第五十七話 ナンパ2
「ついた」
ホテルの部屋に着いてすぐ、最寄りの本屋へやって来た。
今回の部屋はベット二つとシャワールームと一つのテレビと数個のランプぐらいしか無かったので。
だからこのままだと、ホワイトがかなり暇になってしまうから。
「あれ?これ、前にドラマでやってなかったっけ。【『最悪』の魔王••••アルデヒトの人々はどう生き抜いたか••••】って奴」
「やってた。みてみる」
本屋の入口近くに大量に積み上がっていた【『最悪』の魔王••••アルデヒトの人々はどう生き抜いたか••••】をホワイトへ渡す。
ホワイトはパラパラとそれを捲った。
「いい。ちはるもすきなの買ってて」
「?。まずホワイトのを買うの手伝うよ。そっちの方が早いし」
「••••いい。わたしの趣味。あわせなくていい」
また、言われてしまった。
普段は喜んでくれるのに。
姉ちゃんも両親も、偶にこういう反応をしていた。
だが、理由が今一分からない。
何でだ。
「••••分かった。それなら気を付けて。この辺は結構治安悪いみたいだし」
「••••わかった••••わたしはずっとこの辺にいる••••」
ホワイトとそう言い、別れる。
かなりホワイトも強い方だし、多分大丈夫なはず。
俺は早足で、地理関係の本が置かれている棚へ向かう。
一応、丁度良くはあった。
帝都の地形を良く知りたいとは考えていたのだ。
「お、おかしい。ここにある訳無い••••」
棚へ着く。
見覚えがある少年が、傍に荷物を置き帝都の地図を立ち読みしていた。
とりあえず、少年の背後から他の地図を探す。
何かこれはチャンスな気もした。
「絶対違う。見て来たけど絶対違う••••他にあるはず••••」
五分ぐらい経った。
少年は冷や汗をダラダラと流しながら、未だ地図を見続けている。
他のページを開いては、すぐ元のページに戻る、を繰り返す。
そして、俺も一応別の地図が見つけられた。
だが、それも大きい荷物のせいで取りづらい。
ここで、俺は一石二鳥作戦を思い付いた。
「あの、すいません。何かお探しですか?」
話しかけて、困り事を解決してあげる作戦。
これをすれば荷物もどかして貰いやすいし、迷惑をかけずに友達も出来るかもしれない。
黒田から教えて貰った奴の応用だ。
「うわ!••••うわ!!••••ご、ごほん。また会ったな。何か用か」
「何か困っているようだったので。少しでも手伝えればなと」
「祝勝な心構えだ。ありがたい。だが。私は問題ない。去れい!」
失敗した。
フレジアよりは性別的に難易度が低いと思ったのに。
残念。
「••••あ、え!••••嘘だ。手伝え。分からん」
「?。分かりました。何処な辺が分からない感じですか?」
やっぱり成功した。
いえい。
突然意見を変えるなど、この人はかなり挙動不審だが。
「帝都にある冒険者ギルドの場所が分からんのだ。教えてくれ」
「••••?。ここだと思いますよ?」
少年が俺に地図を見せてくる。
しかし、地図上にら大きな文字で、冒険者ギルド、と書かれていた。
都市の中心からは少し外れているが、地図をパッと見れば直ぐ分かる。
「ここには無い、はずなのだ。直接見たが、行く為には必ず路地裏を通る必要があるからな。そんな所に公共の施設がある訳ないだろう」
「つまり地図が間違っているかも知れないと」
出版されている本の地図でそんな事があるのだろうか。
まあ、ここは日本じゃ無いし、あり得るかな。
「それなら他の冒険者ギルドを、、あれ。ない」
「だろう!?無いんだ!だから迷って!、え!!?はい!行きます!路地裏の冒険者ギルドに行きます!」
急に少年は肩をビクっとさせ、叫び出す。
顔は青ざめ、冷や汗も更にダラダラと溢れている。
大丈夫かこの人。
「き、貴様の親切心に感謝するぞ!我がヤフザ家から貴様宛にお金でも送ろうって!痛!ごふ、ごふふ」
少年は走り出そうとした拍子に、足を本棚に思いっきりぶつけた。
その痛みで飛び上がった少年は、かなりの勢いで頭から後ろの本棚に突っ込む。
これで、棚から落ちた本が少年に積み重なる。
本棚に頭を突っ込ませ、全身を本で攻撃された少年の完成だ。
「大丈夫ですか!?」
「こ、今回は魔力を使っていたからな、、問題無い、、それとその••••僕の、介護をしてくれないか、、どうしても冒険者ギルドに行けなくて••••」
—-
「そろそろ、地図の冒険者ギルドかな。ホワイトは付き合ってくれてありがとう」
「••••かいおわってたし、いい」
「こちらもありがたい!!この世は一人より二人!貴様らに感謝だ!!」
「••••そう」
ホワイトと少年と共に、地図に書かれていた帝都の冒険者ギルドへ向かう。
地図は先程の本屋で買えた。
OKと言ってくれたホワイトが何か嫌そうなのは気になるが、もう着きそうである。
次の角を曲がり、真っ直ぐ行くだけだ。
本屋からは大体徒歩15分ぐらいだった。
「?。ここを曲がるのか」
次の角とは、路地裏だった。
店と店の間に、その道はある。
そこには誰かが暮らしているであろう段ボールと毛布セットが幾つも置かれていた。
というかその内の一つには、一人が寝転がっている。
もう一度、買った地図を見直す。
ここっぽかった。
「だろ!?ここじゃないんだ!!はい!行きます!ここの路地裏を行きます!行こう!」
急に少年は段ボールや毛布を踏みつけ、ズカズカと路地裏を走り出す。
俺達もそれに着いて行く。
しばらく進むと、少し大きい広場に出た。
広場の正面にある建物には、冒険者ギルド帝都支部、と書かれた看板が立てかけてある。
「あれですかね?看板もありますし」
「••••あった」
「ちゃんと、、あった、、だと、、」
少年は呆然と冒険者ギルドを見る。
このタイミングで、少年が持っている鞄が勝手に開く。
そこからが赤い液体が溢れ出す。
「やっと着きましたか••••」
液体は人の形を成していく。
ついでに液体は鞄に入っていた白い服も身に纏い出す。
液体は銀髪の女性となった。
電車で見た人である。
「••••貴方は人を頼る事を覚えましょう。ユア。そして大空千晴さん方。ご迷惑をおかけしました。貴方方に手伝いを願うよう、私がユアに伝えまして」
「まあ、大丈夫ですよ。自分がしたのは、地図を見たぐらいですし。帝都の冒険者ギルドも少し気になってましたから」
「••••••そんなこともある」
何だこいつ的な目をしながら、ホワイトは言う。
登場の仕方が割とグロかった。
それと同時に、少年は頭を下げる。
「僕からも感謝する。我が家から褒賞、いる?」
「要らないですよ。俺は。自分達だけでここに来たら、襲われていた可能性もありますから。ホワイトはいる?」
ここの冒険者ギルドはいつか来たいとは思っていたし。
二人で来るのと、三人で来るのは大違いだし。
一人は見た目が八歳だし。
襲われたら、結構面倒臭い。
「••••••わたしもいい」
「ごめん、、貴様ら、、」
一方、女性は鞄から二つのサングラスを取り出していた。
その一方のサングラスは自らが掛け、もう片方は少年に手渡した。
「灯台下暗しです。貴方も早く付けなさい。行きましょう。大空さん方も本当にありがとうございました」
「は!急いで!」
「急がなくても結構ですから。丁寧に。お願いします」
こうしてサングラスを掛けた女性と少年は、冒険者ギルドの入り口に向けて歩き始める。
扉を開けた。
その入り口に、ギターを持った男性が立ち塞がる。
大体23歳ぐらいだろうか。
「ジャジャジャーン、ジャジャン!ジャジャジャーン!ジャジャン!初めて見る連中!俺とのミュージックバトルを楽しまないか!?見せちゃおうぜ!」
「あの。そこを通りたいのですが。どいて頂いても?」
その男性はギターの弦をジャンジャンさせる。
余り上手くはなかった。
「ふっふー!見せてやるぜ超絶テク!繊細さと狂気を併せ持つ!凄いぞミラクル手の動き!最近始めたギターの天才!あり得たスターの可能性!あるぞお前ら可能性!」
「あ、はい。そうですか。では、失礼します」
「ぐふ」
女性は手を伸ばす。
すると、何故か突如男性は倒れ込む。
その男性の足を手で掴み、女性は冒険者ギルドに入っていく。
「俺も冒険者ギルドに入って良い?今日は特に予定無いし。チェックしておきたいのもあるというか」
「••••ちはるの好きでいい」
ついでに、俺達も入りたい。
ここでお金を稼げそうなのを見つけたかった。
ぶっちゃけ、一石二鳥計画は用事がありそうな少年達を前に頓挫したけど。
まあ、ある程度縁は作れたし、いっかって感じだ。
今度、また話しかけてみよう。




