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第五話 俺の能力は?




 『魔法は、使うのにタメがいる』


 『そうなんだ。目安とかある?』


 『ない。つかって慣れるほど短くなる』


 ホワイトに先導してもらいながら、色々なことを教えてもらう。

 教えるのが楽しいのか、ホワイトはちょっとドヤ顔になっていた。


 『その魔法って俺にも使える感じ?使えるなら使いたくて』


 『むり。ちはるの魔力だと魔法はつかえない』


 残念。

 使えたら、結構便利そうなのに。


 そういえば、あいつは魔法がある世界とは言っていたが、俺も使えるとは言っていなかった。

 微妙に詐欺をされた気がする。

 

 『それだったら能力はどう?俺の魔力でも使えそう?』


 『••••••ちはるの魔力はどくとく。多分もってる』

 

 『そっか。教えてくれてありがとう』


 あって良かった。

 この辺は詐欺や嘘をつかれていないっぽい。

 森にいる間一度も使えた事がないので、その可能性はかなり頭にあった。

 

 

 そんな話をしながら、二人で森を進んでいく。

 こう進むにつれ、明らかに周囲の景色が変わる。


 まず、リンゴの木や雑草がかなり減った。

 最初は五歩歩けばリンゴの木があると言う状態だったが、今では二十歩も進まなければ無い。


 そして、様々な動物も目に入るようになった。

 例を挙げると、やけに小さい兎やとても羊毛が多いヤギなどだ。

 最初の場所では、襲撃してくるヒグマ以外動物は見なかった。


 『?。あれってもしかして、枯れ地?』


 『わたしにもそうみえる』


 十キロ先ぐらいの枯れ地が目視で認識出来た。


 この、目で色々捉えられるようになったのも、変化の一つだ。

 ちょっと前まで三キロ先は見えなかったし、最初は五百メール先の変化も見えなかった。


 『あっちには魔力が無いんでしょ?と言う事は、あそこが枯れているのは結界を貼っている奴の仕業かな?』


 『たぶん』


 その枯れ地以降には、リンゴの木も雑草も動物もほとんど無い。

 俺たちはそこに向かっていた。


 何か、ドラゴンワンチャン弱い説がどんどん消えてある気がする。

 森全体に結界を貼っている事しかり、森を枯れ地にしている事しかり。

 ぶっちゃけ、今考えても無駄だろうけど。


 『そう言えば、ホワイトって何処ら辺に住んでいたの?森とか?』


 そして、遂に聞いてみる。

 親御さんはいるのかとか、何故一人だったのかとか、ヤバそうなのは避けた。

 色々話したし、この程度なら大丈夫のはず。


 『••••••森•••••••だったはず••••』


 ホワイトはとても悩みながら、答える。


 大丈夫じゃなさそうだ。

 記憶障害系で、闇が深そうである。

 もう触れるのは辞めておこう。


 『話が変わるけど、魔法って使えると楽し、?何か、こっちに来てる?』


 『••••きてる。とり』


 何かが羽ばたく小さい音を、耳が捕えた。

 その何かは、俺たちの背後にいる。


 振り向く。

 そこには、迷彩色で一メートル以上のフクロウが飛んで来ていた。


 一応魔力を動かしておいて助かっている。

 このお陰でフクロウの飛ぶ音が捉えられた。


 武器として持っていた木の枝で、迎撃だ。

 

 「喰らえ!喰らえ、、無理か」


 迎撃は難しかった。

 迷彩色のせいで、注視すればするほどフクロウの存在が曖昧になる。

 音も殆ど無いため、どこにいるのか分かるのに分からない。

 

 『••••とめた。けど、すぐ動く。はなれよう』


 ホワイトもフクロウを見て、そう言う。


 ホワイトは認識したものを一つを完全に止めることが出来るっぽい。

 そうして止められている物は何をされても傷もつかないし、動かないとの事。


 『それなら、あっちの枯れ地に行かない?迷彩色の効果も薄まりそうだよ』


 『いいさくせん。わかった』


 二人で森を走り始める。

 走る速度は、ホワイトより俺の方が少し速かった。


 少し不謹慎だが、これは良かった気がする。

 身体能力までホワイトに負けていたら、完全に頼り切りになってしまっていた。

 それは宜しくないし。


 『何か落ちて来ているぜ!は!』


 そんな中、光る物体が落ちてくる。

 俺達に当たるコースだった。


 持っていた木の枝を、その何かに投げる。

 光る何かはそれと接触し、爆発した。


 『気持ちわる』


 ホワイトは上を見、そう言う。


 俺も見上げる。

 木の上部に、猿の集団が大量に張り付いていた。


 まるで虫の卵塊。

 結構気持ち悪い。


 直後、猿達の集団は光り始め、体を震わせる。

 それらから大量の光る毛が落ちてきた。


 『あれって毛だったのか。どんな毛』


 『ぜんぶとめた』

 

 大量の光る毛は、地上から十メートルの箇所で全て止まった。

 止まった毛の上からは、凄まじい爆撃音が聞こえる。

 未だ猿達は、爆発する毛を落とし続けているのだろう。


 『これ、魔力がこもっている。すこしたらうごく。またはれよう』

 

 突如、豪雨のように大量のリンゴが周囲一面に降ってくる。


 直に体で食らえば、不味そうな威力だ。

 猿達が揺れる事で、このリンゴらは落ちて来ているっぽい。

 

 『罠にハマったって感じか••••』


 『••••にげれない』

 

 周囲にはあたりが見えないほど、激しく降るリンゴ。

 頭上には、いつか落ちてくる毛達。

 上には常に降り続ける毛。


 ここは、この戦法で行こう。

 赤い爪ヒグマと戦う際、前はよくやっていた。


 『俺がジャンプしたら、毛に使っている能力を解除してくれない?何とかするから』


 『なにするの?』


 地面に転がっていた木の枝を拾い、魔力を流す。

 そして、木の枝を掲げる。


 『ちょっと体張って。それで毛がまた降ってきたら、すぐ止めて良いよ』


 『どうやって?』


 『あの程度の毛の爆発なら大丈夫だから。それを耐えている間に何とかしようかなと』


 『••••わかった』


 肉を切って骨を断つ戦法だ。

 魔力で割と治るので。

 ホワイトの許可を貰えたので、実行する。


 俺は一つの木に向けて、ジャンプをした。

 ここで、ホワイトは能力を解除してくれる。


 光る毛と掲げていた枝の先が接触し爆発が起こる。

 これは一部の毛をも巻き込み、連鎖的な爆発も発生させた。

 

 「痛、でも行ける!」


 木の枝のお陰で、直に爆発は喰らわずに済んでいる。

 爆風も俺の全力ジャンプを妨げる程ではない。

 

 これなら、大丈夫。

 そのまま、一番下の猿の塊に全身で突っ込む。

 猿達はその衝撃で木から落ちていく。


 その木に俺は掴まる。

 ちょっと猿っぽい感じでもあった。


 「急ごう。時間もない」


 また上から光る毛は降ってきていた。

 一方、下は既にホワイトの能力で毛が止められている。 


 これで時間制限が出来た。

 早くしなければ。


 「は!」


 木の幹を足場に、猿達のいる別の木へジャンプ。

 この最中にも、木の枝で爆風を起こす。

 そうしながら、猿の塊を蹴散らしていく。


 これを高速で繰り返した。

 けれど、やればやるほど木の枝は削れていく。

 

 「また痛!でも平気!」


 それは俺の左手を伸ばす事で代用だ。

 普通に痛いが、魔力のお陰で割と平気。



 これを繰り返すごとに、落ちてくるリンゴも毛も、徐々に減っていく。

 最後の塊を蹴散らした際には、リンゴも毛も殆ど落ちてきていなかった。

 代償として、特に左手はやばい事になったが。

 

 「大勝利!後は逃げるだけ!」


 この程度の傷なら、割とすぐ治る。

 毛がまた動き出す前に、早くホワイトと合流しよう。

 

 「やばい」


 最後、木から飛び降りた瞬間、音がした。

 何者かが俺に向けて、飛んできている。

 そして、それは先程聞いたばかりだ。


 だからどうしようもない。

 空中にいるから、回避行動も取れないし。

 このフクロウは俺の力では本当にどうしようもない。


 『ホワイト!お願い!フクロウが来ているから止めて!毛を避けてからで大丈夫だから!なるべく早く!』

 

 少しあれだが、ホワイトに頼もう。

 可能性はあるし、足掻く。


 そうしたらフクロウを止める代わりに、毛の層は動き出すだろう。

 だが、デカいフクロウと爆発だと、爆発の方がまだマシだ。

 爆発の方が生きられる。

 

 『お願い!おーい!止めて!』


 止まれ!

 フクロウ止まれ!

 止まれ!



 何かが、根本から変わった気がした。



 


 

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