リアル脱出ゲーム 6
大人たちはみんなこう言う。
大人になれば、自然とわかると。
まだまだ子供の十二にとっては、そういうものか、と想像することしかできなかった。
入ってきた情報を深く考える、ということが彼にはできなかった。
だが今は、深く考える、ができるようになっていた。
もっと言えば、己の浅はかさに気付いたのだ。
自分がやっていたことは墓荒らしで、故人についてなんの弔いもしていなかったのだ。
如何に自分を殺そうとしていたとはいえ、ヒトが殺されそうになったのに助けようともしなかったのだ。
仕方ないといえば、仕方ない。あとになって振り返っても、自分に何かが出来たわけではない。
だがそれはそれとして、まったく何の負い目も感じていなかったことに、罪悪感を覚える。
十二はまったくもって利己的な動機で、『二人』を弔った。
自力で穴を掘って、タブーとマテリアリストを埋めて、墓石を用意した。
自分で用意した墓の前で手を合わせて、十二は心に整理をつけていく。
その間、人魂に戻ったギボールは傍にいて、しかし一言もしゃべらなかった。
時が流れてから、十二は口火を切った。
「ギボールさん、俺……ギボールさんがいなかったら、いろんな意味で死んでました」
『いろんな意味でというか、いろいろ襲われて死んでたね』
「はい……感謝してます」
『それはどうも』
「だからその、俺、ギボールさんを信じてます」
この世界のことを、十二はまるで知らない。
どうすればいいのか、まるでわからない。
だが、どうなりたくないのかは、よくわかっている。
「失礼ですけど、俺……タブーさんみたいに、なりたくないっす」
『そうかい』
「こんな、誰もいない島で、たくさんの宝物に囲まれて死んで……葬式もされないなんて、俺、嫌です」
『そうかい』
「まず死にたくないし、それに……死ぬにしても、葬式してほしいです。あと……っていうか、そんな先の話じゃなくて……」
十二は、うずくまった。
「友達、欲しいです」
『ほう』
「一人は嫌です」
『吾輩だけでは不満かな?』
「はい」
『吾輩は君を裏切らないが、他の友達は君を裏切るかもしれないよ?』
「それでも……欲しいです」
『うむ、健全だね』
人魂となったギボールは、十二に寄り添った。
『吾輩は大魔神、峻厳のギボール。君のファミリアだ。これからも君の傍に寄り添うので、頼りにしてくれたまえ』
「うっす」
『それではこれから君がどうすればいいのか、具体的な提案をしよう。まずはこの誰もいない島を抜けて、新しい場所を目指そうじゃないか。新しく手に入れたガジェットがあれば簡単だよ』
「うっす」
『さあ、脱出だ! このしみったれた屋敷から、君は希望の船出をするんだよ!』
「あ、あの……」
『なんだい?』
「なんか、無理してません? 実際のところ、ずっと」
『……うむ。そうだな、実は吾輩も無理をしている。君に会ったときから、ずっとだ』
果たしてギボールが十二に寄り添っているのは、離れたくとも離れられない、からなのか。
彼女もまた、誰かに寄り添いたいのではないか。
『……タブーを弔ってくれてありがとう。本当はずっと、吾輩がそうしてやりたかったのだ』
「言って、言ってくれれば、俺……」
『白骨死体に触れなんて、追い詰められた君に言いたくなくてね』
「それでも、俺、ギボールさんに、感謝してますから……その、ほら、してたと思いますよ」
『弔いって、そういうのじゃないんだ。今の君にはわかるだろ?』
「……はい」
主従は寄り添いあい、墓に背を向けて、海を見た。
脱出、成功である。
ひとまずこれにて完結です。
本格的な連載は、当分先になると思います。
気長にお待ちください。