第五章前日譚
ある国の首都。
その中心部にある真っ白で巨大な建物の最上階では、現在会議が行われていた。
四角いテーブルを十二人で囲んでいる。
「アハハ!見てみて!この日刊勇者新聞!カルミナ市壊滅してる!よわぁ!四天王一人に壊滅するって!ざっこ!こっちだったらこうは行かないよねぇ!?」
「ははは!なんや!ダッサ!!笑える!!帝国も落ちたもんだ!ハハハ!」
少女二人が身を寄せ合い、新聞を見て笑い合う。
どちらも青白い瞳を持っていた。
「至高!パワフル3号!キエエエエイ!!」
突如、青白い瞳の女性が奇声を発する。
少女二人は女性の方を向く。
「失礼。乱数調整です。うっ、ピース」
女性は、少女達にピースをした。
少女二人は目を背ける。
「帝国と言えば力=地位のクソ脳筋国家。帝国の市の殆どに軍は存在しない。権力者が暴力装置も兼ねています。それらの中でもカルミナ市は古く、強力なはず。『破壊』のラファエル単体での壊滅は困難でしょう」
微妙な空気になった空間。
そこで、眼鏡をかけた青白い瞳の男性が呟く。
これには、十二歳近くの青白い目をした双子の姉弟が反応した。
「「人と人の」「無限の」「シンフォニー!!」「愛の力!」「が有ったから」「が無かったから」「だね」「かも」」
「十一使徒らの所見通り、新聞通り。内通者か協力者がいた可能性を考慮すべきだ。だが、上層部を身内のみで固めているカルミナ市で内通者はあり得るのか」
「えー!!!監視激しいカルミナ市で協力者!!?内通者しかありえなーい!!!嘘つかないで!!!日刊勇者新聞が嘘をつく訳がない!!!酷い!!」
大仰に手を振りながら、少女は席を立ち上がる。
男性は本当に嫌そうな顔になった。
「僕としては、協力者だと思うぞ。お父さんが新聞はいくらでも操作できるってよく言ってるぞ」
「新人は黙ってろ。日刊勇者新聞が嘘つく訳ない!!お前はいつもそう!皮肉屋で否定する事しか知らない!!酷い!!これだから
「実に愚かな。煽る事でしか自らを表現出来ないのか?後任がこれでは殉職した第二使徒も浮かばれん」
少女に暴言を吐かれ、15ぐらいの少年はしょんぼりする。
直後、四十代ぐらいの青白い目をした男性は少女を睨み出した。
「はいはーい、おっしゃる通りでーす。浮かばれませーん。いやぁ!第一使徒様に否定されちゃったー!!聖女様に任命されたのにぃ!!逆らっちゃうんだー!!」
「貴様は第二使徒だ。上位の物は、責務を負うのが世界の理。そして、教義だ。貴様も従え」
こう言われ、少女が男性を睨む。
男性も睨み返した。
場に緊張が走る。
「ふふふ••••何かあったの?関係ないか」
全てを無視して、漫画を読んでいた青白い瞳した女性は唐突に笑う。
彼女は一瞬顔を上げたものの、興味を失いすぐに漫画の世界に戻る。
これで場の雰囲気が緩まった。
「「喰らえパンチ」「ゴホッ。殺す」「ごキャ。殺す」「殺す。殺す」」
「うおー!!なんや!喧嘩やーん!!喧嘩が始まりそうやーん!!!レッツ野次馬!第一使徒と第二使徒!果たしてどっちが勝つんだー!!」
「例え国の上層でも、争いしかしない。全ての人間も変わらず愚かだ。予言通り、あと四年で滅べと言おう」
一斉に青白い瞳を持つ、他の人達も騒ぎ出す。
その中の、予言と口にした男性に、眼鏡をかけた男性が反応する。
「1999年で世界が滅ぶというクソ予言を前提にした発言ですか。実に曖昧だ。それならば、あそこに自称予言を為した者の子孫が居る。彼女に滅ぼす方法でも聞けばいい」
「売られた喧嘩は、買わない。己と相手が同等ではないからだ。ここで一句。人は愚か お前も愚か 愚か」
「季語がないですね。クソ。三点」
「死ね」
眼鏡の男性とその男性が、座ったまま取っ組み合いを始めた。
どちらも全身で相手を椅子から落とそうとする。
一方、無言で座っていたスキンヘッドの男性が、虚無に手をかけた。
(第二使徒のガキ、今なら殺せんじゃね。で、有耶無耶になるんじゃね?試そ)
「ウィーン!ガチャーン!何をしていぃるのですか?パワフル二号!ガッチャーン!」
(ちっ)
「聖女様の御成だ。静粛にしろ」
突如、会議室の扉が開けられる。
白い服を着た太った男性が、立っていた。
使徒達は椅子に戻り、新聞と漫画をしまい、取っ組み合いを辞める。
直後、扉から白い瞳を持つ銀髪の少女が入って来た。
「「魔神の」「討伐」「捕獲」「「お疲れ様でした」」」
「いえ、それ程では。所で、今回も第四使徒は欠席ですか」
銀髪の少女は、会議室を見渡す。
この中で、十三個ある椅子の内一つが空席だった。
「第四使徒は体調不良だと連絡が。聖女様が気に留める必要は皆無でしょう」
銀髪の少女の質問には、太った男性が答える。
彼女は訝しげに男性を見る。
が、すぐに辞めた。
「分かりました。では、会議の続きをどうぞ。特に我が国への影響が強い物を取り上げて頂ければ幸いです。情報に間違いがあれば多少は修正を掛けますが」
「西部、禁止大陸の動向を注視するべきかぁとぉ。我が国への大陸からの移民が大量に。それ即ち、ぃ何かの異変によって、パワフルぅ、禁止大陸での覇権争いが活発化している証」
「それ以上に先程第ニ使徒が挙げたカルミナ市壊滅という事件について注視するべきでしょう。クソ帝国が魔王国に対し宣戦布告する可能性も高い」
「国内の近況に目を向けるのが吉だ。魔神に荒らされた跡地の修復は、使徒単体では相当手間がかかる。その上、遅らせれば保護すべき人民の生活が苦になる」
予言者の子孫と言われた女性、眼鏡の男性、第一使徒の男性がそれぞれ知見を述べる。
全員は完全に銀髪の少女へ、話しかけたいた。
「帝国については考慮せずとも問題ありません。先程、国際監査機関から連絡がありました。そして、禁止大陸は第三使徒に一任します」
「あーあ。第一使徒は上司に敬語使わないんだー。可笑っしいー。教義忘れたのー?」
少女が第一使徒の方を向く。
すると、彼ははため息を吐いた。
突如、銀髪の少女は少女の方を向いた。
「はい。初代からの方でもあり、個人的な繋がりもあるので問題ありません。貴女の才能は素晴らしいですが、何にでも噛み付いた言い方をする性格は治しましょう」
「はいはーい。分かりましたよ」
「ハハハ!笑える!怒られてるやーん!ハハハ!」
隣にいる少女にも煽られた第二使徒の少女は、怒りの表情となる。
だが、抑えた。
平静を装った表情になる。
「私としては、ですが。今後の方針は帝国の損害を全て無くすほどの支援を行おう予定です」それを条件に国宝を取り戻そうかと」
「不可能でーす。帝国の約三割の電力の供給源が消えてるんですー。よしんば出来ても、どれほどの金と時間がかかるんですかー?」
「私が出ましょう。ユカアラダス。今すぐ準備を」
「僕ですか!ありがとうござ、痛ぁ」
少年は頭を下げた拍子に、机にそれをぶつける。
それを無視し、銀髪の少女は会議室全体に目を向ける。
「一方、第三使徒と第十二使徒以外の方々は、全員で協力して、我が国の土地全体の修復を急ぎましょう。貴女も文句はありませんね」
「ぜんぜーん。ないでーす。聖女様の言う通りでーす。おっかしーい。無理やりまとめるなんてー。会議の意味なーい」
第二使徒の少女は煽るように、そう話す。
銀髪の少女は、溜息をついた。
「ぶんぶん。ぅぅぅゔん。火事です。こちらのテーブルから。うわぁぁぁぁ!!」
「••••••どうしたのですか。また乱数調整で?」
「申し訳ありませ、ん。エゼルワイス様。乱数調整で、す」