第二十四話 裏切り
「完治!元気一倍!」
牛頭を倒してから十分。
通路に座り込み、傷を治すのに専念していた。
それももう終わりだ。
「いやー!すぐ治って良かったっス!自分の回復薬のお陰っスね!感謝して下さい!!」
「よかったわ!血がいっぱい出てて痛そうだったもの!」
「••••••よかった」
「ホワイトも本当に平気?衝撃を喰らったりしてない?」
「••••だいじょうぶ」
それとは関係ないが、ホワイトの様子が変な気がする。
微妙に何か考えているかのような。
まあでも本人が大丈夫って言っているし。
大丈夫か。
「それと回復薬はありがとう。それのお陰ですぐ治ったよ」
「当然っスよ!会長!忠実な部下として!!」
ひらめは笑顔でそう言う。
あれは凄まじい効能だった。
「まあ、それで話戻すけど。勇者連盟って何かしら技術力を独占してたりする感じ?さっきの回復薬やら、その通信出来る腕輪やらがあるし」
他にも何故か回復する闘技場だったり、AIが付いていそうな図書館の黒い箱だったり。
その割には宿屋では白黒テレビだし、その辺の街灯は蛍光灯だ。
こんな感じなのだろうか。
「そうっスね。自分達はこの世界の健全な成長を助ける、って方針でやってるっスから。技術力は結構自分達で独占してるっス」
「?。この市を直轄してたり、闘技場があったりするのに?」
「ここを直轄してる理由は、例え会長にもいえないっスね。言ったら自分の首ポーンっス。自分それは嫌っスね」
それも機密だった。
あながち黒田に見せられた本は、真実を言っているのかも。
だが姉ちゃんが所属している組織が周りのと比べて優れているのは、良かった。
安心だ。
「けど、会長。そんなに知りたいなら、勇者資格取らないっスか!合格率0.01%っスけど!一緒に勇者しましょうよ!」
勇者、まさかの資格制。
そんなのでなれるっぽい。
だが、疑問もある。
「そこまで難しい試験に受かったんだ。高校時代はあんまり成績良くなかったような気がするけど」
「ひゅ~~。異世界から来た勢は、ちょっとズルしてるんスよね~~。他の人とは違うっス~~。あ、それと闘技場云々は社長の趣味っスね。深い意味ないっス」
ひらめは口笛を吹く。
と思ったら、急に首を傾げた。
「あれ?なんで会長は知らないんスかね?最初に説明を受けないっスか?」
「?。俺は。あ、来る」
突如、周囲全体に魔力が流れる。
メデューサ達が来た時と同じだ。
『『領域拡大』』
直後、俺達がいる通路だけが広がった。
最終的に闘技場のような、円形となる。
中心には、真っ黒な瞳も持つ25歳ぐらいの男性が立っていた。
『久しぶりだな。ホワイト。お前にもそれほど幼い時期があったとは』
『••••だれ?』
男性はホワイトに語りかける。
ホワイトは苛立ったかのように、返答した。
「これは不味いっスね。失礼。会長も逃げた方がいいっスよ」
ひらめの体は、透けていく。
「透明」の能力だ。
『ふむ。過去に浸っている場合では無いな。『闇の震波』』
漆黒の壁が、男性から全面に放出される。
壁は相当なスピードで近づいてくる。
『貴様らはどう対処する』
「え!あの人敵なの!??何!?この波!!」
「『凄い光』。きょうどは竜族の結界ぐらい。だからとめられない。けど闇魔法は光魔法でそうさいできる」
ホワイトは手から光る玉を出す。
その玉は壁に近づき、爆発を起こした。
爆発は、一瞬で闇の壁に飲み込まれる。
「全然出来ていないけど!そうなのか!『光線』」
闇の壁は、もう後数メートルの所に来ていた。
急いで、俺は光るレーザーを放つ。
レーザーは壁に穴を開けていく。
すぐに消える。
逆もまた然りだった。
光魔法も相殺されるっぽい。
「これ!パンチでなにかいけないかしら!!」
イリカが漆黒の壁を殴る。
次の瞬間、イリカは吹き飛んでいた。
壁にぶつかる。
これは無理か。
「逃げよう!「神速」!」
ホワイトを抱き上げ、俺はここから繋がる通路へ瞬時に移動する。
魔力感知内で何度か使っている所は見たから、後はそれを真似するだけで「神速」は使えた。
これにひらめの「透明」を合わせれば、逃げられるはずだ。
「透明」になりたい。
「透明」になりたい。
魔力が根本から変わった気がする。
やはり行けた。
「あの忍者服の人の魔力になれたし、力を抜いて貰ってもいい?一緒に透明になれば、あの男も居場所が分からないよ」
「••••••わかった」
ホワイトは魔力を動かすのをやめる。
そこに俺が「透明」の魔力を流す。
これで、ホワイトもだんだんと透明になっていく。
よし。
大丈夫だ。
しばらく待つだけで、救援が来るだろうし。
良かった。
「••••••こっからどうするの?ちはる」
ホワイトは非常に暗い声でこう言った。
どうかしたのだろうか。
「?。後は逃げ回るだけだよ。何かあった」
「••••••••••イリカをおいて?」
「そうだね。あれには有効打が無くて、勝つのは無理だから。逃げた方が良いかなと」
イリカは置いてきた。
拾う余裕も無かったし。
倫理的に宜しくはないが、囮にするという意図もあった。
ホワイトはさっと顔を青くする。
「••••••••わたしはもどる。あいつとたたかう」
「何で。しばらく逃げるだけで何事もなく助かるのに。確かに置いて来たのは倫理的に宜しくない事だけど」
冒険者ギルドの研修で説明されたはずだ。
仲間でクエストを受けた際、大体の事は自己責任だって。
例外は、意図して行われた殺人などの犯罪行為のみ。
少なくとも、法律上今回のもセーフで。
後は本当に逃げるだけで、助かるのに。
「••••わたしは、イリカを助けたい」
「••••戦うより逃げた方が、生き残れる確率は上がるよ。それでも?」
ホワイトは頷く。
何で。
「••••ちはるがわたしを•••••ほかのより••••大事にしてるのは••••わかってる••••」
「••••••••••そうだけど••••」
ホワイトはボソボソと呟く。
不味い。
「••••わたしが庇って••••きずおったの、、きにしているのも••••」
突然、走っていた俺の体が止まる。
動かそうとしても、動かない。
ホワイトの能力だ。
「••••••けど、、わたしは••••イリカを、、しなせたくない、、なかよくなれそうで•••••いいやつ、だから、、、、」
ホワイトは俺の腕の中から抜け出した。
そして、こちらを見る。
「••••ちはるはにげて••••」
本当に不味い。
ドラゴンの時の同じだ。
「けど••••さいごに••••一つだけ、いいたい」
目と目が合う。
ホワイトの目には、涙が溜まっていた。
「••••••ちはるは••••何ともおもわない、の?イリカ、が、、蛇吉が、、死んで、も••••あんなに••••なかよさそうに••••してたのに、、」
雫をこぼしながら、ホワイトは去っていく。
俺は動けない。
しかし、頭は働く。
思い出す。
—-
『も、、申し訳、、ありません、、』
これは、牛頭が俺達から逃げようとていた時の記憶だ。
俺は牛頭の言う事の全てが、分かっていた。
メデューサが、命を賭けて牛頭を庇ったことも。
「『光線』。あ。外した」
そんな事はどうでも良かった。
またいつ襲ってくるか分からない。
何を思わず、頭を撃ち抜こうとした。
—-
「それになんとも思わないの!!?こんな子供が嫌がらせされて泣いてんのに!!行くわよ!」
これはイリカに、宿屋の前で説得されていた時の記憶だ。
男性の嫌がらせを前に、店員の男の子は泣きじゃくっていた。
「?。そうなの?けど、それでも暴力に訴えんのは、、ぐえ、な、何が起こるか、分からな、ぐえ」
俺は別に昨日会ったばかりの男の子の事は、どうでも良かった。
ホワイトが行く気さえ出さなければ。
—
『••••••大空千晴。私はお前の情の無さを、素晴らしいと思う』
これは迷いの森で、大人のホワイトと話した時の記憶だ。
元の姿に戻る直前に、そう話しかけられた。
『••••••故に私は勝てた』
ホワイトは俺の目をじっと見つめる。
俺も普通に見つめ返す。
『••••しかし••••強欲な昔の私といたいなら••••変えた方がいい••••平然と仲間の死体を利用する、その精神を』
俺は蛇吉の亡骸を何も思わず、投げた。
会ってまだ一ヶ月の蛇吉の事は、どうでも良かったから。
—-
「他の事は生き残ってから考える!!俺だけでも生き残れば、両親も不幸中の幸いのはず!!」
これはあいつと出会って、異世界に来る数分前の記憶だ。
学校の校舎が倒れてきていた。
「飛び込みセーーーー—」
俺はどうでも良かった。
毎日会っていた生徒会の仲間が亡くなっていようとも。
ひらめ込みのクラスメイトがどうなっていようと。
家族さえ良ければ。
—-
そう言えばこんな事が、あった。
•••••••••。
•••••••••。
•••••••••。
•••••••••••••。
•••••••••••••••。
体が動くようになった。
俺は走り出す。
確かに他人なんて俺はどうでも良かった。
「待って!!俺も手伝う!!助けるなら手伝う!!」
急いでホワイトを抱き上げる。
顔を上げたホワイトと、また目が合った。
「••••いい。ちはるも死ぬ」
涙目のホワイトはそっぽを向く。
もう、それでもいい。
やけっぱちだ。
「これで死んでもいい!だから手伝う!!一人だったら絶対死んじゃうから!!二人なら1%ぐらいはあるかもしれない!少しでもあるかもしれないから!」
「••••いい。ちはるに死んでほしくない」
「全然良くない!!俺は姉ちゃんに元気な姿見せたいけど!それ以上にホワイトは目を離したら死んじゃいそうで!だから付いてきてて!」
「••••••かぞく、いきてたの?••••だからこそ、いい」
俺はもう何も失いたくなかった。
失ってしまったら、何もあげられなくなる。
あれな気持ちにもなる。
「全然良くない!絶対!お願い!命は捨てないで!ならホワイトが死んだら俺も自殺する!辞めて!命は捨てないで!!本当に!!」
全力で縋り付く。
また止められたら、終わりだ。
確かに俺はどうでも良い。
蛇吉もイリカもひらめも、何をしようと、どうなろうと。
死んでしまった蛇吉には悪いけど。
それでも家族みたいに思っているホワイトに死なれるのは、嫌だ。
嫌っていたのに、助けてくれて。
無償で温かい気持ちにしてくれた、ホワイトには。
「•••••••••」
ホワイトは目を見開いて、黙り込む。
何を思っているのか。
俺には分からない。
だが、もう止めて来なかった。
了承してくれたのだろうか。
だったら、切り替えなければ。
次の目標はホワイトと俺が死なず、あの男を倒す事。
今の場所からは、男とその眼前で倒れるイリカの姿が見えた。
いや、違う。
これは駄目だ。
イリカも死なせない為に、あの男を倒そう。
『あ!?テメェが壊したのかよ!ありがてぇが!!死ね!!』
イリカは蹴りを男に喰らわす。
男は黒い粒子を吹き出しながら、吹き飛んでいく。
『ハハハ!気分最高だぜ!!おい!お前の趣味も!ついでにぶっ壊してやるよ!!ヒヒヒ!』
「?。誰?」
「だれ?」
???。
??????。




