第五章 完の前日譚
勇者連盟本部の一角。
暗闇の中に立つ、建物の中。
その社長室の前に月下はやってきていた。
(やっべぇ••••オレ一体どうなんだ••••)
月下は殺しにかかった件の処分を受ける為、ここに戻って来ていた。
しかし、その際には上司が出払っていた。
故に、一旦処分は後回しにし、他の任務をしていたのだ。
そして、遂に上司と予定が合う日が来た。
ここでまさかの社長室に呼び出されたのだ。
月下は思ったより大ごとになっているのを感じ、焦っていた。
ついでに話したことはないが、割と社長の事は尊敬していたので、緊張もする。
(おら!どうとでもなれ!)
勇気を出し、月下は社長室のドアをノックする。
腹から声を出す。
「月下烈です!失礼します!、、は?」
「初めまして、だよな?多分ワタシとこいつは初めましてだよな?夏柳?」
「私も分からない。所で社長。私たちの体勢について説明した方が良いんじゃないか?引いた顔をしてるぞ」
社長室では、社長と上司が、正座で直に床へ座っていた。
組織のトップと自らの所属する戦闘部門のトップの奇行に、月下は動揺が隠せない。
「正論で草。おーい。月下烈?だったよな?ワタシはお前を罰する気はないぞ。八割夏柳の奴が悪い」
「社長の言う通り。確認不足だった私が八割悪いぞ。ミスについては気にするなよ」
「••••••いえ。自分が夏柳さんへの詳しい確認を怠らなけば、防げた事象ですから。自分も十分悪いかと」
「月下は納得いってないか。じゃあ正座でそこにいてくれ。ワタシらと一緒に」
「なんでだよ」
月下は嫌そうに地面を見る。
大理石で出来ており、かなり硬そうだった。
だが悪い気はしていたので、渋々月下は正座をした。
床はやっぱり硬かった。
「審判の時間ですわ!この因果律閻歌が!異邦人たる勇者共の罪を裁きますわ!」
すぐ後、扉がものすごい勢いで開けられる。
扉を開けたのは、目隠しをした女性だった。
後ろには一人の少女もいる。
「今回!あなた方は!伝達ミスにより!一人の誘拐を実行、数多くの人々を傷害しましたわ!だけれど人はミスするもの!わたくしの審判魔法一回で!全てを許しましょう!」
大声で女性はそう宣言する。
女性は魔法で巻物を出した。
「「審判の日」!ビビビビー!」
「「「うびびびびびー」」」
巻物から出た魔法によって、正座している三人に雷が降り注ぐ。
全員、感電した。
特に、その中でも夏柳へ雷が落ちる。
叫び声をあげ煙を出しながら、夏柳は倒れ込んだ。
「や、やはり、わ、私が、一番悪かった、か。うびびびび!、ふぅ、すぅー。」
「裁きは終わりましたわ!!お次はわたくしですわね!!「客観的な審判」!!」
夏柳が懐から出した袋の中身を吸う。
一方、女性はまたしても巻き物を出す。
巻き物から出た雷は、今度は女性自身へ向かう。
「うびびびびー。強引でしたわー」
「皆さん。写真を失礼。はいポーズ」
倒れ込む女性に少女が駆け寄る。
急に、社長室の窓が開く。
窓の外には、片足を逆さ吊りにされたある女性が、カメラを構えていた。
情報部門長兼役員の女性だった。
「おっす。辞撓じゃん。最近どう?」
「ここを撮影出来れば最高潮かと。はいポーズ」
カメラのフラッシュが光る。
社長と夏柳はピースをした。
「ちぃーす。じゃあな。また全員でスキーしようぜ。楽しいぜ」
「私も、、楽しみに、、しているぞ、、」
「成程。スケジュールに入れるか考慮しておきましょう。それでは、仕事に戻ります」
辞撓はヘリコプターの音と共に去って行く。
他の所では、目隠しをした女性と少女が話していた。
「このように••••自らを律する事も罰するでは重要ですわよ••••小町さん、、この世は、、己が絶対ではないのですから、、」
「はい!しかと頭に入れます!」
煙を出しながら、因果律は少女に語りかける。
それに対し、少女は至極真面目な顔でそう言っていた。
(なんだこれ••••終わってんな)
月下は無言で正座し続ける。
審判魔法で雷は打たれた傷は、「再生」ですぐ治った。
「邪魔なワタシらの監査もこれで終わりだな。所で月下。元弟子?の大空千晴に、会う?謝る?したくないか?今なら同じ任務を受けられるぞー。一応機嫌を取っておいて欲しいんだが」
「••••••••大空達は自分の顔を見る方が嫌ではないかと。逆効果では••••」
泣きながら殴ってくるイリカの顔が、月下の頭に残っていた。
ここまで他人の都合を考えたのは、月下にとって初めての事だった。
「気にして無いだろ。大空みたいなタイプは特に。ま、一緒に着いてくるホワイトって奴はマジで嫌がりそうだが。その辺も入れて、どうだ?」
「•••••••••」
「全部、私のせいに、して、いいぞ、、理由を、つけて、、会わなかったら、、永遠に、後悔、する、からな、、、」
夏柳が息絶え絶えに語る。
その夏柳の肩を、社長が揺らす。
「夏柳ー!!死ぬなー!!ワタシとセックスをいっぱいしたいんじゃ無かったのかー!!金暴力あれをしたいんじゃ無かったのかー!!死ぬなー!」
「その、昔のネタは、やめろ、、おい、、」
「あ。洒落になってないな。とっくの昔に嫁できてたわ。ド忘れしてた。すまん」
社長は夏柳に平謝りをする。
月下はそれを見ていた。
「••••••わかりました。行かせてもらいます。四天王を倒した大空の奴の力も気になりますから」
「やる気になったか。頑張れよー。あ。それと、暇になったら、あのレベルの弟子がいた時の感想を教えてくれね?気になるわー」
「大空って会長の事ですか?社長」
この会話に、目隠しをした女性と話していた少女が見計らって入って来る。
少女は15歳ぐらいで、スーツを着ていた。
「北小路かー。現在出向中なんだから社長と言っちゃ駄目だろ。ま、で、会長is何?」
「昔自分が通っていた学校の生徒会長だった人なんです。二番目に尊敬していたんですよ。はじめさんの弟で、顔がとても良いです」
「なんだ。その条件なら合っているな。なんだ?北大路もあいつに会いたいのか?」
「••••••少し」
悲しい顔をした少女。
社長はハテナマークを浮かべながら、良い考えを思い付く。
「ま、いいぞ。じゃあ。ちょっと違う任務にするか。おーい。因果律。出向中だが、ワタシが任務を出して良いか?」
「いい、ですわよ、、会いたい想いを妨害するのは、、罪ですわ、、ですが、、小町さん、、決して、、罪の監視を、、、忘れるように、、」
「はい!決して!!忘れません!」
「言い忘れてた。任務はイリスの護送だから、襲ってきた奴は全部殺しとけー。やばいのが釣れるかも知れんから、気を付けろよ」
「本当ですか!?反勇者同盟幹部と!オレが戦える可能性が!!?」
「戦えるといいなー。能力のおかげもあって、未知の敵との戦いは楽しいもんな。今度、未知の敵たるワタシと戦わないか?月下」
「気を付けろよ、、月下、、死んだら、、強くなれない、、からな、、」




