王都レガリア①
今回の作品は、他の方の作品と、極力被らない様に、オリジナルティーを重視して、書き上げて参ります。
異世界ものではありますが、主人公は、1作品目、2作品目とは、立ち位置が違います。
予定では、かなりの長編になる予定ですので、読み応えがあれば良いなぁと、思う次第です。
少しでも、多くの方に、読んで頂ければ、ありがたいです。
誤字脱字等、あると思いますので、ご指摘もお願い致します。
ルーシュ達が、ホルルドの街を出発してから、5日目、王都には、グラン侯爵の使いが、先に到着していた。炎竜の件と、ルーシュの王都入りの連絡である。
書状は、再び、宰相の元に届いた。
宰相は、こんな短期間で、書状が届けられた事を、疑問に思いながら、国王の元に向かった。
「陛下、グラン侯爵から、再び、書状が届いております。」
「なんだ?数日前に、届いたばかりであろう。何かの手違いか?」
「どうでしょうか?取り敢えず、ご確認頂ければ。」
「うむ。分かった。
・・・んっ!?んんっ!?ば、馬鹿なっ!!・・・向かっているのかっ!?・・・これは、どうすればっ!?」
「陛下、どうされました?何か、不都合がありましたか?」
「少し待て・・・。良し、ノービス、読んでみろ。」
「はぁ、では、拝見致します。
・・・はいっ?・・・え、えっ!?・・・ちょっ!!・・・こ、これはっ!!」
「・・・理解したか?」
「・・・理解と言うか、これは、本当なのでしょうか?」
「本当なのだろう・・・、ギルド本部にも、連絡を入れるとの事だしな。」
「た、確かに・・・。」
「想定外だ・・・、過小評価だったな。」
「えぇ、これ程とは・・・。」
「昇格は確実として・・・、買い取れるか?」
「そうですね、財務大臣と相談が必要でしょう。」
「どれ程の価値なのか・・・、ギルドとも連携を取れ。」
「畏まりました。」
「しかし、これは、歴史に残る偉業だな。」
「はい、他の Sランク冒険者の功績が、霞みますね。」
「ああ、比べるだけ無駄だな。次元が違う。」
「我が国に居着いてもらえれば、良いのですが・・・。」
「しかし、グランからの報告では、富や権力に興味が無いとあったな・・・困ったぞ。」
「まだ、子供ですからね。」
「まぁ、実際に会ってみん事には、判断がつかんな。
可能な限り、王都におる貴族に召集をかけろ。流石に、今からでは、他領の領主を集められん。」
「王都に着いてから、暫く、待つ様に伝えれば良いのでは?」
「ダメだな。それでは、素材の腐敗が進む。」
「そうでしたね、失念しておりました。」
「ああ、だからこそ、急ぎ、向かっておるのだろう。」
グラン侯爵からの2度目の報告に、驚愕と歓喜、そして困惑の、複雑な感情に悩まされる国王と宰相だった。
ホルルド出発から、6日目。ルーシュ達は、既に、王都が視界に入る距離まで、迫っていた。
とは言え、王都と王城が大きい為、見えているだけだが。
(やっと着くな。とっとと、用事を済まして、帰りたい。帰りは、別行動にしてもらえないかな?そうすれば、あの魔法で、すぐに帰れるんだけど。)
相変わらず、マイペースなルーシュ。そもそも、望んで、王都に向かっている訳では無いので、そう考えるのも、無理は無い。
それに、長く滞在すれば、また、厄介事に巻き込まれる可能性がある。
「そろそろ、着きそうですね。」
「着いたら、すぐに謁見でしょうか?」
「おそらく、そうなると思いますよ。先に、連絡が入っている筈ですし、炎竜
の腐敗が進むのは、王国としても、望むところでは無いと思いますので。」
いや、全く、腐敗して無いんですけど、と言う言葉を飲み込んで、勘違いしてくれているなら、助かる。
(帰ったら、今度こそ、竜山。そして、山向こうの国々を探索だなぁ。何かしら、記憶を刺激するものがあれば、良いんだけど・・・。知識に残ってる幾つかの街、それがある国が、おそらく、出身地付近だろうし。このレガリス王国は、名を知っていたけど、ホルルドは勿論、その他の街も知識に無かった。これまでの道中で寄った街で、それも証明済み。)
これまで、ホルルドやレガリス王国で、足止めをされていたので、やっと、国境を越えて、国巡りが出来ると、計画を立て始める。
しかし、その思いは、国王との謁見で、脆くも崩れ去ってしまうのだった。
遂に、王都に到着したルーシュ一行。
ゲインは、早々に、冒険者ギルド本部に、向かって行った。何でも、謁見式では、ギルド本部のギルドマスターも参加するとの事。そこで、預けたギルドカードも、授与となる様だ。えっ、ランクアップって、ホルルドのギルドで出来無いの?と、ゲインに質問したが、 Sランクへのランクアップは、諸々の手続きが必要で、支部では対応出来無いらしい。まぁ、世界で、ルーシュを除けば、6人しかいないのである。あちこちで、虚偽の Sランク冒険者の誕生を防ぐ為の、措置でもあった。
ルーシュ一行は、そのまま、王城へと向かう。まだ、日が高いので、謁見式も、今日、行われるらしい。
騎士の1人が、先行して到着の連絡を入れに行ったので、今頃、王城は、大忙しだろう。
(いや、分かってたんだけど、流石、王都。広いし、全く進んでいる気がしない。)
王都の街並みは、非常に活気にあふれていた。あちこちに、いろんなお店が建ち並び、人の数も多い。
帰る前に、サーシャに菓子でも、土産に買おうかなっと、そんな事を考えながら、行き交う人や、街の様子を見ていると、明らかに、人族では無い種族が、いる事に気付く。
(へぇ〜、ドワーフがいる。妖精族は、祖国を出ない種族だった筈なのに、レガリス王国は、国交を結んでいるのかな?まぁ、流石にエルフはいないと思うけど。エルフは、容姿端麗で、保有している魔力も多い。そのせいか、プライドが高く、他種族を見下しているらしいし。)
ルーシュの知識にあるエルフとは、そう言う性格だと認識されているが、実際には、若干、違う。プライドが高いのは、確かだが、他種族を見下しているのでは無く、興味が無いだけである。
対して、ドワーフもプライドが高いが、一度、認めた相手には、友好的である。
ルーシュが見かけた、ドワーフが、どう言った経緯で王都にいるかは、不明だが、少なくとも、共存の関係を築けているのだろう。
決して、のんびりと進んでいた訳では無いが、時間をかけて、王都を進むルーシュ一行。
王城が近づくにつれて、人影は少なくなり、代わりに、大きな建物を、所々、見かける様になった。ようは、貴族街に入ったのだ。
王城には、沢山の貴族が働いている。そう言った者達の邸宅や、他領に住む高位貴族の別邸がある。勿論、グラン侯爵の別邸も存在している。
王城に近い程、爵位の高い貴族の邸宅が有り、建物は当然の事、敷地も大きい。まさに、富と権力の差が、其処にはあった。
そして、遂に、ルーシュ達は、王城、いや、王城の敷地内に入った。王城の敷地は、これまでの貴族の邸宅と比べるのも、馬鹿らしい程、大きい。敷地内には、所々に兵士がおり、巡回を行なっている。
えらいところに来てしまったと、今更ながら、後悔するルーシュ。しかし、馬車の歩みは止まらず、先に先にと、進んで行く。
そして、遂に、馬車が停車した。王城の入り口付近に到着したのだ。
始めに、グランが馬車を降り、ルーシュの馬車の扉が開き、ルーシュも馬車から降りた。
「ルーシュ、長旅、ご苦労だったな。だが、ここからが、本番だ。くれぐれも、陛下に失礼の無い様に。」
と、忠告を受けるルーシュ。
Sランク冒険者とは言え、ルーシュは、まだ、10歳。10歳の少年が、国王と謁見するなど、前代未聞だ。ルーシュは、礼儀正しいが、子供であるゆえの過ちを起こさないとも、限らない。そこを、グランは、危惧していた。
ルーシュ達は、一旦、応接室に案内された。此処も、無駄に広く、サーシャの部屋何個分だよと、考えるのも馬鹿らしい。
暫く、待機していると、訪問者が現れる。
「宰相、ノービス様が、参りました。」
扉の向こう側から、訪問者の名が、告げられる。グランがソファから立ち上がると、ルーシュも見習って、立ち上がった。
入室してきたノービスは、年齢は、グランと同じぐらいだが、グランが、日頃から身体鍛えて、筋肉質な体型に対し、文官である為か、細身の体型の人物だった。ノービスがルーシュ達の対面に回ると、
「どうぞ、お掛けになって下さい。」
と、着席を促した。
「グラン侯爵、遠い所、お疲れ様でした。」
「いえ、こちらこそ、急な来訪で、ご迷惑を。」
「いえいえ、事情が事情ですので。寧ろ、賢明な判断だと、陛下もおっしゃっておりました。
それで、其方の方が、ご報告にあった彼ですね。」
「ええ、その通りです。」
「なるほど。確かにお若い。お名前をお聞きしても?」
「初めまして、ルーシュと申します。」
「ありがとうございます。私は、レガリス王国で宰相を務めさせてもらっております、ノービスと申します。
では、早速ですが、ルーシュ殿に、ご質問があります。
ルーシュ殿は、国主との謁見のご経験は、ございますか?」
「いえ、ありません。」
「そうですか。では、私の方から、謁見式の流れについて、ご説明致します。」
ノービスより、謁見式の流れについて、説明を受けるルーシュ。
国王が発言を許すまでは、発言は控える等の注意事項もあった。
「・・・と、以上が、謁見式の流れになります。ご理解頂けましたか?」
「はい。ご説明ありがとうございました。
ちなみに、炎竜の亡骸は、いつ、納めれば、宜しいでしょうか?」
「謁見式の後に、兵の鍛錬場にて、ご提出して頂こうと思っております。何でも、途轍なく大きいと伺っておりますので、あの場所なら、問題無いでしょう。」
「分かりました。」
「それでは、式典の準備が整うまで、暫く、お待ち下さい。」
その後は、グランから改めて、謁見式での立ち振る舞いなどの指導を受け、いよいよ、国王との謁見が始まる。
謁見の間には、大勢の貴族が集まっていた。その中をグランと共に、玉座の前まで進み、跪く。
「面をあげよ。」
国王から、声がかかる。
「久しいな、グラン侯爵。よくぞ、参った。この度の件、ご苦労だったな。後ほど、褒美を与える。」
「はっ!有り難き、幸せ。」
「さて、余がこのレガリス王国の国王、ヴァン・レガリスである。其方が、グランの報告にあった冒険者だな?」
「はい。ルーシュと申します。」
「ふむ。本当に若いな。そして、其方の頭上におるのが、始祖竜の子か?」
「はい。名をプリムと申します。」
「報告通りだな。さて、ルーシュよ。此度の、其方の活躍、見事であった。伝説の4源竜の一体を屠るなど、歴史に残る快挙だ。よって、其方の Sランクへの昇格を認める。
本部ギルドマスター、クラウド、前へ。」
国王が命じると、眼鏡をかけた中年の男性が、ルーシュの前に歩み出た。
「ホルルド支部所属、ルーシュ殿。 Sランクへの昇格、おめでとうございます。こちらが、新たなギルドカードとなります。」
渡されたギルドカードは、ランク部分が、 Sに変わっていた。
これで、ルーシュは、名実共に、 Sランク冒険者となった。
「うむ。新たな Sランク冒険者、7賢人の誕生である。皆、賞賛せよ。」
貴族達から、盛大な拍手が、贈られる。
これで、一つの用件が終わったと、安心するルーシュ。しかし、国王の話は、まだ、終わらなかった。
「さて、ルーシュよ。其方は、 Sランク冒険者となった訳だが、これから、どうするつもりだ?」
「えっ?ホルルドの街に戻るつもりですが・・・。」
「ふむ。この王都レガリアに、拠点を移す気は無いか?」
「私の担当である受付嬢が、ホルルド支部におりますので。」
「ああ、冒険者ギルドには、その様な制度があったな。クラウドよ、ルーシュの担当を変えることは、可能か?」
「ルーシュ殿の意向次第で、ございます。」
「ルーシュよ、どうだ?」
「いえ。変えるつもりは、ございません。」
「そうか、残念だ。ところで、聞くところによると、其方は他国の生まれらしいが、帰国はせんのか?」
「いずれ、戻るつもりです。」
「ふむ。其方には、我が国に居着いてもらいたいのたが・・・。どうだ、爵位を与えても良いが?」
「ありがたいお話ですが、丁重にお断り申し上げます。」
「権力には、興味無しか。これも、報告通りだな。ならば、女はどうだ?なんなら、余の娘をくれてやるぞ?」
「申し訳ございませんが、お断りさせて頂きます。」
「余の娘が、気に入らないと?」
「いえ、気にいる気に入らない以前に、お会いした事もございませんので。それに、身分差と言うものもあります。私では、陛下の御息女と、釣り合いが取れません。」
「確かに、其方は貴族ではないが、世界でたった7人しかおらんSランク冒険者だ。十分、資格が有ると思うが・・・。ならば、物品はどうだ?我が国が所蔵する神代宝具でも良いぞ。」
「いえ、必要ございません。」
「神代宝具だぞ?国宝級の宝を要らぬと申すか。」
「神代宝具なら、既に、所持しておりますので。」
「既に、所持しておるだと?どの様な物だ?」
「使い魔であるプリムの左前足のバングルになります。あらゆる状態異常を無効化、致します。」
「なんと、それ程の物を使い魔に!?
ノービス、我が国が所蔵する神代宝具に、あれに匹敵、超える物はあるか?」
「ございませんね。ルーシュ殿の物は、神代宝具の中でも、特段の性能かと。」
「そうか・・・。権力も女も物も必要無い。金は、言うまでも無いか・・・。ふう、余には、此奴を懐柔する手が思いつかんぞ?ノービスよ。」
「私もここまで、欲が無いとは、思いませんでした。打つ手がありませんね。」
「どうにもならんか・・・。致し方あるまい。ルーシュよ、もう、無理強いはせん。ただ、余が、其方を高く評価している事は、忘れんでくれ。」
「はい、ありがとうございます。」
「うむ。では、これにて、謁見式を終わる。」
何とか、謁見式を終える事が出来たルーシュ。
しかし、国王の要求をことごとく、つっぱねたのは、流石に宜しく無かった。謁見式のやり取りを、間近で見守っていたグランは、冷や汗が、止まらなかった。
「ルーシュ、あれ程、失礼の無い様にと、言っていた筈だが?」
「そうですが、僕は Sランクに昇格自体、望んでいなかったので。成り行きで、王都まで連れて来られたに過ぎません。正直、炎竜を納めたら、とっとと、帰りたいです。」
「うっ、そう言うわれると、返す言葉が無いな。」
「そもそも、僕は、グラン様とお会いする条件に、一度だけならと、お伝えしてあった筈です。それなのに・・・。」
「う、うむ。そうであったな、済まなかった。」
「いえ、もう手遅れですので。とにかく、炎竜を納めたら、すぐに、ホルルドに戻ります。あっ、帰りは、別行動でお願いします。」
「・・・了解した。」
約束を破った事を、盾に、自分の主張を押し通すルーシュ。
残すは、炎竜の引き渡しのみ。王族や貴族と関わると、ろくな事にならないと、改めて、実感したのだった。
国王との謁見を終えたルーシュ。後は、炎竜の買取りのみ。一体、幾らになるのか?
ブックマーク、いいね、☆評価も頂けると、励みになります。宜しくお願いします。




