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第七十四話 爆誕






 「••••••」


 フレジアが近くで刀を構え、猿達に殴られている俺を見下ろす。


 遂に刀を振るった。


 その刀で猿の頭が粉砕される。

 

 「••••••千晴だけでも••••助かるつもりはないかしら••••あなた達ではお母様に勝てない••••••けれど、私が本気でお願いすれば、あなただけは助けてくれるかも知れない••••」


 ここで、フレジアは語りかけてくる。

 暗い顔をしていた。


 だったら、答えよう。

 時間もある。

 ユアがもう一人の少女に勝ってもいるので、余裕もある。


 「••••何でそんな事を言うの俺は本気で殺そうとしてたじゃん」


 「••••••それは私も似た様なものよ。いや、もっと酷いわ••••私はお母様にやれと言われたから、殺そうとしているだけ••••」


 「••••••そっか」


 フレジアは刀を下ろす。

 他の動物達も石の塊に戻って行く。


 「••••だけれど••••私達の世界ではそれが全てで••••完成していたわ。この中で無駄に器が広くて••••危うい千晴と、イチャイチャして••••」


 こうして話してくれるのも、都合が良い。

 一旦スルーし、自分の事に集中する。


 「••••••私は、初めて強く思ったの••••失いたくないって••••••そしたら、自分から魔力が溢れ出したわ••••こんな「変異」の力を、あなたに向けるのも馬鹿らしい••••」


 作戦は完了だ。

 フレジアは早く倒そう。

 隕石も迫って来ている。



 「ははっ!!ひひっ!!俺はフレジアを殺す為に!こんなになったけどね!あひゃひゃひゃ!!」

 

 「••••は?」


 一気に立ち上がり、涙目のフレジアを殴り飛ばす。

 直前に貼られた熱いバリアも、問題なく割れた。

 だが、腕でのガードで防がれてもいた。


 「••••なに。誰かしら」


 「俺だよ!俺!大空千晴!混ざり合って意味分かんなくなっちゃったけど!」

 

 多分頭からは角が生え、少なくとも片手は蛇に置き換わっている。

 左の目も蛇っぽくなっているだろう。


 これが今の俺だ。


 「••••••私が魔力融合手術で能力を得たって聞いて『融合』を使えたのかしら••••魔力強奪手術を介さずに丸ごと融合するのは、本当に危険よ••••」


 「勝てれば良い!このまま無くすよりは良いから!」


 俺とキメラの蛇を『融合』でくっつけた。

 これで動かせる魔力が三つになり、単純計算で身体能力も三倍だ。

 更に蛇が使える魔法も使える。


 その代わり、人格が混じって色々変になってはいるが。

 俺の方が意思が強く、主導権は握れた。

 だから、とりあえずはいい。


 「これで終わりにしよう!「鬼の週末(シャーシャシャシャー)」!」


 「••••来なさい。龍。他のも頑張りなさい」


 俺はキメラの持つ鬼魔法を使い、身体能力を強化する。

 フレジアは龍を呼び寄せた上、足元から猿達を出す。


 龍と猿達は俺に襲いかかってきた。

 

 「あひゃひゃ!これが力!強過ぎる!!どの肉も食える!飢える事もない!!」


 寄ってきた一匹の猿を、人間の方で殴り飛ばす。


 そのまま、猿達の群れに突っ込んでいく。

 周りの動物を壊しながら、一直線にフレジアの方へ。


 「『束ねた闇(テネブル•レザ)』」


 フレジアから黒いレーザーが発射される。

 共に龍が突っ込んでくる。

 

 ここで、思いっきり飛び上がった。


 「まずはお前らからだ」


 上空の雉を頭突きで、抵抗なく粉砕する。

 簡単に壊せた。

 更に他の雉を足場にし、より飛び上がった。


 「「神の霊剣(ズルフィカール)」」


 俺は上空から青白い剣を振るう。

 龍や猿達がいる場所全体に及ぶほど大きい、そんな剣を。


 これで、城の床を壊し、龍達を下の階層へ押し出す。


 「••••一対一ね。あなたに負ける気はないわ」


 俺は地面に着地する。

 直後、フレジアの刀が伸びてきた。


 それは蛇の頭になった手で噛み付き、止める。

 

 「「勇気」『壊笏』」


 「勇気」を歯に纏い、顎に力をいれる。

 それで、刀を折る。

 追加で能力を変え、人間の方の手に黒い棒を出した。


 「「瞬動」」


 「••••••「緩急」••••」


 ここから急に加速し、フレジアに近づく。

 飛んで来た「緩急」の蹴りは普通に避ける。


 フレジアの懐に入る。

 そのまま、頭に向けて『壊笏』を振るう。

 これで、即死だ。

 

 何かの記憶がフラッシュバックする。


 


 俺は黒い地面を這う。


 空も真っ暗なその場所で、俺は餌が食べられる時にだけ光が見える。

 だが光に向かおうとも、他のキメラ達に押し除けられ中々近づけない。


 「餌やりって面倒くさいわね。そもそもなんで人間の死体なんて餌にするのかしら。汚いし気持ち悪いわ」


 「フレちゃんがじゃんけんで負けたからじゃん⭐︎愚痴なんて女々しーい!!あはは!!」


 やっと光に少し近づける。


 今日は柔らかそうで美味しそうな肉をした生き物が餌を投げていた。

 初めて見る色ばかりの、美しい両目をもっている。


 「スッゲェ嫌そう!お母様の廃棄する実験材料なんて!触りたくもねぇよ!キッショいわ!」


 「テェフルも黙りなさい。私より弱い分際で」


 「は?6:4だろ!イキんなテメェ!カス!」


 俺は餌場に近づいて行く。

 何とか近づこうと、多額。


 「マジックタイム。見えなくさせる?」


 「見た目が変わっても中身は同じよ。ナシィス。要らないわ」


 ようやく食料にありつく。

 他の奴らに食べられ、硬い部位しか残っていなかった。


 けれど一生懸命食べる。

 空腹に耐えられなかった。


 なのに、まだ足りない。


 「なに?もっと欲しいの?」


 欲しくてまだ近づく。

 俺は、耐えられない。

 何でも良いから食べたい。

 

 「そう。お母様ー!餌が足りなそうよ!」


 「あれ?足りなかった?いつもと同等の量だけど。まあいっか。ほーい」


 光から餌の入ったバケツが投げ込まれる。

 バケツの中に入っていた餌を貰って、俺は久しぶりにお腹いっぱいになった。



 


 「「武雷(タケミカヅチ)』!!」


 ギリギリで雷魔法に切り替え、雷型の武器を脇腹に叩き付ける。

 空気のバリアも貫通した。


 雷魔法でフレジアは煙を出し、膝を突く。


 「がは、、」


 直後魔法を解き、人間の方の腕でフレジアの首を絞める。

 チョークスリープ的な感じだ。

 

 「••••もともと••••私達は相慣れなかった••••という訳ね•••••••••」


 数秒後、フレジアは失神した。

 俺は地面に寝転がす。


 「はぁ、はぁ••••」


 一応、勝利だ。

 色々変な事もしてしまったが。


 「••••やっぱり、リスクが、やばいか、、」


 その一方で、気が抜けると相当体調が悪くなる。


 最初から、蛇が弱っていたのもあるが。

 いくつもの魔力を、一つの体で同時に使ったからだ。

 俺もキメラもその毒性に耐性があるお陰で、この程度ですんではいるが。


 「やばい体になってまでよく頑張ったのじゃー!!大空千晴!褒め使わすのじゃー!!だから!はよ!早く隕石を壊してくれなのじゃ!!!」


 けれど、まだだ。


 ここから逃げ切るまでこれを維持しておきたい。

 まだ隕石も落ちて来ているし、いつイリス?が帰ってくるか分からない。

 早く、全員で逃げなければ。



 「あれ。やっぱりやられてたか。やるねー。君達。あいつがいないなら、行けると思ったんだけど」


 俺が開けた床の穴から、イリスが現れる。

 白衣にはかなりの血が付いていた。

 そんな彼女は城の中心部で浮かぶ。


 「ご、ごぼ、ごめん、••••お母様、、」

 

 「ま、いいよ。テェフル達は死んでないし。他はこれから私がなんとかすればいいだけ」


 全員が空のイリス?に目線を向ける。

 だが、俺は彼女と目が合った。


 「あ。最期に。君。「模倣」だったよね?能力。その能力でコピー出来るようになる条件を教えて欲しいんだけど」


 「、、教えれば、、何か言う事を聞いてくれたりするんですか?例えば、、俺達を殺さない、とか」


 「三秒ぐらいで終わるやつならいいけど。君達の死の運命は覆らないね。見たものを誰も生かす予定はない」


 「、、だったら、お断りします」


 「それはそうか。じゃいいや。先にほい。『山火事の拡大(フディホヘアントラビ)』」


 イリスは軽く、皇女の人に向けて火魔法を放つ。

 とてつもない量の火が、相当のスピードで皇女に迫る。


 「わし!?こ、近衛兵!助けるのじゃ!ぎゃ」


 爆発が起こり、城の一部が吹き飛んだ。

 皇女の人は火の中に消える。


 これにより、隕石の速度が元に戻る。

 早いスピードでこちらに落ちてくる。


 「それで、厄介そうな君は私が直接っと」


 イリスは猛スピードで俺に突っ込んでくる。

 今の俺より相当早かった。



—-





 銃弾をエゼルワイスは片手で弾く。

 その瞬間から、エゼルワイスの魔力が消え始める。


 「死ね」


 この隙にヘッドホンを付けた少女が、数個の小さな針を投げる。

 針は一気に巨大化し、大きな杭と化す。

 

 これを見て、エゼルワイスの目は青白くなる。


 「•••••••舐められた物ですね。人間風情が。ぶっ殺す」


 エゼルワイスは蹴りで杭を全て破壊する。


 そして一気に近づき、少女の胸を殴った。

 蛙が潰されたような声を出し、少女は吹き飛んでいく。


 猛スピードで脇に移動し、マジック棒を持った少女の脇腹も蹴る。

 少女は全く反応できず、凄まじいスピードで壁にぶつかる。


 「この程度で勝てると思いました?貴女達如きが。身体能力でどうとでもなります」

 

 そう言いながら、スナイパー銃を持つ少女の上空に移動していた。

 少女は目を見開く。


 エゼルワイスは、少女の胴体に踵を落とす。

 少女の胴体は物凄く凹み、口からは血を吐く。


 「即死はしない程度に手加減したので、苦しんで下さいね。お前ら」


 エゼルワイスはそれを青白い目で見下しなら、少女を蹴り飛ばす。

 この少女は、転がっていた死にかけの二人にぶつかる。


 「では。全て壊してやる。「神の世界(インシャアナ)」」


 追加で神魔法を使い、今いる研究所を真っ二つに割る。


 外には海が広がっていた。

 その海も真っ二つに割れている。

 エゼルワイスは飛び上がろうと、足に力をこめる。


 直前、自らの頬を叩く。


 「••••危ないですね。魔力が消されたせいで••••ふぅ•••••」


 一旦ため息をつき、心を落ち着かせる。

 エゼルワイスの瞳も白い物に戻って来た。

 

 すぐ、エゼルワイスの体が白い粒子となっていく。

 この粒子は、割れた研究所から飛んでいく。





 


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