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第九十話 色々する俺




 イリカと別れた後。

 勇者連盟の寮の近くにある玉型の公衆電話で、俺は電話をかけていた。


 暫くし、ガチャという音がした。


 「もしもし。聞こえてる?」


 「聞こえてるわ。問題ゼロよ」


 受話器からは、フレジアの声が聞こえる。

 帝都で約束した通り、着いて割とすぐにフレジアと電話をしていた。

 

 実は寮にも電話があるが、わざわざそこを出て公衆電話を使っている。

 勇者連盟の敷地からフレジアにかけるのは、流石にあれなので。


 「というか、ごめん。色々あって、電話するのが遅れて」


 「ふん。まあいいわ。千晴。約束した日程から二日ズレた程度よ。最近私も最近忙しかったもの。ちょうど良くもあるわ」


 フレジアは微妙に不機嫌そうだ。


 『不快帝王』に車を壊された為に、この市に到着する日程が二日もズレている。

 車の修理や点検に手間取ってしまった。


 「ごめん。用事中に事故が起きて。遅れちゃった」


 「別に。日程なんて幾らでもズレるわ。そんな事より、ダラダラと中身のない会話でもしましょう。千晴となら、それの方が楽しいわ」


 「そっか。じゃあ、フレジアは最近何をしていた感じ?忙しかったらしいけど」


 「機密事項だから、言えないわね。特に、警察に通報しそうなあなたには。だけれど、成功はしたわ。凄いわね。私」


 「おー。機密か。凄そう。多分凄いね」


 「そう。凄いわ。転移システムをフルに活用して、あのよく分からない連中と一緒にやったの。凄いわね」


 「何か大変そう。凄いね」


 「そうよ。凄いわ。私」


 やっぱり、反勇者同盟側にも転移システムはあるのか。

 一応知れてよかった。


 「次は千晴の番ね。最近の話題を聞いてあげるわよ。また新しい友達でも作れたのかしら」


 「まあ、運良く作れそうではあったけど。色々あって。用事中には無理だったかな」


 「ふん。要は千晴が振られたのね。振った奴は慧眼ね。あなたと仲良くなっても、碌に良い事柄が起きないわ」


 「そ、そんな感じ?そうなのか」


 フレジアにそんな風に思われていたのか。

 確かに殺し合ったりもしたが。


 まあ、軽口な気もする。

 とりあえず、本当なら直そう。

 

 「けど、イリスって人とは仲良くなれたかな。話しかけたら行けて」


 「••••••、お母様の事?」


 「多分そう。お母様が、白衣着ている黒い瞳の女の人だったら。何か嫌だったりする?」


 「珍しく察しがいいわね。その通りよ。うわってなってるわ」


 「うわっと。うわーか」


 「そうよ。そのお母様は、私の事をなにか言っていたかしら。気になるわ」


 話して良いのか、微妙な所を聞かれてしまった。

 どうしよう。


 「••••フレジアはあいつらの中でも一番使える奴だー。凄いぞーって言ってたぜ。もし、褒め言葉じゃ無かったらごめん」


 フレジアたちの中では褒め言葉なのかもしれないし、言う。

 結構、イリスは嬉しそうに話していた。


 「••••そうね。褒められてはいるわ。私も昔嫌いじゃ無かったわ」


 褒め言葉ではあった。

 だが、地雷でもあった。


 「な、何というか、こう、あの人も、悪意があった訳ではなさそうで。仕事で目下に使えるとって言う的な感じだっから」


 「慰めは不要よ。知らなければ、何とも思わなかったというだけ。これも千晴といれば埋められる。現状のままで良いわ」


 平然と言うフレジア。

 少し暗い感じも多少はあった。

 

 「だったら、いつかまた会おうぜ。フレジアにとって良い事もするよ。結構、色々新しい体験をさせて貰ってるし」


 「言質は貰ったわ。次会ったら必ずイチャイチャしましょう。代わりに、私がまた新体験させてあげるわよ」


 「そっか。ありがとう」


 「そうよ。••••ちょっと待ってて」


 急に、フレジアが電話口から離れる。


 すぐに、戻って来た。


 「かけて貰った所に悪いけれど、明日に備える時間になったらしいわ。リーダーから寝ろと直に言われたの。寝るしかないわ」


 「いや、全然良いよ。人によっては寝ることもあると言える時間帯だし。おやすみなさい」


 「気を遣わせたわね。けれど、スヤスヤするわ。おやすみ」


 「また今度」


 ガチャっと電話が切られる。

 ツーツーという音が、後は流れた。


 

——



 あの後、寮に戻り。

 俺は姉ちゃんを探しに、一人で廊下をウロウロしていた。


 一方、ホワイトはまだ寮の地下の牢獄にいる。

 まだ、イリスから全然聞き出せていないらしい。

 

 後、何かホワイトは俺に過去探しをあまり手伝って欲しくないっぽい?

 ホワイト自身は相当色々やっているが。

 分からない。


 まあ、今は姉ちゃんだ!

 

 「ふんふーん。姉ちゃんー。久しぶりー」


 鼻歌を歌いながら、ビルの十階を歩く。

 こんな強い感情、初めてかもしれない。

 いや、前にも一度感じたか。


 「おおー。実際に会うのは初だな。おーい!大空千晴くん!私だ!勇者連盟役員兼戦闘部門部門長の夏凪白水だ!前は本当に済まなかった!」


 こんな感じでいると、21歳ぐらいの男性に話しかけられる。

 今日の昼にも見た、あの人である。


 「こんばんは!初めましてで久しぶりですね!」


 「話しかけてまともな挨拶が返ってくるとは!勇者の中で随一の礼儀正しさ!素晴らしいぞ!」


 「ありがとうございます!これも両親のおかげで!本当にありがたいです!」


 「非常に謙虚!私は感動するぞ!うおー!!」


 「はい!ありがとうございます!褒めて下さってありがたくもあります!」


 昔頑張ったところを褒められて、割と嬉しかった。

 やったね。


 そして、この人とも仲良くなれないだろうか。

 中身の年齢が俺とは相当違いそうだが。

 イリスは行けたし、行けないかな。


 「それと、関係ないですが!自分の姉の居場所って知っていますか!?名前を大空一(おおぞらはじめ)と言うんですけど!勇者をやっているらしくて!」


 年は上そうなので、教えを乞う感じで行ってみる。

 これで仲良くなれれば、一石二鳥だ。

 なるべく良い気分の俺を姉ちゃんへ見せる目的が完璧に達成できる。


 「無論知っているぞ!ちょうど私の行き先にいるからな!だったら!着いてこないか!?会議前だが、時間は取れるぞ(きっと)!」


 「会議前ですか!?忙しそうですし、後で大丈夫ですよ」

 

 姉ちゃんが今忙しいなら、良い。

 その目的を邪魔するほど、俺の再会は優先すべきではないだろう。


 「いや!来てくれ!これは私の持論だが!一度後回しにすると、もう二度と機会は来ない!だから今すぐ来い!君の姉も!勇者にしては珍しく!家族に会いたいと寝言をしていたと聞く!」


 「おー!!それなら!行きます!ゴー!!」


 「よーし!行くぞ!!付いて来い!」

 

 夏柳さんは早足で歩き出す。

 俺も走って着いていく。


 

 会議室の前に、到着する。

 夏柳さんは笑顔になっていた。

 

 「さあ、入ってくれ!大空千晴くん!会議室内はその他もかなりいるが!そこは気にするな!」


 部屋の中を、チラッと覗く。

 そこには十一人、人がいた。


 「あれは!!まさか!ミミズ丼の少年ではないか!?まさか勇者だったのか!?驚きじゃのう!」


 「、、勇者だったか。だが、見た記憶はなし。あれをボケて低脳になってない限り、俺が忘れるはずはないよな••••」


 「と、、ともだちの、お兄ちゃん!!ダイナミック再開!遊ぼう!!」


 「あ、大空じゃねぇか。さっきぶりだ。オレらの仕事に参加すんのか?」


 「、か、会長、、私を見捨てた、、最低な会長、、ぐぐぐ、、け、結局、、やっぱり、、」


 そこにはコック服の青年、白衣を着た少年、黒い服の女の子、金髪の女性、両手銃を持つ少女など、色々いた。


 この中で、身長が高めの17歳ぐらいの少女を見つける。

 姉ちゃんだった。


 「姉ちゃーん!久しぶり!」


 俺は姉ちゃんへ全力で手を振る。

 姉ちゃんは、巫女服を着た人とかと話していた。


 だが、すぐ姉ちゃんは俺に気がつく。

 すると、少し複雑そうな表情になる。


 こんな顔は昔、結構見たことがあった。

 今気が付いたが、姉ちゃんはまだあんまり俺が好きではないのかもしれない。

 久しぶりに再開したのに、この反応だった。


 だが、手は小さく振り返して来てくれている。

 いえい!!


 「何なら作戦会議に参加していかないか!?大空千晴くん!聞くだけなら困る事はないぞ!参加してくれても問題なし!家族と少しでもすごせるぞ!」


 「はい!勿論!ありがとうございます!」





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