第六十二話 キメラいない
「••••それができるなら、最初からやって」
背中から降りたホワイトは、女性を見る。
一方、ユアは何故か俺をガン見して来ていた。
「••••いえ、、私も目的が••••••はい。すいません。申し訳ありませんでした••••大空さんも」
「自分は全然良いです。誰も怪我がありませんし。自分もある目的の為に、あなた方に近づいたのもありますから」
これを聞き、ユアが目を見開く。
びっくりした様子である。
思ったより食い付きが良かった。
雑に自分も的な事を、とりあえず言っておきたかっただけなのに。
「え!?大空!?一体何の目的で!!もしかして気付いて!?」
「ま、まあ、新天地に来たので、友達が欲しくて。その為に話しかけたのもあります」
口に出した理由も嘘ではないが。
俺は、何か真っ先に欲しくなってしまった。
準備も出来てないのに。
「••••••目的があるとは思っていましたが••••ふわっふわな内容でしたね••••」
「と、、友達か、、友達••••」
「••••ふわふわ」
「そ、それより、キメラの亡骸を早く回収しませんか?他の魔獣がやってくる可能性もあって」
これに、微妙な反応が返ってくる。
全体的にこんな感じだ。
話を逸らそう。
「あ、後、レジ袋に入らない亡骸は貰います。くっつけてバリアの上に乗せますから」
パンダと鳥の亡骸をくっつけ、鳥型のパンダにする。
それを横向きに張った「結界」の上に乗せた。
これらを繰り返せば、かなりの量の物を圧縮し持てるようになるはずだ。
「••••私が小さくします。持って頂く必要ありません」
大空さんが鳥型のパンダに触る。
パンダから血が吹き出した。
それは手のひらサイズまで、小さくなる。
「••••この力について黙っていて、本当に申し訳ありませんでした••••」
「••••べつにいい」
少女はパンダをレジ袋に入れながら、こうホワイトに言う。
仲が宜しくなさそうだ。
「••••話変わるが、、大空は武人流を使えたのか?」
ユアが、また話しかけてくる。
先ほどより目つきの悪い、変な顔をしていた。
ぶっちゃけ、さっき見たから使えただけだが。
多分武人流は人型の生物を即死させられると思って、鳥に奥義を当てた。
そのまま言うと角が立ちそうなので、良い感じに誤魔化そう。
「自分は「透骨」だけしか使えないというか。常人流や狂人流なら色々使えるんですけど」
「••••••もしかして、僕が使っているのを見たから?だから奥義が使えた?」
「ま、まあ、その辺もあると言えばありますけど。でも全然不完全で。ユアに比べて、パッと使えないというか。まだまだというか」
「••••僕は習得に十年かかった」
「そ、そうですか••••」
少し無理があった。
これなら使うべきじゃなかった気が。
まあでも、即死させられてラッキーだったのは確かだ。
どうしよう。
——
「約束通り、報酬は山分けですね。まず私がレジ袋を渡して来ます」
冒険者ギルドに帰って来た。
地下通路を通り、その内部にもある転移システムも使ってだ。
ついてすぐ、少女は受付にレジ袋を提出しに行く。
「わはは!エゼル様から金を受け取るのだ!!わはは!皆受け取れい!!」
一方、ユアは先程から意味不明なテンションになっていた。
更に俺が視界に入る度、目を逸らすようになってしまった。
「••••そのような事情と。了解しました。少々待って下さい」
そして、少女からレジ袋を受け取った討伐完了受付の人は、何処かに走り去っていく。
こっちはこっちで、何か起きそうだ。
暫くした後、ギルドマスターと書かれた名札を付けた大男の人が二階から降りてくる。
大体37歳ぐらいだった。
「君達も来なさい」
その人は俺達に手招きをする。
俺達と少女は男性の近辺に行く。
「キメラは危険で凶暴な害獣だ。死者も出ている。襲われたから殺すしかないのはこちらも承知している」
ギルドマスターの人は、ゆっくりとこう言う。
まるで言い聞かせるかのよう。
「だが。これは違法の駆除となる。講座通り、キメラ分の報酬は都からの罰金の支払いに回す。結果として、報酬は直角蛇の討伐のみとなる」
やっぱりか。
講座で聞いた通り。
ワンチャン相手から襲ってきたのならセーフだったりはしなかった。
というか、今はユアの事だ。
何とか元に戻ってもらえないだろうか。
この後、遊びに誘う計画だった。
「これがその金だ。合計二万三千百円になる。悪いが、次からは逃げる事を優先するように。では」
恐らく原因は習得十年云々のせいである。
理由は不明だが。
しかし、どうすれば。
普段使っていた謙虚戦法は、今回役に立たない。
今まではこれで何か良い感じに纏まっていたのに。
「••••全然ダメでしたね。怒られてしまいました」
ならば、持ち上げる戦法はどうだろうか。
対イリカでは成功した。
いや一応先ほどしたが。
だが、駄目であった。
「••••所で、ですが。気分転換がてら打ち上げに行きませんか?私達は今日は暇ですから」
「••••どっちでもいい。ちはるは?」
「是非。何処に行きたいとかありますか?」
分からない。
この際ノリで、直接聞くチャンスは無いだろうか。
「私はここで食べたいですかね。冒険者ギルドの食堂はかなり美味しいと噂で耳にしまして。ユアは行きたい所はありますか?」
「一切!!なっいでーす!!」
—-
冒険者ギルド四階の、食堂に来た。
既にそれぞれ食券を買い、テーブルで番号が呼ばれるのを待っている。
「••••安い物ですが、悪くありませんね。この場の雰囲気とも良くあっています」
少女はグラスに入っているワインを一気に飲む。
飲み物だけは直ぐに出て来た。
たが、少し気になる事がある。
少女と、そして実はユアも、ワインを頼んでいた。
あの年齢で大丈夫なのだろうか。
元の世界だと完全アウトだ。
まあ、この世界だと大丈夫なのかな。
「••••にがい。ちはる。のこりいる?」
更にホワイトも何故かノンアルコールのワインを頼んでいた。
俺も残りを飲んでみる。
渋めのぶどうの香りを感じた。
割と苦かった。
「••••お二人とも、本日はありがとうございます。冒険者ギルドについて非常に良く知ることが出来ました」
「全然。こちらこそ。キメラ達に勝てたのもあなた方がいたで」
「••••はい。ユア、貴方も」
「、ありがとう、、色々、うううう」
陰で大量のワインをガブガブ飲んでいたユアは、泣いている。
顔は真っ赤で、何か涙を流していた。
そこに、少女がハンカチを差し出す。
「ううう、僕は下っ端だぁ。ゴミ、、」
「••••成長する余地はありますよ。ハンカチで涙を拭きなさい。と言いますか、本当に騒がしいですね。ここは動物園ですか?」
少女は急に青筋を浮かべ、そう言う。
何か非常にイラついてる様子だ。
まあ、確かにここはとても煩い。
周囲には、酒に酔って暴れている人達が結構いる。
まだ18時台なのに。
「時代はギターじゃないだと!?ボディビルだと!?来た!俺の時代!!クエストで使うこの筋肉を見ろ!筋肉バトルだぁ!!」
「情報もない!わたしに良いこともない!仲間から関係も進まない!ははは!世界!!滅ぼしてやる!まずはここからだぁぁぁ!異次元スライディング!!」
「ふふふふ。投資しないかい。最近流行してるんだ。近年のデータではね。この軍需企業の株は常に上がり続けるんだ。まず五十万、預けよう。必ず儲かる」
「•••••••今の帝都首相は頼りない••••全ての市は皇帝に支配されるべきだ••••アルデヒトも愚民どもにもる選挙制をやめ、皇帝が前決定権を委ねるべきだ」
「おい!!選挙制に反対するのか!?この低脳ゴミカスチンチンバカ貧乏マヌケあほデベソ魔人ゴミカス野郎!!全身鎧のせいで現実も見えねぇのかぁ!?死ねぇ!ごわ」
「これが勇者資格持ち!ギルド職員の筋肉だ!!筋肉弱者どもはひふれせい!!!」
「お!偶然!おい!テメェ!あいつの事気になんだろ!?勇気出して行っちゃえよ!私は、あなたの事が!大好き!ってね!いた!蹴んな!この!」
その上、殴り合いや蹴り合いも起きていた。
これもあり、女性の発言とかも結構聞きづらい。
凄い治安だった。
「ロビーが飲み物持ち込み禁止の理由も分かると言いますか。酔っている人が多い感じですね」
ユアみたいに酒をがぶ飲みして、潰れている人も多い。
故に、今はチャンスでもある。
「ユアって本当に武人流の事を誇りに思っているのか。それとも別の理由があったのか。不機嫌になった理由は一体」
この隙に、ヒソヒソと耳元で直接聞く。
もう正攻法だ。
そこを知って、元に戻る方法を編み出したい。
「••••武人流はそこまで、、うう、自分が強ければ良い、、」
ユアは突っ伏しながら、泣く。
その机の下にはハンカチも敷いていた。
「それより、、あんな、、やさしい、、大空に、、嫉妬する僕自身が、、情けない、、自分で鍛え直せばいいだけ、、、」
「••••••やさしい?••••やさしい••••」
「••••努力を続ける限り、治せると思いますよ。はい。またハンカチです」
ホワイトはユアの発言を聞き、露骨に俺の方を見てくる。
一方、女性は虚空からハンカチを出し、ユアに渡す。
ユアはそれを顔の下にまた置く。
だが、良かった。
嫌われた訳では無かったっぽい。
「••••貴方にも質問を良いですか。大空さん」
追加で、少女は聞いてくる。
更にワインも飲んでいた。
「••••大空さんの出身地は勇者達と一緒、という事で合っているでしょうか。この世界で生まれた訳ではないと」
「自分は一応そうです。けれど、何で分かったんですか?」
四天王の人にも何故か一瞬でバレたし。
割と、異人族か否かは分かり易いのだろうか。
気になる。
「••••そうですね••••スペックの割にやっている事が謎な点ですかね••••いえ、貴方と同じ能力を聞いた事が無いからかも知れません」
「あ、謎でしたか••••」
謎呼ばわりされてしまった。
この世界から見たら、俺の行動は謎だったか。
いやよくよく考えたら、元の世界でも今の俺がしている事は謎な気がする。
良い気分でいる為に色々やっているのに、それより優先してホワイトの過去探しに着いて回っているし。
「••••••なぞじゃない」
「••••はい。謎という程では無いですから。気にしないで下さい。素晴らしいですね。家族?との旅だなんて。楽しそうです」
「••••ありがとうございます。所でですが、あなたは能力に対してかなり造詣が深そうじゃないで。どこで知れるとか聞いても大丈夫ですか?」
とりあえず話を変えがてら、聞いてみる。
ニュースや新聞では、誰がどの能力なのか等の話は全然されないし。
本でも精々名前ぐらいしか分からない。
「はい。私達の能力は、血筋によって覚醒出来るかどうか決まりますから。強力な能力程、先祖が既に暴れていまして。その為、ある程度能力については常識になっています。他から見たら分かりづらいでしょう」
ここら辺は常識だったか。
来て数ヶ月程度では、あんまりまだ分かれない。
最初から能力が知れていれば、色々楽になると思ったが。
残念。
このタイミングで、料理受け取り口からある番号が呼ばれる。
「ユアの番号が呼ばれましたね。起きなさい」
「はい!起きます!!」
「起きたついでに。自分と暇があったら遊べますか?駄目なら大丈夫です」
「はい!全く問題ないです!」




