第九話 竜族発見
{姐さん!こっちに大きな熱の反応があります!蛇吉のピット器官が反応しています!}
『わかった』
『遂に竜族かな。どうだろう』
蛇吉と戦ってから、かなり時間が経った。
今はあの大穴から離れ、リンゴの木が滅茶苦茶生えた森に戻って来ている。
蛇吉とはヘビの名前だ。
ホワイトと相談し合い、名前をつけた。
{千晴は黙っとけ!おれは姐さんに話しかけたんだよ!}
『えー。俺がいないと会話出来なかったのに』
{それはそれ!これはこれだろぉ!その程度も分かんねぇのか?頭が残念だなぁ!うぇいうぇいうぇい!}
蛇吉は舌をチロチロさせて煽ってくる。
俺の顔の目の前でだ。
この一ヶ月の間、どうにか蛇吉と意思疎通出来ないかと、俺はその動きを全力で観察した。
結果、蛇吉の舌の動きに法則性があることを発見。
後は法則性を頑張って解析した。
そこまで努力し、蛇吉と俺達は意思疎通が出来るようになったのだ。
これでまず分かったのは蛇吉の知性が思ったよりずっと良い事。
次に分かったのは、性格があまり宜しくないと言う事だだ。
蛇吉は話すごとに本性を見せてきた。
ホワイトにだけ優しく、俺には当たりが強い。
今も蛇吉はホワイトの体に巻き付きながら、顔を伸ばしてまで俺を煽ってくる。
『なにをはなしてるの?』
『誰かの頭があまり宜しくないって話』
{違いますよ!姐さん!蛇吉は仲良く会話していただけです!なー千晴よー}
ついでに、何か蛇吉は言葉が分かるっぽい。
耳は無いが、胴体から伝わる振動の違いを感じてる云々と言っていた。
『••••なんで、蛇吉はちはるをあおるの?わたしにはしない』
{襲ってきた蛇吉を助けようとしてくれた姐さんと!トドメ刺そうとしてきたちはるの差ですよ!なぁおい!おいおいおい!}
蛇吉は相当俺に絡んで来る。
今も尻尾でペチペチされていた。
偶に邪魔だと思う。
『••••ちはるも、蛇吉をちりょうしたのに?』
{••••知能があったせいで、周りからずっーーと殺意を抱かれていて!殺意がトラウマなんですよねー!!ちはるは殺そうとしてきたからなぁ!仕方ないな~~}
しかし、微妙に言い返しずらい事で煽ってくるので、何も言えない。
それに森を出る為のに協力もしてくれているし、いっかって感じ。
{それより!そろそろ熱源に着きそうです。姐さんは注意して下さい!}
蛇吉が俺達に顔を向け、そう舌をチロチロ動かす。
目的地までの案内は蛇吉にしてもらっていた。
森の結界もピット器官による熱源感知にまでには、影響を及ぼせない。
ホワイトの予測通りだった。
突如、景色が変わる。
『あれだ!遂に竜族、、?』
そこには二十メートル級の正方形の石がごろごろ転がっていた。
石の合間には、リンゴの木がポツポツ生えている。
その石の一つの上に、二十メートルぐらいのドラゴンが寝ていた。
ドラゴンは全身鱗で覆われており、まさに西洋竜と言った見た目だ。
と言うだけでは無かった。
『••••••竜族?』
ホワイトは首を傾げる。
{美味そうですね!蛇吉は食べたいです!}
『何だあれ』
このドラゴンには猫耳が生えていた。
??。
—-
あれから数日、ドラゴンを見張った。
それで幾つかの事実か判明している。
まずドラゴンは常時、体の周囲にも結界を張っている。
ホワイト曰く、その結界は多くの魔力が込められており、その硬度は恐らく蛇吉の外皮以上との事。
だから『光線』以外は決定打にならなそうらしい。
やばいね。
次にドラゴンは一日に数回、水を飲みに空へ飛ぶ、という事が分かった。
多くは所定の大きい水溜まりで、それを行う。
最後に分かった事は、ドラゴンは寝る事が大好きと言う事。
ドラゴンは水飲み以外、常に陽当たりの良い石の上で、スヤスヤ寝ている。
これらを生かし、ドラゴンを弱らせる。
そうして、『光線』を必ず当てられる状況を作りたい。
—-
ミッション1 ドラゴンに毒を盛ろう!
今は朝。
ドラゴンは大きい水溜まりへ、水を飲みに来ていた。
この水溜りの近くは結界の影響が薄く、鹿や鳥など他の動物も多くいる。
その中で、俺は蛇吉の毒を両手で持っていた。
この毒は魔力で強化していないので、何かを溶かす事は出来ない。
この毒を水溜りにこっそり入れる。
それならドラゴンが魔力感知を出来たとしても、毒を飲んでしまうだろう。
ポチャンと言う小さい音がした。
毒が水に溶け込んでいく。
『成功!』
暫くし、ドラゴンは毒の水を飲む。
直後翼を広げ、飛び去っていく。
だが、少し意外だ。
多少音はしたのに、ドラゴンは俺達の方を全く見なかった。
警戒心がほぼない。
『みずとめた。早くどくかきだそう』
ホワイトは近くの草むらから出て来、そう言う。
すっかり忘れていた。
そのままだと、ここで水を飲む全て動物がお陀仏である。
流石に良識的に不味い。
今なら余裕があるし、やらないと。
『ありがとう!ちょっと待って!掻き出しやすいのを作るから!』
{さすが姐さん!!優しさの化身!神のような優しさ!無敵!究極!!うおー!!}
蛇吉の出す情報を一旦スルーし、急いで木の近くに向かう。
これの一部を抉って、バケツ辺りを作ろう。
{それと、比べて千晴はな!冷酷で非道で最低だなぁ!さすが弱ったおれを殺そうしただけあるなぁー、っておーい、無視すんな、おーい!}
—-
ミッション2 住居を破壊しよう!
今は昼だ。
ドラゴンは水を飲みに行っている。
その隙に、ドラゴンの寝ている石を破壊したい。
『今度は一人で行ってくるね』
『きをつけて』
{臆病者だな!!ドラゴンがいない間しか嫌がらせ出来ないのか??}
『しないと勝てないし。仕方ない』
話しながら、ヒグマの魔力になりクラウチングポーズを取る。
直後、また木の枝を顔の前に添えて、走り出す。
そのままドラゴンの寝ていた石に突撃した。
石は、俺の体と木の枝に当たるたびゴリゴリと削れていく。
だが、怪我はない。
今ではヒグマより圧倒的に俺の方が動かしている魔力が多いのだ。
『あつ!めっちゃ熱い!』
摩擦で火傷しそうこと以外、問題なし。
この作戦の途中でドラゴンが帰って来ても、ヒグマの魔力になっているし、色々誤魔化せるはず。
何周もこれを繰り返すと、石は崩れた。
急いで、ホワイトと蛇吉の元へ戻る。
しばらく待つと、ドラゴンは帰ってきた。
ドラゴンは壊れた石を少し見ている。
『どうだ?いけるか?』
{千晴のやり方。ガチで陰湿ですね。こんな奴何ですね。ちょっと引きます}
『••••ずっとまよわされてたって聞いた。おこってるんだとおもう』
帰ってきたドラゴンをガン見する。
ネコドラゴンは、まだ崩れた岩を見ていた。
その後、ドラゴンは他の石の上で寝始めた。
特に気にした様子もない。
『行けなかった!いや、気付かれてないし!繰り返す!』
—-
ミッション3 安眠を妨害しよう!
ミッション2をものともしなかったドラゴンだが、これには耐えられないだろう。
今は夜だ。
ドラゴンは石の上で寝ている。
ここで出すのは、さっき砕いた石の残骸。
その石同士をドラゴンが寝ている石の麓で、叩き合わせる。
まあまあな不協和音が森に響いた。
これで、ドラゴンの安眠を妨害する!
『竜族の寝顔が嫌そうになった、なった、よな?』
ドラゴンの目尻が、微妙に下がった。
心なしか寝心地が悪そう。
これは、多分効いている。
やったね。
『ちはる、いやそう。なにやってんの』
{頭悪いんですかね。あれだけ千晴の方が被害受けるだろって姐さんが忠告したのに}
『おーし!これも継続!』
—-
晴れた昼。
ドラゴンは石の破片が飛び散る平野で、普通に寝ている。
俺はミッション1から3を幾度も繰り返した。
その結果として、ドラゴンの顔も少しやつれ始めている。
なので、そろそろ潮時だと思う。
遂に直接攻撃を仕掛ける。
『これがこの森で最後の作戦会議になる。決定した作戦に不満は?』
『ない』
{おい!千晴の考えた作戦なんて信用できねぇーよ!!姐さんの忠告を効かずに、自分にも被害出している奴の作戦じゃんか!!おいおいおーい}
ホワイトと二人で色々なパターンについて話し合った。
一方、蛇吉はホワイトを持ち上げ俺を煽り、会議を遅延させるだけだった。
なので、ここはスルー。
『静粛に!この作戦で決定!会議終わり!』
この作戦が成功すれば、ドラゴンを倒せるはずだ。
そうすれば、ホワイト曰く森から出れる。
やっとだ。
ここまで長かった。
『あ。そうだ。確認し忘れていたけど、蛇吉はこんなあっさり森を出ていいの?ここが故郷なんでしょ?』
思い出す。
蛇吉の都合について聞くのを完全に忘れていた。
森から出る件については、意思疎通が少し取れるようになった頃に伝えたら、何故か了承してくれてはいた。
それ以来、全く聞いていない。
知能は人間と大差なさそうな蛇吉なら、何かしら思い残す物があったりするかも知れない。
{この森に良い思い出なんてねぇよ。生まれてからずっと一人。他の奴らと知能の関係で色々話も合わねぇ。嫌な思い出しかねぇよ。逆にとっとと出てぇ}
蛇吉はそう言い、毒を地面に吐き捨てた。
その毒で地面が溶けて行く。
『聞いてごめん。生まれた時から一人なんて、本当に大変というか、大変だね、、』
聞いちゃいけない事を聞いた。
ホワイトもそうだが、一人でいた人家庭環境系の質問はやばそうなので、聞かないでおこう。
『••••••うまれたときはだいたい一人。親がいる方がへん』
『?。そんなことってある?』
『••••わたしもそう。きづいたら、故郷のもりにいた』
ホワイトってそうだったのか。
異世界人って凄まじい。
俺らとは全然違う。
{おいおいおーい!!千晴は生まれた時から一人じゃなかったのか!?羨まし過ぎだろ!くれよ!おい!おいおーい!}
『••••そうだったけど••••あんまり思い返したくないから触れないで』
{お、おう••••••ごめん}
蛇吉は顔をこちらに向け、こう言う。
それにまあ良いよ、と俺は返した。
『••••••ごほん••••竜族のちからは強大』
ホワイトが咳ごみをし、割り込んでくる。
助かった。
対ドラゴン戦への良い雰囲気が途切れてしまっている。
『だれも死なないように』
『おー!!頑張るぞ!!!』
{当然ですよ!!姐さん!!}
『••••やろう』
ホワイトは俺の方を見てきた。
これが成功すれば、やっと色々出来るようになる。
気合いを入れるしかない。
『よーし!じゃあ作戦通り陣形を組むぞ!俺が前衛!ホワイト達は後衛で!』
ドラゴンから、三十メートルの所に陣形を組む。
俺は木の枝を構え、ホワイトは蛇吉の胴体に跨った
これで準備は万端だ。
『••••『光線』』
ホワイトが寝ているドラゴンへ、光るレーザーを放つ。