第六十話 キメラ
更に一日経った。
今日は少年と推定聖女の人と一緒に、クエスト?を受ける日だ。
「来ましたね。まだ集合時間の十五分前ですが、少し開始を早めましょうか」
「ふふふ。今日はぐっすり寝れたからな。汚名返上をしてやるぞ!僕に討伐は任せておけ!」
冒険者ギルドの前に、二人で着いた。
そこの入り口の近くには、サングラスをした少年と女性がもう立っていた。
「そうですね。今日は宜しくお願いします」
「••••よろしく」
こう言い、俺のホワイトは頭を下げる。
すぐ、四人で冒険者ギルドに入り、クエスト掲示板を見た。
「受けるクエストですけど、これとかどうですか?簡単そうで、試してみるには丁度いいというか」
俺は【伸縮鼠の群れ。捕獲依頼。合計D以上】と書かれている紙を指差す。
それには、民家に出没する伸縮鼠を殺してくれ、と書かれてあった。
簡単そうで近そうで、良い感じだと思う。
「ふふふ。悪くない。見せてやるぞ!パワー」
「いえ、こちらの【直角蛇。討伐依頼。合計D以上】にしませんか?私達は討伐系をしたいなと思いまして」
詳細に目を通す。
帝都外の森へ行き、そこに住んでいる直角蛇を倒せとの事だった。
森へは転移システムと専用の地下通路を使って行くらしい。
「ぼ、僕もそっちの方がいいぞ!直角蛇をボコボコにしたい思った所だった!お前達はどうだ!?」
「自分は大丈夫です。直角蛇で」
ホワイトも頷く。
これで、決まりか。
「では、私が受付に行ってきます。冒険者カードを預かっても宜しいですか?」
全員で冒険者カードを少女に渡す。
少女はそれらのカードを持ち、討伐受付をしている男性に話しかける。
すぐに帰って来た。
「はい。問題ありません。すぐに転移システムも使えるそうです」
「すいません。ありがとうございます。それと行く前に生態調査の本を読みたいというか。少し待ってもらっても良いですかね」
「素晴らしい心構えだな!私も見よう!」
「はい。もちろん問題ありません。そして、最後にですが。これから行く郊外の森には近年キメラが多発しているそうで。注意するべきとの事です」
—-
「直角蛇も僕に任せるが良い。ふふふ」
森まで繋がる、地下通路を歩いて行く。
ここは冒険者ギルドの所有する場所っぽい。
そこで、ユアという名前らしい少年は、何か胸を張っていた。
割と心強い。
とりあえずその前に、友達になれないかチャレンジしてみよう。
まずは仕事の話から繋げていければ良いな。
「話したくないのならば大丈夫ですが、各々が出来る事を共有しませんか?もしキメラに襲われた時の為に必要だと思うので」
「ふふふ。必要ない。襲われても僕が全て片付けよう!美しい子供も安心していろ!」
「いいえ。必要はあります。大空さん方が宜しければ、やりましょう」
「はい、必要ありました!」
一瞬失敗したかと思ったが。
少女の加勢もあって行けた。
第一段階は成功だ。
「••••わたしは光魔法と何でもとめる能力」
「おお!強いな!僕は自在に変形する武器を出せる!武人流と合わせて使うと本当に便利!」
「私は••••そうですね。触れた物全てを爆散させる魔法ですかね。その魔法が使えます」
推定聖女の人が使う魔法が、意外に物騒だった。
名前に聖とあるのに。
まあいっか。
「自分は他人の魔力を真似て、能力を使えるようになれます。例えば何か同士を合体させたり、消えたりとか。後ついでに色んな武術と魔法が使えます」
色々省略してこう言う。
説明すると時間がかかるので。
すると、少年は引いた顔になった。
少女も目を見開いている。
「••••うわ。そんな能力あるんだ、、初めて聞いた、、」
「か、かなり強い能力だとは自分でも思います。ですが、魔法をどう使うとかまでは真似られなくて。自在になる剣を出せる魔法を使うあなたも凄いなと」
「はっはー!そうか!ふふふ!自在だぞ!頑張ったからな!教えてあげようか!?はっはー!」
何か話逸らしがてら褒めたら、一瞬でこうなった。
良かった。
というか、「模倣」ってこんな反応が来るレベルの能力だったのか。
この先、人に伝えるのは割と辞めておこう。
「••••話の途中、申し訳ありません。つまり貴方は『破壊』の能力や雷魔法が使える、という事ですか?」
「はい。一応使えます」
「••••••凄まじい能力ですね••••」
「お前も本当にやるな!『破壊』を使えるとは!『破壊』のラファエルと言えば世にも恐ろしい蠱毒の儀で!力に目覚めたと聞く!一族の力を一人に集約したと!その力を使えるとは!やるなー!!」
初めて聞く情報があった。
あの四天王の人は蠱毒の儀式をしていたらしい。
怖いね。
もしや、この世界は全体的に治安が良くないのか?
「そしたらもしや!かの有名なガブリエルの能力も使えるのか!?見てみたい!僕!」
「••••待って下さい。ユア。貴方は彼を見た覚えはないのですか。あの事も」
「は、はい!無いです!」
「•••••••相当騒ぎになったはずなのですが••••••」
女性は自らの眉間を揉みながら、そう呟く。
ユアは、急いで頭を下げる。
「も、申し訳ありません!一から学び直します!」
「••••これからはその点も忘れぬように。大空さん達。見苦しい所をお見せしてしまい申し訳ありませんでした」
「全然。俺は全然大丈夫ですよ」
「••••いい」
あの事か。
もしかして、カルミナ市云々の事かな。
元からこの世界にいる少女が俺を見る機会なんて、それこそ全国展開している新聞しか無いだろうし。
やっぱり効果はあったのかな。
だったら、いえい。
「••••あの事ってなんだ?」
一方、少年は小さく呟いた。
—-
そのまま地下通路を歩き、森に着いた。
この中でも岩場の多い丘に来ている。
直角蛇は基本岩場の多い森で、獲物を待ち伏せしているらしい。
だから四人で辺りをウロウロとしていた。
「これか。『壊笏』」
突如地中から、蛇が高速で飛び出てくる。
俺に噛み付こうとしてきた。
それを避け、『壊笏』で蛇の頭を消し飛ばす。
これで後は、蛇の亡骸を地面から引っ張り出すだけだ。
「さすが!やるな!だが!どうだ?引っ張り出せそう?」
「大丈夫。『領域』で引っ張り出せるかなって」
直角蛇は普段から地面に埋まっており、地上に熱源が来た時のみ、頭だけで噛み付いてくる。
こうして毒を持つ自らの牙で、獲物を仕留めるのだ。
その毒は魔力を使わないと大人でもすぐ死ぬものらしく、割と危ないっぽい。
「蛇が勝手に上がって来た!これも便利!その能力!」
「••••では、失礼します」
頭の無い蛇がモゾモゾと地面から飛び出て来た。
女性が素手でこれを掴み、持っているレジ袋に入れる。
「••••このようにやるのですね。素人では、多少危険でしょうか••••••」
「••••そう」
女性は、亡骸をレジ袋に入れる係だった。
理由は不明だが、何かこれをやりたがったのだ。
「あの人とはどんな関係な感じ?上司とか?」
ついでに、ユアに聞いてみる。
地下通路を歩いている途中で、結構話せたし。
これで、少しでも仲良くなれたら良いな。
後、一応この辺は知っていた方がよさそう。
「エゼルワイス様か••••••僕を今の立場に任命したのもエデルワイス様で。全く逆らえない上司だ。怖いぞ」
「••••またですか。貴方は偽名を使う脳が無いのですか?予め決めましたよね」
「も、申し訳ありません!••••焦るとこんがらがって••••」
「自分も申し訳ないです。聞かない方が良い事を聞いてしまって」
結構小さい声で話していたのに、聞かれていた。
想定よりかなり耳がいい。
タイミングを間違えた。
「••••貴方が謝らなくとも••••何か来ましたね」
急に少女は南を向く。
ホワイトも南を向いていた。
「••••••キメラ」
南からは、直角蛇がかなりのスピードで迫って来ていた。
その直角蛇はやけに太い上、目の部分が人間の物だった。
追加で体内で二つの魔力を動かしている。
この特徴は、キメラだ。
「来た!遂に僕の出番!喰らえキメラめ!「神の霊剣」!」
ユアは叫び、その場で手を振りかぶる。
すると、突如ユアの手元に青白い剣が出現し、その剣は伸び、蛇に直撃した。