第三章 完
「帝国横断鉄道大坂号アルデヒト行き。ドアが閉まります」
俺とホワイトは二人で、ある電車の席に座る。
そして、今ドアが閉まった。
これから、約一週間の電車の旅だ。
俺達は近くの右の窓から、駅のホームを見下ろす。
「本当にありがとうございました!!大空さん達から受けた恩を!!自分達は絶対忘れません!!本当にありがとうございます!!」
「我覇王也。頑張れ。そして死ね」
「覇王様は、大空さん方に頑張れと!そして自らを傷付けた元凶が何故かここにいるのか、死ね!おっしゃっています!!僕もそう思います!こいつはどの面下げてこの場に来たんでしょうか!!」
「何で毎回数合わせで俺を呼ぶんだよ••••あいつら組織壊滅の原因じゃねぇか。給料二倍になった以外文句しかねぇよ、、」
「わー。ありがとうー。犯罪組織から脱出させてくれてー。面倒くさかったー。ありがとうー」
「ホワイトさん、、本当にありが、とう、ございま、した。警官なのに、お金ばかり、求めて、いた、私に、いろんな、ことを教えて、いただいて、、」
「会長~~!!ハジメ元会長に会えたら、手紙渡しておくっスよ!!だから次会った時は、自分にも色々して欲しいっス~~!」
駅には、知り合いが何十人がいた。
全員がこちらへ手を振ってくる。
俺達も手を振り返す。
「ありがたいね。こんな来てくれるなんて」
「うん」
直後、電車が動き始める。
手を振ってくれた人たちは、すぐに見えなくなった。
暫くし、窓からは田んぼの景色しか映らなくなる。
そう言えば、黒田は来てくれていなかった。
師匠と戦った後も、一回遊んだのに。
イリカも然り、黒田ともまた会えるのかも怪しい。
「••••••かなしい?ちはる」
「••••?。悲しい。っちゃ悲しいかな?結構いた訳だし」
「••••••」
まあ、どうでも良い。
ホワイトと別れた訳でもないし。
少しあれな気持ちなぐらいだ。
いや、あれな気持ちか。
家族以外との別れで、こんな感じになったのは初めてだ。
他人をよく知る作戦は成功かもしれない。
特に友達となる戦法は。
「••••舌だして」
突如ホワイトはそう言う。
更に、俺の上に跨って来た。
「?。公共の場だし、恥ずかしくない?」
「••••わたしがしたい事がある」
「?。分かった」
何か意図があるのだろうか。
俺はまた舌を出してみる。
「はむ」
直後、舌が食われた
イリカよりも顔が近い。
もうほぼあれだった。
少し違うし、セーフだと思うけど。
「•••••ちはるは••••へんで••••つめたい」
そのまま罵倒される。
やはり、こういうのは良くないか。
急いで直さないと。
「••••けど••••わたしはずっといる••••絶対はなれない••••」
ホワイトは、そう言う。
何か温かく、懐かしい。
森のホワイトも、こんな気分だったのだろうか。
「••••うええうええう?」
「••••?。いい」
伝わったのかは分からないが、言葉に甘える。
俺はホワイトの背中に、手を伸ばした。
そして、一気に引き寄せようと。
「わ!!!!」
「うえ」
「おはよう!大空千晴くん!!元気してた!?二日振り!ここにいると思わなかったでしょ!って、え、は?ホワイト?何してるの」
背後の席から、大きめな声が上がった。
黒田だ。
「••••ノア」
「うう!うええ!うえええうええ(おお!黒田!!久しぶり!)」
「••••あの。それ、公共の場でやる事じゃないよね。やめよう」
「わかった••••」
ホワイトが口を開き、俺の舌を離す。
舌が俺の口に戻ってくる。
今度は、あんまり乾燥していなかった。
「黒田。二日振り。元気だった?」
「よくここから話戻せるね。キミ••••ボク、用事出来たから一旦部屋に戻るよ••••とりあえず目的地は同じだってだって言いに来ただけだから••••」
「!!。おお!そうなんだ!カルミナ市に!?」
「その通り。ボクも電気の街に行くつもりだったから••••偶然。じゃまた後で」
「••••••••よかった••••」
「え、え!、ええ!!本当!?ホワイトもボクがいて嬉しい!??ボクも嬉しいよ!!!」
「用事が出来たのか。残念」
—-
『何で自分を拾った••••言ってもわかんないか』
『この生活が一番良いか••••皆んなといれれば』
『みんながぁぁ!!お前!!死ねよぉぉ!何でこんなことぉぉ』
『俺の夢。協力してくれ。さすればお前の願いも、叶えてみせる』
••••••。
••••••。
••••••。
「う、ううー。なによ••••」
イリカは目を覚ます。
寝心地は最悪だった。
河沿いの砂利に寝袋を引いていたからだ。
(不便な生態だな。おい。睡眠とか時間の無駄過ぎんだろ。魔力ねぇとこんなものなんか)
「••••う、うー」
イリカは寝ぼけ目で寝袋を鞄にしまう。
その後、鞄からパンを取り出し、特製スパイスをかける。
これがイリカの最近の朝食だった。
(早く食え。四日以内に着きてぇ。お前のせいで遅れてんだからな)
(美味しいわ••••ゆっくり食わせて••••まだまだ遠いわ••••)
スパイスのかかったパンを大事そうに食べる。
イリカは顔を緩めた。
(はよ食えよ。お前が金を使い過ぎるわ、示談金受け取らないわで、電車が使えなかったじゃねぇか。これ以上遅くなんなら、あいつに会えず復讐も成し遂げられなくなるぞ)
(う••••あ、あいつって、『傲慢』のイリスでしょ、、言ってたじゃない•••あそこにいくなら、、長居する可能性も高いって••••)
イリカは自らがボスがした取引を思い出す。
ボスは即時無罪放免の後、何故か情報屋になっていた。
それを見つけたエムがボスに金を払って情報を得る事を提案、イリカは実行し欲しかった情報を得た。
その情報は、イリカにとって垂涎の物だった。
反勇者同盟への入り方は序の口。
その上、反勇者同盟幹部である『傲慢』の目撃情報すら教えて貰えたのだ。
(おい!だからこそ早く行くんじゃねぇか!!何が起きるかわかんねぇんだろ!!)
(••••••美味しいわね••••)
(おま、人の話聞けよ!!カス!!全部おれが食ってやる!!腹に入れば全部変わんねぇだろ!?あ、意外と上手いなこれ)
イリカの右手と口が勝手に動き、猛スピードでパンを口に詰め出した。
なのに、その口は途中から味わうようにゆっくりと咀嚼し始める。
イリカは猛烈に腹が立った。
(何すんのよ!!私のパン!!)
(いてぇな!!何すんだカス!!!)
イリカは左手で、右手を殴った。
直後右手も勝手に動き、左手を殴る。
イリカは二つの痛みを感じた。
「い、いたいわ••••」
(おれもいてぇぇ!!ぐぉぉぉぉ!クソぉぉぉ!!キエエエエエ!!好きなように出来ねぇぇぇ!!ぎえぎえぎえ!!)
イリカの脳内でエムが発狂する。
その惨状で、イリカは冷静さを取り戻した。
(••••••わかってるわよ、、電気の街、、カルミナ市に早くいかなきゃいけないって、、)
(だったらすぐ行けよ。魔王国に超近いあそこはめっちゃ遠いだろ)
(それは、、ちょっとまって、、)