記憶喪失の少年
お久しぶりです。約2年ぶり、いや、3年ぶり(?)の3作品目になります。(2作品目は、行き詰まりました、ごめんなさい。)
今回の作品は、他の方の作品と、極力被らない様に、オリジナルティーを重視して、書き上げて参ります。
異世界ものではありますが、主人公は、1作品目、2作品目とは、立ち位置が違います。
今作は、行き当たりばったりで、作ったものではなく、大筋の展開を作り上げてから、書いております。
予定では、かなりの長編になる予定ですので、読み応えがあれば良いなぁと、思う次第です。
少しでも、多くの方に、読んで頂ければ、ありがたいです。
誤字脱字等、あると思いますので、ご指摘もお願い致します。
ヒューと心地良い風が吹き、頬を撫で、深い眠りから、少年の意識は覚醒した。
目を覚ました少年の眼に、飛び込んできた景色。それは、太陽の光と、辺り一面に拡がる木々だった。
(・・・う〜ん?ここはいったい、何処?)
眠気まなこを擦りながら、辺りを見渡すが、眼に飛び込んでくるのは、大きく育った木々と、それらを支える大地のみ。
ここが、何処かの庭の中なのか、それとも、林や森の中なのかさえも分からない。それどころか・・・。
(あれ?僕は誰だっけ?・・・・・うん。何も思い出せない・・・。)
そう、少年は、記憶を失っていた。
突如、記憶を失ってしまう事態に陥った場合、錯乱までいかなくても、焦ったりするだろうが、この少年は、ひどく落ち着いていた。
それは、少年の元来の性格もあるだろうが、他に理由があったからだ。
(・・・うん。記憶は、綺麗さっぱり、無くなってしまっている。けど、知識は残っている。)
そう、名前を含めた全ての記憶は、失ってしまっているが、それまで培った知識は、残っていたからだ。
(ふむ、取り敢えず、現状を確認だな。
・・・痛っ!?さっきから、身体中のあちこちが痛むと思ったら、全身傷だらけじゃないか。しかも、着ている服もボロボロだなぁ〜。一体、何があったんだろう?
・・・って、思い出せないんだった。と、とにかく、まずはステータスを確認しよう!)
と、流石に少年も、自身の余りの惨状に焦りを感じた。
「ステータスオープン。」
と、幼さが残る声で呟くと、少年の目の前に、半透明の板が現れた。俗に言う、ステータスプレートと言うものである。
ステータスプレートには、自身の名前や性別、年齢、種族、状態、体力、魔力そして、身につけている技能などが分かる。
「え〜と、名前は、ルーシュ・ハミット。性別は、男。う〜ん、なんか女の子みたいな名だけど、取り敢えず、ハミットさん家のルーシュくん?らしいね。年齢は、10歳。
うん。体格から、それぐらいかなと思っていたけど、問題は、次の種族。・・・う〜ん、早速、躓いた。
何これ?僕、どう見ても人族だよね?どう言う事??
・・・ダメだ。取り敢えず、これはスルーして、次に体力。
うん、これは人並みかな?ただ、次の魔力。
・・・うん、アウトだね。これもスルー。気を取り直して、技能の確認、確認。」
どうやら、種族と魔力に問題があったようだが、それは一旦、棚に置いて、先進むルーシュくん、10歳。
「ふむふむ。ルーシュくん、中々、多才な才能をお持ちのようで。
・・・と言うか、多くない?
この辺の技能は、種族的なものの影響だろうけど、10歳の子供らしからぬ技能の数々と、その熟練度。
これはアレだな。確かに人族ではないな。
・・・ダメだ。最後に称号を確認しよう。まぁ、種族から、ある程度、想像つくけど・・・。
・・・・・。
・・・・・。
・・・うん。分かっていたけど、これは、他人に見せられたものじゃ無いな。
まぁ、元来、ステータスは他人に見せるものじゃ無いし、ステータスを看破する技能もあるけど、アレはかなりレアな技能だし、僕の持っている技能なら、それも防ぐ事が出来るし。
取り敢えず、その技能で、わからない様にしておこう。
・・・え〜と、称号と技能、魔力、種族、状態を隠してっと。
・・・うん、名前と性別と年齢、体力しか、わからない様になったな。
・・・・・怪しいね。
・・・うん。この際だから、全部隠そう。」
と、ブツブツと呟きながら、自身を納得させる事にした。
「・・・はぁ〜。なんか、ドッと疲れた。まぁ、ステータスを確認したおかげで、名前とかわかったのは良かったけど。
ただ一つ、僕の知識に無いものがあったな。
・・・状態の半封印。
・・・これ、おかしいんだよね。僕には、〈状態異常無効〉って技能があったのに、半封印って何?聞いた事無い状態異常なんですけど・・・。
・・・考えても仕方が無いか。わからないものは、わからないって事で、取り敢えず、まずは、身体の治療をしよう。〈ヒール〉っ!」
と、魔法名を叫ぶと、ルーシュの身体を白い光が包み、瞬く間に、傷が治っていく。
(良し!後は、このボロボロの服だけど、取り敢えず、血の跡ぐらいは落としたいから、ここが森の中と仮定して、水場を探そう。
次に、食料の確保。理由は不明だけど、無茶苦茶、お腹が空いているのに、食料の持ち合わせが無い。
更に言えば、所持金も無い。ハミットさん家は、余り裕福では無かったのかな?
まぁ、お金に関しては、あてがない訳では無いので、それは何とかなるかな?
最後に、現在地の確認の為、人里を探す。
現状、出来る事は、これぐらいかな?)
と、今後の方針を決めると、ルーシュは、森(?)の中を進み出した。
ルーシュは、森の中と仮定していたが、その予想は的中していた様で、それなりの時間が経過したのにも関わらず、歩いても歩いても、辺りは木々が生い茂っていた。
幸い、そのおかげで、食べられそうな果実を見つける事が出来、空腹状態からは解放された。
そして、現在、探していた水場を発見。小さいながらも、水質の良さそうな湖である。
早速、服に付いた血を流そうと、湖に近づいたルーシュだったのだが・・・。
「・・・誰?」
と、水面に写った自身に、首を傾げながら、問いかけるが、当然、答えるはずも無い。
何故、ルーシュが、そんな問いをかけたのか。
それは、ルーシュが記憶を失っていた為、自身の容姿も、忘れてしまったせいでもあるが。
しかし、それを踏まえても、水面に写った自身の容姿を、自分だと、すぐに認識出来なかった。
10歳ともなれば、少なからず、自身の容姿は気になるもの。
そして、ルーシュの容姿はと言うと、決して、不細工では無かった。
いや、はっきり言って、良すぎた。
肩口まで伸びた髪は、艶のある銀色で、水面に反射した太陽の光に照らされ、神々しい程の煌めきを放ち、瞳は大きく、色は、透き通る様なアイスブルー。長いまつ毛と相まって、より際立っていた。
そして、スッと細く伸びた鼻に、小ぶりな唇。
日焼けなどした事が無い様な白い肌。
容姿端麗と言われるエルフと比べても、遜色ない程の美しい容姿だった。
ルーシュが女性であれば、将来は、絶世の美女になるはずと、確信出来てしまう程の美少女顔。それが、ルーシュの容姿だった。
だが、ルーシュは男性だ。
それ故に、「誰?」と、水面に写った自身に、問いかけてしまった。
記憶失ってしまっても、更に、ステータスに問題があっても、さほど動揺しなかったルーシュだったが、今回ばかりは、違った。
「え、え?、えぇーーーーーっ!?
こ、これは無いっ!ちょっ、僕、男の子だよ!?断じて、男の娘(?)じゃないよ!?って、僕は何を言ってるんだっ!?そんな性別は無いよっ!!これも、種族の影響!?いや、エルフの血は混じって無いはずなのに!?この容姿で、乱暴を受けた様に、ボロボロになった服!!これ、事案なのっ!?例え、そうじゃ無くても、犯罪臭、ぷんぷんだよっ!!」
と、〈状態異常無効〉の技能でも防げない程の混乱状態に。
そうして、本来の目的であった、服に付いた血を落とす事も忘れて、しばらく、自問自答を繰り返すルーシュだった。
暫しの間、自身の容姿に悶絶していたルーシュだったが、ようやく、落ち着きを取り戻し、本来の目的を思い出して、服を洗い、魔法で乾かした。
(とにかく、次は、人里を探す。そして、代わりの服を手に入れる。そうすれば、犯罪臭とも、お別れだ。
ここまで、だいぶ歩いて来たけど、人里どころか、人影すら、発見出来ていない。
ここは、魔法を使って、進むべき方向を確認した方が良いかも。)
「〈スカイ〉っ!」
と、魔法名を叫ぶと、ルーシュの身体は、地を離れ宙に浮き、徐々に高度を上げていった。
そうして、ある程度の高さまで、空に浮き上がると、辺りの様子を確認。
すると、自分のいた森が、途方もなく広い事が分かった。
前も後ろも森。右も左も森。その森の切れ目が、現状の高さからは、確認出来なかった。
唯一、左方向だけは、森の切れ目と言うか、終わりがあったが、代わりに大きな山が立ち塞がっており、その先が、どうなっているのか分からない。
ただ、終わりの見えない前や後ろ、右方向よりは、その山の方向に向かった方が良いのではと、判断を下すと、ルーシュは、山を目指して飛行を開始した。
実はルーシュは、森を探索していた時から、ある一つの魔法を使い続けていた。
その魔法名は、〈サーチ〉。
全ての生物には、魔力が宿っており、それを感知する魔法である。
全ての生物という事は、草や木などの植物にも、微量ながら、魔力が宿っている。当然、動物、人にも魔力が宿っているが、忘れてはいけないのが、魔物と呼ばれる異形の生物にも、魔力が宿っている事だ。
稀に、魔物を使役する者もいるが、魔物は、基本的には、全ての生物の敵対者である。
そして、魔物は、保有する魔力が多い程、強く、危険度が上がる。
それ故に、危険を避ける為、ルーシュは〈サーチ〉を使い続けていたのだが、どうやら、この森は魔物の巣窟と化している様で、彼方此方から、魔物の魔力を感知していた。
そうして、〈サーチ〉を使い続けながら、山に近づいていたルーシュだったが、山の方向に、複数の大きな魔力の反応がある事に気付いた。
警戒しながら、山に近づいて行くと、初めは黒い点だったものが、徐々に形を表していき、何なのか分かった。
それは、鋭い牙と爪、巨大な尻尾を持ち、強靭な鱗で身を包み、大きな翼で空を駆ける。
魔物の中でも、最強種と呼ばれる竜である。
このまま進み続けば、その竜達と、交戦状態に陥ってしまうと判断したルーシュは、山の手前で、地上に降り立った。
(よりによって、竜かぁ〜。まぁ、竜と言っても、下級のレッサードラゴンだけど、あの数は、厄介だなぁ〜。
仕方が無い。時間はかかるけど、登山といきますか。)
と、ルーシュは、竜達が住まう山に、足を踏み入れたのだった。
謎だらけの主人公、ルーシュくん。凄い才能を持っている様ですが、転生者?それとも?謎は、謎のままなのか?明らかになるかは、今後の展開で・・・。
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