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第四話 仲良くなりたい



 

 白い女の子と、たきびを囲む。

 そこで俺は解体したヒグマの骨付き肉を焼いている。

 一方、女の子は近くに生えている雑草を取り、俺の腹に貼っていた。


 『••••••けがにはこれが効く』

 

 何を言っているのか、分かるようになって来た。

 今の言葉は、けが•••草•••効くと俺には聞こえている。


 単語だけでも理解する方針で、集中していた甲斐があった。

 し過ぎたせいで、完全にヒグマを見逃していたが。

 

 更に俺の腹も七割ぐらいもう治っている。

 魔力は本当に万能で、動かしていると肉体の回復速度も上がる。

 ヒグマも夜には余り来ない為、今は何も考えず魔力を使えた。


 『ありが、とう。助、かった••••』


 俺はカタコトでこう言う。

 多分、これで合っているはず。


 女の子は少し目を見開く。


 『しゃべれる知能、あったんだ』


 結構酷いことを言われた。

 まあ、ずっと頷いているだけだったから仕方ないか。


 直後、女の子はすぐ無表情に戻り、俺の目を見てくる。


 『•••••••ごめんなさい••••••わたしの力••••いってなかったから••••』


 そして、頭を下げた。

 ヒグマが一時停止してたのは、彼女の仕業だったっぽい。

 

 『全然、平気。こっち、こそ、ごめん。裸、見たり、見せて、不快、にして』


 俺も女の子に謝る。

 今も服は着てないが、心なしか雑草で肌を隠そうとしようとする意思はあった。


 これに対し、彼女は首を傾げる。


 『••••いきものは普通はだか』


 『た、確か、に。そう、だね』


 彼女は心底疑問そうだ。


 これって、もしかして、この世界の人は服着てないのだろうか。

 というか、文明が無かったりする?


 いや、偶々女の子がそういう環境で生きて来ただけな可能性もある。

 判断するには早い。


 それより、話を戻そう。

 まずは女の子の事を、色々知りたかった。

 

 『ヒグマを、止めたの、何?』

 

 とりあえず、ジャブ。


 彼女が俺に伝えてなかったらしき事を聞く。

 何故一人で倒れていたのか、親はどうしたのかなど、プライベートな事は仲良くなってからだ。

 

 『••••わたしの能力』


 『能力か、おー』


 相当激烈なカウンターが来た。


 俺にもあるはずなのに、全然使えない奴だ。

 どんな物なのか、詳細まで教えて欲しい。

 不自然では無い流れで、聞き出さなくては。


 『••••じぶん以外、なんでも止めれる』


 自ら言ってくれた。

 凄まじい能力だ。

 何でも出来そう。


 『••••けど、魔力うごかしてるのはすぐ動く』


 ちゃんと制限があった。

 しかし、その程度の制限ならば、これが出来るのでは無いのだろうか。

 

 『時間、も、止められる、感じ?』


 女の子は少し悩み始める。

 本当に時間が停められたら、何でもやれそうだ。

 

 『••••••じったいのないものは止められない••••はず』

 

 何か曖昧だった。

 もしかして、記憶喪失?


 やばそうだから、やめておこう。

 話を逸らさなくては。

 丁度今、肉が焼けた。


 『ヒグマ、の、肉、食べる?美味しい、よ』

 

 このヒグマの肉には、相当自信がある。

 余りにする事が無さ過ぎて、一時期肉の焼き加減にこだわっていたのだ。

 更に、俺考案の特製調味料もいつでも作れる。

 

 そんな骨付き肉を、女の子に差し出す。

 これで仲良くなれたら、良いな。

 

 『••••••だいじょうぶ••••わたしは食べなくても生きられる••••』


 なれなかった。

 彼女は地球の人間とは生態が全く違う。

 

 やけくそで、俺は肉を食べる。

 少しリンゴの風味がする脂身が、赤身の味を引き立てていた。

 味はちょっと薄いが、とても美味しい。


 『••••••おこってないの?』

 

 その途中で、女の子は俺の目を見、質問してきた。

 まるで、俺の表情を窺っているかのよう。

 

 『••••••わたしのかってな感じょうで••••••たすけてくれたのに無視してもりにはいって••••』


 「?」


 『••••••なのにまたしんぱいして••••••そのせいでけが負って••••』


 言っている意味が分からなかった。

 勝手な感情とは。心配とは。


 急いで肉を食べ切る。

 

 『けが、は、不注意、の、こっち、も、悪い、から、気、に、病まない、で。けど、どういう、事?勝手な、感情、って?』


 『••••••なんとなく••••ほかのと••••接したくなかった••••だけ••••』


 そうだったんだ。

 だから会ってすぐ、森に入って行ったのか。


 『••••あってすぐいわなかったっけ••••?』

 

 『わたし、は、最初、ちょっと、話している、事、が、分から、なくて、、聞いて、なかった、、ごめんなさい、、』


 素直に白状する。

 多分これが原因で、あんまり話が分かっていない。


 すると、女の子はまた目を見開く。

 

 『なら、なんで頷いてたの』


 『は、初めて、聞く、言語、で、話し、かけられたら、普通、とりあえず、頷かない?』 

 

 『バカ?』


 『ひ、否定できない、、』


 また酷いことを言われてしまった。


 だが、割と変な事していたのは確かだ。

 後、言語解読のため、時間稼ぎをしたかったのもある。


 『••••けど、すなおでいい••••』


 彼女はちょっぴり口角を上げる。

 雰囲気が緩くなった気がした。


 『•••••お前••••なまえ、ある?•••••』

 

 『大空 千晴、って、言う、親から、貰った、名前、、がある、、、広い、空に、明るさ、を、もたらす、良い名前、だね、』


 ここで準備していた自己紹介を話す。

 更に雰囲気を和らげたい。


 『•••••••••』


 だが、女の子は無言になった。


 何か地雷を踏んでしまったのだろうか。

 そんな要素ない気がするのに。


 『逆に、名前、を、聞いても、良い?わたし、も、お前、の、名前、を、知りたくて』

 

 『•••••わたしはホワイト•••••』


 名前は知れて良かった。

 しかし、何かホワイトが暗い顔をしている。

 どうすれば。

 変な事を言ったかな。

 

 『きぶん、悪いなら、熊の、モモ肉、に、特製スパイス、を、かけて、食べて、みない?本当に、美味しい、し、元気、でる、よ』


 『••••••ありがとう••••けど、じぶんでたべて••••おおぞらちはる』

 

 これしか思い付かなかったから、試してみたが。

 ミスった。

 やり直したい。

 

 『••••••おおぞらちはるは••••一人で、さびしかったり、する?』


 急にホワイトはそう言う。

 俺の目を恐る恐る見てきてもいた。


 『一人、は、まあ、嫌、かな。あと、呼び方、は、千晴、で、良いよ。そっち、が、個人名、だから』


 『••••••••ちはるは、わたしが一緒だったら、うれしい?』


 何か行けそう?

 突然距離を縮めて来た。

 理由は分からないけど、とりあえず本心で答える。


 『本当、に、嬉しい。誰か、が、一緒、に、いて、くれる、だけ、で、色々、安心、、』

 

 ホワイトはまた口角を上げる。

 少し笑顔になっていた。


 『••••わたしもそうおもう。よろしく、ちはる』



—-

 


 


 『この森は、結界でかこまれてる』


 夜が明け、朝になる。

 ホワイトは目を閉じながら、そう呟いた。


 彼女は今、動いている魔力を探っている。

 それでより遠くの魔力を探る為に、より集中しているらしい。

 一方、近くの魔力なら、なんとなく分かるとの事。

 さっき聞いたら教えてくれた。

 

 『つまり、この結界が俺を迷わせていたって事か』


 『そう。結界の魔力でちはるはまよってた。多分この結界内だと、行くばしょにあるものを完全に認識しないと、いどうできない」

 

 少し関係無いが、言葉も詳しく教えてもらった。

 魔力で色々強化されている恩恵もあり、一晩で言語をマスターする事が出来た。

 半端ないね。魔力。


 『それで、この結界をはっている元凶が、たぶんこの内にいる』

 

 『成程。その元凶を倒せばこの森を出れる感じ?』


 ホワイトは頷く。


 脱出方法がついに判明した。

 

 これをして、早く森を出たい。

 俺はとんでもない日数をここで過ごす羽目になってしまった。


 『本当にありがとう。ホワイト。俺が森を出たいってだけなのに』


 最後に、感謝の言葉を伝える。 

 ホワイトがいなければ、死ぬまでここにいた。

 森の中では、きっと二度と姉ちゃんと再会出来なかっただろう。


 『••••••きにしなくていい。かんしゃするのも早い。元凶はたぶん竜族』


 竜族?

 竜族。

 ドラゴンか。


 ついに違う世界っぽいのが来た。

 生態が分からな過ぎて、かなり恐ろしい。

 

 『あっちの方角は、結界の魔力が少ない。多分なにかある』


 『要は、その辺に竜がいる可能性が高いのか』


 『そうおもう』

 

 まあでも、ワンチャン竜族は滅茶苦茶弱いかもしれない。

 あっさり森を出れるかも。


 『じゃあ!そっちに行くぞー!!ゴーゴー!!』


 ホワイトと一緒に、森を歩き始める。




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