第六十九話 帝都の中心
今回めちゃくちゃ長いです
書いてたら伸びすぎました
俺達は帝都の中心部にやって来ていた。
帝城からは大体車で三十分ほどだろうか。
その車は近くの駐車場に停めた。
辺りには一面に高層ビルが立ち並んでいる。
それらのビルの側面にはネオンのついた広告が多く張り付いており、非常に派手だった。
道ゆく人も多い為、かなり活気がある。
だが、エゼルさんはこんな人の多い所に来ても大丈夫なのだろうか。
正体を隠してそうなのに。
まあサングラスをしているし、大丈夫なのだろうかな。
多分。
「ただのショッピングになってしまいましたね。私のワインばかり買い漁って申し訳ないです。付き合わせてしまいましたね」
「全然というか。俺も良いものが買えたから」
このような高層ビル街で、先程まで色々買い物をしていた。
俺はギターをする際に指にはめるあれと、帝都で人気らしいお菓子を買っている。
趣味探し用と、ホワイトへのお土産用だ。
これで指の怪我も軽減出来るし、ホワイトは思い返せばお菓子を食べるのも好きそうだし。
結構、良い買い物が出来た思う。
「ですが、大空くんも多少なら酒も良くないですか?その年ぐらいの人ならみんな飲んでいますよ」
「いや、俺はお酒に弱くて。酔ったら何をするか分からないから。辞めておこうかなと」
ビールを一気飲みしただけで記憶を失ったし。
その時、何をしたのか分からないし。
かなりやばそう。
リスクは避けるべきである。
ここで、目が合った。
遠くの見たことのない双子の姉妹が、俺を見ている。
「無理強いはいけませんね。ならば、劇場も近いですし、劇の話でもしちゃいましょう。大空くんは劇にについてどの程度、下調べして来ましたか?」
まあちょくちょくあるし、理由も不明なのでスルーで。
劇はまあまあ下調べをしていた。
「俺はあらすじ程度で。故郷を滅ぼされた主人公が復讐心を燃やして。魔王を倒すってぐらい」
「大空くんにネタバレされちゃいました。人気の演目との事なので、初見はネタバレ抜きで見たかったのに~~」
「残念、、あらすじだけだったのに、、」
このように、最後は二人で夕食をとりながら、劇を見るつもりだ。
演目の時間は、合計三時間だ。
開演時間が午後六時なので、帰る頃には九時になるだろう。
「大空くん。劇場が見えて来ましたよ。あれです」
そして、遂に劇場が見えて来たらしい。
エゼルさんが指差す方に目を向けると、大きく豪華な入り口があった。
他人と劇を見ながらご飯を食べるなんて初めてだし、かなり楽しみだ。
「実は。この劇、現皇帝の一人娘も好きとの事で。かなり期待が持てますね。持てるだけですけど」
「へー。そうなんだ。信頼性があるというか」
「本当に関心無さそうですね。大空くん、、酷い~~」
——
そのまま劇場内に入り、席へ座る。
ここの構造は奥の三分の一が舞台で、それ以外全てが客席、という感じになっている。
その全ては満席で、一角は休日の昼時のフードコートレベルに混んでいた。
幸い、俺達は割と良い感じの席を取っていた。
ここは、席同士がまあまあ離れており、周りの声はあんまり聞こえない。
「あれを。見て下さい大空くん。あの暗幕。よく見ると国旗になっていますよ。凄まじい思想を感じますね」
「あ。本当だ。かなりの値段もしそう」
ぶっちゃけ割と良い感じと言えど、今泊まっているホテル一泊分ぐらいの値段はした。
だがここでDランクになった甲斐が出て来た。
ちょくちょく冒険者ギルドで働くだけで、貯金には手を出さずに劇を見れる。
やったね。
劇が始まる。
暗幕が仕舞われていった。
「ついに始まりましたよ。主人公の幼馴染も出て来ましたね。役者の方も可愛らしいです」
この劇は、帝国の初代皇帝の人生を元に作られた物との事。
実は色々史実とは違うらしいが、それでも面白いっぽい。
「俺は『最悪』の魔王様配下!!アルタイル!四天王!雑魚な人間め!死ね」
「あ、幼馴染が死にました。村ごと皆殺しです」
「残念。」
主人公の故郷は四天王の人に攻撃され、滅んだ。
だが、主人公だけは逃がせたし、やったね的な感じである。
このタイミングで、ウェイトレスの人がやって来る。
彼女は俺達の前に、二つのサラダっぽい物を置いた。
「••••こちらは冷菜の盛り合わせ••••故郷の味仕立て、です••••かの主人公の故郷の味と思うとより劇が面白く、面白く、なります••••保証は出来ませんが••••」
この料理は何種類もの冷たい野菜が綺麗に盛られていた。
見た目はかなり綺麗だった。
「ここでこの料理が飛んで来ますか。狂気と拘りを感じますね」
「美味しい。けどタイミングは凄い」
味もまあまあ酸っぱいソースが素材の味を際立ていて美味しい。
良い感じだった。
暫くし、劇は次のパートに移った。
慟哭する主人公を見ながら、野菜を食う時間は終わる。
恐らく仲間集めのターンになった。
主人公も一人じゃ何も救えない的な事を言っている。
「これが火事場泥棒の攻撃!!この世のお金!全部ゲットだぜ!」
「••••魔王は許せん。剣の鯖にしてやる」
「魔王を地獄に送り!!この戦乱の時代を終わらせたいのです!皆さん!ご協力お願いします!」
色々あって、上の三人が行きづりの仲間になった。
上から盗賊、剣士、僧侶の人だ。
盗賊は身体を強化する系、剣士はワープ、僧侶は味方を回復する系の能力が使えるっぽい。
「転移する能力とは。便利ですね~~~。私も欲しいです」
「俺も。移動費が必要無さそう」
果たして、そんな能力があるのかは知らないけれど。
まあ、若頭の人が転移システム?とか使っていたし、この世界の科学では転移も出来るのかも。
やれたら便利そう。
「人間って面白ぇよな!!?痛みや悲しみで慟哭する気力はあるのに!反撃する気はないんだぜ!!?やっぱきめぇわ。死ね」
「何故、何故こんな事が!!できるんだ!悲しみを振りまいて!!故郷だけに飽き足らず!!お前らは!!!!」
「お、やる気ある人間発見。俺は四天王。『悪虐』のアルタイル。心を折って殺してやろう」
今度は四天王の人が街に急襲してきた。
そんな彼と、主人公達が戦っている。
舞台の上で、火魔法やワープや闇魔法が飛び交う。
その中で四天王と剣で戦う主人公、という演出が綺麗だった。
「人間風情がぁぁぁ!!俺の俺のぉぉぉ!!」
「俺の剣の前に!!!死ね!!」
最後には剣士の人が背中から刺し、四天王の人は亡くなった。
そうして、黒い粒子となり、消えていく。
「演出が凄く良かった。けど、アルタイルって人は四天王だったっけ?もしかして、実はそうなのか?」
「史実では四天王で無いですね。嘘つかれましたね。ぷんぷんです」
「そっか。まあ、劇だし、面白いしセーフって感じ?」
更に場面は移り変わる。
今度は主人公側から、四天王の拠点に突っ込んで行くターンっぽい。
「私は四天王にして!悪魔のてっんさい科学者!!アルタイルを殺したのはお前らか!転移しか能の無い猿人共が!!その詳細、気になるぅぅ⤴︎⤴︎!!」
「俺の剣の前に!!死ね!!!」
「ま、待て!先走るな!」
何か因縁ありそうな剣士の人が、四天王に切り掛かった。
だが、あっさりと躱される。
一方、またウェイトレスの人が俺達のテーブルにスープを置いていく。
量は相当多く、皿が先ほどのよりもかなり大きかった。
「••••こちら、崩壊燕の巣のスープになります••••食べる際には箸かスプーンで崩して頂ければより美味しくなる味です••••」
これはスープだった。
大きな皿の中に、多くのスープと一つの燕の巣っぽいやつがあった。
「その程度じゃ魔王様には到底及ばねぇんだよ!舐めプした四天王を集団でボコった程度で調子乗んなカス!つまんな!研究する価値もない!」
もう一方、劇中では主人公達が四天王に負けていた。
四対一なのにボコボコにされ、まさに惨敗である。
「諦めない!希望なんだ!オレたちは!」
「そうです!私達が諦めない限り、きっと!」
「アホか、心でどうにかなるわけない、魔力流して、、ちょっとだけ私の能力を貸してやる、これで、、頼む!!!」
何やかんやあって、盗賊の人が主人公の肩に触る。
すると、主人公の全身が光り始めた。
盗賊の人が能力を使った時と、完全に同じ状態だ。
ピカピカだった。
「はぁぁぁぁ!これが皆んなで出せる力!!これまでお前が苦しめた人々の!怒りを知れ!!」
「これは不味い!逃走安定!!カス共よ!また今度!」
直後、走って逃げ出す四天王の人。
そこへ瞬間移動をし、切り掛かる剣士の人。
「俺が、勝つんだぁぁ!!」
「援護!ありがとう!!はぁぁぁ!!!!」
「うわぁぁぁぁぁ•••」
四天王の人は主人公に剣で真っ二つにされ、亡くなった。
これにより黒い粒子になり、消えていく。
そんな主人公は、何故か倒れた。
限界を超えた力を出し過ぎたかららしい。
「他人の魔力流すだけで、あんなに強化されないですよ~~。あの程度のリスクで他人の能力を使えるなら、誰も苦労しません~~」
「確かに。まあ、良い展開だったので、セーフ?」
こうして主人公は、近所の市の病院に送られる。
そして、多分治療のためにそれぞれ奮闘しだす。
盗賊の人は主人公の治療に必要な薬草を集め、剣士の人は何処かに行き、僧侶の人は能力で主人公の治療をし出す。
その病院に、もう一人の四天王が突撃して来る。
「万歳!!万歳!!万歳参照!!聖典参照!!p176 5行目参照!!弱者は生きる価値無し!俺は四天王!『紺地』のデビ!教義に則り、ゴミ共は死刑!!魔王様の命令通り!お前らは死刑!」
四天王の人は聖典?らしき本を掲げ、病院前で叫ぶ。
それを見、皆んなは主人公を逃がそうと焦り出す。
「これは。とんでもない方が出てきましたね。私たちを皮肉っています。抗議ものですよ。ぷんぷん」
「?。そうなんだ。特にどの辺な感じ?」
「特に彼の教義とかあれですよ。戦争の際、他国の相手には容赦ない事を皮肉っていると思います。こんな物を公開するなんて。ぷんぷんです」
「そっか。言われればそう見えるかも。成程」
その四天王の前に、僧侶を含めた色んな人が立ち塞がる。
彼らは、主人公を今度は自分達が助ける、主人公は逃げろ的な事を言っていた。
そして、死んでいく。
「きええええ!!我の聖典をぉぉぁ!!神に逆らうのかぁぁぁ!異教徒の低脳どもがぁぁぁ!死ねぇぇ!!」
だが、皆んな死ぬまでここを動かない的な事を言っていた。
後、なんか四天王の言っている事はやばかった。
「でも良いです。規制ばかりでは文化が発展しませんから」
「ま、まあ表現に制限があると、出来る作品にも制限が出来ちゃうと思うので。自分としてはドラマ好きなホワイトの事を考えても、そうだと思います」
「家族想いの大空くんが言うなら、仕方ないですね~~。心を広く持っちゃいます」
そして、盗賊の人が謎の薬草を持って来て、主人公が完全回復する。
周りの人は逃げろと口々に叫ぶ。
けれど何故か逃げずに、四天王の前に出て行く。
「強くなった俺達なら!例え剣士が居なくても!行くぞ皆んな!!四天王!!『紺地』のデビ!!!!」
「何がカタキだぁぁぁ!ゴミには何の価値もないだろ!!!ぐぁぁぁぁぁぁ!!!」
何故か四天王の人は主人公パーティにボコボコにされた。
こうして亡くなり、黒い粒子になった。
その上先程吹き飛ばされた人達も、僧侶の人によって全員助けられる。
ハッピーエンドだ。
「主人公達、急に強くなりましたね。テコ入れを感じます」
「前まではボコボコにされていたのに。あっさり倒せるなんて」
劇中によると、なんやかんやあって皆んな強くなったらしい。
主人公は一度限界を超えた為、盗賊の人は薬草探しを超頑張ってこなした為、僧侶の人は治療に全神経を注いだ為に。
凄いね。
所で、テーブルにメインの料理が並べられていく。
今度は一つの皿に、四つの品が乗っている。
肉料理や魚など色々だ。
「こちら、ぐす、肉や魚、四種のマリアージュ、仕立てになります、ぐす。単品ずつでも楽しめますが、まとめて食べて頂く、事もおすすめします。ぐす」
その料理を持って来たウェイトレスの人は、泣いていた。
何で?
「だ、大丈夫ですか?どうして泣いて?」
「お客様、、気にしないで下さい。ぐす」
そう言いながら、ウェイトレスの人は去っていく。
一体、なんだったのだろう。
俺が原因じゃないよね?
「別に気にしない方が良いですよ。大空くん。あの方はずっと変でしたから」
「?。そうかな?そうだったわ」
言われて見れば、最初の冷菜を持って来た時からあの人何故か涙目だった。
彼女はそんな感じの人なのだろう。
劇に戻るが、主人公達は遂に自分らから魔王を攻めよう的な事を話し合っている。
なのに、剣士が帰って来ない。
だから、仕方なく三人で今魔王がいる魔王城に突撃していく。
その前に最後の四天王らが立ち塞がる。
「我こそ武の極み。だから、最強の四天王。人よ。俺に力を見せてみろ。さすれば配下にしてくれよう。この者のように」
最後の四天王の人は、謎の武器を両手に持った大男だった。
大男は後ろの剣士の人を紹介する。
「剣士の彼。裏切ってるじゃないですか。何やってるんですかね。裏切りは許せないです。あんなに仲良さそうだったのに~~」
「何かしら事情があるのかも?いつか戻ってくるかも?」
俄然、動揺し始めた主人公達。
そこで追加で、剣士の人が四天王から教わる武術最高、的な事を言う。
これを聞き、二人まとめて戦う覚悟を決める主人公ら。
「ハハハ!やるなぁ!他の四天王を殺しただけはある!ハハハ!だが、一人一人はゴミだ!死ねぇい!」
謎の武器を両手で振り回し、主人公パーティと互角に戦う四天王の人。
ついに盗賊の人と僧侶の人が吹き飛ばされた。
「例え一人一人が貴様にとって物足りなくとも。協力すれば如何にかなる。死ね!!」
「なん、だと、、貴様、」
突如四天王の人と戦っている最中、剣士の人が四天王を後ろから刺す。
そこに、主人公が割り込む。
「はぁぁぁ!!喰らえぇぇ!!!」
「ぐぁぁぁぁ••••」
主人公が四天王の人を真っ二つにする。
それにより、亡くなった彼は黒い塵となり消えてゆく。
「もしかして!最初からそのつもりで!?ありがとう!!俺たちの為に!」
「ふん。城を守る四天王に手こずっては、簡単に平和を齎せないと思っただけのこと。お前達の為ではない。早く魔王を倒すぞ」
「あそこまでして、忠義を尽くすとは。手のひらくるくるします。私としても高評価を与えざるを得ないですね。大空くんの言った通りです」
「理由も不明で裏切った人と本気で殺し合うのは、傾向として無いかなと。あ。最後の料理来てる」
「メタ的な読み方でした。話は変わりますが、どんな料理でしょうか」
またしてもウェイトレスの人により、目の前のテーブルに一つの皿が置かれる。
この皿には、多分チャーハンが盛られていた。
「お客様!メインディッシュはこれです!炒飯、全部盛り!ガッツリいっちゃって下さい!」
チャーハンには肉や魚、野菜などありとあらゆる具材が入っていた。
相当量も多く、腹一杯になれそうである。
「やばい量ですね。これは」
「エゼルさんが炒飯を食べ切れなさそうなら、貰うよ。俺はまだ行けなくは無いし」
「ありがとうございます。大空くん。最近本当に油に弱くて。でも少しは食べて良いですか?間接あれになりますが」
「全然。もう今更だし」
こんな中、劇では四人で最終決戦に向かっている。
そうしながら、魔王をどう倒すのか四人で会議をしていた。
色々な作戦案が出ている。
盗賊は全員に自分の能力を分け速攻で魔王を殺すプラン、剣士は自分が戦闘中に魔王を不意打ちして殺すプラン、僧侶は自分が回復させまくって魔王と無限に戦いぶっ殺すプランを挙げていた。
最後に、主人公は皆んなの力さえあればその場のノリでなんとかなる、と言う。
これを俺とエゼルさんは、炒飯をチマチマ食べながら見る。
一体どうなるのだろう。
「朕は『最悪』の魔王ゼンウ。よくぞ四天王を撃ち破り。ここまで辿り着いた」
「覚悟しろ!!魔王!」
「その快進撃もここまでなり。何人たりとも朕には勝てぬ。故に、魔王」
「死ね。魔王」
最初に、剣士の背後切りから始まった。
あっさり回避される。
「この程度にやられたのか。四天王は」
剣士の人は吹き飛ばされた。
その間にその他三人も襲いかかる。
「能力での身体能力。強力な回復能力。そして、無能力か」
「そうだ!俺の一人では無理でも!!お前を殺す為に!皆で!!」
「これで、朕に勝てると思ったのか?」
主人公達は打ち負け、全員吹き飛ばされる。
彼らはまとめて壁にぶつかり、一塊りになった。
普通に負けそうである。
「初手であげられていた作戦を使っちゃいましたね。これはどうするんでしょうか」
「どうなるんだろう。気になる」
「ふん。朕さえ生きていれば、世界など容易く滅ぼせる。四天王などそれを早める道具でしかない。思い上がったな」
床に転がる主人公達の前に、魔王が立ち塞がる。
こうして、魔法を撃とうとした。
絶望的な感じである。
「まだ、、!まだだ!!」
「全、魔力を、集めろ、、こいつに、、全てを託すんだ、、」
「これが、私の全部だ、、頼む、、、」
「お願い、します、、世界を、救って、下さい、、」
何か、皆んな諦めてなかったっぽい。
全ての魔力を主人公に流し、また一時的に主人公を強化する感じだ。
「そんな雰囲気で行きます?実際にこんな事したら他人の魔力で死にますよ~~これは良くないですね~~~」
「あれ。そうなのか。それは宜しくない」
これで主人公は立ち上がる。
大声と共に魔王へ斬りかかった。
「おおおおお!!!」
「やるな人間!!朕と互角とは!我が生涯、初の出来事!!」
主人公と魔王が剣や魔法を使い、互角に打ち合う。
舞台の周りからも炎が噴き出しまくる。
まさにクライマックス。
遠くのフードコートぐらい混んでる所では歓声が上がっていた。
「山場ですね~~。どうなるんでしょうか。これで終わりですかね?」
「果たして、ここからどう勝つのか」
主人公と魔王が互角に打ち合う。
まだ撃ち合う。
撃ち合う。
だが、主人公が押し始めた。
「何故だ!!!何故朕が押される!!力は互角だったはず!!託された魔力ももう無いはず!!!何故魔力が増えているのだ!!」
「俺が託されたのは!!仲間達だけじゃない!!今まで会った!!全ての人から!!託されていたんだ!!」
「朕があああ!たかが!!ゴミ共が集まった程度でぇぇぇ!!殺されるだとおお!?」
「はぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ちくしょぉぉぉぉぉ!!ちくしょぉぉぉぉ!!朕の夢がぁぁぁぁ」
魔王は亡くなった。
その亡骸は黒い塵となり、消えてゆく。
こうして、主人公らはそれぞれの道を歩み出す。
主人公は権力者の娘と結婚し、滅びかけた世界を救うため、帝国を建国する。
盗賊の人は孤児を守る為の組織を結成、自分のような不幸な人物を生み出さないように尽力した。
剣士の人は各地で人を助けながら、力を求める旅に出る。
僧侶の人は剣士の人に付いて行き、傷ついた人々を助け、聖女として崇められ出す。
最後、主人公達が幼馴染や村の人達を含めた死者全員を埋葬し。
この劇は終幕した。
その後、役者さんなど全員が舞台に上がり、礼をしていく時間になる。
今は幼馴染や村の人間役の人達が舞台に上がっていた。
「はい。感動的ですね。ですが、私、一つ言いたい事があります」
「?」
「そうはならなくないですよね。魔力は託されてませんよ?」
「まあ、確かに。でもまあそんな事もあるのかも?」
「つまらない発言ですが、最後に託されたでパワーアップしたのが納得いかないんですね~~ならば、魔王の方も託されてると思います。ぷんぷん」
実際苦戦しそうな相手にあっさり勝てたりする事もあるし、まあそんなものかなと俺は思う。
だが、気になるという考え方もあるのかな。
「別に良いですけど。演出は本当に良かったですけど。最後に私達も帝国の傘下みたいに書かれましたけど」
「ま、まあそうかも。演出はとても良くて。あ、後食べ終わったし、残りを貰うよ」
「フィクションですし、良いですけど。炒飯はありがとうございます。是非お願いしますね」
エゼルさんから自分の皿を差し出す。
それを貰い、間接キスになるがチャーハンを食べ始める。
やはり、美味しい。
肉や野菜などあらゆる具材の味がするが、それらが米を引き立てている。
コースの最後に出て来るだけはあった。
これを理由は不明だが、笑顔で見てくるエゼルさん。
そうして、チャーハンも食べ終わったタイミングで、見計らったようにウェイトレスの人が来た。
彼女は俺達の主菜の皿を回収し、テーブルにデザートを置く。
「ラストのデザートはこちらです!!七種七色のデザート!ベリーソースを添えて!是非舞台を見ながら美味しく食べて下さいね!!では!」
そう言い残し、ウェイトレスの人は走り去っていった。
このデザートには七種類の色んな甘味が乗っている。
色々あった。
「大空くん。これらも一部食べてくれませんか?もう満腹で。また一口だけ味見はしちゃいますが」
「全然。まだ行けるから」
「大空くんが間接あれに、慣れて来ちゃいました、、私のせいです~~」
こんな会話をした後、舞台を見ながらデザートを食べ始める。
舞台では今、何かを信仰している四天王役の人が出て来ていた。
それらの役者紹介も段々と進んでいく。
次は最強の四天王役の人のターンだ。
「どうぞ。大空くん。私の分は食べ終わりましたから。あげますね。はい」
エゼルさんは皿を俺に差し出す。
デザートは大体が一口ずつ食べられていた。
またあれだが、俺はそのデザートを食べ始める。
だが、またしてもじっと見つめてくるエゼルさん。
更に目が合うとニコっとしてくる。
チャーハンの時もそうだったが、何の行動なのか。
「?。美味しい。でも、何か変な所でもあった?見てくるけど」
コース料理が出て来る場で、皿を交換するという行為が駄目だったのだろうか。
この場の雰囲気的に、大丈夫かなと思ったのだが。
「いいえ。大空くんは気にしないで下さい。分かりやすい間接あれだったので、素面だと少し照れてしまって」
「あれ。そうなんだ」
あの反応は、照れていたのか。
エゼルさんにそんな傾向があったとは。
プロファイリングに追加しておこう。
「大空くんは、こういうのに対してあっという間に慣れていきますね。それと比べて驚きます」
「俺もまだちょっと恥ずかしいというか。全然平気ではない感じで」
ここが他の席と離れた場所で無ければ、もっと恥ずかしかっただろう。
というかぶっちゃけ、もう三回目だったから。
「ふふ。そうですか。では、私と一緒ですね。冷静に考えると、照れます」
「••••いい雰囲気の中••••コーヒーをお持ちしました••••すぐ失礼します••••出来る事ならば••••コーヒーを飲みながら終幕までお待ち下さい••••では••••」
ウェイトレスの人はコソコソと、机に二つのコーヒーを置いていく。
エゼルさんはビクッとした。
そのまま即座にウェイトレスの人は去っていく。
一方舞台では、『最悪』の魔王役の人が出て来ていた。
終わりが近づいている。
「はい。他人に脳が溶けたモードを見られた後のコーヒーは美味しいですね。またゴクゴク飲んじゃいますね」
エゼルさんはコーヒーを一気にがぶ飲みする。
俺も、ちまちまと飲んだ。
舞台では、全ての役者の人が出て来ていた。
彼らは頭を下げる。
この後、幕は閉じていく。
「はい。これで終わりですね。コーヒーも飲み終わりましたし、帰りましょうか」
「うん」
「追加で、ちょっと腹立ったのでチップの量を減らしていきましょうかね。定価の2/3でどうでしょう」
「ま、まあ、そんな事もあるというか。定価を置いていかないと」
——
夜のビル街を、車で走っていく。
ネオンがキラキラと光っていた。
そこで、俺のホテルが見えた。
「今日はありがとうございます。大空くんのお陰で、非常に楽しく過ごせました」
「こちらこそ。エゼルさんが居ないと出来ないような事も出来て。付き合ってくれて、本当にありがとう」
二人でドライブとか、ご飯を食べながら劇を見たりとか。
趣味にも繋がりそうな事も、幾つか出来たし。
色々思い出せたし。
これで友達になれていたら良いな。
直接聞かなくとも。傾向は分かったし。
行けないかな。
「それは本当に嬉しいですね。では、どちらも満足という事で。お試しではなく、いつかまた、遊びましょうね」
ホテルのエントランス前に、車が止まる。
俺は手を振りながら、車から降りようとした。
「少し待って頂けませんか?別れ際にハグをしたくて。平気ですかね」
「、分かった。大丈夫」
ハグなら全然問題はない。
前にやった事もあるし。
セーブだろう。
「••••誰も来てませんよね、、来てませんね、」
エゼルさんは辺りを見回す。
俺も見回す。
人も全く居ないし、車も来ていなかった。
「平気ですね••••では、失礼します」
エゼルさんが手を広げる。
俺も手を広げた。
これで、抱き合う。
「••••大空くんの寂しさは、今回ので埋まりましたか?••••家族と離れると寂しいですよね••••特に死別ともなると」
エゼルさんに囁かれる。
少し温かった。
どこか落ち着く。
「•••••」
ただの感性直しのつもりだったのに。
こんな風になってしまった。
やはり、変になっていると思う。
あんまり関係のない他人に、こんな気持ちは持った事は、無かった。
引っ張られる感じが姉ちゃんに似てるとは言えだ。
摩訶不思議だ。
「••••友達同士でぎゅーっとすると、悲しさも薄まりますよね、、」
「うん•••」
もしや、エゼルさんも従姉妹と離れて、結構寂しかったのだろうか。
その可能性は高い。
暫くし、後ろからタクシーが来た。
これを見、お互い離れる。
俺は纏めてある荷物を持ち、車から降りた。
「では。約束通り。明後日の午後六時、帝城近辺のカフェに来て下さいね。少し手間はかかりますが、お友達を紹介しますね」
「ありがとう。楽しみにしてる」
「••••これもコネ作りですが。ホワイトさんも連れて来て頂ければ、より幸いです。では。また遊びましょう」
「、?こちらこそ。また」
ドアが一人でに閉じ、車が発進する。
見えなくなるまで、手を振った。




