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第四十話 ナンパ





 「キミ!何やってんの!!その誘い方で良い訳ないじゃん!いや、キミは失敗するだろうなーって思ってたけどさ!それでもやばいって!!」


 「だ、駄目だった••••」

 

 黒田に遠くに引っ張られ、こう言われる。


 今まで見た中で、成功したナンパがこれしか無かった。

 だから、やってみてしまった。


 「ま!でも!ぶっちゃけめっちゃ面白かった!!ボクの気分は上々!!次!行ってみよう!!自分から話しかけるのも大事だから!キミの失敗集も見てみたい!」


 黒田は、また笑顔になる。

 何か、俺で遊ばれているような気がした。


 「えー。また失敗したら迷惑だって」


 「そんな事ない!はず!キミなら若気の至りで許してくれるよ!きっと!こう言うのは失敗が一番人を成長させるから!!やってみよう!」


 「そうかな。そうかも」


 確かに、チャレンジしなければ何も始まらない。

 それに身体のいうとおり、この世界だとナンパはあんまり迷惑じゃないのかも。

 

 ならば、やってみよう。


 「私を無視して。何を話してるのかしら」


 後ろから、少女が話しかけてきた。

 先ほど話しかけた少女だ。

 急に来た。


 「うお、な、何ですか?先程は申し訳ありませんでした?」


 「あなたが言ってきたんじゃない。私と遊びたいと。もしかして、嘘をついたのかしら?」


 「え、は?あれで釣れるの!?大丈夫!??こいつ!!」


 「さ、流石に、失礼だって、黒田••••そ、それなら、俺も遊びたいなと。宜しくお願いします」


 






 「ふ、フレジアさんはこの街に住んで長いんですか?」


 「どうして、そんなによそよそしいのかしら。そっちからナンパしてきたじゃない」


 「わ、分かった。フレジアはこの街に住んで長いの?」


 オッドアイの少女は、フレジアと名乗った。

 そのフレジアと俺は、二人で動く歩道で移動している。


 黒田は何故かニヤニヤとしながら、こっそりつけてきている。

 二人でいるべきだと言い、さっき離れて行ったのに。

 何だこいつ。


 「来て、二週間立たないぐらいね。お母様に無理やり連れてこられたの」


 「そ、そっか。大変だね。けど、そうしたら結構同じというか。実は俺も来て一日なんだよね」


 「知能指数が低いわね。来て初日からナンパをするって。実にアホよ」


 チクチク言葉での攻撃を受ける。

 正論だったので、何も言い返せなかった。


 「で、あなたは、今はどこへ向かってるのかしら。ずっと進んでいるだけだけど」


 「?。フレジアが何処かに行きたいのかなと」


 フレジアが先に、この動く歩道に乗ったのだ。

 だから何かしたい事があるのかと思っていた。


 「私がこの辺の事知ってる訳ないわよね。私は来て二週間よ」


 そう言うフレジア。


 一方、俺は来て一日経っていなかった。

 更に、下調べもまだだ。



 だが、大丈夫。

 ここは比較的に元の世界と近いから、応用も効く。

 プラスで、遊びたいと言っていたフレジアの願望も考慮に入れれば、多分完璧。

 

 「分かった。そうしたら、近くのゲームセンター行こう」




—-




 「まずはクレーンゲームしない?ぬいぐるみとか取る感じの。何か欲しい物があったりする?」


 近くにあったゲームセンターに入り、そのコーナーを歩く。

 中身は丸々、元の世界のゲームセンターだった。


 ここを歩いていると、姉ちゃんと遊びに来てぬいぐるみを取ってもらった記憶が蘇る。

 懐かしい。


 「そうね。あなたは、あの完全の勇者人形を取ってみなさい。この都市じゃ人気らしいわよ。お母様が、欲しがるかも」


 フレジアはあるクレーンゲームの台を指差す。

 これには、一万円札に彫られている男性のフィギュアが置いてあった。


 「任せてくれ。フィギュアなら取る姿を見た事あるから」


 台に百円を入れ、レバーを動かす。

 それで、アームも動かした。


 この移動した時のアームの揺れを良く見れば、何となく開き方と強さは分かる。

 それプラス、前に見た姉ちゃんのクレーンゲームのテクニックを活かし。

 集中すれば。


 「••••取れた。はい。あげるね。完全の勇者フィギュア」


 アームで箱の縁を持ち、景品を落とす。

 運良く一発でもあった。

 やったね。

 

 「あなたはそこそこの上手さのようね。貰っておくわ。後、私も一発で取れるわよ。見てなさい」


 フレジアはポケットから百円を取り出す。

 それを台に入れる。




 五千円を使っても、フレジアは取れなかった。

 なので一旦離れ、違うゲームをしている。


 「••••••私の負けね••••」


 「俺の勝ち。やった」


 「もう一度やるわよ。次は私が勝つわ。見てなさい」

 

 フレジアは大きな画面の付いたゲーム機に、また二百円を入れる。

 直後、俺達は近くに置かれている玩具の銃を取った。


 「死になさい。全員」


 ゲーム機の画面に、犬歯が長過ぎる犬、増殖する羊、ダンスするパンダが、現れる。

 それを銃で打ちぬく。


 「もう終盤じゃない。のくせに、私が負けてるわ」


 「ボスがまだ残っているし。スコアも全然逆転が出来るラインだよ」


 「余裕ね。今回はボコボコにしてあげるわ」


 ボスが出現した。

 そのボスたる非常に大きい鯨は、猛スピードで迫ってくる。


 だが、弾の発射までの時間もそれが飛ぶ速度も、俺はもう分かっていた。

 更に、こう言うゲームも昔姉ちゃんとやったことある。


 ならば、負ける要素はない。

 やるなら勝ちたいし、全力でやろう。


 「??。何?何だ?」


 俺が鯨を狙って弾を乱射しようとした瞬間、視界が闇に染まる。

 前が全く見えなかった。


 ????。

 何だこれ。


 「そこは一回負けないと!なんで全力で勝ちに行ってんの!」


 耳元で、黒田がそう囁く。

 その間に、視界が元に戻った。


 ボスはまだこちらに向かってくる。

 フレジアはゲームに集中しており、黒田に気づいた様子はない。


 「やるなら勝ちたいなと思って。何か駄目だった?」


 「はぁ••••マイペースだね。相手もそうでしょ。一旦抑えて。仲良くするには最初の遠慮も必要だよ」


 finishという音が響く。

 黒田は、消えていた。


 「言い訳できないぐらいの勝ちね。圧倒的な勝利よ」


 「•••••••いやー。フレジアは本当に強いね。完敗かも。凄い」


 「そうね。私の方が強い」


 「じゃあ、一勝一敗だしさ。次はボコリで殺人ってゲームをしない?人が多めで人気そうだよ」


 「何言っているのかしら。もう一度やるわよ。私はもっと勝ちたいわ」


 フレジアは、また二百円を投下する。

 強制的に始まった。





 「さ、流石に。午前0時でそろそろ清掃時間だって。流石に出ないと」

 

 もう深夜0時になった。

 このゲームセンターは0時から1時までの一時間、清掃時間が入るらしい。

 フレジアに出ることを促す。


 「嫌よ。勝ち越すまで。私が勝ち越すまでやるわ」

 

 あれから俺達はずっと同じゲームをやっていた。

 とりあえず俺は常に、一回勝ち、次は負けると言う方針で。

 

 その為、フレジアは何回も俺に勝っているはずなのに。

 また断られてしまった。

 

 「さ、流石に、流石に、迷惑だって。フレジアが良ければ、またやるって」


 「本当かしら。嘘じゃないわよね?」


 「ほ、本当だから。良ければまたやるから。早く出よう」


 「あなたの勝ち逃げは許せないわ。私の方がセンスは上よ。次やる時は一回も負けないわ」


 フレジアが渋々ゲーム機から離れる。

 俺達はゲームセンターから出ていく。



•••••




 「きょ、今日は俺に付き合ってくれてありがとう。あの、良ければ、次も会いたいなーと」


 暗くなったゲームセンター前で、フレジアに言う。


 三時間ぐらいの付き合いだが、次も遊べる程度には仲良くなれたかな。

 黒田とはもっと関係が薄くても行けたし、さっき約束?もしたし、行けないだろうか。

 

 「何を言っているの。夜はまだ六時間以上あるわよ」


 「?。流石にお母さんも心配するよ。帰った方がいいんじゃない?」


 「私は現在一人暮らし中。つまり自由よ。まだ遊びましょう。あなたに負けを認めさせたいわ」


 「そ、そっか。じゃあ次は••••••」


 次の予定なんて考えていない。

 もう深夜だし、解散しようと思っていた。

 どうすれば。


 「おーい!大空千晴くん達!偶々みっけ!今度はボクも入れてくれない!?24時間やってる遊園地とか!良いとこ知ってるよ!」

 

 「あ。黒田」


 「なに?嫌よ」


 黒田が、突如現れる。

 と思ったら、フレジアに断られた。

 

 「え、入っちゃダメ?ついでにボクも遊びたいんだけど」

 

 「?。まだそんなに黒田の事は知らないよね?何か嫌な所でもあった?」


 「こいつ、私に関心ない目をしているわ。二人でいるべきと言っていたくせに、ずっと付いてきて不審よ。私はこいつと遊びたく無いわ」


 フレジアは俺に、そう言ってくる。

 これを聞き、黒田は目を見開いた。


 「••••••そうだね。その通り」


 「しっしっ。だったら早く帰りなさい」


 「••••そしたら、先にボクは帰ってるよ。大空千晴くんは頑張って」


 黒田は手を振り、去っていく。

 今度は後ろに居たりはしなかった。

 

 「•••••正論だけど••••言い方、悪くない?」


 「思ったことを言っただけよ。悪かったかしら」



 確かに悪くはない。

 黒田は本当に不審だったし。


 まあ、そんな事もあるか。

 相性が悪かったのだろう。

 本人の感情にまで、他者が口出すのもあれだ。


 「それなら、次はあそこに見える遊園地に行かない?二十四時間やっているらしいよ」


 「良いわ。行きましょう。何か勝負出来ないかしら。ボコボコにしたいわ」


 遠くに見える、大きい観覧車を指す。


 黒田の情報で助かった。

 遊ぶといえば遊園地だ。

 名前にも遊と入っているし。

 







 「おーー。顔に強風が吹きあれる~~」


 「•••••••」


 今は二人でジェットコースターに乗っている。

 ちょうど、上から落ちた。


 魔力で全員強化されている影響か、元の世界よりもジェットコースターの高低差が凄い。

 その上、安全バーがゆるゆるだった。

 いつか死人が出そうである。


 「凄い夜景だ。見れて良かった」


 「••••••」


 少しスピードが緩まり、このコースの一番高い所へコースターは向かう。


 その頂上で見える景色は、とても綺麗だった。

 観覧車やビル街、宿泊しているホテルが闇夜の中、美しく光る。

 

 直後、ジェットコースターはより深く落ちる。


 「おーー。風が吹き荒れる~~」


 「•••••••」

 

 



 「相当動きが激しかったね。安全バーもゆるゆるだったし」


 「••••••」


 ジェットコースター乗り場から出た。

 フレジアは何かフラフラとしている。

 

 「けど、フレジアは大丈夫?やばいならベンチで休もうぜ」


 「••••••平気よ••••あなたより••••すぐ近くの••••車を運転する奴に乗りましょう••••」


 「ゴーカート?良いけど、大丈夫?」


 「私なら••••余裕よ••••••あなたより••••」



 フレジアと、券売機でチケットを買う。

 こうして、従業員の人しかいないゴーカートの乗り場に着いた。

 近くの注意書きの看板には、カートに魔力を流すのは重罪です、と書かれている。


 「これも私が勝つわ。見てなさい」


 先に並んでいた俺がカートに乗る。

 すると、立ち直ったフレジアがこう言って来た。


 果たして、ゴーカートは勝負が出来るようなゲームなのだろうか。

 元の世界と同じで、これも最大速度も走る道も固定されているけど。


 「••••はい。スタート」


 俺はスタッフさんに言われた通り、ゴーカートで走り出す。

 少しの風を感じた。


 ゆっくりと、カーブを曲がる。

 そのまま、低いスピードで走った。


 また思い出す。

 幼少期、姉ちゃんとお手伝いさんとで遊園地に来たっけ。

 あの時は姉ちゃんが運転していた。

 懐かしい。


 

 と、思ったら突如後ろから何かに衝突される。

 ゴンという音が聞こえた。


 「邪魔ね。私が勝つからどきなさい」


 フレジアのカートが激突して来る。

 ドン、ドン、ドンと何度もぶつかってきた。

 

 「どく方法なんてないような?というか勝負が出来るアトラクションじゃないような」


 「ならいいわ。飛ぶ」

 

 「?」


 次の瞬間、フレジアのカートが空を飛ぶ。

 すぐに、目の前に降ってくる。


 「?????」


 「先行くわね。私の勝ちよ」


 フレジアのカートは猛スピードで道を進んでいく。


 明らかに速過ぎである。

 俺のカートの二倍近くのスピードが出ていた。


 その後ろから俺はノロノロと着いていく。




 「あのゴーカート。出禁になったわ。改造するのはダメだったのね」


 俺がゴールに着くと、フレジアはゴーカートの責任者っぽい人に怒られていた。

 聞くと、弁償の上出禁にされたらしい。


 「けれど、私の勝ちよ。言う事あるでしょう?」


 ?。


 ?。


 フレジアは俺に勝ちたかった。

 つまり、こう言う事だろうか。

 

 「負けた?フレジアは凄いね?速い」


 「そうね。当然よ。次も勝負出来る所に行きましょう」

 



 もう朝四時なった。

 最後に、二人で観覧車に乗っている。

 ここから見える夜景も、また綺麗だ。


 「フレジアは何を待っていた感じ?俺とここまで遊べるほど空いているのに」


 そこで、聞いてみる。

 一日?遊べたし、これで境遇を知れて友達になれたら良いな。


 「お母様に言われただけよ。誰でもいいから仲良くなりさいって。この仲良くは広義の意味ね。だから観察していたのよ」


 「そうなんだ。そうなんだ」


 そうなのか。

 誰でもいいから仲良くは、フレジアがやるのは危ない気もするが。

 だが、俺の酷いナンパに付いてきてくれた理由も分かった。


 「私も質問があるわ。あなたは質問に答えたのだから、しっかり答えなさい」

 

 「何?何でも聞いてて。というか、質問に答えなくても答えるよ」


 どんな事を質問してくるのだろうか。

 より良い遊びを知っているか、とかかな?


 「思った事を言うのは、結局悪い事なのかしら。あなたは何故か返答しなかったわ」


 フレジアは真顔でそう言う。

 そこだった。


 「た、多分、人によるんじゃない?多分。相手が傷つくなら悪い要素があるけど。傷つかない相手なら多分問題ないよ。多分。フレジアの言動を気にする人に言わなければ、多分大丈夫だと思うよ」


 かなり曖昧な返答になってしまった。

 ぶっちゃけ、これらを他人がどう感じるのかはあんまり分からないけど。

 常識的にそうだと思う。

 多分。


 「人を選べってことね。嫌だわ。面倒よ」


 「そ、そっか。そうしたら、他人と仲良くなりずらいんじゃない?多分」


 元の世界だと、物事を直球で言っていた副会長は陰口を叩かれている事が多かった。

 高確率で、この世界でもそうだとは思う。


 「そういうものなのね。分かったわ」


 







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