一人で、平気か?」
「問題ありません。一人の方が、気楽ですので。」
「まぁ、其方であれば、問題ないか、気を付けてな。また、王都を訪れた際、遠慮なく、王城に来ると良い。シャルロットも、喜ぶ。」
「はい。では、いずれまた。失礼致します。」
国王に別れを告げて、王城を出たルーシュ。
城下町で、サーシャへの土産を買うと、人気の無い路地裏に入った。それ以降、王都で、ルーシュの姿を目撃した者はいない。
つい先程まで、王都にいたはずのルーシュは、サーシャの部屋に、帰っていた。
古代魔法、〈ゲート〉を使用したからだ。
〈ゲート〉は、〈インベントリ〉と同じく、時魔法と空間魔法の合成魔法だが、用途が違う。異なる場所と場所を繋ぎ、一瞬で、移動可能な、転移魔法である。ただ、この魔法は、一度でも、訪れた事のある場所でしか、使用出来無い。だから、王都に向かう時には、使用出来無かった。
(やっと、戻って来れたなぁ。王城を出た後、尾行の形跡があった。何が、目的なのか分からないけど、路地裏でまいたし、問題無いかな。
さて、後は、サーシャさんの帰宅を待って、手当の件の説明をしないと。鱗の時とは、桁が違うし、今後の身の振り方にも、影響するだろう。)
ルーシュにしては、常識的な考えである。まぁ、金額が、非常識ではあるが。
サーシャの今後の身の振り方次第で、ルーシュ自身も、今後の行動に、修正が必要になる。国巡りと言う方針自体は、変わらないが、 Sランク冒険者が、担当者不在は、問題になるからだ。もし、サーシャが退職した場合、ホルルド支部にこだわる必要も無い。再び、王都を訪れる事になるが、ギルド本部の受付嬢を担当にするのも、ありだ。と言うより、その選択しかない。ホルルド支部の受付嬢は、ビッチュのせいで、印象が宜しく無い。そうなると、王都のギルドしか、ルーシュは知らない。あとは、他国で、切り替えを行うと言う選択肢もあるが、冒険者として活動する気が無いので、わざわざ、他国のギルドを訪れるのは、避けたいところだ。どうせ、また、厄介事に巻き込まれるのが、オチである。
そんな事を考え、悩みながら、サーシャの帰宅を待つルーシュだった。
ルーシュが帰宅している事に、帰宅したサーシャは、驚いた。それは、まだ、ギルドマスターやグランが、帰還していなかったからだ。一緒に王都に向かったので、帰りも一緒だと思っていたのに、ルーシュだけが、先に帰還しているのだ。驚くのも仕方が無い。
「ルーシュくん、帰って来てたんだね。でも、ギルドマスター達は?」
「只今戻りました。帰りは、別行動にしてもらったので、先に着いてしまったみたいですね。」
「そうだったのね、お帰りなさい。どうだった、王都は?」
「そうですね。ほぼ、監禁状態でしたので、観光なんかは、出来ませんでした。」
「監禁っ!?」
「あっ、一度だけ、外に出れたんでした。王女様が、誘拐されたので。」
「誘拐っ!?」
「あっ、もう、解決済みです。あとは、お城を出た後、尾行されてましたね。」
「尾行っ!?」
「あっ、それも、解決済みです。問題ありません。」
「・・・ルーシュくん。」
「何でしょう?」
「一から、説明を要求します。」
「あっ、はい。」
相変わらず、説明下手なルーシュ。
結局、王都に着いてからの一部始終を、改めて、説明する事になった。
「・・・と言う訳で、サーシャさんに、白金貨25枚のお手当が出ます。」
「は、白金貨25枚・・・。」
「はい。家どころか、豪邸が買えますね。引っ越します?」
「ち、ちょっと、思考が追いつかないわっ!?」
「ですよね。僕も、白金貨2500枚貰いましたが、思考を放棄しました。」
「そ、そうよね。とても、子供が所持して良い額じゃないわ。」
「まぁ、僕の事より、サーシャさんです。」
「私?」
「はい。サーシャさん、お仕事どうします?」
「あっ!」
「これだけのお金があれば、もう、働く必要が無いのでは?それに職場に残ると、ビッチュさんからは、間違い無く、嫉妬されますし。」
「そうね。既に、毎日、嫉妬の篭った目で、見られているわ。」
「なので、今後の身の振り方を、考えた方が良いと思います。
ちなみに、その後、サーシャさんのお母さんの容態は、いかがですか?」
「ルーシュくんのおかげで、今は、順調に回復しているみたい。お医者様も、驚いていたらしいわ。」
「それは良かった。それなら、尚更、ご家族と一緒に、生活した方が良いのでは?元々、お母さんの治療費を稼ぐ為に、受付嬢になったんですよね?」
「そうだけど・・・。ルーシュくんは、どうするの?私が、退職したら、担当を変えないといけないでしょう?ビッチュさんを担当にする事は無いと思うけど・・・。」
「ええ、あの方は、ご遠慮したいです。そうですねぇ、王都のギルドの方にお願いすると思います。」
「そうなると、ホルルドを離れるって事?」
「元々、レガリス王国に来たのは、誤って、国境を越えてしまっただけなので。いずれ、祖国に帰る予定でした。そのついでに、他の国、国巡りをしようかなと。」
「そっか、元々、旅に出るつもりだったのね。」
「ええ。レッサードラゴンやら、炎竜のせいで、予定が遅れてますが。
なので、サーシャさんが、お仕事を続ける、続けないに関わらず、ホルルドを離れる事には、変わりません。」
「それで、いつ、出立するの?」
「サーシャさん次第です。サーシャさんが、お仕事を続けるなら、すぐに、旅立ちますし、お仕事を辞めるなら、その後になります。」
「そう・・・、分かったわ。事が事だし、家族と相談して、決める事にするわ。だから、少し、時間をちょうだい。」
「分かりました。」
お互いの今後を相談したルーシュ達。
本音では、ルーシュは、すぐに、旅立ちたかったが、サーシャを巻き込んだのは、自分だと理解しているので、サーシャの希望を尊重する事にした。
そんなやり取りがあった数日後、グラン達が、ホルルドに戻って来たのだが、王都を先に出た自分達より、ルーシュが先に帰って来ていた事に、驚くのだった。
炎竜の査定が終わり、とんでもないお金を手に入れたルーシュ。やっと、国巡りが始まる様です。
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