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第八話 ヘビの治療





 『それで、俺は何をすればいい?何でもするけど』


 少し聞いてみる。

 まだホワイトはしゃがみながら、瀕死のヘビに触れていた。


 『••••••ヘビの魔力をまねしてほしい。かたほうだけでもいい』


 『了解。やってみるわ』


 ヘビの魔力を両方とも使いたいと思ってみる。


 何かが根本から変わった気がした。

 

 『••••••できてる。片方だけだけど••••••それをヘビに流して』


 ヘビの魔力の片方だけ、真似れたようだ。

 俺の能力は、一度に一つの魔力しかなれないっぽい。


 とりあえず、俺もヘビに触り魔力を流す。

 これで擬似的にヘビの魔力を動かして、回復速度を高める、という感じかな?


 『••••『表皮停滞』』


 ホワイトも能力を使う。

 ヘビの出血が止まった。


 『?。でもこれ、俺が魔力動かしているからすぐ動き出さない?』


 『••••ちょっとでもとめたい。そのあいだに止血できる草あつめてくる』


 『成程。気を付けて』


 ホワイトは走って草を集めに行く。


 十分後、帰って来た。

 その草を、能力の解けたヘビの傷口に貼っていく。


 『••••••あとはちはるが流すだけ••••••ちはる。ありがとう。手伝ってくれて』


 『全然良いよ。俺にも役立つ事だから』


 『•••••••そう』


 俺はヘビに魔力を流し続ける。

 ヘビの傷は一割ぐらい治ってきていた。


 割と順調だ。


 

 『そう言えば、調子悪そうだけど。大丈夫?何か毒でも喰らっちゃった?』


 一段落したので、聞いてみる。


 ヘビを治療する直前から、ホワイトは色々テンションが低かった。

 もしかして、何かしらヘビの攻撃を喰らっていたりするかもしれない。


 『••••••••わたしがうそついたから•••••ごめん』


 『?。何を?』


 ホワイトはボソっとそう言う。

 予想外なのが来た。


 『••••••悲しい目をしたこいつに、わたしが同情したってだけなのに。むりやりいろいろ理由つけた••••ということ••••いまさらいってる••••』


 『そっか。まあでもヘビを助ければ、森から出れる可能性が上がるってのは本当じゃない?別に気にしなくて良いよ』


 とんでもなく低い可能性だが、賭ける価値はあると思う。

 手掛かりが無いと、本当にこの森は出れない。


 『••••••••わたしは故郷の森からはなれて••••だからひとりはいやで••••なのに、なんとなく、何かに裏切られたきがして、他のとなかよくしたくなかった••••』


 ホワイトはボソボソと、呟く。

 そんな事をホワイトは考えていたのか。


 しかし、結構唐突めだ。

 どうしたんだ?


 『••••••だから、さびしいのに、周りをきらってるめをしてるこいつを捨ておけられなかった••••だけ。だから、ちはるを騙してまで、むりやり助けた••••』


 唐突じゃなかった。

 しっかり繋がっていた。


 というか、ヘビってそんな目をしていたのか。


 『••••••••ぜんぶわたしのわがまま。いまさらいってるのも。ごめん』


 『ま、まあ、本当に大丈夫だよ。結局了承したのは俺だし』


 『••••••••ごめん••••』


 その辺は、割と自己責任だと思う。

 こう言ったが、ホワイトに謝られる。


 本当に良いのに。

 どうしよう。


 『ほ、ほら、ホワイトは強引に、俺との距離を詰めてくれたじゃん?だから逆に、ヘビもそのお陰で感化してくれるかもしれないよ』


 『••••••だったらいい••••』


 ホワイトは少し俯き、そう言う。

 あまり納得行って貰えてない。

 それなら、実際にやってみよう。

 

 『ホワイトのお陰で、俺としては色々家族について思い出せてさ。例えばこんな、こんなの』


 本心を言いながら、ホワイトの手を握ってみる。

 もうおんぶもしたし、手を握る程度なら大丈夫だと思う。


 『••••••わたしも。故郷のやつらから、さいしょはご飯をわけてもらって••••••だから、ちはるといるとあんしんする••••••』


 ホワイトは両手で手を握り返す。

 温かい。


 しかし、何故か目は合わせてくれない。

 まだ足りていなかった。

 

 『つ、つまり、こうやって無理やりしたからこそ、ヘビが感化してくれるかも知れないというか。そういう点も、ホワイトの美点かもしれないというか』


 『••••••』


 めちゃくちゃ曖昧な発言だった。

 そのせいかホワイトからの返答は無い。

 だが、俺の手はホワイトの両手にモミモミされていた。




 こうしていると、ヘビがピクッと動いた。


 『あ、あれ。動いた。もう目を覚ますかな?』


 温かい手を離し、俺は木の枝を準備する。

 ホワイトはさらに顔を背け、ヘビの頭に右手を乗せた。

 

 『••••魔力をうごかしだしてる』


 『協力してくれれたら良いけど。どうだろう』


 魔力を流すことを辞め、木の枝を構える。

 ヘビの傷は五割程度、治っていた。


 次の瞬間、ヘビはホワイトの指を噛んだ。


 『は?この!ヘビ!!』


 木の枝をヘビの頭に刺そうとする。


 今ならすぐ殺せるはず。

 早くしないと、ホワイトが毒か溶解液で不味い。

 

 『まって。わたしに毒はきかない。だいじょうぶ』


 枝が急に止まる。

 ホワイトの能力だ。 

 そのホワイトは、左手でヘビの頭を撫で始めた。


 『••••おちついて••••こわくない•••きずつけない••••』


 このような言葉を繰り返しながら、ヘビの頭を撫で続ける。


 美しい幼女が膝下のヘビを撫でている。

 月夜も合わさり、割と幻想的な光景だった。

 その真上で固まっている木の枝を除けば。

 


 ヘビはついに口をホワイトの指から離す。

 ホワイトの指からは、光る粒子が出始めた。


 『???。血、血?だ、大丈夫?』


 『いい。すぐなおる』

 

 ホワイトは本当に平気そうだ。


 何か凄いね。

 食事が要らない事といい、毒が効かない事といい、ついでに睡眠も要らなそうな事といい。

 異世界人って、本当に俺達とは違う。


 『それよりヘビ』


 口を離したヘビは俺たちから離れ、シャーとこちらを威嚇してくる。

 襲ってくる気配は無いが、仲良くなれそうな気配もない。


 『••••••しゃっ、シャー』


 『?。どうかした?』

 

 ホワイトは突然舌をチロチロだし、言い出す。

 どうしたんだ?


 『••••なかまアピール』

 

 ホワイトは少し顔を赤くし、言う。

 それは威嚇な気なような。


 まあ、試してみるか。

 この世界だとそうなのかも。

 俺はヘビに仲間だと言う事をアピールする方法を知らないし。


 『しゃー。シャー』


 『シャーッ!シャッー!!』

 

 俺も舌をチロチロしながら、全力で仲間アピールをする。

 声真似もしていた。

 舌の動きも真似する。

 

 『シャー。シャー』


 『シャッ!シャー!!!』


 少し良い気分になり、口角が上がる。


 先程まで変な雰囲気だったのに。

 今は二人で蛇の鳴き真似をしている。


 ホワイトも同じ気持ちか、口角を上げていた。


 『シャー。シャー』


 こうしていると、効果が出た。

 ヘビは威嚇を止め、だんだんとホワイトの方へ近づき始める。

 

 『シャー!!シャー!!』


 俺は蛇を良く観察して、鳴き声や舌の動きをヘビにより似せる。

 比べるようで宜しくないが、それはホワイトより上手いと思う。


 にも関わらず、ヘビはホワイトの方へ向かう。

 ヘビにしたことは、ホワイトとあまり変わらないはず。


 良い気分だが、それはそれとして負けたくない。

 どちらも蛇の真似は初心者のはず。

 ならば、勝ちたい。


 『シャ!シャー!シャー!!!!』


 『シャー。シャー』


 ついに、ホワイトの足元にヘビがたどり着く。

 

 ホワイトはヘビを抱きしめた。

 

 『シャー!!!!!シャー!!!!』


 負けた。

 負け犬の遠吠えも、ヘビから完全にスルーされている。

 

 ホワイトはヘビを抱いたまま、立ち上がる。

 このまま、俺の方へ近づいて来た。


 『さわってみる?』


 ホワイトはそう言う。

 俺はヘビを撫でたい為に鳴き真似を全力でしてた訳ではなかった。

 

 だがヘビに触ったことは無い。

 どんな感触なのか、試してみよう。

 いつかの趣味探しに役立つかも。


 ホワイトの優しさに甘え、ヘビに手を伸ばす。


 その手が、ヘビの尻尾に弾かれる。

 

 『あ』


 『また。俺にだけ』


 {シャー!}


 ヘビはまた威嚇してくる。



 



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